③《飛んでけ、矢名家に! 》by吾輩は主婦である。

ははは、続いてます!
《 吾輩は主婦である 》のパラレルです。

今回はまともなタカシくんと陽子ちゃんのお話です。



「ねえ、私のこと小説とかにして書いてもいい? 何かこんな事しまっとくのも勿体無い気がして」
『ワシは構わんぞ。どうせ世間は、フィクションかファンタジーとしか、見んじゃろうからな』
「あ〜良かった! 書いて公募に送って賞でも貰ったらさ、お金になるかなって!」
『お主は、転んでもタダでは起きんのぉ〜』

「それって、褒めてるの? 貶してるの?」
「褒めてるんじゃないの? 陽子ちゃん逞しいから〜」

『奥さん、美味しい煎餅ありがとう・・・美味いのぉ〜』
「お茶もどうぞ〜・・・でも、神様って本当にお爺さんなんですね〜」
『その方が威厳が出るじゃろう? 20歳のギャル男じゃ神の威厳もへったくれもないからのぉ〜』
「ギャル男なの? え?え?え?」

『物の例えじゃ』
カラカラと笑う白ヒゲの爺さんは、和服をきて茶の間で煎餅齧ってるって、何か・・・・・面白い。

「でもね陽子ちゃん! 手っ取り早く宝クジでも当ててもらった方がよくない?」
「お母さん、それは違うと思うんです。 それに依存してダメになりそうだし・・・それに私、書きたくてウズウズしてるから」

「そうよねぇ、タカシがそれを当てにして働かなくなっても、子供達に悪影響だしね」
「そうそう!」
『おっ! 噂の男が帰ってきたぞ。 ではワシは去るぞ』

「あ、また聞きたいことあったら呼ぶね〜」
『次はチーズケーキを所望じゃ』
「分かったよ、用意しとくね〜」

空中に手を振っているとタカシくんがお昼に帰って来た。
ギョッとした顔して私を見てたけど、お昼の用意しなきゃ!

パタパタと台所でお昼の用意をしていると、後ろでお母さんとタカシくんが話してるみたい。



「え? 神様とお茶してたの???」
「そうよ、今度はチーズケーキがいいんだって!」
「なんで? なんで呼び出したの?」

もしかして別の世界に行きたいとか?
やだやだやだ!!! そんなだったら絶対引きとめなきゃ!

「陽子ちゃんがね自分の体験を小説にして公募に送って、賞もらって賞金が欲しいんだって!」
「小説って、書けるの?」
「前の世界ではね、ドラマとか妄想を書いてたんだって!」
「ふぅ〜ん・・・」

へぇ〜〜〜・・・そうなんだ、でも逞しいなぁ〜陽子ちゃん!
転んでもタダでは起きない逞しさだね・・・・・そんな所も、大好きさ☆

「タカシくん、出前一丁でいい?」
「うん、いいよ〜」

読んでみたいな、陽子ちゃんの文章・・・



それから時間を見つけては原稿用紙に書いていった私は、ある程度まで書けてから・・・・・タカシくんに見せようと、寝室で待っていた。

タカシくんが来て私が正座で待っていたから、ビックリしたみたいだけど・・・ 私は構わずに原稿用紙をズズッと差し出した。

「あのね、私がこの世界に来てからのことを書いてみたの。 タカシくんに最初に読んで欲しくて・・・ダメかな」
「僕が最初に読んでいいの?」
「もちろん! タカシくんに読んで欲しいの」
「嬉しいよ! さっそく読んじゃおうっと!」

それからタカシくんが読み終わるまで、ちょっと恥ずかしくて・・・・お風呂に逃げちゃいました。
そろそろと2階に戻れば、今度はタカシくんが正座していて・・・・・怖いほど真剣な顔してるの。

「タカシくん・・・私の文章そんなに可笑しかった?」
「陽子ちゃん、ここに座りなさい」
いつもと違うタカシくんに、嫌な汗をかきながら正座して前に座る私。

「陽子ちゃん・・・」
「・・・・・(どきどき)」
「読ませてもらったよ」
「・・・・・(どきどき、たらぁ〜〜)」

「・・・・・・・素晴らしいよ、陽子ちゃん!!!」
「へ?」
「目覚めてから記憶がなくなった驚きと戸惑いとか、記憶が戻ってほしい家族のプレッシャーとか一気に読んじゃったよ!」
「あの・・・」
「それに夫だった僕に、目覚めてすぐに一目惚れするとか、どんどん好きになってく描写とか・・・嬉しいよ」
「そこら辺は恥ずかしいから・・・・・・やめて」

