「そうだ、相談したいことがあるの! 檜山くんも聞いて?」
「なんだ?」
「なになに? 未来の家族計画かなんかかい? そうだなぁ〜・・・俺は男の子と女の子の両方がほしいなぁ〜! さっそく今夜から子作り頑張っちゃう?ねえ?ねえ?」
「お前、そればっかだな!」
「正常な男の子なんですぅ〜・・・檜山くんの方がストイックすぎて変なんですぅ〜」
「そうじゃなくて、私ね1度東京に戻りたいの」
「え? 戻るって・・・・・・」
俺たちさ、両思いになったよね? ラブラブだよね?
桜はさ、もう俺のもんでしょ? なんで東京に? 戻るの?
「会社には辞表を出したけどね、引き継ぎの挨拶回りをして欲しいって電話があったの。 後任の人を紹介してやって欲しいって・・・」
「まあ、それなら分かるけど・・・・・いつまで? いつ行って、いつ帰ってくんの!」
「・・・・・・・1週間」
「は???」
「それがねアポとか取ってたら1週間かかっちゃうの・・・・・・その間、バイトは休んじゃうけど」
申し訳なさそうな桜は、拝むように手を合わせて俺たちを見るんだ。
「いいよ! 1週間くらい。 こっちは心配すんなよ」
「ありがとう檜山くん! ・・・・・・隆一くんは?」
・・・・・・・檜山がいいって言ってんなら、俺がどうこう言えないっしょ?
「いいよ!」
「ありがとう、隆一くん! じゃ、咲ちゃんに話してくるね!」
咲ちゃぁーん!なんて駆けてく桜の後ろ姿を見送りつつ、毎日一緒にいた桜が1週間も居なくなることに俺は、不安を感じていた。
前にここに来た女が言ってたお偉い会社には、きっと俺よりイイ男がたくさんいるだろう?
桜のこと疑うなんて気持ちはないけどさ、不安なんだ・・・・・・
突然さ、夢から覚めたみたいに・・・・・・俺が嫌になったら、なんて。。。
前科持ちのバーガー屋なんて、お前の王子様にゃなれないだろ?
俺がいいって言ってくれてるお前の言葉に、俺は甘えてんのかもしんねぇー。
・・・・・・・・なあ、桜・・・・・戻って来るんだよな? 俺のところにさ・・・・・・
それから桜はすぐに東京に行った。
「・・・・・・会いたいなぁ〜・・・・」
『隆一くん・・・ 早く終わらせてすぐに帰るからね!』
「ん・・・・・なあ、桜・・・・・」
『なに? どうしたの、そんな寂しい声だして!」
「・・・・・・いいチャンスだし、テレフォンセックスでもする?」
『バカ!!!』
「冗談だって! ・・・・半分本気だけどね〜」
『すぐ帰るからね・・・・・・隆一くん、大好き!』
「俺も大好き〜! じゃ・・・あ、な!」
はぁ〜・・・ 今日で3日か・・・・ 電話だけは毎晩してっけど、寂しくてダメだわ。
俺ってさ、こんなに女に依存するヤツだっけ?
あんま付き合うとかはしたことねぇーけど、別れる時とか別に何も思わないんだけどなぁ〜
あーあ、もう寝るか・・・・・・
私はホテルを引き払い、東京に戻ってきた。
一旦家へと戻りスーツに着替え、会社へと向かい、部長室へ案内されていた。
・・・・・待たされてる間に、電話でアポを取っていたお客様を周るルートを考えていたんだけど、遅くないですか???
