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①《 シスコン・パニック 》by 黒崎勇治

ヒロインはキャップの妹設定です。

もう妹が可愛くて仕方のない兄と、妹の恋路についちょっかいかけちゃう兄のウザさを(笑)

そしてオチはもちろん、無口なあの方です!



その日、百合根友久は上機嫌だった。

あまりにも個性的な面々の揃うSTの統括官に就任したての自分。

1つ事件を解決はしたものの、いまだメンバーには慣れてはいない・・・・・そんなストレスフルな毎日のなか、たった1つ舞い込んできた喜ばしいニュースが、百合根の頬を緩めていたのだった。

スマホの中にある写真を引っ張りだし見つめていると・・・・・・


「なぁーにぃ〜・・・・携帯の写真見てニヤニヤしてるなんて、チョー気持ち悪いんだけど〜〜〜」

ラボに入って来た途端、青山がそう言い放つ。
その言葉が地味に胸に突き刺さるが、今日の百合根はヘコタレなかった!

スマホの画面の中では、愛しい愛しい “ 天使の笑顔 ” を浮かべる女性が写っていた。


「へぇ〜・・・可愛い子だね、キャップの彼女?」
「やだぁ〜・・・可愛い♡ キャップなんかには勿体ないわよ! 私が可愛がってあげたいわ♡」
「これは・・・慈しみの溢れた笑顔ですね、優しい方だと分かります」

青山・結城・山吹の3人が後ろから覗いているのに気がついた百合根は、慌てて画面を消したのだった。

「もっと写真ないの? ねぇねぇこの子の名前は? 何処にいるの? 会わせてよ〜」
「そうね、紹介してほしいわ・・・・・・私、可愛い子が大好きなの♡」

STの女性陣2人の食い付きは、凄かった。
どこの誰だと百合根に迫り、あーだこーだ色んな角度から百合根に聞き倒す青山は、すでに得意のプロファイリングをしているようだ。

結城はその地獄耳で百合根の “ 声 ” を聴き、分析する・・・・・嘘発見器との異名のままに、百合根が本当のことを言っているか調べているのだ。

この2人にかかれば、身ぐるみ剥がされて事実を晒すのに時間はかからなかった。


「へぇ〜・・・キャップの妹ねぇ〜! 兄に似ないで良かったね〜」
「そうね顔立ちは似てないわね・・・・・本当の妹なの?」

「妹です! 僕は母似で妹は父似なんです!」

「で? まだ取調べは終わってないよキャップ! どうしてその妹の写真を見てニヤついてたんだ?」
「うっ!!!」
「まあ・・・だいたい想像はつくけどね〜・・・ 今まで別な所に住んでた妹が実家に引っ越してくるとか・・・」
「ううっ!!!」

「引っ越してくるって事は、職場が警視庁か警察庁になった・・・・・違う?」
「その通りです。 今まで所轄にいた妹が、警視庁の内勤になったので、実家に戻って来たんです」
「どこの部署よ? ね、ここに来させなさいよ! 私、その子を直接見てみたいわ♡」
「僕も〜・・・会ってみたい!」

盛り上がる2人に、困惑する百合根・・・・・・いつもの図式なのだが、妹をここに招くのは何やら危険な香りがすると考えた兄・百合根は、とぼけて見せた。

「部外者を出入りさせるわけにはいけません! 僕はここには近づかないように言ってありますから!」
「キャップ、横暴〜〜〜」
「・・・・・・つまんなぁーい!」

「どんなに呆れられても、妹はここには呼びませんから!」
いつもになくビシッと言った百合根だが、自分を見る2人の視線に気圧されて、胸を張るその姿はすぐにオドオドと2人を伺うものに変わってしまう。

「じゃあ、自分で調べるわ♡」
パソコンを弄り始めた結城は、すぐに百合根の妹を探し出した。


「百合根・繭子(まゆこ)、23才、一昨日まで所轄にいたけど・・・・・・・あら、凄いわこの子」
「なになに翠さん? 教えてよ〜」

「剣道に合気道、空手・・・ 兄と違って武闘派なのね」
「え〜・・・こんっな可愛いのに、武闘派!?」

「部署は・・・・・捜査一課の事務職なんだ。 なんか勿体ない気がするわね」
「事務職・・・・・・ふぅ〜〜ん」
「もおおおおお〜〜〜、僕の妹を勝手に調べないで下さい!!!」