「それより、どうかな? 出版社の人に見てもらえるレベルかな? 正直に感想教えて?」
「見てもらえるレベルじゃないよ! すぐに出版とかの話しになるよ!」
「え〜・・・それは言い過ぎだよう」

照れちゃうよ・・・ でも、タカシくんからお墨付きもらえたし。
売り込みしなきゃ・・・・・あ、DVDだと喫茶店の近くの《森と泉社》の小松さんて人が出てたっけ。

その人に読んでもらおうかな?
率直な意見も言ってもらって・・・・・明日、電話かけてみようっと!

「読んでもらえるといいね!」
「うん! タカシくん、応援してね!」
「もちろんだよ」

次の日、出版社に電話をかけ小松さんと会う約束を取り付けた私は、ワクワクしながら待っていた。
約束は5時、あとは見せた結果だし・・・・・ワクワクとドキドキで、落ち着かない〜〜〜

「どうしたの陽子さん、何かあったの?」
「あ、タクミくん! 実はね出版社の人に原稿を見てもらう約束してて、それで落ち着かないの!」
「陽子さんて小説書くんだ」
「あははっ! 素人だけどね〜・・・だからプロの意見が聞きたくて」

「うまくいくといいね」
「タクミくんは? 近頃どうなの?」
「俺さ、ホスト辞めたんだ・・・しばらく休んでるから飯食いに行ってもイイ?」
「いいよ! 何かリクエストある?」
「・・・・・親子丼食いたいな」
「OK! じゃあ、今夜は親子丼ね!」
「わぁ〜い♡」

タクミくんが子供みたいに喜ぶから、私も嬉しくてニコニコしてたら後ろから気弱そうな声がかかった。

「あのぉ〜〜〜、電話を下さったのは貴女でしょうか?」
目の前にはDVDで見た通りの、人の良さそうな小松さんが立っていた。

「さっそく拝見してもよろしいですか?」
「お願いします」

あ〜・・・・ドキドキ・・・・・ドキドキ・・・・・・緊張しちゃうぅぅ〜


1枚1枚丁寧に読んでくれてる小松さんに、ケチョンケチョンに言われても受け止めて、書き直そう。
なんて考えてたら、読み終わったみたい、小松さん。

「これを、貴女が書いたんですか? 本当に?」
「はい」
「これは貴女の実体験ですか?」
「はい、それであの・・・・・どこが悪いでしょうか?」

「これは面白いです! 一気に読んじゃいました!」
「はぁ・・・」
「この原稿、お預かりしてもいいですか? 編集長に読ませたいので」
「えっと、それしか無いのでコピー取って渡してもよろしいですか?」
「じゃあ僕がコピーしてきます! 会社がこのすぐ裏なんで、じゃ行ってきます!」
「あ、あの・・・」

行っちゃった・・・・・まあコピーしたら戻って来てくれるか。

「なかなかいい感触じゃない、陽子さん」
「そう思う? タクミくんも見込みありだと思う?」
「ああ! ね、俺にも読ませてよ」
「いいよ、じゃ原稿が戻ってきたらね」

30分もしないうちに戻ってきた小松さん。
その頃にはタカシくんが迎えにきてくれてて・・・・・・一緒に席についた。

「これが元原稿です。確かにお返ししますね」
「はい!・・・あのそれで、私の小説の感想とかお聞きしたいんですが・・・」
「そうですね・・・記憶を失った主婦が、戸惑いながらも周りに馴染もうとする様子を通じて現代を見るというコンセプトは面白いですし、このまま書いていって欲しいです」

「このまま続きを書いていけばいいですか?」
「ええ、お願いします。それでお願いがあるんですが・・・・・ 」
小松さんの真剣な顔に、頷くと・・・・・

「僕を担当にして欲しいんです。お願いします!」
「ええっ!」
「・・・・・・・ダメですかぁ〜」

そうじゃなくて、プロの目に読んで感想聞きたいだけで呼び出してた私は、小松さんの「担当にしてほしい」って言葉は渡りに船で・・・・・

「よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」

小松さん、DVDでも真面目に一生懸命、売り込んだりしてくれてたし、願ってもないわ!

