③《俺の女だ、バカ野郎!》by 黒永 勇人

さてさて、この《俺の女だシリーズ》は、ユカリちゃんにちょっかいかけるタッちゃんが書きたくて始めたシリーズです。

今回はイクオ君も登場します!

久々のこのシリーズ、『ガチバン』見てて『ウロボロス』が見たくなり、自然に妄想が浮かんできてくれました。

久しぶりに書きたくなれたのが、窪田くんの “ 勇人 ” と、小栗さんの “ 段野竜哉 ” でした(もちろんイクオくんも)。


☆タッちゃんの設定として☆
結子先生は子供を庇っての交通事故で死亡。 その後、施設が解体されたあとはタッちゃん以外は普通の施設に移動しました。
タッちゃんはその頭脳の良さに研究所で英才教育を受けたものの、脱走。。。
街を彷徨いていた中でヤクザでのし上がり自分の居場所を作る事を決意(研究所から追手がかかっていたので、地下に潜るしかなかった)。

イクオ君とは高校で再会。
どうしても行きたいと引き取られた施設から通っていました。

そして現在、我孫子会の姐、桐乃に目をかけられ出世しています。

桐乃のお気に入りのユカリを落とせと命じられ中ですが、どんどん本気モードになってきているタッちゃんです!






「なぁ、イクオ・・・・・女って、どう口説けば落ちんだろうな」
「え? タッちゃんが僕に聞くの???」

夜にタッちゃんと待ち合わせたバーで、言われた言葉は僕の興味をそそったんだ。

だってさ、あのタッちゃんだよ?

頭脳明晰で冷静沈着、クールビューティーと言われるタッちゃんは、子供の頃からモテモテでさ・・・・おそらく口説かなくても見つめるだけで、女の子は落ちてった。

でも本当はタッちゃんの心の奥には、たった1人の人がずっと居るんだ。

結子先生・・・・・明るくて、度胸も愛嬌もあるお日様みたいな人。

僕も大好きな人だった・・・・・・不幸にも子供を庇って車に轢かれて亡くなったけど。。。


施設の先生だった彼女が亡くなって、その施設は閉鎖になった・・・・・僕とタッちゃんは違う施設へと引き取られたけど、高校で偶然再会できたんだ。


まあ、そんな事は置いといて、高校の頃も当たり前にタッちゃんはモテモテでさ、彼女がいないときが無かったと思うんだ。

そのタッちゃんが、椅子にゆったりと座って、カッコ良く足なんて組んじゃってさ、真顔で僕にそんなこと聞くんだもん!

これは、何かあったよね???


勘を頼りにタッちゃんを見張ってた僕は、すごく高そうな車で出かけるタッちゃんの後を追ったんだ・・・・・・・けど。


「うっそぉぉ〜〜〜ん」

なんで? ねえ、なんで? なんで高校の駐車場にタッちゃんが居るのさ!

しかも真っ赤なバラの花束を肩に乗せて、車に寄りかかって誰かを待ってるなんて・・・・・・・


あ! 赤いスポーツカーが入って来た・・・・・って、高校の先生ですか? 真っ赤なスポーツカーをお持ちなんですか?