カチャッとドアの開く音がしてそこを見れば、入って来たのは部長と副社長・・・・・
しばらく辞めないでくれと話をされたけれど、私の決心は変わらず後任の挨拶回りをしないなら帰るといえば、後任がやっと連れてこられた。
「アポの時間がありますので、失礼いたします」
そう言って部長室を退室し、後をついてくる後任の顔を廊下で見れば・・・・・・あらま、貴方でしたか。
「宮部さんが後任なら、私も安心して任せられます」
「君にそう言ってもらえると嬉しいよ・・・・」
私より2歳上の我が社のホープ! その丁寧な仕事ぶりには好感が持てて、後任を安心して任せられます。
「ではさっそくですけど、今から周っていいですか?」
「お願いするよ」
そうして後任の宮部さんと私は、挨拶回りを始めたんです。
「高城さんのお客様は皆さん、君が辞めることを残念がっていたね」
「急ですしね」
「これからのコンサルタントは君のプランに沿って調整しながらで、いいかな?」
「はい、お願いします」
ランチを食べながら打ち合わせし、午後も遅くまで宮部さんと挨拶回り・・・・・でもこのペースなら1週間かからずに終われそう。
夜遅く宮部さんと別れた私は、自分の家に帰ってきた。
家とはいってもアパートなんだけどね!
こじんまりとして可愛らしい外観のアパートは、私のお気に入りで大学時代から住み続けてるの。
コンビニの袋を下げて戻ってきた私は、お弁当で夕食を済ませ隆一くんに電話をかける。
そんな日々を繰り返していて私は、隆一くんと離れて数日で寂しくなったの。
『どしたの、桜?』
「うん・・・・・ちょっとね」
『なになにぃ〜??? 僕ちんが側にいなくて寂しくなったぁ〜〜〜?』
う! ズバリ言い当てられて、何も言えなくなってしまった私に電話の向こうの隆一くんが、何だか慌ててる???
『おい桜、黙んなよ・・・・・なあ、もしかして本当に寂しいのか?』
「うん・・・・・・おかしいね、隆一くんと出会うまでずっと1人だったのに、それが普通だったのに・・・・」
『・・・・・・・』
「ご、ごめんね! いい歳してこんな恥ずかしいこと言ってさ、明日から頑張って早く終わらせて・・・・・隆一くんの・・・・・側に・・・・・戻るから」
年上のくせに情けない声出して、私! しっかりしなきゃ!!!
「もう、寝るから! おやすみ!」
焦って終わらせた電話は、変だと思われるかもしれないけど情けない涙声なんて聞かせたくないから・・・・・
自分でも分かってる、意地っ張りだってさ・・・・・
自分から切ったのに、声だけでも聞いていたかった・・・・・・なんて、ほんと女々しいわ。
「・・・・・・・さっさとお風呂入って寝よう! よし!」
私はそれからすぐにシャワーを浴びて、ベットに入ったの・・・・・明日も頑張って周ろう!
「強がってるくせに、素直じゃねぇ〜んだから・・・・・」
涙声じゃねぇーけど、分かるんだよ・・・・・バカ桜!
寂しいくせに意地っ張りで素直に「寂しい」なんて言えやしない、そんな桜が見えて俺はモヤモヤしてた気持ちが晴れていくんだ。
俺に会えなくて寂しがってるなら、他の男に見向きもしねぇーだろ? そうだろ?
「俺が恋しい桜ちゃんに、サプライズでもしようかなぁ〜・・・・・」
檜山! 今日さ、店終わったら俺、桜んとこ行ってくるし、今晩帰らねぇ〜から!
「明日は休みだから、いいんじゃないか?」
「サクラちゃん、いつ帰ってくる? いつ? 明日?」
「明日じゃねぇーけど、もうすぐだからな」
「もうすぐ、もうすぐ!」
そうだ、先週の金曜日に行ったんだから今週中には帰ってくるはずだしな!
俺は店が終わってすぐの電車に飛び乗ったんだ。
念の為にと桜が教えてくれた住所に向かえば、見えてきたのは可愛らしい外観のアパートだった。
え? ここ? 年収1000万の桜の住んでるのが、ここ???
「合ってるよな・・・・住所間違ってましたぁ〜なんて、シャレにもなんね〜し!」
確か2階の部屋だし・・・・・まだ明かりがついてないぞ!
今何時だよ! あと少しで11時だよ? もう帰ってないとおかしいだろ???