「キャップ、うるさいぞ!!!」
自分の部屋から出てきた赤城に、怒られても百合根は青山と結城を止めようと必死だった。

・・・・・・・成果は出ないが、彼なりに必死なのだった。。。



その頃。。。

「・・・・・・・・迷っちゃった」

警視庁に勤務しているとはいえ、昨日からのこと・・・ 迷うのも当然といえば当然なのだが。

「階数はあってると思うんだけど・・・・・」
私はエレベーターに戻って、メモを取り出し道順の確認をしていたんです。

なぜ私が兄の所属部署のSTへ行こうとしているか、それは少々ドジっ子な兄の “ 忘れ物 ” を届けようと思ったからなんです。

「えっと、エレベーターを降りて・・・右? 左? 分かり難いよ、この地図!」
エレベーターの扉に背を向けていた私は、いつの間にかエレベーターが着いて、扉が開いているのに気がつかなくて。

「あ、すみません!」
気がついて慌てて横に避けて、降りてくる人を通した。

もう、お兄ちゃんのことドジっ子なんて言えないよ。

エレベーターを塞いじゃうなんて、降りる人には迷惑どころか嫌がらせにも思える行為だわ!

「ほんと申し訳ありませんでした!」
私は深々と頭を下げて謝罪した・・・・・・だって、申し訳ないんだもん!

トントン!

そっと肩を叩かれ顔を上げれば、目の前の人は優しく頷いてくれて・・・・・許してもらえたって、ことかな???

良かった、いい人で!!!


そこで私は初めて目の前の人を見て、あまりのイケメンぶりに顔が真っ赤になってしまった。

上着も中のシャツも、Gパンも真っ黒なその人は、私の手の中のメモをチラッと見て事情を察してくれたのか、親指を立てた拳でクイクイッと自分の後ろを指していた。

「私、STのラボに行きたいのですが、もしかして案内して下さるんですか?」
「コクコク(頷く)」


「うわぁ〜・・・ありがとうございます! 迷ってしまって途方にくれてたんです! 助かります!」

目の前で花が飛んでいるように思えた。。。

パアア〜〜〜っと満面の笑顔になった彼女は、あまりにも眩しくて・・・・・彼女の周りを色とりどりの花が舞っているように思えたんだ。

「私、百合根 繭子と言います。 百合根友久の妹です! ・・・STの方ですよね?」
「コクン」
「いつも兄がお世話になってます! ウザすぎて迷惑かけてないですか?」
「フルフル(首を横に振る)」

「・・・・・・良かった」

まただ。
ホッとした顔して笑う彼女の周りに、また、花が舞っている。

俺はコッチだと手で示し歩き出せば、彼女も付いてきてくれる。



「久しぶりに兄にお弁当作ったのに、忘れていくんですよ? ちょっとドジ過ぎませんか?」
「コクン」
「でしょう? しかも朝食を食べてる目の前に置いてあったのに・・・・・」

こんなとき、気の利いた事でも言えればいいが・・・・・俺には無理だ。

だから彼女が楽しそうにお喋りしてくれるのが、ホッとするし、その可愛らしい他愛のない話が、楽しい・・・・

ラボに着くまでの僅かな道のりで、 彼女が所轄から昨日ここに来たことも、実家に戻りキャップと2人暮らしになったことも、御両親は転勤で地方に住んでいる事などが分かった。


「ここですね! 良かった〜・・・黒崎さんのおかげで着きました、ありがとうございます!」
「・・・・・???」

名乗っていない俺の名前を、何故だ?

