「えっと・・・えっと・・・あの・・・」
「天川さん?」
今、俺の目の前で真っ赤になってる彼女は、天川さん。
一緒に授業を受けてたんだけど、中庭に連れ出されて・・・・・・赤くなった頬が、可愛らしいなぁ〜。。。
彼女とは同じ大学で、同じ授業を受けてたのに・・・・・ 話したのは つい最近なんだ。
きっかけは・・・・・彼女が小さい頃亡くなった父親の命日が、近づいていて・・・ナーバスになった彼女と俺が廊下でぶつかったことだった。
それまでは同じ授業を受けているから、顔はなんとなく覚えてる・・・・・それだけの関係だったのにね。
泣いてる彼女の眼鏡の奥の瞳が、ハッとするほど綺麗で・・・・・その潤んだ瞳が俺を見上げて揺れてるのに、惹きこまれたんだ。
俺は彼女の手を引いて、中庭に座って・・・・・・何時間も彼女のそばにいた。
気の利いた慰めの言葉もかけられないから、ただ・・・黙って横に座ってたんだ。
しばらくして泣き止んだ彼女から、「ありがとう」って言われてさ、俺・・・・・すごく嬉しかったんだ。
家族以外から・・・・いいや、家族でさえ滅多に言われない感謝の言葉を、久しぶりに聞いてさ・・・嬉しかったんだ。
それから並んで座ったまま、彼女がポツリ・・・・ポツリと話してくれたんだけどね。
朝、元気に会社に行った父親が、夜には冷たくなって病院のベットに寝ていたんだそうだ。
死因は暴走車が歩道に突っ込んできたとき、小さな子供を連れた妊婦さんを庇ったため・・・・・なんだ。
まだ幼かった彼女は、大好きな父親の変わり果てた姿(傷が酷かったんだって)を見てから、ショックで命日が近づくと気持ちが落ち着かなくなるらしいんだ。
「・・・・・ごめんなさい、夜神くんを巻き込んじゃって・・・もう、大丈夫だから・・・・」
「そんな青い顔して、大丈夫なの? いいから、そばにいるよ・・・・・」
「・・・・・・ありがとう、夜神くん」
「・・・・・どういたしまして」
その日、俺は天川さんと色んな話をしたんだ。
「・・・・・・分かるよ、俺もね・・・母さんの命日には、やっぱり辛いから・・・・・」
「・・・・・・優しいね、夜神くんは」
結局、授業にはほとんど出ないまま、大学を後にして居酒屋のバイトに向かった。
天川さんは、俺について来ちゃって・・・・・居酒屋を珍しそうに見ているんだ。
メニューもしげしげと見つめている様子が、すごく可愛かった。
アニメみたいな黒縁眼鏡に、2つに分けた三つ編みに、大人しいブラウスとカーディガン、スカートにブーツだった。
その派手じゃない清楚な服装は、彼女に似合ってて・・・・・・そこまで考えて、ハッとした。
「まさかぁ〜〜・・・今日初めて話した子に、恋だなんて・・・・・」
まさか俺? もしかして一目惚れ?? ・・・・・放っておけないだけだ。
それからは同じ授業のときは、近くに座るようにして彼女と話しをしてた。
そんな俺に鴨田がコソッと言ってきたんだけど。。。
「なあライト! お前ってああいうのが趣味だった?」
「??? ああいうのって???」
「キョトン顔かよ! ああいうのってのはな、天川の事だよ! あんな地味女子かまってるじゃんか最近!」
「バカ、そんなこと言うなよ! 失礼だろ?」
俺は彼女がいないかキョロキョロと周りを見たんだけど、良かった・・・・・いない。
同じ授業だから、ドキッとした〜〜〜。。。
「失礼もなにも、今どき黒縁眼鏡に三つ編みなんて天川くらいだろ? どうせ付き合うならさ、ミサミサくらい可愛い子と付き合えよ、ライト!」
「天川さんも可愛いじゃないか!」
「はあ??? あ・の・天川を可愛いなんていう物好きはお前くらいだぞ! 俺は友人として忠告してるんだ、とにかくあんな地味女子、もうかまうなよ!」
「鴨田・・・・・」
「お前さぁ〜・・・意外に顔はイイんだから、彼女作るなら他のにしとけって話! あ! ミサミサはダメだからな、ミサミサは俺のだかんね!」
「それより俺たちの女神、ミサミサのライブに行くだろ? 今日だぞ!」