・・・・・・・タッちゃん、嬉しそうにそのスポーツカーを見てる。

ポーカーフェースが通常営業なタッちゃんの、口角がわずか数ミリ上がってるし、頬も数ミリ緩んでる。

幼馴染みだからこそ分かる、微妙な変化に僕は気づいたんだ。



「よお!」
「あら、また来たの?」

ニコッと明るい声で出迎えてくれたユカリは、この前の事で嫌われてないか心配だった俺の憂鬱を一瞬で吹き飛ばしやがった。

詫びのつもりで持ってきたバラの花束を、肩からユカリの方に差し出した。

「ああ・・・・・・ほら、お前の好きな花束・・・」
「・・・・・・ありがとう、う〜ん、いい香り〜・・・」

「花は喜ぶんだよな・・・」
「うん! キレイに咲いてる花は、ちゃんとキレイだねって褒めてあげないとね〜〜 喜んで受け取らなきゃ、お花に悪いじゃない!」

・・・・・・・つくづく変わった女だよな、コイツって。
花に悪い・・・か、結子も似たようなこと言ってたよな・・・・・・

「あれ? この前の厳つい車じゃないんだね」
「アレは欲しいってヤツがいたから売った」

「私、前のより今の方がデザイン的に好きだなぁ〜〜・・・・・国産が一番よね!」
「・・・・・そうか?(でかした深町!)」

「ね、あの車って高いんでしょ? 生徒が億だって言ってたんだけど・・・・・幾らで売れたの?」
「お前の興味はデザインより、そっちかよ・・・・・・なんかプレミアがどうとか言って、倍で売れたなぁ〜〜」


「7億で・・・」
「ふへ??? なな、ななおくえん???」

キョトンとした真顔のユカリが、変な声出すのも、変な顔して驚くのも、なんか・・・・・・可愛いな。

俺は結子が生きてた頃のように、素直に笑うことができたんだ。



うわっ、うわっ! タッちゃんが・・・・・・・笑ってる。

え? なにこの展開? タッちゃんの笑顔を引き出すあの人って、どんな人???

僕は近くにいた生徒から彼女の名前をゲットしたんだ。


高科 由香里・・・・・手帳に書いたその名前を、署で検索にかけたんだけど・・・・・・・うわぁ〜〜。

アメリカの大学で医学を学んだ彼女は、飛び級するほど優秀で、外科医としての腕も超一流だった。

そのままアメリカの救急医療の最先端の病院で腕を磨き、日本でフリーランスの医者になった。

難しい手術もこなす彼女は、病院から引っ張りだこで契約依頼が後を絶たないみたいだ。

「え?え? 本当なのかな? 保健室の先生してるんだよね、この人?」

こんな超一流の外科医が、衣笠のようなヤンキー校の保健医って・・・・・・見れば見るほど、謎だらけだよタッちゃん。


・・・・・・・パソコンの画面の中で笑ってる顔が、結子先生に似てるって思うのは、きっと僕だけじゃないんだよね?

だからタッちゃんは、彼女に近づこうとしてるんだね?



・・・・・・・でもさ、タッちゃん。

結子先生の面影を彼女に重ねてるだけなら、やめた方がいいよ。

彼女が本気でタッちゃんを好きになってくれたとしたら、他の女の面影を自分に重ねる恋人を、どう思うだろうか?

その人、自分が結子先生の身代わりに愛されてるって思って・・・・・・苦しくなるんじゃないかな?

そんな事を考えちゃう僕だけど、タッちゃんのあの笑顔を見たからね・・・・・・何も言えなくなっちゃったんだ。


まあ、彼女の方はまだタッちゃんに “ 落ちてない ” みたいなんだけどね。


パソコンの画面の彼女の笑顔と情報を、僕は頭に入れておいたんだ。


そして、僕はまた・・・・・・衣笠高校へと向かったんだ。。。






「ユカリ・・・・・また貰ったのか?」
昼に帰ってきたユカリが、抱える程の真っ赤な花束を持ってきたのは、2度目なんだ。

「そうなの! 私が受け取らないと捨てられちゃうでしょ? そう思うとお花が可哀想でさ・・・・・受け取っちゃうんだけど・・・・・・ダメかな?」
「・・・・・・・・別に」