訝しげに眉を寄せた俺の様子に気がついた彼女。

「ごめんなさい、兄の部屋にSTの皆さんの顔写真が貼ってあって、兄に名前を聞いていたんです」
ああ、そうか・・・・・メモ魔のキャップのことだ、俺たちのプロフィールを覚えようと貼っているんだろう。


「って言っても黒崎さんの名前しか聞いてないんですけどね! ・・・もろタイプだったから・・・」

ニコやかに話してくれていた彼女が、急に両手で口を覆ったかと思えば、茹でたタコの様に真っ赤になって、緊張した時に出るアドレナリンの匂いが大量にする。

「わたっ・・・私っ・・・何言って・・・・はっ、恥かしいっっ!!!」

パニックになってる彼女に落ち着いて欲しくて、彼女の頭をポンポンと撫でた。

そのとき、彼女の目が・・・・・・大きくてキラキラとしている瞳が、潤んでくるのに不覚にも胸がドキン!と高鳴った。


俺は彼女の頭から手を離せなくて、ポンポンからナデナデに変えて指通りのいい髪に触れていたんだ。


「妹ちゃん、見〜〜〜っけ!」
青山がラボから出てくるまで、俺はサラサラの髪の感触を指に感じていた。

背後でラボの扉が開くまでは・・・・・・もう少し、触れていたかった。


彼女は青山に引っ張られてラボの中へと入り、キャップにお弁当を渡して、そそくさと帰っていった。

「くすっ・・・妹ちゃん、黒崎くんがタイプなんですって♡」
「ヘェ〜・・・自分の兄とは似ても似つかないのがタイプだなんてねぇ〜〜・・・・・きっと小さな頃から苦労したんだろうねぇ〜〜ウザすぎる兄に!」

きっとラボの外での会話を結城の耳で、聞かれていたんだろう。

盛り上がる結城と青山に、妹の事だと血相を変えるキャップの3人でラボの中は大騒ぎになっている。

「繭子はまだ男と付き合うなんて早いです。今は仕事に集中すべき時期です! ですから黒崎さん!」
急に矛先が俺になったが、なんだろう???

「繭子の事は無視して下さい! どうせ繭子からのアピールなんて、小さなものですから無視で、お願いします!」
「キャップ、それはいくらなんでも横暴じゃないの?」
「シスコンも度が過ぎるとキモイ!!! キャップ・・・キモっっ!!!」

無視・・・・・あの娘の事は、無視・・・・・それはできないな。

「黒崎さん、あの・・・首を振ってらっしゃるのはどんな意味なのでしょう? まさか、あんな短時間で繭子のことを??? 嘘だ、嘘でしょう???」
「キャップ! ・・・・・恋をするのに時間なんて、関係ないわよ♡」
「そうですね、好ましいと思い合うのも縁のなせるわざ・・・黒崎さんと妹御は前世で何がしかの縁があったのかもしれませんね・・・・・南無釈迦牟尼仏」

「山吹さんまで、そんな前世からの運命の出会いみたいなコト言わないでくださいよぉぉ〜〜〜」

俺は山吹さんに伝えて欲しくて、耳打ちした。

「・・・・・・・」
「彼女の言葉からは、尖ったものは感じなかった・・・・・と、申されてます」

ん? キャップが急にドヤ顔してきたんだ。

「繭子の名前は父がつけたんですが、大事な人達を優しさで包み、守れるように・・・・・それで繭という字を付けたそうです」

そうなのか・・・・・少しの時間しか接してはいないが、彼女の言葉には誠実な人柄が滲み出ていた。
お父さんの名前に込めた想いを、真っ直ぐに受けとって育ったんだろうな・・・・

「素敵ね・・・ ますます話したくなったわ、繭子ちゃん♡」
「黒崎さんが棘を感じないなんて凄いことだよね! 僕も話してみたいよ! マユマユと!」

「「連れてきて〜〜〜」」
「だああああ〜〜〜! ですから妹は部外者ですから、ここには近づけませんから!!!」

キャップの叫びが、響き渡った・・・・・・それが彼女と初めて会った日のことだった。






それから数日。。。

「おい妹! 兄貴の所にお使い頼む! この書類を届けてくれ」
「菊川さん、その妹って呼び方止めてくださいよ、だんだん捜査一課に浸透してきて、私、皆さんに “ 妹 ” って呼ばれること増えてきたんですよ!」