「陽子ちゃん、スゴイじゃない! いやぁ〜・・・将来は作家先生だね、うふっ」
「タカシくん、気が早いよ! でも、自分の書いた物が認めてもらえるのって、嬉しい♡」
「陽子さん、良かったね!」

「小松さん、私の住所とメアドと携番です。これからよろしくお願いします」
「はい、では私は社に戻ります」

小松さんを見送って、私達は帰路につく。
今日はタクミくんも一緒に我が家へ!

さあ、親子丼作るぞぉ〜〜〜!



「あらあらあら、このイケメンどうしたの陽子ちゃん!」
「道で段ボールに入ってたから、拾ってきたの! 名前はねタクミくんです」
「ワン! よろしくワン!」

「違うから、タクミ君もノラないで、母さん信じちゃうから」
「陽子ちゃんて拾い物上手ね〜」
「信じなくていいから、母さん!」

「え、誰このイケメン!?」
「あ! まゆみに手を出すなよ! 俺たちの娘なんだからな!」
まゆみがタクミくんに近づこうとするのをタカシくんが止めてる。

「大丈夫よ、タクミくんはお兄ちゃんなんだから! まゆみ、話してたでしょ? 彼がタクミくんです」
「よろしく〜・・・可愛い妹ができて俺も嬉しいよ」
「きゃぁ〜・・・素敵なお兄さんができて嬉しい〜! お父さん、どいて!」

タカシくんを押しのけた まゆみが、楽しそうにタクミくんをテーブルに座らせてる。

「まゆみぃ〜〜〜」
まゆみに邪険にされたタカシくんが、凹んでるし。

「親子丼♫ 親子丼♫」
台所で親子丼を作り始めた私・・・ じゅんもタクミくんに懐いてるみたい。

皆でサラダと漬物、そして親子丼を賑やかに食べてる間中、タクミくんは微笑んでいた。

「俺さ、この近くに引っ越してこようかな〜」
「そうすれば? すぐそこのアパートとかマンション、空いてるって聞いたよ? そうしたらご飯、食べにおいで」
「・・・・・よし、そうするわ俺。 じゃ、おやすみなさい」
「おやすみ〜」

数日後、我が家の裏手のマンションに越してきたタクミくんの素早さに、私は笑ってしまった。




・・・・・・どうしよう、私はただタカシくんの学生時代の話しとか聞きたくて、やすこさんの家・・・つまりお向かいのクリーニング屋さんにお邪魔したんだけど。

そんな過去があったんだ・・・・・

ヒロシさんに出会うまで優等生だった、やすこさん! 生徒会長で学級委員で英語会話部の部長だったんだって!
一方ヒロシさんは・・・鑑別所あがりで暴走族の総代でヤクザ予備軍の札付きの悪だったなんて・・・

今じゃあ家事育児、お店のことも全部ヒロシさんがやってる主夫なのにね〜・・・
存在感がないほど影が薄いのに、昔はそんなだったんだ。

やすこさんと結婚するために反対する やすこさんの親に、毎日、毎日、土下座して頼んでたなんて・・情熱的よね。
婿養子になるって条件で結婚できたヒロシさんは、人が180度変わって真面目になっちゃったんだって・・・

そして今じゃあED・・・って、やすこさぁ〜〜〜ん、そんな涙と鼻水まみれで9年ご無沙汰って、痛い!腕が痛いから、掴まないで!

「何とかしてよ陽子さん!」
鬼気迫る迫力に押されて、思わずウン!って言っちゃった。

「どうすればいいかな〜・・・ここはDVD通りに、家出よね!」
私は、やすこさんを連れ出し、家に連れ帰った。

2階の寝室に匿って夕飯のミートソーススパゲッティーを差し入れると・・・・・タカシくんが腕組みして私を見てる。

柱に少し寄っかかってる格好が・・・・・・・素敵♡

「なに? どういうこと? 説明して? ・・・・・陽子ちゃん、目がハートだよ?」
「だって寄りかかってるタカシくんも、素敵だなぁ〜って♡」
「んふっ、ありがと。 じゃ下行って説明してね」
「はい」

茶の間に降りてって夕飯を出した私は、やすこさんの事を説明したんだけど。

「「「家出ぇぇ〜〜〜」」」
「うん」
「でもなんで?理由は?」

「昔のように叱ってほしいんだって・・・家出もねヒロシさんの、やすこさんへの愛情を試すためだし!」
「っていうかさ、いつまで泊めるつもり?」
「う〜ん、ヒロシさんが探しにくるまでか、怒鳴り込んでくるまでか、仲直りするまで!」
「ダメダメそんなの〜・・・永久に来ないよ?」