本当は嫌で、嫌でしょうがないけど、ユカリが言うようにアイツなら捨てると分かるからな・・・・・

きっとユカリが受け取らないと無造作にゴミ箱に突っ込みそうだ・・・・・・・

まあ、ユカリが喜んでるならいいか・・・・・・

「勇人・・・・・嫌だった? 今度から受け取らない方がいい?」
「ん・・・・・・・嫌だけどさ、ユカリが言うこと分かるから・・・・・・いいよ」

「花が、もったいないしな・・・・・・」
「・・・・・・ありがとう♡」

でもモヤモヤしてる胸の中を、どうすればいいのか・・・・・・・
俺はモヤモヤしたままユカリの腕を引っ張り、俺の腕の中に抱えて・・・・・ギュッと抱きしめたんだ。


「勇人? お昼・・・作れないよ?」
「・・・・・・・昼より、ユカリが欲しい」

「はやとっ・・・・・んんっ・・・・・・」

俺はユカリのプルンてした唇に、噛り付くようにキスをしたんだ。


「ダメッ・・・・・勇人・・・今はやめて? お願いだから・・・・・ね? 夜まで待って?」
「・・・・・・・・・じゃあ、キス・・・・・してくれよ」

「うん!」


ユカリから俺の唇に、キスしてくれた・・・・・・真っ赤になってるユカリと俺。。。

お互いに顔を見て、なんか可笑しくて・・・・・・笑ったんだ。


大丈夫・・・・・大丈夫だ・・・・・・ユカリは、俺んだ。


・・・・・・・思うんだ、俺。
ユカリに花を贈るアイツは、大人で、金も持ってる・・・・・俺には持ってないものばっかりだって・・・・・・

もしユカリが・・・・・・アイツを選んだらって思うと、俺、怖くて怖くて仕方ねぇーんだ。

いつから俺は、こんな弱くなっちまったんだろう・・・・・・・・

ユカリが大事で、大事で・・・・・・大事すぎて、怖いんだ。


「勇人? どうしたの?」
気がついたらユカリが心配そうに俺を覗き込んできてた。

「・・・・・・・勇人」

ユカリからされたキスは、いつもみたいに触れるだけじゃなくてさ、俺を煽るように舌を挿れて絡めてきやがる。

「バカ・・・・・こんなのされたら、離せなくなっぞ!」
「・・・・・・・いいよ・・・・・・」
「ユカリ・・・・・・」

ソファーに座る俺の膝に乗ったユカリが、ギュッと抱きついてきてキスをしてくるから、俺は我慢できなくなってきたんだ。

抱きしめたユカリの華奢な身体を手の平で撫でていけば、ユカリ・・・・・色っぺぇ〜〜声だしてくるんだ。

「んっ・・・・・はぁ・・・・勇人・・・・・・」
「ユカリ・・・・・ユカリ・・・・」

キスだけでユカリを離した俺を見つめるユカリ・・・・・だってよ、今からおっぱじめちまったらさ、お前キツいだろ?

午後からも仕事あんのに、身体がキツくなんだろ?


