⑥《海は広いな、でっかいなぁ〜 》by 柳川隆一

海辺での4人の様子と、柳川くんの溺愛っぷりを(笑)

そしてSUMMER NUDEから、遊びにきた人が!




「咲ちゃん、これ6番の札持ってる所に持っていってくれる?」
「はぁ〜い! 6ばん、6ばん」

咲ちゃんに、可愛らしい女の子のグループにバーガーを届けてもらう。
目の前のテーブルに座ってる彼女達は、イケメンの咲ちゃんに歓声をあげている。

「次、あがった! 柳川、コレはお前が届けろよ」
「なぁーんでさ〜・・・俺はね、ここの看板息子なんだぜ? 桜が外に居んだから、桜に届けさせろよ〜」
「・・・・・・・ふぅ〜ん」

ん? 檜山の奴が皮肉っぽく俺を見てるけど、なになに???

「私、持ってくね! 7番さんにお届け、行ってきます!」
「ああ、すまないな」

大きなトレイに4人分のバーガーセットを持った桜が、楽しそうに運んでる。
あいつはジッとしてるより、お客相手にしてた方が楽しそうなんだわ!

「お前・・・・・気がついてないだろ?」
「はあ? 何がですか〜? 桜は今日も美しいねぇ〜〜、うんうん」
「7番て、男ばっかりの客だぞ」

「へ? あああ!!!」
「うるせーなぁ〜、大声出すなよ!」

そうだった、そうだった、そうだったぁぁぁぁぁ〜〜〜

確か大学生っぽいチャライ男ばっかりの客だった!!!

「桜っ! ちょ、待てってば!!! 俺が持ってくから!!! 待てよ!」
「聞こえてないだろ、桜さん・・・・・だからお前に持ってけって言ったのによ」

俺が声かけたときには桜の姿は遠くなってて、少し向こうの方のテーブルで待ってるチャライ男達の歓声が聞こえた。


「お姉さん、綺麗〜〜〜! ねえねえ、俺たちと遊ぼうぜ〜」
「俺たちキレイなお姉さん大好きなんだ!」
「あははっ! 店に戻らなきゃいけないから、じゃね!」

「そんなコト言わないでさぁ〜・・・ね、俺のジュース飲んでいいから!」


あっあっあっあっあっあ〜〜〜!!!!!

なにアイツ、なにアイツ! 俺の桜の腕掴んでさ、無理やりイスに座らせたろ???

「ちょ行ってくるし!」
店を飛び出した俺の後ろから檜山の。。。

「バーカ!」
なんて聞こえたけど、けっ! それどころじゃねぇーから!

桜、桜、桜!!! 俺の桜に触るんじゃねぇー!!!

あいつらのテーブルに大急ぎで近づいて、桜に迫る魔の手を追っ払おうと拳を固めるけど・・・・・・俺、ケンカ弱いんだよなぁ〜〜〜


まあ檜山が居るからな、いざとなれば桜の手掴んで店までダッシュだ!

そう覚悟しながら近づけば・・・・・・・ほえ? あの〜桜さん???

アナタ一体、何してますのん???


俺が想像してたのはね、嫌がる桜が無理無理イスに座らされてさ、男達の相手をさせられてるトコを思ってたわけなんよ!

時代劇とかにあるじゃ〜ん、悪代官に無体をされる村娘とかさぁ〜・・・・そんな感じなの想像してたんだよ!