「それなら長期戦になるね!」
「長期戦て・・・・・だって、ね、僕達の寝室だよ?」
「やらしい!」
まゆみが嫌そうに顔を背けるのに、タカシくんが。。。

「ん? 何つった今? おい、聞こえたぞ!」
「やらしくないのよ、まゆみちゃん!貴女がここにいるのは、お父さんとお母さんがチョメチョメしたからなのよ」
お母さん・・・・それフォローになってないような気がします。

「チョメチョメって、なに?」
じゅんの言葉に、茶の間の時間が止まっちゃった・・・・・・

「じゃ、僕はどこで寝ればいいの?」

そうだよね・・・・そうだ!
寝室にお母さんと、やすこさん! 子供部屋に私が布団持ち込んで寝ればいいんじゃない?
タカシくんはお母さんの部屋で、1人で寝てね!

「え〜〜〜!!!」
「はい、決まりぃ〜」
「僕、お母さんと寝たい!」
「いいわよ」
「やったー!!!」
無邪気に喜ぶ じゅんが可愛くて、頭を撫で撫で・・・・・

「あいつらウォーリーやってるよ! 笑ってるよ! ウォーリー探す前に女房探せよ!!!」
「毎晩飲み歩いてるから気がつかないんじゃないの?」

イライラと騒ぐ やすこさんに、まゆみが冷静に突っ込んでる・・・さすが、私の娘!

「ん? ・・・・ねえ、こんなに やすこさん騒いでるなら、向こうにも声が聞こえてるんじゃないの?」
「それもそうね! 声が聞こえてるなら、安心してるわよね!」
「じゃあ、どうするんだよ! どうするんだよぉぉ〜〜〜」

「今夜は取りあえず寝ようよ! 明日またプラン変更で考え直すから!」
「頼むよう〜〜〜 陽子さん!」
「じゃ、まゆみ・・・寝ようか!」
「はぁ〜い」

その日は、じゅんと一緒に寝ようとして、まゆみも入ってきたから布団を足して3人で寝ました。
狭いけど暖かくて、ぐっすり眠れたんだ♡

「明日も僕、お母さんと寝たい!」
「私も〜!」
朝食を食べている時に子供達が嬉しそうに言うのを、タカシくんが羨ましそうに見てるんだけど。

この嬉しそうな子供達の顔に負けて、3日間一緒に寝たんです。
やすこさんも意地になってて、帰らないって言ってるし。

タカシくんがイライラしてきちゃってるし・・・・・

「じゃあ、タカシくんに仲裁してもらってもいい?」
「なんで、僕が?」
「幼馴染で2人のこと真近で見てきたの、タカシくんじゃない! だから、お願い」
「え〜・・・」
渋るタカシくんに耳元で、囁いてみた。

「2人が仲直りして、やすこさんが帰ったら・・・・・・私も寝室に戻れるよ?」
「あ・・・ そうだね、僕頑張るね、陽子ちゃん!」
「うん! 」

はりきってるタカシくんが、やすこさんとヒロシさんの2人の仲を取り持とうと、話し合いが行われた。
いろいろ話し合っててもヒロシさんの人の良さに、昔の悪なオーラは戻らず、失敗。

ただ・・・イラついてきたタカシくんが、やすこさんをソファーに押した時に話しが急変したの!

ヒロシさんがタカシくんの腹に膝蹴りを1発お見舞いして、昔の口調に戻ってた。
そうしたらEDも治ったみたいで、私は慌ててタカシくんを抱えて帰ったんだ。


次の日、ガラリと様子の変わった やすこさんとヒロシさんがお店を休んで、動物園デートに行ったのも微笑ましいくらい幸せそうで。。。

「良かったね、タカシくん!」
「・・・・・そうだね」

蹴りを受けたお腹が痛くて、一晩中ウンウン唸ってたタカシくんはゲッソリとしてる。
お腹が痛くてエッチも出来なかったし、タカシくん凹んでるし・・・これは何か考えないと。

子供達が先に行ったのを見計らい、お母さんも洗い物してるし、よし今だ!
玄関にいた しょぼんとしたタカシくんのホッペにチュッ☆としたら、嬉しそうに笑ってくれた。

「陽子ちゃん・・・」
「タカシくん、行ってらっしゃい!」
「行ってくるね!」

私も家事を済ませてからジャンバルジャンに出勤だわ!