「やっぱ夜まで、待ってる」
「勇人、優しいね♡」

・・・・・・・・お前が、心配なだけなんだよ。

「じゃ、お昼作るね〜〜」
「ああ・・・・頼むわ」

そうして俺に弁当までこさえてくれたユカリがガッコに戻って行ってから、俺もガッコに行くんだ。



衣笠まで歩きながら、思う。。。


定時制の高校でも、俺はまた学校って場所に戻った。

昔はケンカ、ケンカでろくすっぽ勉強なんかしなかったんだ・・・・・・果てはガッコも中退して家も飛び出した俺。

それからもケンカ、ケンカ・・・・・よっちゃん先輩とつるんで歌舞伎町だの何だので暴れてよ。

果ては年少にぶち込まれちまった・・・・・・・

サラリーマンもした事あっけどよ、全然ダメですぐにそこも飛び出しちまった。


それから一度、定時制の試験を受けたんだけど・・・・・・落ちたんだ。


俺は、学生にもなれず・・・・・勤めもできず・・・・・半端な自分が心底嫌になっちまってたんだ、あの頃・・・・・


そんなときクソ生意気な中坊と知り合って、その中坊の主治医のユカリと出会えたんだ。


ユカリに出会えて、俺は・・・・・・俺は・・・・・・・・


「黒永くぅ〜〜ん!」
「んあっ? ・・・・・・・なんだ、お前か」

校門ぬけたところで立ってた黒スーツの男に、声かけられた。

銀縁のメガネをかけたその男は、この間からユカリにちょっかいかけてる男で・・・・・・たぶん、ヤクザだ。

「・・・・・・・何の用だよ」
「一度さ、お前と話してみたくてな・・・・・今から、少し時間あるか?」

俺はタバコ出して吸い始めたんだ。。。

「・・・・・・・・俺には、用がねぇ〜」
「まあ、そう言わずにさ・・・・・・乗れよ」


そいつが指をさした先には車があって、別の男が立ってた。

ドアをその男が開けて・・・・・・俺は、乗りこんだ。




「どひゃぁぁぁ〜〜〜・・・・・・・・」

ちょっ、ちょっとタッちゃん!!!
その子、車に乗せてどうする気なんだよ!!!

学生服着てるって事は、ここ・・・衣笠の生徒さんでしょ?

車で連れ去って、どうするのぉぉ〜〜〜!!!


僕はタッちゃんの車の後を、ついて行ったんだ。
そしたら、ある洋食屋さんに入ってって・・・・・・・隅のボックス席に座ったんだ。

僕は耳もいいから、少し離れた・・・・・タッちゃんからは見えない角度で席に座って、彼等の会話を聞いてるんだ。



「ここな、オムライスが美味いんだ・・・・・・頼むか?」
「いや、いい・・・・・・俺にはコレがあっから」

そう言って包みを見せるその子に、タッちゃんがチラッと見てる。

「んじゃ、ホットでいいな」
「ああ・・・」

ホットコーヒー2つに、タッちゃんはオムライスを頼んだから、僕もオムライス頼んだんだ〜〜。


「・・・・・・・・・で?」
「まあ、そう焦るなよ・・・・・・」

「お前とユカリのこと、聞きたいんだ」
「・・・・・・・・は? なんで?」

「ちょっと興味が湧いたんだ。 お前みたいなヤンキーと、女医がどう出会って、何があったら、くっつくんだ?」
「・・・・・・・・ほっとけ!」

「やぁ〜〜だね! 話せよ黒永・・・・・・それとも他に言えねぇ〜ような秘密でもあんのか? ユカリに・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

相手の子、あんま喋んないんだね! さっきっから単語しか言ってないし、タッちゃんをギロって睨んでるし!


タイミングよくオムライスがタッちゃんの前に置かれてさ、あ! 僕にもきた!!!

相手の子・・・・黒永くん? その子もお弁当箱を開けたんだ・・・・・・くん! くんくん!!!

黒永くんもオムライスだねぇ〜〜〜! すっごい偶然!


スプーンを握って食べ始めた黒永くんが、ポツポツと話し始めたのは・・・・・・え? ユカリって高科さんの事だったの?


・・・・・・・ケンカしか能のない黒永くんが、白血病の少女の『オーロラが見たい』って願いのためにヤバイ事で金を稼ごうとしてた。

結果は他の人がそのヤバイ事しちゃったんだけど、戦ってボロボロな状態で病院に行けば、その少女がいなくてさ。

もしや亡くなったかって、焦って暴れた彼の前に現れたのが、少女の主治医のユカリさんだった。

ケガの手当てをしながらその少女が、移植手術のために外国に旅立った事を教えてもらった。


「・・・・・・・汚ねえボロボロな俺を見ても、ユカリは嫌な顔も、嫌な目でも俺を見なかった」

それから彼とユカリさんの話を聞きながら、僕はタッちゃんの事を思ってた。



・・・・・・・・結子先生は、とびっきり明るくて、可愛くて、たまにとびっきり恐くて・・・・・・・・でも、とびっきり温かい人なんだ。


まるで・・・・・そう、まるで・・・・・・黒永くんのユカリさんのように。

「タッちゃん・・・・・ダメだよ。 ・・・・・・彼等は、そっとしておこうよ・・・・・」

いくらタッちゃんがユカリさんに惹かれても、彼女は黒永くんのこと本気で好きだし、彼もユカリさんを本気で想ってる。

その2人を引き裂くのは、ダメだよ!


