② 紅 【ウロボロス】

桐乃姐さんは、漫画の方もドラマの武田久美子さんが演じられたキリリとしたのも好きな管理人です。

私の話に出てくるのは、2つをブレンドした感じで(笑)

愛した人との娘の咲耶ちゃんを、溺愛している桐乃姐さんです!




「竜哉さん、例の話ですが・・・」
「ああ、聞かせろ 深町」

「襲われたメグというキャバ嬢は、実家に送金するため色々と金儲けの話に手を出していたそうです」
「孝行娘か・・・」
「男をその気にさせてホテルに誘い、睡眠薬を飲ませて金だけとる美人局(つつもたせ)や、デートをして結婚を餌に金を借りる結婚詐欺などしていました」

「その中の客の1人がストーカーになったと聞きました」
「・・・・・・とんだ孝行娘だな。 他には?」

「はい、その中で気になる話が・・・・・客の中に羽振りのいい医大生が居て、そいつの手伝いでヤバい物に関わっていたとか」
「・・・・・・詳しく聞かせろ」

ほう・・・ 医大生が、小遣い欲しさにそんな事をしてたのか。

「深町、咲耶は今どうしてる?」
「はい、咲耶さんは本日、新宿店オリジナルのデザインを考えるため、5階の仕事部屋にいらっしゃるはずです」
「・・・・・・すぐにボディーガードを手配しろ。咲耶を部屋から1歩も出すなよ」
「はい!」

俺は部屋を出ていく深町の背中を見ながら、イクオに電話をかけたんだ。

『もしもし』
「イクオ、メグとかいう孝行娘・・・金の為に店に来た医大生と組んでヤバい事してたぞ」
『え?』
「他にも結婚詐欺まがいや、美人局とか・・・・とんだ孝行娘だな」
『ええ??』

「それでだ、イクオ・・・・・その医大生、分かるか?」
『いや、初めて聞いたから・・・・・調べるよ!』
「・・・・・嫌な感じがするんだ」
『・・・・・・・分かった』


電話を切った僕はタッちゃんの言葉を頭の中で反芻して、駆け出したんだ。

「龍崎さん!? ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!」
背中から日比野さんの声がしたけど、僕はもう立ち止まる気はなかった。

警察署を飛び出した僕は、新宿の街を駆けていくんだ・・・・・犯人を捕まえるために。


「もう! 普段はヘラヘラしてるくせに、急にスイッチ入っちゃうんだから!!!」
全くもう! 相棒を置いていくなんて信じられない!!!

・・・・・・・でもさっきの電話、あれが龍崎さんの中の何かを目覚めさせたんだ。

私の相棒は、こうやってスイッチが入ることがある。

電話に出た最初の顔は、いつもの穏やかでひょうきんなものだったのに、暫くするとスッと彼は真顔になった。
そうして見ていると、瞳の色が・・・・・変わった。

黒い・・・真っ黒な、光さえ飲み込んでしまう暗黒の色。

電話を切った龍崎さんが、飛び出して行ったのを私は、置いてかれるままになってしまった。

・・・・・・・付いて行くタイミングが、間に合わなかったんだけど。


・・・・・だって迫力ある真顔の龍崎さんを、カッコイイって思ったのは私の秘密なんだから。

・・・・・見蕩れてたから、間に合わなかったなんて恥ずかしくて認めたくないもん!

私は2人で行こうとしていた被害者の病院に、1人で行く事にした。

その前に警視庁に寄って、この事件についての資料を調べてみようと思ってる。

その後、龍崎さんに連絡入れて合流できるといいんだけど。

ほんとにもう! 顔を見たら勝手な行動はしないよう怒らなきゃ!
龍崎さんが調べたい所には、一緒に行きますって言っとかなきゃ!!!