「陽子ちゃん! 今夜の夕飯は私がしておくから、タカシとどこかデートに行ってきたら?」
「お母さん、じゃあ・・・そうさせて頂きます」
「はいはい、行ってらっしゃい!」

うふふ〜・・・タカシくんにも後で連絡しておこうっと!

パートを終えて迎えにきたタカシくんは、私服になってて自転車も乗ってない。

「久しぶりのデートだろ? 制服じゃあムードでないじゃん!」
「ありがとうタカシくん。 どこに行こうか? タカシくんが決めて」
「映画にしようか? 見たいのあるんだ」
「じゃ、そうしよう?」

初めてタカシくんと映画に行ったんだけど、恋愛物で・・・・・タカシくんの肩にもたれて見てました。
その後はラブラブ気分で・・・・・ラブホに、うふふ。

「あ・・・陽子ちゃん! イイッ! そんな・・・・ああっ」
「うふ・・・タカシくん♡」
「んっ・・・すごいよ・・・・陽子ちゃんっっ!!!」
「まぁ〜だ、まだだよ・・・・タカシくん♡」

久しぶりなのは私も一緒だよ、タカシくん!
だから・・・・・一緒に、天国に行こうね!

「もう、陽子ちゃんたら・・・・・凄いんだからぁ〜」

仲良くした後は、お母さんや子供達にお土産のケーキを買って家路につきました。




「矢名さん、掲載が決まりました!」
叫びながらジャンバルジャンに入ってきた小松さんは、嬉しそうに私にそう言ったの。

「掲載? 私の書いた物が?」
「ええ、そうですよ! 2ページ分ぶん取りましたから、この前の最初の話しで纏めて頂きたいです」
「本当ですか? 嬉しいです。 あ、いつまでに纏めればいいですか?」
「えっと、一応ですね・・・ゲラ原稿上げてきました。チェックして下さい」
「はい」

水曜が締め切りで、次の週の水曜が発売日なんだ・・・・・ん? 週刊誌なんだ・・・・

「はい、うちの女性誌で『週間タブン』がありまして、そこに載ります! アンケートで好評なら連載も考えられます」
「連載も? うわ〜・・・そうなるといいなぁ〜」
「頑張りましょう!!!」
「じゃあ、最初の病院で目覚める所から・・・・ああ、ここまでで纏めればいいんですね!」
「3行オーバーしてるんで、よろしくお願いします」
「はい!」

家に帰ってから、もらったゲラ原稿に手を入れて纏めて・・・・・次の日、小松さんに渡したの。
そうして一週間後・・・・・女性タブンに、私の文章が・・・・・載ったの〜〜〜!!!

読者アンケートでは下から数えた方が早いけど、1回目ではなかなか良い順位なんだって!

「社内では矢名さんの書いた文章、すごく好評です! 編集長も好きで・・・・・なので」
「なので?」
「連載、決定しました!!!」

「えええ〜〜〜」

連載? 私の文章が連載? 連載〜〜〜!!!

「陽子ちゃん、やったじゃん! 連載って、すごいじゃん!!!」
「タカシくん・・・・・私・・・・連載?」
「そうだよ、連載だよ! やったね!」

一緒に喜んでくれるタカシくんと手を取り合って、私は・・・・・嬉しさを噛み締めた!
こうやって自分の事のように喜んでくれる人が居るのって、いいよね。。。

「何泣いてるの、陽子ちゃん」
「だって・・・一緒にタカシくんが喜んでくれるのが・・・・・嬉しいの」
「お祝いしよう! ね、皆でお祝いしよう!」

そうして皆に祝ってもらって、私は小説を書くことになりました。

タイトルは・・・《記憶のない、恋》

突然の事故で記憶が無くなった主婦が、周りの環境や出来事に戸惑いつつも順応していく様子を書き綴るんだけど。

病院に付き添っていた夫に一目惚れしてしまう様子も赤裸々に書いちゃいました!
読者アンケートでも順調に票を集めていて、ほんと怖いくらい順調なの。

ただ・・・ ただね、手書きだと今の時流に乗ってないそうで・・・・・パソンコがいるんだって。

でも私、前の世界でもパソンコ使えないし〜〜〜、持ってないし〜〜〜、買うには高いし〜〜〜。。。

どうしよう? ・・・ タカシくんに相談だよね?