でもね・・・・・・

「なんか彼女作ってもすぐにフラれちゃって・・・・・俺の性格に問題あるんでしょうか?」
「あ、俺もさ『何考えてるか分かんない』とか言われてて・・・・」
「俺も〜・・・ここに誘っても来てくんないし・・・」

「ねぇ、彼女にちゃんと『好き』って言ってあげてる?」
「「「え?」」」

「男の感性だと、手を繋いだり、肩を組んだり、キスしたりってスキンシップで愛を伝えてるって思い込んでるみたいなんだけどね、女性はちゃんと言葉を、耳で聞きたがるのよ」
「そうなんですか?」

「好きって言葉もないのにキスとか、それ以上とかされてるとさ、不安になっちゃうんだよ。・・・・・この人は私の体だけが目的なのかな?とか、都合いい女にされてる?とか・・・・・」

「「「えええ〜〜〜、いったいどうしたらいいんですかぁ〜〜〜」」」

「今すぐ電話してさ、『男同士も楽しいけど、やっぱお前がいないと・・・・・・寂しくて、ダメだわ』なんて言ってみなよ!」
「「「 はい!」」」

男達がスマホを取り出して電話かけ始めたんですけど、桜さん? あーた、一体いつから人生相談受けてんの?

4人が、4人とも少し離れてスマホかけてさ・・・・・・おおっ! 上手くいったのか!?

「お姉さん、神だ!!!」
「俺、これから帰るわ! 寂しいって言ったら彼女、夜に会おうって! 可愛い声出してるんだ〜」
「「「ありがとうございます!」」」

「バーガー包んどいたから、帰り道に食べなよ〜」

大喜びで帰って行った男達を見送りながら、桜が俺に気がついた。

「隆一くん! どしたの?」
「・・・・・んにゃ? なんでもないよぉ〜・・・、店に帰ろうぜ!」
「うん!」

そっか、言葉にしないと不安になるのか・・・・・・俺も気をつけよう!
この頃、エッチばっかり求めて『好き』って言ってないかもしんない・・・・・ヤバイ。

桜が俺と腕を組んでくるから、その耳にコッソリ囁いたんだ。


「桜、好きだ」
「・・・・・うふ、聞いてたの?」
「いや・・・まあ、ね・・・」

ニコッと笑った桜が俺の耳に顔を寄せて、「私も、好きよ」なんて言うから、くぅぅ〜〜〜、嬉しいわ僕ちゃん!

「このままベット行きてぇ〜」
「お仕事、お仕事! さ、がんばろう!」

「ですよねぇ〜〜・・・・・」

さらりと交わされてるよ、僕ちゃん!

うふっ!なんて笑った桜が、また俺の耳に顔を近づけて・・・・・今度は。

「・・・・・今夜は私の部屋に、来てね♡」
「行く! 絶対行く! よぉ〜し、お仕事がんばりましょう!!!」

その言葉でハリキル俺に檜山が呆れてる視線をむけるけど、そんなん知らねぇぇ〜〜〜

「さ、さ、ジャンジャンいこう!!!」
「くすくす・・・・」

「8番、あがったぞ」
「僕ちゃん持ってくね〜〜〜」

「お前、軽いわ」
「お前、重いよ」

青空の広がるデッカい海で、俺たちは笑いあってんだ!!!




「光、早く来いよ!」
「あの〜・・・なんで僕まで行かなきゃいけないんですか?」
短パンにアロハシャツに帽子をかぶった男と、シャツにGパンそれに黒縁メガネの青年の2人連れがこの海にやって来た。

「孝至さん、なにも隣町で評判になってるからって偵察しなくても、いいんじゃないですか?」
「光! お前は何も分かってないなぁ〜! 隣町だろうと評判を聞きつけてこっちに来たらさ、俺たちの心のオアシス『青山』にも影響が出るじゃないか!」

「・・・・・・考え過ぎじゃないですかぁ〜」
黒縁メガネの青年、桐畑 光は呆れたように嫌がる自分を連れてきた矢井野 孝至をチロリと見た。


☆注意☆ ちなみにこの2人はドラマ『SUMMER NUDE』からの出演です(笑)
桐畑 光=窪田正孝さん、矢井野 孝至=勝地涼さんです。


「それにさ、すんごく綺麗な人が働いてるって聞いてさぁ〜、もういても立っても居られなくてさ!」
「・・・・・・それ、本音ですね」

「うわっ! アレ? もしかしてアレじゃね? あのスラッと背の高い女の人! うひょ〜〜〜スタイル抜群!!!」
「・・・・・ヨダレ、垂れてますよ」
「え? ジュルッ・・・・あんな綺麗な人と恋がしたいわぁ〜」
「・・・ 僕にしがみつくの止めてもらっていいですか?」