「ははは、早く慣れていいじゃねぇーか! な、筒井!」
「そうだよ? それにアンタは “ 妹キャラ ” なんだから、いいじゃない! 皆の妹で!」

「俺たちは聞き込みだからな、ソレ! 頼むぞ!」
「よろしくね、妹ちゃん!」

「・・・・・・分かりました! いってらっしゃい、気をつけて〜〜」

菊川さんと筒井さんを送り出して、私は頼まれた書類をSTのラボに届ける事にしたんです。


・・・・・・あの日、黒崎さんに『もろタイプ』なんて言っちゃってから数日、ラボへは恥ずかしくて行ってないんです。

お兄ちゃんからも、ラボには絶対に来るな!と言われてて・・・・・・でも。


正直、黒崎さんに・・・・・・逢いたいんです。


最初に見たのは実家に戻るため荷物を少しづつ運び込んでいたとき。

兄にご飯どうする?って聞きに行った時に部屋にいなくて・・・・・・・ 大量に部屋中に貼られているメモを見ていたときだった。


制服姿の写真はきっと、警察の情報からだしたもので、襖に貼られている5人の顔写真を何気なく見ていた・・・・・


ふと見てそして、目が離せなくなったのは・・・・・・・ “ 彼 ” の写真だった。

整った顔立ちだけど、その真っ黒な・・・・・光さえ吸い込まれそうな暗い目に、惹き込まれてしまった私は、兄が部屋に戻るまでずっと、写真の彼を見続けていたの。

お兄ちゃんに名前だけは聞いたけど、その他のことは聞こえないまま “ 黒崎さん ” という彼の写真を見ていた。

「繭子、お兄ちゃんな繭子の作ったオムライスが食べたいんだ〜〜・・・作ってよ! ・・・・・・ねえ聞いてる? 」
「・・・・・・」
「繭子〜〜・・・オムライス! オムライスが食べたい! ねぇ〜〜」
「・・・・・・!!! オムライスね、分かったよ」

「変な繭子・・・・・・何をぼうっと見てたんだ???」

パタパタと台所に戻る妹を不思議そうに見た百合根だが、恋愛には疎すぎるくらい鈍感な彼のこと、妹の変化も「疲れたのかな?」なんて思うだけだった。


妹はすでに写真の黒崎に惹かれはじめていた。。。


・・・・・・この前、実際に会ったときは一瞬、分からなかったなぁ〜

写真より大人な彼に、見惚れてしまって・・・・・・頭の中で写真とイコールで繋がるのが遅れたのよね。

でもすぐに気がついたんだよ!

気がついて、意識しちゃって・・・・・・・いつもよりお喋りになっちゃって、挙げ句の果てに『もろタイプ』だなんてポロっと言っちゃって。。。

マジ最悪だから・・・・・・・


お喋りな女は嫌われる・・・・・・・私はそれを身を以て知ってるのに・・・・・・

きっと黒崎さんもよく喋る女だって呆れたよなぁ〜〜・・・・・ガックリと肩を落とした私は、菊川さんに頼まれた書類を持ってSTのラボへと向かったのだった。


・・・・・・それでも一目、黒崎さんに逢えたら、いいなぁ〜〜〜

そんな淡い期待を胸に、私は・・・・・・・今度は迷わずに行けました!!!



俺は、後悔していた。。。


キャップの妹・・・ 繭子さんを案内していた間に、どうして連絡先の交換をしなかったんだろうと・・・・・・

メアドさえ聞けていたら俺から彼女に、メッセージを送ることもできたのに・・・・・ああ、悔やんでも悔やみきれない。


あの花が舞うような笑顔を、見たいんだ。


先端恐怖症をこじらせ、話す相手の言葉からも棘を感じて話せなくなった俺は、人として欠陥品なんだろう。

人と話しができない・・・・・それは、孤独を意味する。

茂のように拳で分かりあえる友もいるが、それは稀で・・・・・山吹さんに俺は随分と救われたものだ。


女性ならなおさらで、何を言えばいいかも分からず黙ったままな俺は、すぐに呆れられ、去られてしまうんだ。

棘のある言葉を吐かれて・・・・・・・

だから、いつしか俺は “ 女性 ” というものを、諦めた。

好きになる人など、この先の人生でもいないと諦めたんだ。

・・・・・・・人並みの関係を結ぶことはないんだ、恋人とか、結婚とか、俺には縁のないものだと思っている。


そんな俺なのに、あんな短時間で繭子さんが気になってしまって・・・・・・

また、逢えたらいいのに・・・・・・・そう毎日、期待してしまう自分が、いた。

まだ数日しかたっていないのに、俺はどうやって彼女に接触しようかと考えていた。


そんなとき、チャンスが向こうから、やってきたんだ。



「こんにちはぁ〜」

くん! すんすん! ・・・・・・・彼女の匂いだ!!!