時計とアパートを交互に見てたら、コツコツとヒールの音がしてくる・・・・・・ん? ヒールの音なら女か!?
申し訳程度にしかない街灯の光にぼんやり浮かぶのは、おっ! 桜じゃ〜〜ん!
俺は驚かしてやろうと角の塀に隠れて待ってんだ・・・・・・へへへ!
コツコツ・・コツコツ・・・よし、来た!
「桜〜・・・隆一くんだよぉぉ〜〜〜」
「ひゃっ!」
ひゃっ!て、なにその驚きかた! 受けるんだけど〜〜〜
最初ビックリしてた桜だけど、すぐに俺だとわかって・・・・・ばぁーか! 泣くなよ。
「隆一くん・・・・本物?」
「本物、本物! いくらビックリしたからって、泣くなよ」
「・・・・・・・ビックリじゃない、嬉しいから」
そんな可愛いこと言う桜を俺は、引き寄せて抱きしめたんだ。
「ばぁーか! 俺に会えたからって泣くのかよ・・・・・・可愛いやつだな、おい」
「だって・・・・・会いたかったから・・・・・」
「桜ちゃん、それ以上俺を煽んないでねぇ〜・・・じゃないと、今夜大変だよぉ〜」
一晩中お前が欲しくて狂っちまうだろ?
それでなくともお前の良い匂いに、柔らかな感触に、身体がズクン!て反応してんだからよ!
「・・・・・・隆一くん、来て」
「うん、行っちゃう!」
お手て繋いで桜の部屋に来た俺は、必要な物しかない桜の部屋を見渡した。
「あんまり物がなくて驚いた? 大学時代はバイトで忙しくて、会社に入れば仕事が忙しくて寝に帰るだけだから」
「ちょっと驚いたけどさ、桜らしいっちゃ、らしいじゃん!」
俺たちはコンビニの弁当を食べ、交代でシャワーを浴びて・・・・・そして愛しあったんだ。
終わった後の気怠そうな桜を抱きしめ、俺は毎晩こんなに遅いのかと聞いたんだ。
「うん、ついつい話し込んじゃって・・・ 今日は特に長い間担当した会社だから、話し込んじゃったの」
「な、挨拶まわりって男と一緒なのか?」
「うん、後任がね2つ上の宮部さんて男性だから・・・・・でもね、可愛らしい婚約者さんがいるから、心配いらないよ」
「まあ婚約者がいるなら、大丈夫か・・・」
「そうそう!」
「明日は休めないよな? 俺、明日は帰んなきゃいけねぇーし」
「うん、明日もアポがいっぱいで・・・・でも、木曜には帰れるから!」
「そっか・・・・・明後日は帰ってくるのか・・・」
「向こうでもアパート借りようかな・・・・・ホテル高いし」
「俺らの住んでるアパート、部屋まだ空いてるだろ? そこに入れば? 話ししとくか?」
「そうしてもらおうかな」
「あっ! でも隣の部屋とかはダメだよなぁ〜」
「なんで?」
キョトンとする桜に・・・・・だってさ、ダメだろう?
毎晩こんなことして、お前のイイ声がさ、あんな安アパートじゃダダ漏れだよ?
他の男に聞かせたくねぇーし! 明日、他の探しとくからさ・・・戻ったら一緒に考えような!
「うん・・・」
「ということで・・・・・・ねえ桜ちゃん、久々だし・・・・も一回いいかい?」
「・・・・・・聞かなくていいから」
もう〜〜〜真っ赤になって、可愛いんだからぁぁ〜〜〜
一晩だけの逢瀬だけど、俺たちは熱く確かめあったんだ。
そして次の日の朝、桜にくっついて駅まで行けば、待ち合わせしてた宮部?って男が爽やかに手をふってきた。
「高城さん、そちらの方は?」
「私の恋人です」
「え?」
照れんじゃねぇ〜か、桜ちゃん!
こっ、ここは、恋人らしく挨拶したほうがいいんでないかい?
