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【 大奥・誕生 】by 捨蔵

2012年、TBSでのドラマ、【大奥・誕生】です。

赤面疱瘡という病気にかかり、男子が激減した世界、時は家光の時代。。。

将軍家光が赤面疱瘡で亡くなり、後継がいなかったため春日局は昔、家光が産ませた女子を攫うように大奥へと連れてきて、男装させて育てたのでした。

そして、京の公家の有功と想いあって1年、睦みあっても赤子が授からない2人に春日が焦れていたところに、事件が起こります。

窪田さん演じる捨蔵の夢のお話です。
ドラマだと悲惨ですが、ここでは・・・・・・・ね☆




「姉上、姉上! どうされた! 何故このような事にっ!」
「私にも分かりません」
春日に使える澤村伝右衛門が、儂の棲む離れにやってきたのは、つい先ほどで・・・案内された部屋は上様であられる姉上の閨で。

白い夜着を着た姉上が静かに褥に横たわっている。

一見、眠っているような様子だが・・・ 微動だにしないそれは、既に事切れていることが分かった。

「上様、御免」
澤村が姉上の手首を持ち脈を調べるが、黙って首を振った。

気がつけば部屋の隅に有功殿が項垂れている。

「有功殿、なにがあったのだ」
「上様がいきなり胸を押さえられ、お苦しみになって・・・・お匙(おさじ・医者のこと)を呼んだのですが、間に合わず・・・・・・」
「姉上は心の臓が少しお弱かった・・・・が、この様な事になるなど・・・・・これほど病があったとは知りませんでした」

姉上と有功殿は、人も羨むほどの相思相愛の仲・・・・・ガックリと項垂れ、真っ青な顔の彼の肩に私は手を置いた。

「上様! 上様〜・・・・」
「春日か・・・・・」

しゅっしゅっしゅしゅ〜〜〜・・・・・廊下を走る足袋の音が段々近づいてくる。

それと共にか細くも引き攣ったような声が、必死に姉上を呼んでいた。

・・・・・ それからが、大変だった。

姉上が事切れている事が分かると、春日は有功殿を責め、罵り、半狂乱になりながらも他に漏れる事を恐れ声は抑えるという狂人っぷりを発揮していた。

そして、儂の姿を認めると急に目の前に平伏し、こう言うのだ。

「上様・・・ 只今より、あなた様が上様でございます〜〜・・・・・」

やはり、こうなるか・・・・・・儂は溜め息を吐いた。



儂は父である将軍家光の落とし胤。。。

姉上と同じ腹から出てきた、忌わしき双子の儂。

武家の家で双子は忌み子・・・ 生まれてすぐに “ 妹 ” は、処分されるのが世の常・・・・だが、儂の血は徳川の血。

殺すことも、捨てることも、ましてや里子に出すことも憚られ姉と一緒に育てられた。

表の世界には、いないものとして大奥の奥深くで隠されて育ってきたのだ。


大方、春日は心の臓が少し弱かった姉に、万が一があればなどと、思惑があっただろう。
それは仕方がないことだ、言ってもせんなきこと・・・・・

儂はいい、幼き頃より覚悟はしていたし、春日の徳川大事の考えにも諦めにも似て割り切る事が出来る。

一生、影に徹しようと、姉上の役に立とうと、表の世界に顔をだせぬ時間をすべて勉学に費やしてきた儂は、よく姉上の部屋で論議をしていたのじゃ。

澤村に民の生活を見に、連れ出してももらっていた。


だが有功殿は・・・・・あれから数日が経った夜、儂は部屋で酒を飲んでいる。
儂のそばでは有功殿が、酌をしてくれてはいるがの・・・・・

春日が命じたことは、有功殿には酷であろうに・・・・・

目の前におる儂は、見た目は姉と瓜二つなのに中身が別人じゃ・・・・・愛しい人を亡くされて、しかもそれを隠さねばならないため、こうして儂の閨を訪れているとは。

有功殿は、さぞや辛いだろうに・・・・・


「お辛くはないか? あの事を隠すために、こうやって儂のそばにいる事が」
「・・・・・いえ」
「そんな暗い顔をなされておるのに、無理はしなくていい・・・・・」
「上様・・・」