そっとラボのガラスの扉を開けた彼女は、静かに入ってきたんだ。

俺は彼女の匂いですぐに気がついたんだが、現在ラボの中は俺だけしかいない。

見れば彼女は腕に書類を入れたファイルを抱えていて、きっと捜査一課からの事件の情報を持ってきてくれたんだろう。

「あ、黒崎さん! あの・・・先日は失礼な事を言ってしまって、申し訳ありませんでした!」

・・・・・・・失礼な事を言ってしまった、とはどんな発言なんだろうか???

ん〜〜〜と思い出しながら考えていると、彼女が小さく囁いた。

「あのっ・・・・『もろタイプ』だなんて言ってしまいました。 本当、ごめんなさい」

謝らなくて、いい・・・・・・あの発言は嬉しかったのだから。。。


何か伝えなければ! そうだ、携帯!!!

俺は自分のスマホを出して彼女に連絡先の交換がしたいと、身ぶり手ぶりで伝えてみた。

「・・・・・連絡先の交換ですか? 私もしてほしいと思ってました!」
「コクコク」

彼女もポケットからスマホを出してくれて、見ている俺に彼女は微笑んで・・・・・

「じゃ・・ いきますね〜・・・・・携帯、こっつんこぉ〜〜〜」
コツッと俺のスマホに彼女が自分のスマホを “ こっつんこ ” させてくれて・・・・・その言葉も、言い方も、彼女の可愛らしい笑顔も、全部、全部が魅力的で・・・・・・


ああ、俺はどうしてしまったんだろうか???


鼓動がドクドクと跳ねていると思えば、彼女がスマホを “ こっつんこ ” するのに近づく距離に、ドキッとしたりと絶えず忙しないんだ。


ああ、もしかして・・・・・・・これが恋というものなのだろうか???


「黒崎さん? 無事に交換できたか見てみますね!」

そうしてすぐにピコン!と俺のスマホが鳴って、メッセージがきた・・・・・・・目の前の彼女から。

《無事に交換できました!》
《良かった・・・・それと》

「それと? それとって、なんですか?」
《あの言葉は、嬉しかった》

あの言葉・・・『もろタイプ』というのは、彼女のように可愛らしい女性から言われれば、男は単純に嬉しいものだ。

「えっと・・・そう言っていただけて、ホッとしました」
《こんな会話しか出来なくて、すまない・・・・》

俺は正直に謝った・・・・・・さっきから彼女は言葉で会話をし、俺はメッセージアプリで答えている。

はたから見れば・・・・・・普通じゃないんだ。

「こんな会話って言わないで下さい。 兄から聞いていますし、それでも私に話して下さるの、すごく嬉しいです」


嬉しいのは俺の方だ・・・・・それに、ああ・・・・・・彼女はあの花が舞うような暖かな微笑みを、俺に向けてくれたんだ。


俺の心臓はドクン!と大きく鼓動し、ついでドクドクと早鐘のように鳴り響く。

ああ・・・・・・・初めてこんな風になった俺だけど、このとき判ったんだ。


俺は、彼女に “ 恋 ” をしたんだと。。。


「兄は・・・いっけない職場では百合根警部ですよね! どこに行ったのでしょうか?」
《赤城さんと、聞き込み 》
「聞き込み・・・ 兄も刑事の仕事してるんですね」

《キャップは優秀な刑事だ》
俺のメッセージを見ている彼女が、ホッと安心した顔をする。

まただ・・・・・ 思えばこの前もキャップの様子を聞いて、安心したように微笑んでいた。

兄想いなんだな・・・・・・


あれから毎日、キャップは弁当持参でラボに出勤している。
たまに朝早くの呼び出しでは、朝飯を食べてこなかったといって代わりに弁当を食べている時がある。

どんな中身か気になる青山や結城が覗いては、美味しそうと騒いでいるが・・・・・・俺も見たが、確かに美味しそうだ。

黄色い卵焼き、牛蒡とインゲンの牛肉巻き、ホウレン草の胡麻和え、ウインナー、白いご飯には真ん中に赤い梅干し。

うん、うまそうだ・・・・・このとき初めて俺は、キャップが羨ましいと思ったんだ。

《お弁当 》
「お弁当? 兄に持たせてるお弁当ですか?」
《美味しそうで、キャップが羨ましい 》
「・・・良かったら、作ってきましょうか? えっとアレくらいでいいのなら、ですけど」

「作ってくれるの? 食べてみたい」
「え? あ・・・・・黒崎さんが、喋った」

驚く所は、そこ???