「黒永、お前・・・・・・ユカリのこと、本気か?」
「当たり前だ!!! だから、ぜってー渡さない! ・・・・・・・渡せねぇーんだよ!!!」

「・・・・・・そっか。 悪かったな今日は、学校から連れ出しちまって」
「んあ?」

「深町、送ってやれ」
「はい、竜哉さん」

おわっ! 深町さん、いたんだ! タッちゃんの後ろの席からスクって立ち上がって畏まってるし。

深町さんが送って行ったあと、タッちゃんはタバコを吸い始めた・・・・・・

「こっちに来いよ」
「(ギクッ!!!)・・・・・・」

「イクオ! そこに居るのは分かってんだ・・・・・・こいよ」
「・・・・・・バレてたんだ」

「バレバレ・・・・・尾行の下手な刑事だな」
「あははは・・・・・・地味にショック!」



「・・・・・・・ところでさ、タッちゃんはどうなのかな?」
「あ? 何がだ?」

向かいに座った僕はタッちゃんを、ジッと見つめながら聞いた。

「ユカリさんに、本気なの?」
「聞いてどうする?」

「あのねタッちゃん、黒永くんとユカリさん、そっとしとかない?」
「・・・・・・は?」

「あのさ、話を聞いただけだけどね、僕・・・・・2人ってお似合いだと思うんだ。 だからね、そっとしといてあげてよ」
「別に、どうこうしようだなんて思っちゃねーよ・・・・・・俺はな」

え? その “ 俺はな ” ってのは、なに? なんかあるの?

「・・・・・・こっちの話だ」

そう言って黙っちゃったタッちゃんを見て、僕はなんかあるんだとピン!ときたんだ。

でもそれ以上聞くとタッちゃん怒っちゃうから、僕は黙ったんだ。


〜〜〜♫ ピルルル ♬〜〜〜

ヤバイ! 日比野さんからだ!!! ごめんタッちゃん、僕もう行くね! また今度ね!