「はじめまして、柳川と言います。 桜がお世話になってます」
よし! これでいいだろ!
「アポまで時間あるから、少し話さないか? そちらの柳川さんもいっしょに・・・」
「イイっすけど」
そうして俺たちは駅の近くの喫茶店に入ったんだ。
「失礼を承知の上でお聞きします。 柳川さん、あなたは彼女の才能をご存知ですか?」
「才能・・・ですか?」
「僕は今回、彼女の後任として回らせてもらって分かったんです。彼女がどれだけ顧客に必要とされているかを。そして彼女の提案書が素晴らしいものか・・・・」
はぁ・・・ってか何で俺にそんな話すんだろ?
「彼女が辞めるのが惜しくなったんです。 彼女の様な人材が必要なんです」
「・・・・・俺から桜に辞めないよう言えって、事ですかね?」
・・・・・・・頭にくんだけど。
仕事ができるのは分かるさ、しがねぇ〜バーガー屋の俺だけどさ、桜が檜山から経理を任され、俺らで話し合ってさ・・・・なんつーの? 経営方針的なのをさ話すわけよ!
そしたらあなた! 桜の口から次から次とアイディアが出てきてさ、それを企画書として出してくんだもん!
優秀なのが、よっくわかったんだわ!!!
桜に任せたらフランチャイズ化して全国展開よ! そんな企画書持ってくんだよ、この人。
「コイツが仕事できるのは俺みたいな人間でも、よぉ〜〜っく分かってますよ! でも、コイツさ・・・宮部さんがいう会社の人間に追い込まれてボロボロだったんすよ!」
「隆一くん、やめて・・・」
「本当の事だろうが! 女子社員のヤっかみで、枕営業とか言われてさ、お前・・・・息ができねぇーくらい追い込まれてたじゃねぇーか!」
「コイツは食う時間も寝る時間も削って仕事に打ち込んでた、だが仕事が成功しても会社に戻れば【 身体を使って成功した 】 って・・・・・・そんなん、あんまりじゃないっすか?」
「隆一くん・・・・・・」
「コイツは優しい女なんです、外見はバリバリ出来る女で強そうに見えても、中はものすごく傷つきやすくて脆いんすよ・・・・・そんな女が、孤独で息ができないと感じるほど追いつめられる、そんな場所に戻れなんて俺には言えません」
「君・・・・・そうか・・・・」
興奮する俺が桜に会社に戻れなんて言えないと宮部に言えば、宮部が・・・・・嬉しそうに笑いはじめたんだ。
「え? いま笑うとこ???」
「いや、失敬・・・・・そうか、君は・・・・・本気で高城君のことが好きなんだね」
「はあ? それ確認するとこですか? しかも、違うし!」
「・・・・・・違うのか?」
驚く宮部に、ニヤッと笑って俺は、訂正するんだ。
「好きなんじゃなくて、俺は桜のこと・・・・・・愛してますから!」
「愛か・・・・・・」
「俺もね考えてるんすよ? 桜はいま、進む道に迷ってるんだって・・・・・だったらさ、次が見つかるまで一緒に迷おうってね! 俺らとバーガー屋やってる間に、何か見つけるだろうし・・・・今は迷う時間なんすよ。で、次が見つかったら俺は桜の応援するんす!」
「そうか・・・・・高城君、君はイイ男を捕まえたね!」
「いや、桜に会う前までチャラかったんすけどね〜〜」
「会社の高城君に対する汚い噂は、僕も知っていたけど、まさかこれほどとは思いもかけなかったよ」
「女の嫉妬は、怖いっすよね〜〜〜」
で、さっきっから黙ってる桜はどうしたのさ? 横を見れば、おわっっ!!! なんで?なんで泣いてんの???