「仕方ないですから食べて行きましょう」
「そうだねぇ〜」
2人が店に向かって歩いていると、ヒョコッと出てきたのは咲人だった。

「お客さんですか? ハンバーガー食べませんか?」
「・・・・・・ハンバーガー下さい」

光の声にニコッと笑った咲人が「こっちです!」と、案内して行く。

「あの人・・・なんか普通じゃないですね」
「ま、いいんじゃね? 腹減ったぁ〜」

店の前に出ている桜が咲人に気がついて、手を振れば咲人の後ろにいた孝至が満面の笑みで大きく手を振る。

「咲くん、お客様連れてきてくれたの、ありがとう」
「えへへ・・・ボク連れてきました」

嬉しそうに桜に話す咲人に、桜も笑顔で応えている・・・・・・桜の、その慈愛ある笑顔に咲人はもちろん嬉しそうにしているし、孝至は目をハートにして彼女を見ている。

店の中からは柳川も、うっとりと自分の恋人を眺めつつ・・・・・孝至の様子に気がついて、鋭く見ている。

「何になさいますか?」
桜が話しかけると孝至が《ふわわわぁぁ〜〜〜》と意味不明な事を言い出すので、光が慌ててバーガーセット2つと注文した。

「バーガーセット2つ!」
「はいよ!」
檜山に注文を言う桜は、咲人にお昼休憩に入ろうかと話した。

「お腹へりました、ペコペコです」
「うふふ、私もだよ! 咲くん何が食べたい?」
「バーガー食べたいです!」
「じゃ私もバーガーセットにしようっと!」

「はいよ!」
檜山が2人の分のハンバーグを追加し焼いていれば、先に孝至達の分が出来上がる。

「出来上がったぞ〜」
「ほいほい」

柳川がジュースやポテトを添えてトレイに乗せ、店の中から出てこようとするが桜がそのトレイを取って運びに行ってしまった。

「おい! 俺が運ぶから、桜!」
「目の前じゃない、外に出てる私が運ぶわ」
「だから、男の客は俺が!・・・・って、もう運んでるし」


「お待たせしました、あいきょでしょバーガーセットです!」
「うほほ! 美味そう〜〜」
「いただきます」

バーガーにかぶりつく光をよそに、孝至はバーガーより桜が目当て・・・・・・彼女に椅子をすすめ座るようお願いをする。

「実はぁ〜俺たち隣町の者でさ、ここに美人なバーガー屋さんがいるって噂を聞いて、来たんだぁ〜」
「隣町の・・・・・・あ、それなら海の家『青山』のセッちゃん、お元気ですか?」

「「ええ???」」

この言葉に孝至も光も、驚いた。
セッちゃんこと、下嶋 勢津子は自分達が大好きな海の家『青山』の店長で、勢津子の作る焼きそばは絶品なのだ。

夏に『青山』と勢津子と『焼きそば』が揃わないと、夏ではない!と言いきれるほどの存在なのだった。

「セッちゃん、知ってるんですか?」
「何年か前、遊びに行って気があってね〜・・・メールや電話でやりとりしてるのよ。 赤ちゃん、産まれたかな?」
「まだですけど、念のためにもう入院されてます」
「そっか・・・今度の休みに会いに行こうかな・・・」