「有功殿、これを」
儂は懐に入れていた物を、彼に渡した。

金糸銀糸で織られた布の筒状の袋を開けて、静かに傾けていく有功殿の手の上に出てきたのは、黒髪。

「姉上の御遺髪じゃ・・・・・春日に作るよう命じたのじゃ」
「・・・・・ぐぅ・・・・」

ぎゅっとその袋を握りしめ、堪えきれずに嗚咽を漏らす有功殿に、人払いをしておるゆえ思いきり泣いてもいいと、儂は言葉を続けた。

「申し訳ございません・・・取り乱しました」
「よい・・・ 姉が羨ましいと儂は思う」
「それは、何故でございますか?」

「・・・・・・愛し、愛されていたから。 儂はこのまま影の者として、存在を隠され・・・誰にも愛されぬまま朽ちると思うておった」
「上様・・・」
「それで良いとも、思うておった・・・ 姉上だけが儂の寄る辺で・・・それでいいと 」

「さ、有功殿。 ・・・・・姉上を偲んで飲もうぞ・・・」
「はい、上様」

そうやって姉の話をして穏やかに過ごす夜は、しばらくは続いたのだが・・・・・春日が儂を放っておくはずがなかった。



「・・・・・・・澤村、お主・・・上様とよく市中に出ておったな」
「はっ」
「その時に・・・誰ぞ上様のお目に留まった男は、おらなんだか?」
「・・・・・その事で春日局様に、お話が」

「・・・・・・ほっ! そうか、そうか! ではさっそく動くとするか・・・」

こちらの上様がまた有功殿と想いあうことは、避けねばなならぬ。
あの種無しに関わらせたくはないからの!