でも興奮してキラキラしてる彼女に見つめられるのは、とても気分がいい。。。

「明日、作ってきますね! ここに持ってきます。 あの、黒崎さんがいなかったらデスクに置いておきますね」
「コクン」

明日・・・彼女の弁当を食べることが出来るんだ・・・・・・俺はそれから上機嫌だった。


「黒崎さん・・・・機嫌いいですよね! なにか事件の手掛かりでも見つけたんでしょうか?」
「知るかっ! おい黒崎! 分析結果を早く出せ!」

「此方に出ております」
山吹さんが結果を渡せば、赤城さんがそれを見て・・・・・・・叫んだ。

「ぐぅぅ〜〜〜・・・・・ああ〜〜〜・・・・・・残念だぁぁぁ〜〜〜・・・・・謎が全て解けてしまった!!!」

赤城さんと百合根さんが犯人逮捕に向かってラボを出て行ってから、結城が意味ありげに微笑んでいる。

「黒崎さん、明日・・・・・楽しみね♡」
はぁ〜〜・・・・・また聞かれていたのか。

「うふっ、邪魔はしないわよん♡」

・・・・・・・・ お願いしたい。






朝一で出勤した俺は、いつものようにダンベルで腕を鍛えながら書類を見ていた。
事件が解決したラボは書類を作成しなければいけないが、全体的にのんびりした日になる。

そんな事を思っていると、クン! 外から彼女の香りがしてくる。

「おはようございます」

ドアを開けた彼女は、キョロキョロと中を見回し俺を見つけて駆けてくる。

ニコニコと近づく彼女が、可愛らしくてドキン!と鼓動が跳ねる。

手に持ったバックを俺に渡してくれる・・・・クン! いい匂いだ。

「お口に合うといいんですが・・・・あ、もし合わなかったら遠慮なく残してくださいね」
「・・・・・・大丈夫、きっと美味しい」
「食べてないのに分かるんですか?」
「匂いで、分かる」
「えへへ、なら良かった」

はにかむ彼女の微笑みに、クラリと眩暈がしそうになった。

「じゃ兄が来る前に行きますね!」
「・・・・・待って」

待って、待ってくれ・・・・・もう少し、2人でいたい。

君の声が聞きたい、楽しそうに話す君を見ていたい、それに、俺を見上げる君の・・・・・・側にいたい。

羨望とも欲望とも言えるものが胸の中に湧いてくる。


急に呼びとめた俺に、キョトンとする君。


なにか話さなければ、なにか・・・なにか・・・だけど焦るばかりで何も思いつかない。。。


「黒崎さんは古武道に精通されてるんですよね?」
「コクン」
「今度、手合わせお願いできますか?」

手合わせか・・・そういえば結城が彼女も武術を心得ていると、言っていたな。

「・・・・・分かった」
「楽しみです! 黒崎さんの都合のいい日を教えて下さいね」
「・・・・・今日」
「今日いいんですか? 私も大丈夫です」

ニコッと微笑む彼女に、俺も楽しみだと伝えた。



そして、時間は昼時になった。

「今日のおかずは何だろうなぁ〜・・・」
嬉しそうなキャップがいそいそと弁当を出して、捜査会議にも使うデカいテープルに座るのを近づいて見ている。

俺はまだ開けてはいないが、キャップと同じだろうから見たいんだ。

「ねぇ、キャップ! 見せて?」
「僕も気になるぅぅ〜〜〜! 今日はどんなんだろうね!」

ニカニカしたキャップが弁当をパカッと開けて・・・「うわぁぁ〜〜〜」と歓声をあげた。

「僕の大っ好きなオムライスだぁ〜〜〜」
「キャップ、うるっさい!!!」
「オムライスかぁ〜・・・僕もオムライス好きなんだぁ〜」

・・・・・・・オムライス、俺も好き。

「繭子のオムライスは牛肉を使うんです! お店だとチキンやウィンナーとかはありますが、牛肉はなくて・・・・繭子が実家に戻ってきてから僕は、何回もリクエストしちゃってます!」