・・・・・・・だから、私を・・・置いて行かないでよ。



僕はもう1度、被害者の勤めていたお店に顔を出したんだ。
そして今度は、黒服と呼ばれる男性スタッフに話を聞いたんだ。

「羽振りのいい若い男? ・・・・・ああ、いますよ! 家が金持ちだとかで派手に遊んでいく奴が」
「・・・何か嫌そうだね、その人のこと嫌いなの?」

話を聞いてる黒服は、派手な金髪だけど愛嬌のある笑顔の人で、気さくに話してくれる。
僕が嫌いなのか指摘すると《 しまった! 》って顔して、また愛嬌のある笑顔になった。

「店長には言わないで下さいね! 派手に遊んで金を落とすのはいいんだけど、すぐ女の子をホテルに誘うし、断られたら怒って騒ぐし、大変なんですよ」
「うわぁ〜・・・迷惑だね」
「そうなんすよ! そいつ井口って言うんす! 確か・・・○△大の医大生とか言ってました! 井口 伸夫って名前でした」
「ありがとう」

井口 伸夫・・・ タッちゃんからの情報じゃ、こいつが畑野恵さんと組んである薬物を売っていたんだ。
恵さんは自分のお客さんに、疲れが取れるビタミン剤と偽って中毒にさせてから高い料金で売っていたんだ。

それは白い粒状の薬で、服用すれば躁状態になって気分が良くなるもの。

大学で井口の素性を調べれば、実家は大病院を経営していて・・・・・薬を持ち出せる事は容易いようだ。

僕はタッちゃんに電話をかけて、今の事を話したんだ。

「どうする? 井口は雲隠れしてるから、僕は署に戻ってこの事を話して井口を追うよ」
『そうしてくれ、俺はもっと裏から調べてみる』
「分かった、咲耶ちゃんは、大丈夫?」
『ああ、もしもに備えてボディガードを雇った。 もちろん俺が守るけどな・・・』
「なら良かった」

電話を終えた僕は、新宿第二署へと戻ったんだ。


・・・・・・・戻ってすぐ日比野さんに、グーパンチされてお説教されたんだけどね。。。

半分白眼になりながら、井口の事を話せば三島課長が俄然ヤル気になっちゃって・・・・・

「第二署の意地を見せるんだ、お前ら〜〜〜その井口を探し出せ!」
なんて号令かけちゃって、僕達刑事課の皆んなは猟犬さながら署を出たんだ。

もちろん僕は、相棒の日比野さんと一緒にね☆

日比野さん、早く機嫌直してくんないかなぁ〜〜〜・・・・・・・・くんくん。

「日比野さん、生姜焼き食べました?・・・・・・・わわわ、ごめんなさい!」
ふぎゃ〜〜〜・・・ 鼻つままれた〜〜〜・・・・・

「いつもいつも、嗅ぐな!!!」
「ごめんなさい」
「行きますよ! ほら、早く!!!」
「はぁーい!」
僕は日比野さんの隣に並んで、事件を調べに行くんだ。




〜〜〜ピッ・・ピッ・・ピッ・・ピッ・・・・

規則正しい計器の音が響く病室は、集中治療室だ。

カーテンで仕切られたベットの1つに彼女は居た。

色々なチューブで繋がれてる彼女は、畑野恵さん・・・・・今回の事件の被害者だ。

「まだ意識は戻ってはいませんが命は取り留めたそうです」
「良かったね、あのさ彼女の警護はどうなってるの?」
「彼女にはドアの前に張り番が立ってますよ?」
「そっか・・・・・」

どうしたんですか?と問いかける視線の日比野さんに、僕は彼女が助かると犯人に知られたら、口を封じに来るかもしれないと考えてる事を話したんだ。

「もし犯人が井口なら薬の出処を話されたら、実家の病院まで咎められるでしょ?」
「そうですね・・・ 課長に連絡して警護を増やしてもらいましょう」

課長に連絡してる日比野さんの横で、僕はこの事件を最初から考えてみる。

事件のあった場所は勤めてるキャバクラとは少し離れているし、その時間は店の営業真っ盛りの時間・・・・・・
結婚詐欺でも美人局でも薬物売買でも、店の中で客を相手にしてる方がいいに決まってる。

なのに、なんでわざわざあんな徒歩で10分以上かかる細くて暗い路地裏に・・・・・・!?