「すぐに居所は掴めるか? 今すぐ私が向かいます」
「はっ! 居場所は掴んでおります」
「では、行きましょうぞ」

その夜、大奥からしばらく春日局の姿がいなくなり、戻った時にはニタリと笑う彼女が居た。






「澤村、市中へ行くぞ」
「お止め下さい、上様」
「・・・・・・行けぬか?」
「はい」

「つまらぬの・・・・・・」

数日前までの影の存在であった儂なら、澤村を共に市中を見て回れたが・・・・・今は、無理か。


儂はこの前市中で見た、あの鮮やかな男の事を思い出していた。

そやつは道の真ん中で若い町娘と抱き合い、何事か話をしていたが・・・・・儂はその男に、目を奪われていた。

女に微笑みかけるその顔が、少し幼く見えて・・・・・・どきん!と大きく鼓動が跳ねた。

一瞬、儂も心の臓に病があったか?と焦ったが、違うのであろうな・・・・・

物語の中にある “ 恋 ” 、書を読んだだけでは分からなかったし、その場でもよくは分からなかった。

だが、姉上が・・・・・昔、有功殿の事を考えると胸が騒ぐと言われていたのを、思い出したのじゃ。


「ふっ・・・・・儂が恋などして、なんになる・・・」
「どうされました?」
澤村の鋭い目が儂を見ておるが、儂が恋などしても影に隠されている身に何ができる。

「何でもない、行くぞ」
「はっ」

そう、影に隠されている儂は、誰も愛さず、誰にも愛されず・・・・・・・死ぬまで大奥の奥深くで過ごすのだ。

・・・・・・生きながら、死んでいる。

そんな存在が、儂なのじゃ。


だが姉上の代わりに表の世界に出てきた儂を、春日が放っておくはずがなかった。

「上様、今宵は上様に紹介したい者がおりまする故、有功様はお召しにならぬようお願い致します」
「・・・・・・そうか、いよいよ儂も男に抱かれるのか」

「上様におかれましては初めての事ゆえ、誰ぞに心構えを聞いてみられますか?」
「そうじゃの、春日では遥か昔でもう憶えてはおらぬだろうからのぉ〜・・・くくく」

儂のからかいに春日のやつ、目を白黒させておるが、二マリ・・・と笑いおった。

「相手の者は慣れておりまする故、その者にお任せして下さい」
「・・・・・・・分かった」

そうして夜、閨に床が敷かれ・・・儂も湯浴みをすませ真白い夜着で待てば、侍女に案内されて現れたのは、驚く男だった。



「捨蔵殿、まずはお辞儀を・・・・いえいえ、そうではなくて畳の半分前あたりを見るのです」
「へい!」

「上様が『面を上げい』と言われて頭を上げても、いいですか、決して上様を見てはなりませぬぞ」
「そうなんですか?」
「はい、そうなのですよ」

穏やかな有功の声がしているが、有功の前に平伏している男は元は町人。
大奥に連れてこられたその男は、今までの町人の姿から侍の姿へと変わってはいた。

頭には月代がつくられ、裃も着せられ格好だけは侍なのだが・・・・・・

武家の礼儀作法など全く知らず、これに一通りの礼儀を仕込むことなど骨の折れる事だった。

しかし有功は辛抱強く1つ1つを教えていき、目の前の若い男・捨蔵は、出来ないなりにも一生懸命覚えようとはしているのだった。


・・・・・・不思議と愛嬌のあるお方だ。

よく笑顔を見せるその男は、周りから町人と揶揄され、馬鹿にされていてもどこ吹く風で飄々と笑顔を振りまいている。

武家にも公家にもいない、不思議な魅力のある方だ。

「宜しいですか、上様に酒をお注ぎしても自らは飲んではいけません」
「へい!」
「勧められた時には、ほんの一口・・・唇を湿らす程度にしておかなければなりません」
「へい!」

「・・・・・・返事は、『はい』と言ってください」
「へい! あ、はい!」

「・・・・・・少し、休憩しましょう」
「はい!」

元気よく、愛想よく返事をする捨蔵に有功は、疲れはするものの嫌では決してないのだった。
ニコッと笑っている彼は、 出された茶を『ずずず・・・』と啜りながらも、終始 楽しそうなのだった。

「捨蔵殿は、ここに来て・・・・・後悔はしていませんか?」
「ここに来てですか? していません! 白い飯は腹いっぱい食えるし、家には仕送りできるし、こんなオイラがお侍様になれたんです! こんな名誉なことは、ございません!」

ぽん!と自分の腹を叩いて満足そうに話す捨蔵に、有功は何故だか自身の気持ちが少し軽くなる気がしていた。


愛する方を目の前で亡くし、しかもその死を隠さなければならず、平然と過ごさなければならない日々。
心に蓋をし、周りを欺き・・・・・その様な日々の、なんと虚しいことか。

唯一の慰めは、亡き人に瓜二つの妹君との語らいだけ。。。

だがそれも、愛しい方を思い出し辛くなっていた。


目の前で話すこの方が、なぜ・・・・私の愛した人ではないのだろうと、寂しくもあり辛くもあった。

だがそれももう少しで終わる。
捨蔵・・・彼が今の上様の側に上がるのだから・・・・私は上様のお側から離れるのがいいのだ。

だが、少しだけ・・・・・少しだけだが、胸がチクリと痛くなるのは、何故なのだろうか?

私の愛した方は、激しい気性をそのままにぶつけてこられる・・・・・熱い方やった。
悲しいなら悲しいと、お怒りになられた時はそれはもう烈火の如くお怒りになられる・・・・・ほんに熱い方やった。

今の上様は感情を爆発させる事などない、静かな方や・・・・・性格は真逆な方や。
静かに・・・だが決して愚鈍などではなく、思慮深い方や・・・・・

あの方の荒げた声など、聞いたことはない。

小さな頃から側に居られた澤村殿も、上様の大きな声など聞いた事はないと申されていた。

そう・・・ 私のあの方とは、真逆なお方や。。。

そう・・・ あの方とは違う方やなのに、なんで私の胸はちくり・・・ちくりと痛くなるのやろうか・・・


気のせいや・・・・・そうや、きっと気のせいや・・・・・・


それから数日の事やった、捨蔵殿が上様の寝所へと呼ばれたのは。。。




「ははぁ〜・・・」
私の前に平伏している男を、座ったまま見つめる。

「苦しゅうない、面を上げよ」
「へへ〜〜・・・」

「・・・・・・・・」
男は頭も上げずに平伏したまま・・・・・・もしや彼奴は、武家や公家ではないのだな。

ならば町人か? いつ大奥に連れて来られたのかは知らぬが、付け焼き刃の礼儀作法が頭から飛んだとみえる。

「へへ〜〜・・・」だの「ははぁ〜〜・・・」だの、意味の無い返事をしては、ただただ萎縮し恐縮し畳に額を擦り付けている。

・・・・・・面白そうだから、このまま見ているか。

儂は手酌で酒を杯に注ぎ、くっ!と飲み干した。

いつまであの姿勢で居られるかの?
人とはそもそも緊張している事柄から逃げたくなるもの・・・・・・さてさて、此奴はどうするか?