「さ、さ、桜? どうしたのさ? ポンポンでも痛いのかい?」
「うぅ〜〜〜・・・・・・」
「まったくさ、泣く事もできない不器用な女だねぇ〜〜・・・・・俺の恋人は」
喫茶店のおしぼりで桜の涙を拭いてやれば、笑顔の俺を見てまた泣いてる桜・・・・・そんな桜も綺麗だな。。。
「隆一くん・・・・隆一くん・・・・ありがと・・・・ありがとう・・・・・」
「よしよし・・・・・我慢するより泣いちゃいな!」
俺は桜を抱き寄せて、俺の胸に顔をつけさせて・・・・・・泣かせたんだ。
「ほんと、俺の前だとよく泣くね〜・・・・」
「いや・・・驚いた。 高城君の泣き顔なんて初めてだ・・・・・・きっと、君の前だからこそ素直に泣けるんだろうな」
感慨深げにそういう宮部さんが、教えてくれたんだけどさ。
会社の中での桜は、どんな窮地にも冷静で感情を表に出さないんだってさ!
男性社員のなかには《 鉄仮面 》とか言う奴もいて、この挨拶周りで初めて笑顔をみたりしてたんだと。
ただお客様の前だと感情が迸るみたいにでてて、真剣に熱く後任の自分のことを紹介してるから、別の人を見てるみたいだったって・・・・・
「それだけ会社に、居場所がなかったんだな・・・・・・桜」
「優秀な人材をみすみす潰すような環境、会社が作り出すなど言語道断だ・・・・・・」
化粧を直すとトイレにたった桜に、俺は・・・・・
「だから俺は桜に、これからの事をじっくり考える時間をやりたいんす。 心が元気になれるように・・・・」
「そうか・・・・高城君の人生だものな、いや、余計な事を言って申し訳ない」
「いえいえ、俺もなんか安心できました。 少なくとも1人は、桜のこと心配してくれる人が、会社に居たんだって・・・」
「力になれなかったけどね」
それから桜の化粧直しが終わって、俺は店に、桜は挨拶周りへと、別れたんだ。
「じゃ、待ってるから! 終わったらさっさと帰ってこいよ!」
「うん! 部屋のことお願いね」
「任せとき! いいの用意しとくから〜」
そういって別れた俺たちだけど、ウチに帰ったら、まぁ〜〜咲ちゃんがうるさい、うるさい!
「サクラちゃん、まだぁ〜〜? かえってこないのぉぉ〜〜」
「咲〜・・・咲ちゃん! 桜はね明後日には帰ってくるからね!」
「あさって! 今日はすいよう です! 明日はもくよう です! 明後日は、きんようびです!」
「そうそう、明後日だよん」
帰ってから俺も、ちゃんと仕事したんだぜ〜
このアパートを借りるときに世話になった不動産屋によって、4、5件ほどアパートの当たりを付けておいたんだ。
まあ、夏の間だけだしな・・・・・秋には東京に戻るつもりだから、家賃と場所で候補をあげておいたんだ。
なあ、桜・・・・・早く戻って来いよ? 何となく離れたら不安なんだ、俺。
俺の不安を吹き飛ばすように、桜は木曜の夜に帰ってきた。
全ての挨拶周りを終えて、スッキリした顔して戻ってきた桜は、次の日から店にも出たんだ。
アパートもさっさと決めて、俺たちは夏の間、4人で一生懸命働いたんだ。
ザザザ〜〜・・・・・・
ザザザ〜〜・・・・・・・・・
「どしたの、桜ちゃん?」
店が終わった夜の海に、ふといなくなった桜を探して・・・・・・俺は浜辺に置いてあるベンチに座る桜を見つけた。
出会った頃より、少し長くなった桜の髪が海風に吹かれて、舞う様が・・・・・綺麗だな。
俺は桜の隣に座り彼女の腰を抱きしめ、「どうした?」とまた聞いたんだ。
「・・・・・・・隆一くん」
「んあ? なんですか桜ちゃん?」
「私ね、隆一くんに会えて良かった・・・」
「なんだよ、桜・・・・・・・・ほんとにどうした?」