バタバタと店を出たイクオを見送りながら、俺は我孫子会姐の桐乃の顔を思い出していた。

『竜哉、お前にしてはモタついてるじゃないか・・・・・ユカリを落とせたのかい?』
「申し訳ありません」

『・・・・・・・なんなら、他の男を動かしてもいいんだよ?』
「・・・・・・・もう少し、時間を」

『わかったよ・・・・・・もう少し待ってあげるよ、竜哉』

そんな会話を思い出していた。


・・・・・・・他のヤクザな男が出てきたら、ユカリは力づくで襲われるのは、目に見えていた。

短絡的なヤクザのことだ、嫌がる女なら拉致ってレイプしてって頭しかないだろう。。。


「さて、どうするかな・・・・・・・」

桐乃の機嫌を損ねないよう、ユカリをそっとしておくためには・・・・・・・難しいな。






黒永勇人と話してから数日たった、ある日。

「竜哉さん、少しお耳に入れたい事が」
「話せ」

「例の女医の事ですが、姐さんが焦れて他の男を向かわせたそうです」
「・・・・・・・なんだと? 相手は、誰だ」

「桐島 透・・・・・最近、松島組に入ったホストあがりのチャラいヤツです」
「・・・・・・行くぞ」

俺は深町に運転させて衣笠に向かった。




「・・・・・・離して」
「イイじゃんか〜〜・・・・・俺が相手してやるって言ってんだから、素直になりなよぉ〜」

はぁ・・・・・何なの、コレ?
車に忘れ物した私が駐車場に行けば、まるでホストみたいなその男に手首を掴まれてたの。

「ある人からの命令でね〜〜・・・ 俺がアンタを抱いて、孕ませてやるよ!」
「はあ???」

「いいだろ? 俺みたいなイケメンの子供だぜ? きっと可愛いさ〜〜! アンタが赤ん坊産んだら、俺は幹部になれるんだ」

幹部ねぇ〜 ・・・・・・・なんとなく、誰かの顔が浮かんだわ。

「結構よ! 私には恋人がいるの! さっさと手を離して帰りなさい!」
「何だとぉ〜〜〜・・・・・生意気な女だな・・・・・俺が、教育してやるよ!」

そう男が言えば、大きく手を振りかぶったから、私は殴られる!って思ったの。


・・・・・・・・ぎゅっと目をつぶった私だけど、いつまでたっても痛みと衝撃がこないから、恐る恐る目を開けたら・・・・・・・あら、あなた。。。


「この女に関わるんじゃねぇ・・・・・・」

ユカリが打たれる寸前で、桐島の腕を止めた俺はそのままギリギリとそいつの腕を締めていった。

「痛い・・・・お前、誰だよ! 急に出てくんなよ!」
「俺は、段野竜哉・・・・・・聞いたこと、あんだろ?」

「・・・・・・松江組の若頭・・・・・・」
「お前じゃ・・・・・役不足だ」

俺はそいつの腕を、骨を軋ませるほど捩じあげてった。

「・・・・・いいか、二度とコイツに近づくんじゃねぇーーぞ。 近づいたら、お前は終わりだ」
「はいっ! わ、わかっ、わかりました!!!」

まったく・・・ 顔は良いだろうが、ホストでチャラっとした男なんかユカリにあわねぇーだろうが!
何考えてるんだ、あの姐さんはよ!!!

「ありがとう・・・・・段野・・・さん? 初めて名前聞いたわ」
「ああ、悪りぃ・・・・・名乗ってなかったか? 俺は竜哉・・・・・・段野 竜哉だ」

「で? 私を孕ませれば幹部って、どういうことかな?」
「チッ! あんの野郎、余計なことを」

スラリとしたユカリが、俺の前で腕を組んで睨んでくるのがさ、意外に・・・・・・・・迫力あんのな。

キリリとした目に物騒な光を宿してるユカリに、極道の姐をはってる桐乃の迫力を、見た。

こいつは、極道の姐でも十分いけんな・・・・・・医者だから頭もキレるだろうし、度胸もある、おまけに美人ときたら申し分がねぇ・・・・・・


桐乃がユカリを欲しがるわけが、解った。



「段野さん、訳を聞かせてもらえるかしら?」
「竜哉でいい・・・・・・ま、お前ならもう察しがついてるだろ?」

「はぁ・・・・・・桐乃さんね」
「俺を言葉1つで動かせるのは、“ 姐 ” である桐乃ぐれぇーさ」


「何でも俺とアンタの赤ん坊なら、可愛いのが生まれるだろうってさ・・・・・・」
「まったく、犬や猫の子じゃあるまいし! 段野さんだっていい迷惑じゃない!」

「一言、文句言ってやるわ!!!」
プンスカ怒りやがったユカリが携帯を出して桐乃にかけた。


ははは・・・・・・極道でも最大級の規模の我孫子会の、その頂点に君臨する会長の妻であり、床に伏せてる会長に代わって組を仕切る “ 姐 ” が、桐乃だ。

その桐乃に電話をかけられる女がいるとはな・・・・・・・しかも、真っ当な堅気でな。


「もしもし、桐乃さん!? 変な男寄こさないでよ!」
『・・・・・・・・』

「私には勇人って恋人がいるんだから・・・・・桐乃さんは大好きだけど、私の意思を無視したことを押しつけないで?」
『・・・・・・・・』

「・・・・・・・・その件は前からお断りしています。 そこまで可愛がって下さるのは嬉しいですが、医者を辞めるつもりはないですから・・・・・・・」
『・・・・・・・・』