くくくっ・・・・・・春日も姉上の時にさんざっぱら苦労しただろうからな、毛色の変わった者を送り込んできたものだ。


「・・・・・・そろそろ面を上げてはみぬかな?」
穏やかな声だと思った。

オイラの様な町人とは違う、穏やかな・・・・・頭の良さそうな、そう! 有功様の様な声だと思った。

面って、たしか顔の事だよな? あれ? オイラ、さっきも言われてたよな?

う・・・うえ・・・さま・・・・・上様に、二度も同じ事を言わせたのか、オイラ!!!

その事でオイラは、頭の中が真っ白になっちまったんだ〜〜〜!!!

「お、お、オイラは、いえ、あのっ、わたし・・・・・私はっ、すてっ・・・捨蔵と申します!」

あああああ〜〜〜・・・・・違う、名前は上様に聞かれてから名乗るって有功様に言われてたのにぃぃぃ〜〜〜

その時だった、急に畳に擦りつけている頭の上から、楽しそうな可笑しそうな笑い声が聞こえたのは。

「くっくっくっ・・・・はっはっはっ・・・・・捨蔵と申すのだな、そなたは」
「へい! あ、いや・・・はい!」

「そんなに畏まらなくても良い。 顔を上げなさい」
「ははーー」

そうしてやっと見れたその顔は、いつぞやの・・・・・・男だった。

顔を上げた男・・・ 捨蔵は、儂を真っ直ぐに見つめていた。

作法では顔を上げても、儂を直接見るなと教わるはずなのにの・・・・・・くっくっくっ。

「どうした? その様に見られては、酒が飲めぬが・・・」
「いや・・・オイラ知らなかった・・・・・上様がこんな可愛らしい方だなんて・・・」
「・・・・・」
「てっきり春日のお局様みたいな人かと思ってて・・・・いやぁ〜・・・知らなかった!」

ほほぉ〜〜・・・ 儂が思うたよりも若い娘だと分かって、態度を変えてきおったな。

「では何とする、捨蔵? 自分が思うより若い女だと分かって・・・・・どうするのじゃ?」

ふふふ・・・・・捨蔵め、手を伸ばして伸びをして急に活き活きとしてきおったな。
大方、町娘を垂らしこんでいた自分なら、儂も夢中にさせられるとでも思うておるのじゃろうの・・・・・

面白うなってきたな・・・・・儂は酒を杯に注ぎ、くいっと飲み干した。

隣の部屋には床が敷いてあり、襖を開けておるからそれは嫌でも目に入る。
捨蔵も目を床にやり、ついで儂を見ておる。

「まあ、オイラにお任せ下さい。 上様は床に寝てていただければ、万端滞りなく済ましますんで」
「ほぉ〜・・・」
「春日のお局様からお聞きしておりますんで、全て私にお任せ下さい!」

ニヤニヤと笑いながら儂に言う捨蔵を、静かに見ていたが・・・・・彼奴が立ち上がり儂の手を取ろうとするのをかわし、逆に儂が彼奴の腕を掴んだ。

「へ?」
「無礼者がぁあ〜〜!!!」

腕を掴んだまますっくと立ち上がった儂は、そのまま捨蔵を布団の上に放り投げた。

慌てて立ち上がろうとした捨蔵を蹴り飛ばし、布団の上で尻餅をついている彼奴の目の前に剣を抜いて突きつけた。

「儂は、誰じゃ?」
「・・・・・う・・・う・・・うえ・・さま・・・です」
「聞こえぬ! 儂は誰じゃ!」
「上様です!」

「そなた、儂とそなたに垂らしこまれた娘とを同列に扱うたの?」
「いえ・・・そんな・・・・滅相もない!」

ちゃきっ・・・・・刀を捨蔵の首に突きつければ、青くなって震え上がっておる・・・・・

「良いか捨蔵、今までの女達の事は忘れろ! 今からは儂がお前の唯一の女じゃ・・・・・」
「へい! ・・・あっ、はい!」
「儂を・・・・・愛しいと想えるか?」
「はい!」