店の客から次の相手を探すより、優先させなきゃいけないことって???

その時、ふいに咲耶ちゃんの言葉が頭に浮かんだ。

「犯人がね、倒れてる女の子の服をゴソゴソしてたの。 パッて懐中電灯で照らしたら、何かを取り出して自分の上着に入れてた気がしたの」
「咲耶ちゃんは、犯人がどんな感じに思った?」

咲耶ちゃんにはね、人を見る眼力があると思うんだ。
だから聞いてみたんだけどね。

「ん〜〜〜・・・・・・サラリーマンって感じはしなかったな。そうね、ヤクザの下っ端って感じかな〜」
「ヤクザの下っ端?」
「そ、雰囲気がね使いっ走りみたいな・・・・・気のせいだったら、ごめんね」
「ううん、すごいよ咲耶ちゃん! チラッと見て感じるなんて」

そんな会話が頭の中でグルグルと回り出したんだ。

コイワイと井口・・・・・サラリーマンの小岩井と、医大生の井口とは違っている咲耶ちゃんの犯人像。

堅気じゃない雰囲気・・・・・サラリーマンそのものみたいな小岩井は、外される。
同じくチャラい大学生な井口も、外される・・・・

って事は、第3の人間がいるという事?

まだ浮かんでない、第3の容疑者。。。

「ね、日比野さん。もしかして犯人って小岩井や井口じゃないのかも?」
「え? ああ、咲耶さんの目撃情報ですよね。 ヤクザの下っ端っていう・・・しかし咲耶さんは素人です。1瞬見た印象を信じるのは・・・」

「咲耶ちゃんは素人じゃないよ。 刑事である 僕より、人を見る目や見極める直観力はあるんだ」
「え?」


私は咲耶さんを思い出した。

ふわふわと柔らかな印象の、すごく綺麗な女性・・・・・・ あの人にそんな力が???
そして1つ分かったことは、龍崎さんは咲耶さんを100%信用しているということ。

その信頼は絶対で・・・・・それを、感じられた。

「もし犯人がヤクザの下っ端なら、なぜそんな事をしたんでしょう?」

私の問いかけに反応した、龍崎さんのスイッチが入った。

普段の明るい茶色の瞳に陰が入り、真っ黒な・・・何もかもが吸い込まれるブラックホールみたいな、真っ黒な眼に。

「もし・・・もしもだよ日比野さん。 井口が恵さんを使って売ってた薬でヤクザに目を付けられていたら?」
「覚醒剤より安価で効き目は同じなら、客が離れていきますよね」
「そう・・・そうだよ! それで恵さんは襲われた・・・・」

「咲耶ちゃんが言ってた、犯人が何かを取り出してたっていうのが、薬なら?」
「新宿を縄張りにしてるヤクザ組織をしらべれば・・・・・署に戻りましょう、龍崎さん!」
「うん」

僕達は署に戻りながら課長に電話で話しておいたんだ。



「段野・・・ 話しってなんだい?」
「社長、我孫子会では覚醒剤は御法度でしたね」

宝石店ウロボロス社長であり、関東最大の情報組織に君臨する女帝。
革張りの大きな椅子に、ゆったりと腰掛ける様はどこかの王国の女王のようだ。

この桐乃を崇拝する男に、日本で最大のヤクザ組織である我孫子会の会長、我孫子 栄がいる。

その我孫子会は覚醒剤を禁じて、売ることも、自らが使うことも、固く禁じていた。

その禁を破れば即破門が待っている。

破門とはヤクザ組織から放り出され、その関係者は及び、関係する場所にも立ち入り禁止となる。

我孫子会は戦前からできたヤクザ組織なのだが、覚醒剤の禁止はその時からの命令なのだった。


その我孫子会の縄張りで薬が売られていた。
しかも縄張りを荒らされた報復のように襲われた、女。

「・・・・・って事は、何かい? 我孫子会の中に薬でシノギをしてる輩がいるってことかい?」
「はい」
「しかも素人が泡銭ほしさに薬に手を出して、ヤクザに襲われただと?」
「はい」
「・・・・・・ふふっ、面白くなってきたな。 栄の奴に知らせて恩でも売っとこうかね〜」