「・・・・・・買おう! お買い物だ!!!」
「ありがとう、タカシくん!」

赤いノートパソコンを買って家に帰ったけど、これから設定とか、設定とか、設定とかあるんだよね、ふぅ〜〜〜

分厚い解説書を何冊も積んで・・・・・・目を回した私に、タカシくんが慌てて自分がすると言ってくれた。
2階の寝室で設定を説明しながらしてくれるタカシくん。

その横顔に、うっとり。。。

「これで初期設定は完了だ。何か書いてみる?」
「ローマ字入力なら大丈夫なんだけど、これを縦書きとかにするにはどうすれば良いの?」
「ああ、それはね・・・・・こうしたら・・・・・OK!」
「わぁ〜・・・スゴイ! タカシくんスゴイ!」
手を叩いてタカシくんを見ていれば、照れたタカシくんがニッコリと微笑んでる。

「分からない所があったら教えてあげるね」
「頼りにしてます!」

自分でも本を読んで勉強しなくちゃ!

「ねぇ・・・陽子ちゃん。 今夜もう寝ようよ!」
「もう遅いしね・・・そうだね、寝ようか」
「こっちおいでよ・・・」
布団をまくって横を示すタカシくんに、私も照れながら入り込む。

「今夜はこうやって寝ようか・・・」
「あったかいね、おやすみ」
「おやすみ」
タカシくんの温もりに、すぐに眠りについた。


それからはジャンバルジャンのパートに、原稿の締め切り、家事などなど忙しい日々が過ぎていった。
そんなある日、不動産屋からマンションを買いたいという人がいると連絡があって、私とタカシくんが部屋の中を見せに行ったんだけど。

「ここが・・・陽子さんと子供達が過ごしたマンションなんだ」
「1年ちょっとしか居られなかったけどね」
「・・・・・・・ねえタカシくん、ここ本当に売っちゃうの?」
「ええ?」

「まゆみや じゅんやタカシくんが陽子さんと過ごした場所でしょ? 売っていいの?」
「陽子ちゃん、売ることを決めたのは陽子なんだよ?」
「でも・・・・・陽子さんもまさか自分が居なくなるとは思ってなかったはずよ?」

「私、頑張るから! パートや原稿料とか少しだけど足しにはなるはずだよね?」
「陽子ちゃん・・・・・」

その時、不動産屋と買い手の男性が入って来て中を見始めたけど、男性は気に入ったみたいでこっちの言い値の2千万で買ってくれるそうだ。

「少し・・・少し考えさせて下さい」
私の必死の目にタカシくんがそう言ってくれた。

不動産屋は査定で1200万な所を2000万で買ってくれるのに、何を迷うのかと言うけれどここは!
ここは子供達には陽子さんとの思い出の場所で・・・・・・・

残してあげたい・・・・・・・そう、思うの。

買い手の男性は、朝野さんて言うんだけど 《夜しずか》というペンネームで100万部の本を書いた作家さんだった。
このマンションは仕事場にと購入を検討していて、税金対策なんだって!

自宅は別にあるからって話しだから、豪勢な話しよね!

でも・・・・・・どうしよう。

家に帰ってきてからもタカシくんと話してるんだけど・・・・・・売るか売らないかの話しで。

「じゃあさ、賃貸にしたら? 毎月のローン分を家賃にして払ってもらえばいいんじゃない?」
「タクミくん! 頭良いっ!!!」
「それで向こうと話してみたら? 別に税金対策で買おうとしてるなら、賃貸でも大丈夫じゃない?」
「よし、それで話してみよう!」

夕飯を食べに来たタクミくんと、食卓を囲みながら食べてるんだけど・・・・・ふふっ。

まゆみも じゅんもタクミくんに懐いて、まるで本当の兄妹みたい!

「タクミくんは今、何やってるの?」
「俺さ、もともと劇団入ってるんだ。でも弱小で食えないからホストで金貯めてたんだけどさ」

「今は劇団に戻って稽古して、ドラマのオーディションとか受けてる」
「そうなんだ・・・・・頑張ってるんだね。偉い、偉い」

タクミくんの頭を撫でてると、じゅんが「僕も宿題したよ!」って言ってくる。

「じゅんも偉いよ!」
じゅんの頭を撫でれば、2人とも同じような笑顔になった。

「そうだ、夜しずかって人は何を書いたの?」
「キャミソールって本だよ。店にあるんじゃないかな」

店を探せば出てきた・・・・・・・読んでみようっと!