くすっ・・・ 想えるわけないであろう? こんな刀を突きつけてくる女を、愛しいだなどと。

それでも捨蔵は必死な顔で儂を見つめて、こくこくと頷いていた。

・・・・・・・その様子が、なぜか可愛いと思うた。

刀を鞘に収め、座った儂は捨蔵に杯を突き出した。

「こちらに来て酌をせい・・・」
「は・・・はい」

びくびくと震える手で酌をする捨蔵が、少し可哀想になり捨蔵も飲めと杯を渡し、儂が酒を注いでやった。

よほど怖がらせたみたいだな・・・・・杯の中の酒を一気に飲み干した捨蔵に、また注いでやった。

「飲め・・・ 今宵は許すゆえ、思いきり飲め」
「は・・・はい!」

ふふふ・・・・・杯を何度も空けた捨蔵が、やっと一心地ついたのか「ほぉ〜」っと息を吐いた。

「怖かったか?」
「はい・・・・・切られると思いました」
「なぜ儂が怒ったか、分かるか?」

そう聞けば首を横に振る捨蔵に、儂は最初から包み隠さずに話をした。



「姉上様がお亡くなりに・・・・・」
「そうじゃ、だから影の儂が表に出てきた。 儂は一生、影のままでも良かったのにの・・・」

「姉上と違って儂は男と閨を共にした事がない。 ・・・・・誰も愛さず、誰からも愛されず・・・姉上だけを寄る辺にして生きようとしていたからの」

「つまり上様は生娘で?」
「そうじゃ・・・・・面倒じゃろ?」

ニヤリと笑う上様は、今まで出会ったどんな女よりも美しく、賢く、そして怖い方だった。

顔を見てオイラは、 “ 上様 ” が年頃の娘だと初めて知ったんだ。

黒々とした瞳は大きくてあどけなくも見えたけど、その眼に宿る光は・・・・・・何だろう、オイラが見たこともないもので。

堂々と座る姿の迫力に負けそうになったオイラは、でも若い娘なら扱いも慣れていると・・・・・つい、調子にのっちまった。

床に行こうと腕に触ろうとしたオイラは、すっくと立ち上がった上様に放り投げられ布団の上に飛ばされた。
慌てて起き上がろうとすれば、すらりとした脚で胸を蹴られ、また吹っ飛んじまった。

とにかく謝ろうと大急ぎで身体を起こせば、目の前には抜き身の刀の切っ先が。。。


「上様・・・」
オイラ、このまま切られるのかな?

でも上様を怒らせちまったオイラが悪いんだ、お手打ちにされても仕方ねぇ〜や。

「そなた、儂とそなたに垂らしこまれた娘とを同列に扱うたの?」
・・・・・・見抜かれてた。

ちゃきっ・・・・・刀が鳴って切っ先が目の前からオイラの首の横に移動して、オイラはますます青くなった。

身体がガタガタと震えてきたけど、それでもオイラは・・・・・目の前の上様から、目が離せなかったんだ。

なんでかな? オイラに刀を突きつけてる上様の目が・・・・・・悲しそうなのは。


「儂を・・・・・愛しいと想えるか?」
その上様の言葉にオイラは、はいって直ぐに答えたんだ。

でも、上様は悲しい目をされたままで・・・・・・なんで? なんで?

刀を収められた上様が杯を突き出されて、オイラは震える手でお酌をしたんだ。

そうしたら上様が杯をオイラに持たせて、酒を注いでくれた。

コクっと飲み干した上等の酒は美味くて、何度も上様に注いでもらって飲み干せば・・・・・やっと、震えが収まった。

そんなオイラの様子を見て上様はお話をして下すったんだ。


姉上様がお亡くなりになって、目の前のこの方が上様になられた・・・・・・
二人で生まれたってだけで、目の前の方はずっと大奥の奥深くで独りで居られたのか。

「誰も愛さず、誰からも愛されず・・・・・姉上だけを寄る辺にして生きようとしていたからの」

・・・・・・・そんな事を考えてなさったのか。

ただ後に生まれただけで、この方は一生を姉上様に捧げて生きていらしたのか。

「つまり上様は、生娘で?」
「そうじゃ・・・・・・ 面倒じゃろ?」

ニヤリと笑ったままの上様にお酒を注いで、オイラはじっと上様の目を見ていた。

「・・・・・捨蔵、どうした?」
「なにが悲しいんですか?」
「ん?」



「なにが上様を・・・・・悲しませてるんですか?」
「儂が、悲しい? はて、そんな事はないと思うがの」

じっと見つめてくる捨蔵が急にそんな事を言い出した。

真っ黒な瞳で、一心に見つめてくる捨蔵は儂の答えに首を横に振りおった。

「悲しそうです」
「そうか、お前には分かるか・・・・・・・ふふふ」

誰も捨蔵のように真っ直ぐに儂の目を見ることは、ないからの・・・・・ばれてしもうたか。

「悲しい・・・ そう、儂は悲しんでおるのかもしれぬな・・・ あの時から」

「たった1つの寄る辺だった姉上が、儂より愛する男ができた・・・ あの時から」

「だがな、姉上の幸せにはその方が良い。 ・・・・・儂は影じゃ、陰から身守れれば良い」



そう言って杯をあおる上様は、なんだか諦めた顔してなさって・・・ オイラは頭は悪いけど、相手の気持ちを読むことはできるんだぜ!