女帝は優雅に細い指先にタバコを燻らせている。
その指には大きな石の入った指輪が、幾つも嵌められていて照明をキラキラと反射していた。

「それも良いのですが、社長・・・ 私が掴んだネタでは目撃した咲耶を血眼で探し回っていると聞きました」
「なんだって、咲耶を! ・・・・・口封じするのに探してんのかい!」
「はい」

咲耶が狙われている・・・・・そのネタは女帝に火を付けるのに、爆発的に効果を上げた。

「腐れド外道のアホんだらが、咲耶を狙うだと〜〜・・・・・・段野!!!」
「はい」
「後の事は私が始末してやるから、そいつら・・・・・・跡形もなく始末しちまいな」

「分かりました」
挨拶して桐乃の前から退出した俺は、その足で5階の咲耶の部屋へと向かった。

「これで思いっきり、できるな」
「何が?」
キョトンとする咲耶を引き寄せ、その甘い唇を味わう俺は・・・・・桐乃と同じなんだ。

お前を害する奴らは、一掃してやる。

とはいえ、俺は宝石店の副社長・・・・・・自分からバイオレンスな事はできない。
だが、やり方は知っている。

情報という武器を手に、幾人もの人を手足に使い、敵を絡めていく術を、俺は知っている。

全ては、咲耶・・・・・お前という華を、守るためだ。

そのために、俺は登りつめていくんだ・・・・・・咲耶。

お前がそばに居てくれるなら、俺は何でもできる・・・・・・何にでもなれるんだ。

「竜哉・・・危険な事はしないでね?」
「大丈夫だ、俺のことよりお前だよ。 狙われてんだ・・・・・大人しくしておけよ」
「うふふ・・・」

ん? 何で嬉しそうに笑うんだよ、咲耶・・・

「だって、竜哉に心配してもらえるんだもん! 嬉しいな〜って思って!」

くら〜〜〜・・・・・・ほんのり頬染めて、嬉しそうに微笑む咲耶を、強く抱きしめる俺はコイツのあまりの可愛さに眩暈がする。


そして誓うんだ・・・・・・お前を守ると。。。




「まったく、誰が殺せなんか言ったよ! しかも目撃者まで作りやがって!」
「すいません!!!」
「しかもその女も殺せてねぇーし! 何もかも中途半端なんだよ、テメェーは!!!」
「す、すいません!!!」

ここは我孫子会系3次団体、半田組の若頭、滝川の事務所だった。

我孫子会は薬は御法度。。。
そんな事は分かってはいるが、みすみす大きな儲けになる薬を諦めきれず・・・・・・滝川は手を出してしまった。

そうして上納金を納め、半田組の組長の覚えも良くなり若頭に出世した滝川には、もっと上に行きたい野望があった。

日本で最大のヤクザ組織・・・我孫子会。

その会長は我孫子 栄・・・その本家から直接盃をもらえた組は直参と呼ばれている。
そして直参の組から盃をもらった組を、3次団体と呼び我孫子会の中でも下の地位にある。