「何か伝言あったら伝えますけど・・・」
光の言葉に桜が頷く。

「じゃあ、今度の水曜に遊びに行くねって事と、身体に気をつけてねって事と・・・・・」
「はい」
「私にも恋人ができたよ!って、伝えてほしいです」

「ええ! あなた恋人がいるんですかぁぁ〜〜〜」

孝至の悲痛な叫びが辺りに響き渡り、心配した柳川が大慌てで飛んできた。

「桜っ! どうした、大丈夫かっ!」
「何でもないよ、隆一くん!」

生気の抜けた青い顔をした、まるでゾンビのような孝至を連れて光が帰っていった。

「なんだ、ありゃ?」
「さあ? 咲くん、ご飯食べようね〜」
「お腹ペコペコ! ペコペコですっ!」

1人合点のいかない柳川だが、桜を狙う不届き者はもう行ってしまったし、目の前の咲人も桜も笑顔だし、気にせずに彼女の隣に座った。

「咲ちゃん、うまいかい?」
「はい、美味しいです!」
「桜ちゃんは?」
「美味しい♡」

「まぁ〜美味しそうな顔しちゃって! 俺も昼にしようかな! 檜山〜俺にもバーガー!」
「お前は先に食っただろ! 仕事しろよ!」
「そうだったねぇ〜・・・へいへい、仕事しますっ!」

ワイワイと騒ぎながらも楽しい毎日が、過ぎるんだけどさ・・・・・なぁなぁ、桜ちゃん!
今度の休みは何しようか?

俺がそう聞けば桜は、「ごめん」って頭を下げた。

「今度の休み、隣町の病院までお見舞いに行きたいの」
「知り合いがいるって、いってたよな?」
「そう! もうじき赤ちゃんが生まれるの。 だから元気づけにね!」
「俺も一緒に行って、いいかな?」
「いいよ、すごい気さくな人だから大丈夫だよ」

そしてきました水曜日!!!

なんと俺らが来る前の日に赤ちゃんが無事に産まれたんだと!

「セッちゃん! お見舞いにきました〜」
「うわぁ〜桜、久しぶりぃ〜!」
セッちゃん、元気だね〜・・・とても昨日、赤ん坊産んだとは思えないよ!

「そちらの方が、桜の恋人さんね!」
「はい、柳川隆一といいます。 あの、出産おめでとうございます」
「ありがとう!」


横に小さなベットがあって、そこに目をやれば・・・・・・赤ん坊だ〜・・・

まだ目も開かない真っ赤な赤ん坊なんて、俺・・・初めて見たんだ。

白い産着に包まれた小さな、小さな赤ん坊。

手なんかマジで小ちゃくって、なんか俺・・・・・感動〜〜〜


・・・・・・・こんな無垢な存在が、あるんだな。。。


「ふわぁ〜・・・小さい〜・・・可愛い」
「ちっさいなぁ〜・・・・・」
「ほら隆一くん、お手て、こんな小さい〜〜・・・」

桜の指先を握る赤ん坊の手に、俺は初めて見る赤ん坊の小ささに、胸が熱くなって、一杯になってさ・・・・なんか、なにも言えねぇーわ。


疲れるだろうから早々に病室を後にした俺たちは、それからこの町をブラブラしたんだ。

勢津子さんの旦那さんがやってる『港区』って、昼間はカフェ、夜にはバーになる店に寄ったんだ。

「こんにちわ〜」
「お〜〜! 桜ちゃん、久しぶりだなぁ〜」
「ご無沙汰してます、賢二さん」
「桜ちゃん、隣の男性は恋人かな?」

「えへ、そうなんです」
桜ちゃんたら、頬染めて俺のこと見ながら報告ですかぁ〜? んもう、可愛いんだから♡

ここはキリッと桜の恋人として挨拶、決めちゃおうかなぁぁ〜〜・・・
「初めまして、柳川といいます」

どう? どう? どうよ! 決まったっしょ!

「ゆっくりできるんだろ? 2人の馴れ初め話、聞かせてよ〜・・・・そうだ、コーヒー? それともビール?」
「アイスコーヒーで」
「俺はビールで、お願いしまぁ〜す」

カウンターに座って改めて店内を見れば、斜め後ろにソファーがあってさ、この前来てたメガネの方が文庫本を読んでいた。

コトッと音がして見ればビールが、う、美味そう〜〜!
俺は冷えたグラスのビールをゴクッと一口飲んで・・・・・・くぅぅ〜〜、んまい!!!