じゃなきゃ女に気に入られて、金を巻き上げるなんて出来やしねぇ〜からさ!

そんなオイラの目に、上様が少し困ったような顔をしている。


「・・・・・・姉上が亡くなり、儂は誰かに愛されてみたくなったのじゃ」
ただ一人の姉上様を亡くされ、この方はやっと愛されてみたいと思ったのか。

「先ほど怒ったのはな、お前が・・・・・・」
「へい、オイラ・・・・私が、何でござましょう」

言い淀む上様が、少し顔を横に向けられて・・・・・何を言いなさるんだろうか?

「・・・・・・お前が儂と他の女を同じに見たのが、悔しかったからじゃ」
「あの・・・・・」

「三月ほど前、儂は市中でお前を見た。 美しい娘と抱き合っていた・・・・・」

三月前っていったら、お栄さんとか・・・・・あ!
あんときオイラ、お栄さんと良い仲で真昼間から抱きあったり、接吻したりしてた!

あちゃ〜〜・・・・・見られてたかぁ〜〜〜・・・・・・

「・・・・・儂は、あの娘のように美しくはない。 他の女と比べられるのは、嫌なのじゃ!」

え〜っと、それは・・・・・???

「・・・・・儂を好きになれるか? 他の女を忘れるか?」

それはつまり・・・・・上様はオイラを独り占めされたいってことか?
え? え? こんな高貴なお方が、オイラみたいな町人で女ったらしを?

「捨蔵、答えよ!」
キッとオイラを睨む上様は、抜き身の刀の様に鋭くて、怖くて、でも・・・・・・その目が、哀しさに揺れてるんだ。

オイラなんかを求めて下すってるなんて・・・・・・・

望めば有功様みたいな公家の良い男でもなんでも、望みのままのはずなのに・・・・・町人のオイラに自分だけを想えと望まれている。

どくん!!!

ありゃ? なんだ、なんだ!? 胸が急に・・・・・・どくん、どくん、と心の臓の音が自分で聞こえるほど、鳴っちまってる。。。

こんなの、オイラ初めてだ!

顔が熱い・・・・・酒を飲んだからか? あれ? 上様も顔が真っ赤だ・・・・・可愛らしいな

「捨蔵・・・・・やはり儂では、嫌か?」
あ! 答えなきゃ! オイラ、返事もせずに考え込んじまった!!!

「私は、上様を・・・・・知り合ったばっかりですが、私はあなた様をお慕い申しております」
「・・・・・・その言葉に偽りは?」
「ございません! オイラ・・・いえ、私は馬鹿ですが嘘は申しません! 少なくとも上様には・・・」
「・・・ならば、これ以降・・・お前の唯一の女は、儂だけじゃな」
「はい!」

静かに立たれた上様が、オイラを見下ろして・・・・・・・微笑まれた。

「では捨蔵・・・ 参ろうか」
白い手が、すっと差し出されたからオイラ、自分の手を重ねたんだ、そしたら手を握って引っ張ってくれた上様が、そのまま “ お床 ” へ。。。

「儂を抱け・・・ お前の思うままにの」
「はい」

オイラは上様の肩を掴んで・・・・・・震えてなさる・・・・・・先ほどは剣をオイラに向けて、殺気で鬼神のように見えたのに、今は細かに震えてらっしゃる。

また、どきどきと心の臓が大きくなるから、オイラまで震えてきちまったよ!

床の上に座り込んだ上様に、オイラはそっと口づけをして・・・・・・ゆっくりと、上様を布団に押し倒したんだ。




長いので一旦、切ります。

ドラマの方は捨蔵くんは、どんどん悲惨になっちゃうので、このお話の中ではハッピーに!!!

せっせと子作りに励んでもらいます(笑)

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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