3次団体の下にも組があり、枝葉の様に広がっているのだが・・・・・・滝川は直参に認められ、自分の名前を看板にした組を、作りたかった。

それには上納金にプラスαをして、本家に近づくパイプを持たなければならない。

やっと若頭になり、さてこれからそのパイプを作る人物に近づこうとしていた矢先の、手下の失態だった。


滝川が若い者に命じたのは、《 メグというキャバ嬢に近づき薬を買って、できれば誰からのルートか探れ 》と言うものだった。

滝川にしてみればキャバ嬢が扱えるほど安全なモノがあれば、横取りして自分達の手に入れさばき儲けようと考えたのだった。


しかし、滝川の考えは泡と消え・・・代わりに起こった現実は、頭を悩ませるものだった。

何を思ったのか若い下っ端は、メグを呼び出し脅して誰から薬を手に入れているのか吐かそうとして、大声を出されて焦った挙句のうえ、襲ったのだった。

パニックになった男は、声を塞ごうとして思わず首を絞めていた所を、目撃されて逃げ帰ってきた。

メグの持っていた薬を持って帰ってきたのはいいが、警察が犯人を捜査している状況。
背後関係も聞き出せず、おまけに目撃者まで居る始末。

「どうするんだよ、八方塞がりじゃねぇーか!!!」

警察の動きで、もし覚醒剤を自分が扱っていたと本家に知られたら・・・・・俺は、本家に殺される。

滝川の1番恐れていることが、それだった。

破門よりも厳しい【 絶縁 】にでもなったら、日本で1番デカいヤクザに敵とみなされ、問答無用で殺される。

ガタガタと身体が震えだすのが、自分でも分かった滝川は声高に吠え出した。

「いいか! こうなったら仕方ない、お前はメグを殺せ!」
「はい!」
「病院に忍び込んで なんとしてでも、殺せ!」
「はい!」

「俺は目撃したって女を、始末する」
2人とも始末すればいい・・・・・・そうすれば、無かった事にできるはず。

「たしか目撃したって女は・・・銀座のウロボロスって宝石店のデザイナーだったな・・・」
コイツの口を塞いじまえば、俺が薬を扱ってるなんてバレやしねぇ〜・・・・・・

そうさ、大丈夫だ・・・・・・バレやしねぇ〜んだからな。。。


すでにそんな単純な事では無くなっている事を、滝川は知らなかった。

まさか目撃した女性が関東最大の情報組織の女帝が、溺愛している娘とは知らなかった。

自分が情報を得た情報屋が、その足で深町に連絡を入れていただなんて、滝川は知らなかった。


引き出しの中から拳銃を取り出した滝川が、手下と一緒に銀座のウロボロスへと向かった。



署に戻った僕達は課長を交えて、組織犯罪対策課と話をしてるんだ。

「新宿はほとんど我孫子会で占められてるぞ。 しかも我孫子会は覚醒剤は御法度だ・・・・」
「え? ヤクザなのに薬を扱わないんですか?」
「おいおい。どこの坊やだよ・・・」

あ、組対の刑事さんに呆れられちゃった・・・・・

「我孫子会は戦前からある組織だが、その頃からすでに薬は御法度になってた」
「へぇ〜・・・」
「だが・・・俺らもその情報は掴んでるんだ」

組対からの話では、我孫子会3次団体の半田組が最近、金回りが良くなっているらしいんだ。
その資金源を探っている組対が掴んだ情報では、若頭の滝川がどうやら御法度に触れたシノギをしているらしい。

他に薬を扱うライバルが出て、滝川が動いてると掴んだ途端、事件が起こったらしい。

「だけどよ、滝川も本家に知れたら破門だろ? 慎重に調べてる最中だと泳がせといたんだが・・・・」
「まてよ、被害者はあんな薄暗い路地にほいほいついてったんだろ? おかしくねぇーか?」
三島課長の大きな声で話し出す。

「キャバ嬢が仕事そっちのけであんな所に行くなんてよ〜・・・・・ん? まさか」
何を思いついたのか、派手な顔を驚きの表情にして僕達を見回す課長。

「客を紹介するとか言いくるめてよ、大量に持ってくるようメグに言って連れ出したとか?」
「課長! それなら目撃者の何かを被害者から取っていったという証言にも合いますね!」

「おいおい、それじゃぁ〜・・・滝川は我孫子会に知られないよう被害者と、目撃者の口を塞ぎにかかるぞ!」
その言葉に僕達は一気に色めき立って、病院と宝石店、そして半田組へのガサ入れへと別れた。