「そんな美味しいならさ〜・・・・・一口ちょーだい!」
「ああ! ちょうだいって言う前にスプーンで取っちゃってるじゃないですか青山さん!」
「私にも、一口♡」
「あああ〜〜〜、翠さんまで!」

「「 ・・・・・・美味しい〜」」

声を揃えて美味しいという結城と青山・・・・・・期待して、俺は自分のデスクで弁当を開けた。

キャップのはデカいタッパーが1つなんだか、俺のは2つある・・・・・・もしかして中身が違うのかな?

もしそうなら余計な手間をかけさせてしまった、あとで御礼とお詫びをしよう。


1つ目を開けると、そこにはオムライスと・・・・・・これは?

うなぎのタレを入れる様な容器が付いていて付箋がくっ付いている・・・・・お好みでかけて下さい、と書いてある。

かけるのか・・・・・ケチャップの代わりかな?

一先ず置いておいて2つ目の弁当を開ければ、そこにはサラダと果物が入っている。


「あれあれ〜・・・黒崎さんもお弁当なんだ! うわっ、こっちも美味そう〜〜〜」
「こっちもオムライスだけど、あら! デミグラスソース付きなのね。 サラダも根菜サラダにトマト・・・・私も食べたいわ」
「黒崎さん、一口ちょーだい! デミグラかかってるところがいい!」

・・・・・・いいも悪いも答える前に、タレの容器からソースをオムライスにかけてスプーンで一口取っていった青山。

「くぅぅぅ〜〜〜・・・・・美味い!何コレ、ちょー美味い!」
「え〜! 私も私も! (スプーンで一口取ってパクッ)・・・・・・美味っしい!」

・・・・・・俺より先に食べられてしまった。

気を取り直して、パクッとソースのかかってないところを食べれば、これは・・・・・・美味い。

店で食べるチキンのオムライスより、全体に牛肉の旨みと玉葱の甘味が染みてて・・・・・・・うん、美味い。

デミグラスソースのかかっているところをパクッ!

うん、風味が増して別の旨さが出る・・・・・・・俺はデミグラをだばだばとかけて、食べはじめれば止まらなくなった。

オムライスを完食し、次はサラダを食べれば、レンコンや牛蒡に枝豆も入り、胡麻ダレで和えてあって、コレもまた美味い!

彼女の事で分かった事が、1つ増えた。


彼女は料理上手だ・・・・・・毎日、彼女の手料理が食べたい。

弁当箱の中で、中くらいの大きさのトマトが、コロンと残った。

・・・・・果物は青山と結城に取られて残ってないから、トマトを齧った。

「っっ!!!」

美味い・・・・・・こんな濃い味のトマトが、あるのか。

「黒崎さん、なんか固まってない?」
「どうしたのかしら? トマト齧って固まるなんて・・・もしかして美味しすぎてかしらね」

「あ〜〜〜!!! もしかして黒崎さんのお弁当って、繭子が作ったんじゃないですか!!!」

「どうしてそう思うのさ、キャップ」
「そのちょっと小ぶりの真っ赤なトマト、繭子が自分で育ててるトマトに似てます! しかも同じオムライスですし」
「ただメニューがかぶっただけじゃないの?」

「いいえ、そのお弁当箱・・・見覚えがあります! 昨日、繭子が買ってきたものにソックリです!!」
「キャップ、もしかして妹ちゃんが何を買ったかいちいちチェックしてるの?」
「信じられない! いくら兄とはいえ束縛が激しすぎ!!! ゾッとするわ!」