「かぁぁ〜〜〜、昼間のビールって何でこんな美味いんすかね!」
「隆一くん、美味しそうに飲むね〜・・・で、2人はどうやって知り合ったの〜」

えーっと話す・・・・・・ありのまんま話しても、引かれないかな?

俺はどう言えばいいのかとマスターを見てたんだけど。。。

「ああ、言い難いところがあったら無理に言わなくていいから!」
なんて大人な男の優しさ? 懐のデカさ? なんかそんなもん感じてさ、話し出したんだ・・・・・

「桜が有給消化のバカンスに来た日に俺らのバーガー屋に来たんですよね、まあそれで俺が気になって・・・ 仲間がね、絡まれてるトコ桜に助けられて、お礼にって居酒屋で仲間と飲んで、その間じゅう俺は桜とどうやって近づこうか、そればっか考えてましたね!」

「へぇ〜・・・んじゃあ、隆一くんが桜ちゃんに一目惚れしちゃったんだ!」
「ええ、そうです! それで居酒屋のあと送ってく時に色々話しして・・・な!」
照れくさくなって桜にふると、桜も照れくさそうに笑ってるんだ。

「賢二さんも知ってるでしょ? 私は不器用だって・・・それに変に男性に構えてるって・・・」
「ああ、前に言ったね! 桜ちゃんは周りに塀を作ってるって・・・・・」
「彼はそれを軽々と乗り越えてくれたんです」

桜・・・・・・お前そんな風に感じてたんだな。

「それで最初は期限付きで付き合ったんですけど・・・・・」
「へぇ〜・・・期限付き、そりゃまたどうして?」
マスターが俺をジッと見るんだけど、その目が鋭くなってる???

「・・・・・ 桜がときどき見せる哀しい顔が気になって、話し聞いたらますます気になって・・・最初に出会ったその日に俺はコイツに惚れたんです」
「隆一くん・・・」

「正攻法で付き合おうなんて言ってもOKされないじゃないですか? だからバカンスの間だけなんて期限つけてノリでOKさせたんです。 ははは、俺って口だけは達者なんで!」
「まるで詐欺師みたいですね」

おおっと、ここでソファーに座ってるメガネの文庫本青年が、乱入!!!

「光、言いすぎだぞ!」
「いいっすよ、マスター・・・」
「だって本当の事じゃないですか? 口車に乗せられたんでしょ? その人・・・」

文庫本からチラッて視線を外して見てくる青年に、俺は手を上げて笑顔を向けた。

「その通り! 軽いノリで誘って考える暇も与えずOKさせる! 詐欺師のよく使う手だよねぇ〜」
「自分でも認めるんですね」

チロッと見てくる文庫本青年は、冷たく言うけど、いや実際そうだからね! 弱ってる桜につけ込んだの、俺だもんね!

「光、失礼だぞ! ごめんな〜隆一くん、いつもはこんな言い方するヤツじゃないんだが・・・」
「いいっすよ! ・・・・あ〜〜でもさ、これだけは聞いてほしいんだけど・・・・・」

俺はカウンターから文庫本青年を見て、言うんだ。

「何ですか?」
「俺さ、チャラいけど・・・・・・桜の事は最初からマジなんだわ。 方法がアレなんだけどね〜〜」
「・・・・・・どうだか」

「おい、光!!!」
「いいっすよ」

賢二さんが大きな声を出すのを、身ぶりで止めた俺は・・・・まあ、言い返すのも空気悪くなるしさ、ビールを一口飲んで知らん顔したんだわ。

「・・・・・・あのとき私ね、空っぽだったの・・・・・文学青年くん」

桜? 静かに話し出した桜の顔を、俺は見つめた・・・・・

「空っぽ? 」
「そ、ガリ勉していい大学に入って、そこでもガリ勉して良い成績と株をしてお金を稼ぎ出して、一流企業に就職して、寝る間も食事の時間も削って仕事して、アパートの部屋には寝に帰るだけ・・・・・」