「ああ・・・・・・それは行くけど、鴨田・・・・天川さんのこと、ひどく言うなよ 」
「ライト?」
「彼女、確かに大人しいけどさ、話してても楽しいし、良い子なんだ」
「俺・・・・・彼女のこと、気になってるんだ。 だからさ、悪く言わないでくれよ・・・」
鴨田にも悪気がある訳じゃないのは分かってるんだ。
だけど、彼女のことを言われて・・・・・・俺は自分でも驚くほど声が低くなり、怒気がこもってしまった。
臆病な鴨田は、俺の声にビクッとすると、謝ってきてくれたからそれで終わりにしたんだ。
ミサミサのライブの話をしてると授業が始まって、あれ??? 天川さん、来ないなぁ〜・・・・・
俺は真面目な彼女が授業にこないことに、変だと思っていたんだ。
そして、昼休み・・・・・天川さんにメールで呼び出されたのは校舎の中庭の奥の方で、人があまり来ない場所だった。
「待ったかな?」
「ううん、呼び出してごめんなさい・・・」
「別にいいけど・・・どうしたの?」
何か思いつめた彼女の様子が気になって・・・・・じっと見つめてしまう。
俺が見るからか、直ぐに真っ赤な顔になった彼女のホッペが、可愛いなぁ〜〜なんて、見てたんだ。
「えっと・・・えっと・・・あの・・・・・」
「天川さん?」
「ごめんなさい・・・・・」
え? 深々とお辞儀する天川さんだけど、俺、何か謝られる様なことしたかな???
ギュッと拳を握った彼女が、すぅ〜〜っと息を吸って・・・・・
「私、夜神くんのこと・・・・・す、す、好きなんです! 」
「え? 」
いきなりだけど、これって告白!? ・・・・・・俺、天川さんに告白されてる!?
「でも私みたいなのに好きになられても、迷惑ですよね? 夜神くん優しいから、私・・・甘えちゃって」
「は? え、なに? なんで迷惑 ?」
「あの・・・ちゃんと分かってるから、大丈夫です! 私みたいなの男の人に好きになってもらえるわけないの、ちゃんと分かってるから・・・・・だから、もう夜神くんには近づかないです!」
「えっと? ごめん、意味が分からないんだけど・・・・」
だって俺のこと好きって告白してくれてるのに、ごめんなさいとか、迷惑だとか、もう・・・・・近づかないとか。
普通は、付き合って下さいとか、友達からとかじゃないのかな・・・・・真逆なこと言われてる。
「迷惑にしかならないの分かってたけど、私・・・夜神くんのそばにいられて嬉しくて、お話とかもできて、すごく夢みたいに嬉しくて・・・・・でもさっき鴨田さんが言ってるの聞いて、これ以上迷惑かけるの・・・・・」
あ・・・・さっき、聞いてたのか・・・・・
俯いてしまった天川さんは、肩が震えてて・・・・・もしかして、泣いてるのかな?
そう思ったらもう、体が動いていた。。。
・・・・・・俺は彼女を抱きしめてたんだ。
華奢な体を抱きしめて、自分でも分かった・・・・・俺は彼女のことが、好きだって。。。
鴨田は地味女子だとか失礼なこと言うけど、天川さんは素敵な女の子なんだ。
女の子となに話していいのか分からない俺の、つまんない話にも頷いてくれたりさ、ニコニコと聞いてくれるんだ。
ボタンが外れてる時とか、携帯の裁縫道具でサッと縫ってくれたし、お菓子焼いたって食べさせてくれたり、そのアップルパイがめちゃくちゃ美味しいんだ。
・・・・・・・俺の妹なんて、夕飯まだ〜〜とか催促しかしないんだぜ?
俺は天川さんで初めて、女の子ってこんなに可愛い生き物なんだって知ったんだ。
近くで話してて気がついたのは、眼鏡の奥の瞳が大きくて、クリクリっとしてて、鼻すじも通ってて、唇もみんな可愛いってことだった。
スタイルだっていいし、それからは一気に彼女のこと “ 可愛い女の子 ” って意識しちゃって、顔に出さないようにするのが大変だったんだ。
その・・・・・友達関係が崩れるのが、怖いっていうか・・・・・
その彼女が、俺のこと好きって・・・・・・俺、すごい嬉しいんだよ!