「私ね、小さい頃にこの海に来たことあるの。 父がまだ私を見てたときに」
「そっか・・・」
海を眺めたまま静かに話す桜が、なんだか何処かに行ってしまいそうで・・・・・・俺は桜の腰に回した腕に力を込めた。
「幸せな記憶・・・・・・その場所で、私ね・・・ 何にもない私を考えたかったの」
「うん・・・・・」
「仕事は成功した。 ハンパない年収ももらってた。でも私の側には、誰もいない・・・・・・」
「桜・・・・・」
「慌ててさ、寄ってくる男と付き合う事にしても、お金目当てや、言うこと聞かないと殴る奴とか禄でもないのばっかり・・・・・ほとほと嫌気がさして、ここに来たの」
「そっか・・・」
「でもね、ゆっくりくつろぐって、どうすればいいのか分からなかった・・・・・・・そのとき私ね、仕事以外に何にもないんだって自覚したの」
「・・・・・・・・隆一くんに出逢えなかったら、私ね、こんなに幸せだって感じることも、知らないままだった」
「桜・・・・・俺だって、俺だってさ同じだよ?」
俺は桜を俺に向かせて、話すんだ。
「こんなさ・・・前科持ちで、金も無い俺がさ・・・お前の恋人なんて・・・・・俺は桜を好きだって、この気持ちしかないんだぜ?」
「隆一くん・・・」
「お前が東京に行ったまま、俺のそばに帰って来ないんじゃないかって不安でさ・・・・・押しかけちまうような情けない男なんだぜ?」
やべっ・・・・・目が熱くなって、なんか水みたいなのがポロっと・・・・・いやいやいや、男が泣くなんてさ、カッコ悪いからさ〜〜〜・・・・・・
「お前が・・・・・帰って来ないんじゃないかって・・・・・・スッゲェ〜不安で・・・・・なんだよコレ、なんで俺が泣いてんだよ、カッコ悪ぃぃ〜〜〜」
「隆一くん・・・・・・」
泣き顔なんて見られたくなくて、横を向いてる俺に桜が・・・・・ふわりと抱きしめてきた。
「・・・・・・・私を、本気で好きになってくれて、ありがとう・・・・・私ね、男の人に・・・ううん、隆一くんに好きって言われて、生まれ変わった気分なの」
「・・・・・桜?」
「私も隆一くんが、大好き・・・・お金なんていいの、こうやって愛してくれたら、私は幸せなの」
「桜・・・・・好きだかんな! 俺はお前が、めちゃくちゃ好きだからな!」
「うん・・・私もだよ・・・・ずっと一緒にいようね」
「ああ・・・・ああ!!!」
俺たちは泣きながら抱きしめあって、キスを重ねて、気持ちを確かめ合ったんだ。
「この海に、きてよかった・・・・・」
「そうだな・・・・・桜」
「なに?」
「ずっと、ずっとさ・・・俺のそばに居てくれよな」
俺はプロポーズみたいな気持ちで、そういったんだ。
また、泣いて・・・・・「うんっ!」って泣き笑いで返事する桜を、抱きしめて俺は・・・・・・俺たちは海を見てたんだ。
夜の海は何にも見えねぇーけどさ、ざざざ・・・って波音が心地よくてさ。
この広くて、デカい海で俺たちは出会って、これからずっと・・・・・ずっと、生きていくんだ。
檜山も咲人も、みんなで一緒にさ・・・・・生きていこうな。
ハッピーエンドに終わりました!!!
柳川くん熱が冷めないまま、STの黒崎さん熱も再燃し、ラストコップの亮太くんにもお熱で、さあ大変(笑)
また海辺の柳川くんを書くかもしれません。
もし柳川くん、黒崎さん、亮太くん、そしてガチバンの黒永勇人で何か「こういうのは、どうですか?」的なネタがありましたら、コメントでお知らせくださいませ。
まあ、細々してる私の所ですから、誰も見てないかもですが(笑)
では、またね〜〜〜 ( ´ ▽ ` )ノ
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