「そんな毎日で心許せる友人なんていなくて、もちろん恋人と呼べる人もいなくて・・・・・でもその甲斐あって仕事は順調! 同期でも1番の出世と年収をもらってた・・・・・・」
「へぇ〜・・・・・すごいじゃないですか」

「凄い? 凄いよね? 30手前で年収1000万以上、課長クラスの肩書き、年上の部下を使ってバリバリ仕事して、お客様にも信用していただいて必要とされてて・・・・・・・・・」
「桜、大丈夫か?」

桜の声が震えてるんだ・・・・・俺は桜を見つめたんだ、辛くないか? なあ・・・もう止めていいぞ。

「・・・・・・でもね、私の周りには誰もいなかった。 仕事で成功しても《枕営業》と言われ、同期からは《鉄仮面》と嘲られ、親も兄弟も友達も恋人もいない私は・・・・・・孤独だったの」

「息ができない・・・・・孤独に気がついた私は、息苦しくて何も手につかなくなった。 あんなにやり甲斐のある仕事も、虚しくなって・・・・・・辞表を出して、ここに来たの。 空っぽな自分の中にあった、少ないけどあった思い出を辿って・・・・・」
「・・・・・・桜ちゃん、小さい頃お父さんとこの海に来たって、言ってたな」

賢二さんの言葉にコクンと頷いた桜は、俺の腕を手でそっと捕まってきたんだ・・・・・・まるで縋るように。。。



「空っぽな私が小さな思い出に縋るように海にきて、でもくつろぎ方も分からない私は滑稽でね。 明るい笑顔の咲くんに会いたくて、またハンバーガー屋さんへ行ったの。 絡まれてる咲くんを助けたお礼にって誘われて飲んだけど、あんなに食事が楽しいなんて、初めてだったの」

「私を送ってくれた隆一くんにね、色々話しして・・・・・彼は全部を聞いても私を嫌がらずに、抱きしめてくれたの。 彼の腕の中で私は父に捨てられた時の女の子に戻ってた・・・・・」

「誰も見てくれなかった、あの頃の私を・・・・・あったかい彼が包んでくれたの・・・・・私ね小さな頃に戻ってた」

桜・・・・・・感じてくれてたんだな、俺が子供の桜を抱きしめてたのを、お前はちゃんと感じてくれてたんだ。

「・・・・・・私ね号泣しちゃってね、母が死んでも泣けなかったのに、不思議だよね・・・・・彼はね、見た目チャラいけどそれだけじゃないの。 どうしようもなくなってた私を、救ってくれたの」
「桜・・・・・」
「期限付きで付き合うって言われたとき、私ねすぐにOKしたわ! 彼に愛されてみたいって思ったから! 彼になら騙されてもいいって思ったから!」

俺はたまんなくなって桜の手を握ったんだ。

いい女だよな、桜・・・・・・お前、最高にイイ女だよ!!!

「・・・・・・俺は本気だから! 本気で桜が好きだから!」
「うん、知ってる!」

俺は握った桜の手をカウンターの上に出して、両手で・・・・・・大事な人の手を握ってんだ。


「光・・・・・・何か言うことないのか?」
「・・・・・・すみませんでした」

きちんと立って頭を下げた文庫本青年に、桜が「いいですよ〜」なんて答えてるけど、俺は泣きそうな顔を桜の手を握ったまま顔を覆って隠してんだ。

「隆一くん、私もね・・・本気であなたが好きだよ・・・」
小さく耳元で囁かれた桜の言葉に、ダメッ! 俺、我慢できないからっ!!!