僕は病院班へ、日比野さんは咲耶ちゃんと面識があるからとそちらへ回されて署を出たんだ。



「あら、日比野さん」
「咲耶さん、今から私達があなたの警護に付きます」
「ん〜・・・でも、ボディーガードはいるよ?」

その言葉に咲耶さんの後ろを見れば、すぐ近くにスーツ姿の男性がいる。

警察官バッジを見せ中へと入らせて貰えば、スーツ姿の男性が他に2人いる。

「・・・・・とりあえず座って? どうぞ」
にこやかに私や他の刑事に勧める咲耶さんは、どこか楽しそうで、綺麗なんだよな。

サラサラと流れる黒髪は、艶々で天使の輪っかができてるし、大きな瞳はジッと見つめられたら魅入られそうなほど魅力的。

私と一緒に来た2人の刑事達もあまりの咲耶さんの美貌に、ソワソワしてて・・・

「どうぞ・・・ 紅茶でよろしかったら、喉を潤して下さい」
なんて紅茶を勧められて、頭を掻いてるし・・・・・

「ちょっと竜哉に聞いてみるね」
そう言ってデスクの机にある電話機でかけてる咲耶さんに、その仕草に思わず私は見蕩れてしまう。

「同じ女なんだけどなぁ〜・・・」

そこに居るだけで、華になり、惹かれてしまう人・・・・・・形の美しさだけじゃない、何かを持っている人。
この人に危険が迫っているんだ、気を引き締めて警護しなくちゃ!

『刑事なんか要らねぇ〜だろ、とっとと帰らせろ』
「ねえ、竜哉・・・夕飯のお買い物に行きたいんだけど、ダメ?」
『ダメだ! そこから1歩も出るな』
「・・・・・店の近くのデパートも、ダメ?」
『ダ・メ・だ! しばらくでいい、大人しくしてくれ』
「じゃあ、刑事さん達が居てもいい? 美月ちゃんも居るから、ね?」
『・・・・・・・分かった』

電話を終えた咲耶さんが、ソファーに座り私達がボディーガードと一緒に警護する事を了承してくれた。
男性刑事2人は、ボディーガード3人と話しをしてどこを守るか決めているみたい。

私は婦警として咲耶さんの側で警護する事になっている。

「咲耶さんは私達に構わずお仕事して下さい」
「分かりました」

大きな机に向かう咲耶さんは、白い紙に線を書いていく・・・・・それが宝石のデザインへと形を成していくのは、見ている私が感嘆するほどで・・・・・

「可愛い・・・」
思わず呟いていた。

咲耶さんのデザインはピンクの石に銀で縁取りし、石を包むように銀で模様が作ってある。

指輪? ・・・・・ううん、違う・・・・・ペンダントトップだ。

「うふ、ありがとう! 新宿店用のデザインなの」
色をのせて完成したそのデザイン画を、横に置いて新しい白い紙に向かう咲耶さんは、神々しいほど真剣な顔をしている。

指輪、ペンダント、ピアス、イヤリング、アンクレット・・・・・・次々と出来上がるデザイン画を見ていると、私も1つ欲しいと思ってしまう。

・・・・・・今度のボーナスで買いに行こうかな?

アクセサリーなんて欲しいとは思わなかったのに、咲耶さんのデザインは私を惹きつけてしまう。

「出来上がりはもっと可愛くなるわよ」
「そうなんですか?」
「ええ、このデザインは、そうね・・・1ヶ月ほどで新宿店に並ぶと思うから、見てみてね」
「はい!」

気がつけば窓の外は真っ暗だった。

「咲耶さん、お仕事は何時までですか?」
「もう終わるけど・・・」
「では我々が用意したホテルに泊まっていただいても宜しいでしょうか?」
「・・・・・着替えを取りに戻ってもいい?」
「それは大丈夫です。 では行きましょう」