抱きしめてる腕の中から花みたいな匂いがするし、彼女の華奢な体を感じて、ますます胸がキュンってしてくるんだ。
「迷惑なんかじゃない・・・・・ 俺、すごく嬉しい・・・」
「夜神くん・・・・・」
「俺も、天川さんのこと好きなんだ・・・・ 付き合って下さい」
「・・・・・・え?」
キョトンと腕の中の天川さんが、俺を見上げてくるけど・・・そんな顔も、すごく可愛いんだ。
「私・・・ 迷惑じゃ・・・・」
「迷惑じゃないよ! 好きって言われて凄く嬉しい・・・・・・あ、ごめん」
抱きしめたままだったのを思い出して、急に恥ずかしくってさ・・・・・パッと離れたんだ。
「・・・・・俺と付き合って下さい」
「・・・・・・はい」
ポロポロと涙を流す天川さんにオロオロとするけど、恥ずかしそうに「嬉しいからです」なんて言われて、俺も嬉しくなっちゃった。。。
「泣かないで・・・」
「・・・・・でも、止まらないから」
嬉しくて泣いてる天川さんを、俺はそっと抱きしめた。
ハンカチも渡してね!
「落ち着いた?」
「うん・・・」
ベンチに座った俺たちは、天川さんが落ち着くのを待ってたんだ。
「・・・・眼鏡も濡れちゃった」
そう言って眼鏡を外して拭いてる天川さんを見て、俺は言葉が出なくなった。。。
大きな瞳はクリクリとしたアーモンド型で、泣いた後だからウルウルって潤んでる。
鼻すじが通ってて、唇はぷるんてしてて・・・・・まるでアイドルみたいに可愛い。
いや、テレビで見た事あるどんな人より、綺麗だなんて・・・・・・俺は自分の目を疑った。
「・・・・・きれい」
「え?」
「あ、ごめん! 初めて眼鏡外した顔みたから・・・・・・あの、すごく綺麗だなぁ〜〜って」
俺がそう言うと真っ赤になって俯いてる彼女が、ほんと可愛くて・・・俺も顔が熱くなったんだ。
ざわざわ・・・・ざわざわ・・・・・ざわざわ・・・・・ざわざわ・・・・・
翌日、授業がある教室に入ると皆がざわついているんだ。
「ん? あれ、天川さんがいない?」
同じ授業だから隣に座ろうと思ったのに、いつもの席は違う人が座ってた。
「ライト、ライト、ライトっ!!!」
おかしいな・・・・・・キョロキョロ見てたら鴨田が腕を掴んで俺を座らせるんだけど、なに興奮してるんだよ!!!
「あ、あ、あ、あれ! アレ見てみろよ! あんな綺麗な娘、この大学に居たかっ!!!」
「なに? ちょっと痛いから、腕!」
「そんなのどうでもいいんだよ! とにかく見ろよ、あの娘! 天使みたいに綺麗で可愛いんだって!!!」
「うるさいな〜・・・それより天川さんがいないんだ、知らないか?」
「あんな地味女子、しらねぇーよ!それより、見ろよ! 見ろってば、見ろ!」
「あんなって言うな! 天川さんは俺の彼女なんだ」
「・・・・・・・はあああ??? 天川がライトの彼女〜〜??? 嘘だろ?」
・・・・・・・そんな全力で驚くなよ。。。
「お前、俺がせっかく言ったのになんであんな地味女子なんかと付き合うんだよ!」
「や・・・や・・・夜神くん!」
鴨田の声を遮るように俺の横から女の子の声がして、見れば・・・・・・・天川さん?