「・・・・・・そうだ、青山さんと翠さんは黒崎さんのオムライスを食べましたよね! 味は!? 僕のと同じでしたか!?」

「さあ?」
「僕も、忘れちゃった〜」
「そんっなはずないですよね! 同じでしたよね! 思い出して下さいよぉ〜」

「うるっさい!!!」
「しつこい!!!」

空っトボける2人に、ギャーギャーと騒ぐキャップ・・・・・・これに赤城さんがキレて、怒鳴りはじめラボの中はカオスになった。


くん! くんくん! ・・・・・彼女の香りがする、俺が扉を見れば彼女が入ってくるところだった。

「・・・・・・やっぱり、こんな事になると思った」
「繭子〜〜〜!!!」
「お兄ちゃん騒ぎすぎ! 廊下まで声が聞こえてたよ!」
「そんな事より繭子は黒崎さんにお弁当作ったのか? なんで? なんで作ったんだ? お前まさか黒崎さんの事を???」

「お兄ちゃん・・・・・・いい加減、妹の恋路を監視するの止めてくれないかな? お兄ちゃんがそんな風に騒ぐから私、男の人とお付き合いしたことないのよ」
「うわっ、何ソレ、妹ちゃん可哀想〜〜・・・・・・・シスコンもここまできたら独裁者だね」
「私なら気絶してるわ・・・・・」

心底ゾッとした顔する結城は閉所恐怖症をこじらせて、人にも縛られたくないんだ。

監視されるなんて結城には、地獄だろうな。


「お兄ちゃん、いい機会だから私のこと、普通の兄として見守っててよ。じゃなきゃ私・・・これから一生デートも出来ないじゃない!」
「デート!? デートって言ったか繭子! そんな予定があるのか? 誘われたのか? いつ、誰!? あ、黒崎さん!?」

俺はまだ誘ってない!

弁当の礼に誘おうかとは、考えていたが・・・・・・まだだ!!!

キャップが俺を見るから、首を横にふる。

「黒崎さんじゃないとしたら、誰となんだよ!」

俺も知りたい! 彼女はこれほど可愛らしいんだ、誘われるはずだろう。

警視庁にきて一週間がたっている、男共が我先にとデートに誘っていてもおかしくはない。


「そこまで答えなきゃいけないの? 私、そんなに信用ないの? デートをするもしないも、私が自分で判断するわ」
「繭子〜〜〜」

「ええーい! 情けない声を出すな馬鹿キャップ! 妹ももう大人だろう、しかも愚かな兄をいつも世話していたからな、馬鹿な兄より確りしている! 何も心配はない!」

珍しく赤城さんが応援している・・・・・・

「それに妹に構うより俺を構え!!!」

ああ・・・・・そういう事か、余りにキャップが妹・妹と騒ぐから、赤城さん嫉妬してるのか。


「私も賛成よ! 妹ちゃんももう大人、本人の判断に任せてもいい頃よ♡」

いつも皮肉屋で天邪鬼な結城が、彼女の肩を持っている・・・・・・

「僕も、さんせぇ〜〜い! シスコンもキャップの場合は異常だからね、そのエネルギーを赤城さんに向けてあげて〜!」

秩序恐怖症で人の意見に倣うのが何より嫌な青山も、彼女の味方だ。


不思議な兄妹だ・・・・・どこかに欠陥のある少し歪な俺たちを、こんなにも惹きつけているのだから。

他人とは関わらないようにしている俺たちを、自然に動かしているのだから・・・・・・不思議で、魅力的だ。


俺は彼女の前に立つ。

「・・・・・・・しよう」
「へ?」

彼女の耳に顔を近づけ、俺は伝えるんだ。

「デート、しよう」
「はい!」

パァァ〜〜っと笑う彼女の周りに、ほら・・・・・花が舞う。

「それと・・・・・・・(ひそひそひそひそ)」
「・・・・・・はい♡」

俺は頷く彼女に満足して、頭をナデナデと撫でた。


「な、なんですか? なにを言ったんですか? 黒崎さん、教えて下さいよぉ〜」

焦るキャップには申し訳ないが、俺はこの想いを諦めたくはないんだ。


『それと・・・・・・・俺以外の男とデート、しないで?』


頷く彼女が可愛らしくて、俺の手は彼女の頭を撫で続けた。。。






シスコン・パニック! いかがでしたでしょうか?

ヒロインは可愛らしい女性なのですが、姿に似合わず武道もできる設定です。

目指せ、ギャップ萌え!!!

お兄ちゃんのクドすぎる愛情に、キャップを不憫に思いながら、楽しんで書いてます。

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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