タクミくんが帰って、子供達も寝たあと本を読んでみた。

・・・・・・・・読みやすい文章、10代の挫折や葛藤や若さゆえの悩みとか見事に書いてあるんだよね。
でも、なんだろう? 心に引っかからないんだよね。

サラサラと読めて、感動して?終わり!みたいな。。。

でも文体とかスゴイから、私も勉強させてもらおうっと!



そして賃貸の話しをするのにマンションに行けば、すでに家具とか買い揃えてあって・・・・・ビックリした。

「すみません、ここ気に入っちゃってて・・・家具とかも選んじゃいました」
「お話があって来ました」

私は自分が記憶喪失だということから全て、書いてある原稿を彼に読んでもらった。

「あ、これ・・・読んでます。週間タブンさんで連載されてるの・・・・・これ、あなたが書いてるんですか?」
「はい」
「もしかしてこれ・・・・あなたの実体験なんですか? フィクションだと思ってた」
「まあ、普通は・・・ そう思いますよね、でも私のことなんです」

「それでここは、まゆみや じゅんがお母さんと暮らしてた思い出の場所なんです。 残してあげたいんです! 賃貸で朝野さんに貸すというのは如何でしょうか?」
「僕それでもいいですよ! どうせ住む所は別なんだし、税金対策ですし・・・」

「そんなに本が売れたんですか〜」
「ええ、100万部ほど・・・ でも僕、もう書けないんですよね」
「??? どうしてですか」

それだけ売れた本を書けたのなら、次々と書いても話題にはなるし、技量もあるから売れるんじゃないのかな?

「ええ、僕もそう思います。でも僕の文章って読みやすくて綺麗な文章で、技巧もあってある程度感動もできるんですが・・・・・・ 毒がないんですよ」
「自分で分かってたんだ」
「ええ・・・ 分かってます」

「無理しなくてもいいんじゃないですか? 書きたいっていうのは心の欲求ですし、私も今は自分の事を書く欲求に突き動かされて書いてますから!」

「心に欲求が無いっていうのは、きっと今あなたは満たされてるんですよ! それって、幸せな事だと思いませんか? 」
「幸せ?」
「そうそう! 私は自分の文章を認められたいし、お金が稼げたら家族の為にもなるし、何より書きたくて!」
「凄いですね」

「それにこんな体験、ネタにしないと勿体無いじゃないですか!」
「勿体無い・・・・・」

「そうですよ! 誰でもするって体験でもないし、何かに残しておきたいし、もしこれが本にでもなったら楽しいじゃないですか!」
「楽しい・・・」

「それにそれに何かの賞でも取って賞金!なんてことになったら、家族の為にもなるし! この体験も無駄じゃなかったって思えるじゃないですか〜」
「・・・・・・逞ましいですね」

「よく言われます!」
「僕にはその逞しさがないんです。 先生、僕を先生のアシスタントにして下さい!」
「へ?」
「先生の逞しさを見習いたいんです!」
「え? えええ???」

「お願いします! ここを先生の書斎にして頂いて構わないので、賃貸の事もOKです! 僕を先生のお側に置いて下さい!!!」
「・・・・・・・はあ」

100万部の本が売れた大先生は朝野さんの方だよね。

私なんかで良いんですか?
私なんかの側で何か、見習うことがあるんですか?

「はい!」
「じゃあ、アシスタント?って何か分かりませんが、よろしくお願いします」
「こちらこそ、先生!」

えっと、何が朝野さんの琴線に触れたのか分かりませんが、彼は私のアシスタントになってくれるそうです。

そして夕方、朝野さんもタクミくんも交えてのお夕飯です。

はっきり言って、狭いです。

でも、座る所は狭くても、ありふれたオカズがご馳走になる・・・ それは皆が笑顔だから!

笑顔の食卓って、それだけでご飯が美味しいもん♡

幸せだねぇ〜〜〜・・・




何かほのぼのするお話が、書いてて楽しいです。
お話の中のドラマのエピソードは、順不動です。
書きたいエピソードから勝手に書いてますから(笑)

ドラマ見てない方のほうが多いと思うのですが、ご了承くださいませ。
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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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