・・・・・・・・俺の横に立ってる女の子は、天使みたいに綺麗な・・・・・天川さんだった。
「あのね、眼鏡をやめて・・・髪もね、三つ編み・・・ やめてみたの・・・・・似合うかな?」
ゆるく巻いてある髪は華やかに彼女を彩り、眼鏡をやめた彼女は薄く化粧までしていて、たったそれだけなのに・・・・
たったそれだけなのに、彼女は天使の様に気高く美しくなっていた。
「・・・・・・綺麗だね」
「・・・・・・ありがとう」
俺の言葉にポッと赤くなる様子が、ほんとうに可愛らしくて・・・彼女に手をとられて席についても鴨田は、驚いた顔のままずっと突っ立っていた。
「ど、どうしたの・・・・急にそんな・・・・眼鏡やめたりして・・・・」
「変だった?」
「変じゃないよ! すごく綺麗で、なんか俺・・・緊張してる」
ニッコリと微笑む彼女に慣れなくて、心臓がドキドキ凄いことになってるんだ。
「だって、昨日・・・・・夜神くん、眼鏡外した私のこと『綺麗だ』って言ってくれたから・・・・・」
「え? 俺?」
「うん! ・・・・・少しでも夜神くんに綺麗に見てもらいたいから、眼鏡やめてお化粧も少ししてみたの」
あ・・・・・俺のためなんだ・・・・・・俺に綺麗に見てもらいたいから、慣れないお化粧までしてくれたんだ。
ヤバい・・・・・・どうしよう・・・・・彼女のこと今すぐ抱きしめたいくらい、愛しい。。。
俯いちゃった彼女の膝に置かれた手を、思いきって握ってみた。
ハッとして顔を上げて俺を見た彼女に、小声で「綺麗だよ」って言えば・・・・・・ああ、なんて・・・・・
嬉しそうに微笑む彼女の笑顔は、まるで花が蕾から綻ぶみたいで・・・・・・俺はボーッとそれを見ていたんだ。
授業が終わってすぐ、天川さんの周りを男女が囲んで、俺は弾き出されちゃったんだ。
いつもは2人で話ができるのに、こんなに人に囲まれたら・・・・・・近づく事さえできないや。
しかも天川さんも人に囲まれてワタワタしてるし、怯えたみたいな目でキョロキョロしてる・・・・・・・
あ、もしかして・・・・俺を探してる?
俺を見てホッとした顔してるって事は、そうなんだ。
そういえば人見知りだもんな、天川さん・・・・・じゃあ、こんなに囲まれたら苦手だろう、助けなきゃ!
「ごめん! 通して! すいません」
「夜神くん・・・・・」
迷子の子供みたいに心細そうな顔してる天川さんに手を伸ばした俺は、「おいで!」って言ったんだ。
コクンって頷いた天川さんが、俺の手を握ったのに、引っ張って・・・・・・2人で人垣から抜け出して・・・・・
走って中庭まで来た俺たちは、少し息が荒くなって・・・・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・ははっ・・・・・ははは・・・・・」
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・・ふふっ・・・・・くすくす」
顔を見合わせたら、なんだか可笑しくて 笑い出したんだ。
芝生の上に座った俺たちは、まだ笑ってて・・・・・
「さっきの・・・何だか映画みたいでしたね!」
「そうだよね! でもあんなに人に囲まれたら、天川さん嫌かなって思って、逃げ出したんだ」
「有り難かったです! 色々いっぺんに聞かれて、どう答えればいいのか分からなくて困ってました」
「やっぱり・・・・・きっと急に天川さんが綺麗になったから、興味津々なんだよ」
「あの・・・・・私のこと呼び捨てにして欲しいなって、思うんですけど・・・・ダメですか?」
「いや・・・そう呼びたいと思ってたけど、いいの?」
「はい! 呼んでください」
「じゃ・・・・・星ちゃん」
俺が名前を呼んだ、ただそれだけなのに彼女は、すごく嬉しそうに・・・・・・まるで宝物でももらえたみたいに、微笑むんだ。
「・・・・・・・可愛い」
「え?」
「あ、ごめっ・・・ごめん! すごく可愛いなって思って、つい! つい言っちゃったんだ・・・・って、俺は何言ってんだ・・・・・」
「あ・・・謝らないで下さい・・・・・・嬉しいですから」
くわぁ〜〜〜・・・ 頬を赤く染めて恥じらいながら、俺のこと上目遣いに見るのって、破壊力がハンパないんですけど〜〜・・・
「・・・・・・その顔も、可愛い」
「あ・・・ありがとうございます」
「俺のことも名前で呼んでほしいな・・・・」
「ら・・・ら・・・月くん!」
俺たちは2人揃って、互いの事を名前で呼んで真っ赤になっていた。
こんな初々しい2人を、書いていきたいです(笑)
はっきり言ってデスノートロスというか、可愛らしいカップルの様子が需要があるかは分かりませんが・・・
よろしくお願いします (^ω^)v
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