「桜っ!」
俺は店の中なのも、賢二さんや文庫本青年がいるのも構わずに、桜を抱きしめたんだ。


「光、少し外の空気吸ってくるか・・・」
「そうですね、それがいいですね・・・」

気をきかせた2人がそっと、外に出てくれたのなんて気がつかなかった俺は、桜を抱きしめ続けてたんだ。。。






しばらくして落ち着いた俺は、照れ隠しに慌てて顔を拭ったんだ。

「ヤダねぇ〜・・・大の大人が泣いちゃうなんてねぇ〜・・・」
桜の手も離したんだが、桜がフワッと俺の首に抱きついてきて・・・・・・・そっと、一瞬だけ唇を重ねたんだ。

「隆一くん、大好き♡」
「桜ちゃん、お家に戻ってから言ってくれるかな? ここじゃ手ぇ〜出せないでしょ!」

あーんな事も、こーんな事も、出来ないじゃん!
ここって外だし、お店だし、カフェだし、だしだし!!!

「くすくす・・・じゃ、お家でまた言うね♡」
「おう! じゃ、帰ろうか? 早く帰って、あーんな事もこーんな事も、色々いっぱいしちゃおうねぇ〜〜〜」
「・・・・・・エッチ」
「バカやろ、惚れた女に可愛いこと言われて、その気になんない男はいねぇーし!」
「・・・・・やだ」

真っ赤になる桜が可愛くて、本気で帰ろうと腰を上げたタイミングで、賢二さんと文庫本青年が戻ってきた。
賢二さんと話し込む桜をよそに、俺はいつ帰ると言いだそうかとタイミング見てたんだけどさ、なんか後ろにボォ〜と突っ立ってる奴が居て。

なんか用かい? 文庫本青年くん!!!

「・・・・・・彼女さん、真っ赤ですね」
「ああ、可愛いだろ? コイツは俺のだかんね! やんないぜ〜?」
「いえ、僕は別に・・・」
「ま、惚れた女がいるなら、他の女に余所見はしねぇー方がいいよな!」

「!!!」
「分かんないほどバカじゃないよぉ〜〜ん!」

ヘラヘラと笑う俺を軽く睨み、プイッとそっぽ向く文庫本青年に『当たり!』だと確信した。

上手くいってないイライラの八つ当たりって、とこだろうな。


俺には関係ないし、桜を急かせて俺たちは賢二さんの店を後にしたんだ。


ブラブラと歩いて駅まで向かう俺たちは、病院で見た赤ん坊が可愛いと盛り上がってた。


・・・・・・いずれ、桜に俺の子供を・・・・・・そう考えて一人でにニヤついてしまう。


目敏く俺のニヤつきを見つけた桜が、騒ぎ出す。

「あ〜〜・・・隆一くん、イヤらしい顔してるぅぅ〜〜・・・・なになに? 何考えてるの?」
「違うわよっ!!! イヤらしい事なんて考えてないわよっ!!!」
「え〜〜怪しい!?」

きゃいきゃいと無邪気に俺に突っ込む桜に、俺は立ち止まって・・・・・・たまにはさマジに言いたくなるんだわ。


「桜・・・・いずれさ、桜が柳川 桜になってさ・・・・・あんな可愛い赤ん坊、産んでくれたらいいなぁ〜って俺、思ってんだ」
「隆一くん・・・・・・」
「あっ、あのさ、プロッ・・・プロポーズはまたキチンとするけどさ、心づもり? しといてくれよなっ!」

「隆一くんっ!」
「おわっ!」

抱きついてきた桜を受け止めて、俺はしっかりと抱きしめたんだ。

この気持ちに欠片も偽りはないと・・・・・・強く抱きしめた。


「さ、早く帰ってイチャイチャしようなぁ〜〜〜」
「うふふ・・・・・」
「僕ちゃん、張り切るからね〜〜! 桜、痩せちゃうかもな!」
「隆一くん、道の真ん中でそんな事・・・・・・恥かしい」

「いいじゃん! 俺たちは、恋人なんだし!」
「うん!」

そうやって戯れながら、俺たちは仲良く家路についたんだ。




細々続くこのシリーズ、何でしょう・・・・・書いてて楽しいんです(笑)

では、また読んで下さいませ。。。
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プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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