「え? 段野さんなら、いますよ?」

ん? 俺か? ユカリが携帯を差し出したから、気がすすまねぇーが受け取った。



「代わりました、段野です」
『・・・・・・起爆剤になったかい? あの顔だけのチャラ男』

「なりませんよ。 それより俺が駆けつけなかったら、ユカリさん・・・・・あの男に殴られるところでしたよ?」
『・・・・・・なんだってぇぇ〜〜〜!!! 私の可愛いユカリを殴るぅぅ〜〜〜!!! あのバカ、海に沈めて魚の餌にしてやる!』

「それは止めませんが、全部あの男がバラしちまいましたよ? それでユカリさん、お冠です」
『・・・・・・・仕方ない、今回は諦めるよ。 竜哉、もうユカリを孕ませなくてもいいよ』

「分かりました」

電話を切った俺はユカリに返したが・・・・・・・お前、すげぇーな・・・・・・・姐が言い出した事を引っ込めるなんて、前代未聞なんだぜ。


「そう?」

ニコッと笑うお前を見てると、子供の頃から胸の真ん中にいる大事な人と重なるんだ・・・・・・・

俺の姉のように温かく、俺の母のように愛情深く、子供の俺を包んでくれた人・・・・・・・ もういない、何処にもいない、かけがえのない・・・・・・・俺の全てだった、人。

「ま、これで俺も吹っ切れたわ」

そう、吹っ切れた・・・・・・ユカリは結子じゃねぇ〜〜、そんなん分かってるさ!

でも重なるんだ・・・・・重なっちまうんだよ、イクオ・・・・・・目の前のユカリが・・・・・・どうしようもねぇーんだ。


「・・・・・・・どうしたの? また苦しい目、してる・・・・・」

俺の目の前に立ったユカリが、俺をそっと・・・・・・・抱きしめてくれた。

「誰かに似てるんでしょ? しばらくその人の代わり、してあげる」

俺はそっと抱きしめ返して、ユカリの背中に腕を回した。

「たまんねぇーな・・・・・・何でもお見通しかよ・・・・・・」

俺は華奢なユカリを抱きしめて、いや、結子を・・・・・・・抱きしめてたんだ。

「・・・・・・・決めた!」
「なにを?」

腕の中のユカリを、ギュッと抱きしめて俺は、決めた。

「姐の命令なんかじゃねぇ〜・・・・・俺はアンタに、惚れた!」
「え? 嘘でしょ・・・・・・・んんっ」


かぶりついたユカリの唇は、今までのどんな女よりも柔らかくて・・・・・・・甘かった。






「あの・・・・・竜哉さん、その頬は・・・・・」
「いてぇ〜〜・・・・・・」

帰りの車の中で深町に気づかれたが、俺の頬には今・・・・・・バッチリと手形が残ってた。


「たかがキスの1つで叩くか? ・・・・・いいパンチしてやがんな」
「竜哉さんを叩くだなんて俺、許せません!」

「いいんだ深町・・・・・」
「でも!!!」

「いいんだ! ユカリは俺が惚れた女だ、覚えておけ」
「・・・・・・・分かりました」


・・・・・・・叩きはしたがな、ユカリ? 気がついてるか? お前、前みたいにパニックにならなかったんだぜ?

それは俺に、少しは心開いてきたってことだろ?


・・・・・・・・少しでいいんだ。


少しでいい・・・・・・お前の心、俺にも、くれよ・・・・・・・・ほんの欠片で、いいんだ。


お前を悲しませることなんか、したかねぇーよ・・・・・・ただ、お前が笑ってる顔が見てぇーんだ。

ただ、それだけだよ・・・・・・・んじゃ、また会いにくっからよ!


・・・・・・・黒永と幸せにいろよ?





思いのほか長くなりました(笑)

久しぶりに楽しんでいただければ、嬉しいです。

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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