ボディーガードの2人で車を1台、刑事2人で1台、そしてボディーガードが運転手となり私と咲耶さんが乗り込む1台。
合計3台の車で動くことになった私達。

前と後ろに挟まれた車に咲耶さんを乗せ、私も後部座席の隣に乗り込んだ。
打ち合わせしていたボディーガードが、運転席のドアに手をかけた。

そのとき、パァーンという乾いた音が聞こえ、ボディーガードが崩れるように倒れてしまった。

代わりに運転席のドアを開けた人物がエンジンをかけ、車を走らせようと・・・・・私は銃を出し運転手の頭に標準を合わせ声を出す。

「今すぐ車から出て行きなさい! じゃないと、撃つわよ!」
「う・・・撃たないで!」
「出て行きなさい、早く!」

【 ガチャッ! 】

「え? ・・・・・・うっ!」
横のドアが開いて何かを押し付けられた私は、スタンガンの電流で大きく身体が跳ね ・・・・・・・私の記憶があるのは、そこまでだった。



「大人しくしていろよ!」
そう言った男はスタンガンを私に向けて威嚇している。

気絶した美月ちゃんの頭を膝に乗せ、走ってる車の中から窓の外を見ていた。

美月ちゃんの頭を陰にして、そっと携帯の画面を押した私はそのまま携帯をカバンに入れておいた。

GPS機能のアプリを発信させておけば、竜哉が気付いてくれるはず。

そして、もう1つ・・・・・前の2人に気づかれないように、操作しておく。

あとは時間を稼げばいい・・・・・・竜哉が私を探してくれるはず。

美月ちゃん、大丈夫よ・・・・・一緒に、竜哉とイクオの元に戻ろうね。

私は膝にある美月ちゃんの頭を、優しく撫でていた。



チンピラ達の目に、美しい女が見えた。

その慈愛に満ちた瞳に・・・・・ 優しい手の動きに・・・・・孤独を心に巣くわせる者には、幼き頃の母を見るような憧憬が浮かぶ。

愛に飢えた者には・・・・・・・母の無い子には、焦がれてしまうほどに惹きつけられる姿。


「女の子にスタンガン使うなんて、火傷の痕でも残ったらどうするつもりなの?」

・・・・・・・やんわりと、窘められる声。

「男の子は、女の子には優しくしなきゃダメよ? モテないわよ」

・・・・・・・まるで小さな子に言い聞かせる様な、心のこもった声。

「「すんませんでした」」
男達は素直に、謝っていた。

「そうっすよね、女の子の肌に火傷の跡なんて作っちゃって」
「女に手をあげるのなんか、ゲスなやり方でした」
反省するチンピラ達の畏まった様子に、咲耶はクスクスと笑いだした。

「そうよ、強い男は女の子を守るために力を使うものなのよ」
「「へい!」」
「ところで私達、どこに向かっているの?」
まるでピクニックの行き先を聞いているような、咲耶の楽し気な声にチンピラ達は戸惑うしかない。

「それは・・・・・・」
「・・・・・・えっと」

「・・・・・・私、殺されるのかしら?」
「「・・・・・・」」

「くすっ・・・ 当たったみたいね〜 ・・・ね、お願いがあるの」
「・・・・・・・逃せませんよ?」

クスクス・・・・・小首を傾げて可笑しそうに笑う咲耶。

「私より、この子を逃がしてあげて欲しいの。 ・・・・・今ならあなた達の顔も見てないし、寝ているうちに逃がしてあげて?」
「なんで・・・なんで自分より他人を逃がそうとするんだよ」

「私が目的なんでしょう? なら逃げられない私より、私に巻き込まれてしまった人を助けたいって思うのは、いけない事かしら?」

「ダメだ!」
「兄貴・・・」

「ダメだ! このまま先に行くんだ!」
自分達の目的を急に思い出した男の1人が、大声をだしたがそれは咲耶に絆されそうになる心の裏返しだった。

「ダメか・・・ じゃあ、仕方ないか」

咲耶と美月を乗せた車は、滝川の待つ場所へと走って行った。。。




咲耶と美月が攫われちゃいました!

竜哉とイクオはどうするんでしょうか!

てか、咲耶にメロメロな竜哉はどうなるでしょう!

この続きは、次回③へ!!!
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コメント

☆トナンさんへ☆

こんばんは〜・・・( ´ ▽ ` )ノ

ウロボロス熱が湧いてるうちに書ききっちゃえ!な勢いでした!(笑)
訪問ありがとうございます!

まさかの拉致! 咲耶と美月ちゃん、攫われちゃいましたが次で大丈夫です!

次のお話へ、ささ、どうぞどうぞ。。。

( ^ ^ )/□

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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