①《飛んでけ、矢名家に》by 吾輩は主婦である。

はい、吾輩は主婦である。のパロディです。
パラレルワールドというか、まあ、好き放題です(笑)

お正月ということで、こんななんでもありな話しでもアップしていいかな?と(笑)

吾輩は主婦である、というドラマは昼ドラを初めて宮藤官九郎さんが脚本を書いたドラマなんです。

昼ドラの嫉妬や愛憎とは違って、突然、会社を辞めた夫(及川さん)にお金に悩んだ主婦(斉藤由貴さん)が旧千円札の夏目漱石に取り憑かれちゃうというものです。

主演の主婦・矢名みどり・を、斉藤由貴さん。
その夫の・矢名たかし・を、及川さんがしてます。

お話はドラマ沿いだったりもしますが、別物のパラレルワールドと思って楽しんでいただけたら嬉しいです。



「あ〜・・・吾輩は主婦であるのミッチー可愛い〜」
最近手に入れたDVDに夢中な私は、何がいけなかったんだろうか?

『別に何も悪くないがの? 強いて言えば ・・・・・・・ワシかな?』
「誰あんた!」
『ワシか? ワシはな・・・・・神様じゃ』

「さようなら」
変な人には関わらない方がいい! うん、逃げよう!

『覚えておらんか? お前は事故で死んだのじゃ・・・・・陽子』
「え?」
その言葉で蘇る記憶は・・・・・コンビニに行く途中で、暴走したトラックが自分に向かってくる記憶。

自分に触れる寸前のどアップなトラックって、マズイじゃん。。。
あの距離で逃げられるわけないし・・・・ってことは、跳ねられて一巻の終わり???

『すまんの、ワシの手違いでお前の寿命が終わってしまったんじゃ・・・』
「え? じゃあ、一人息子はどうなの? 旦那は? 姑は? 両親は」

『後のフォローはワシがうまいことしておく・・・・が、お前のことじゃ』
「事故の前に戻れるとかはないの?」

『それはできん。すでにお前の葬儀も終わっておる』
「え〜〜〜・・・じゃ、私って宙ぶらりんじゃん!」

『そこでじゃ、お前の好きな世界に飛ばしてやろう! そこで生き直すがいい、じゃあな』
「は? はぁあああ????」

真っ白い光に包まれたかたと思えば、私は気が遠くなって・・・・・・・って、どこに飛ばされるのよ私はぁぁ〜〜〜

『大丈夫じゃ、お前の大好きな世界に飛ばしてやろう・・・ひゃひゃひゃ』
ジジイの高笑いが腹立たしくて、ムカついた。


「だから、どこだって聞いてんだよっ!!!」
「わっ、ビックリした!」
「え?」

え?え? 此処どこ? ベットに寝てる? はあ???
どこかの部屋の中・・・・・病室!?で、寝かされてる私を覗き込んでいるのは・・・・・ミッチー!!!

え? 何が起こったの? どうしてミッチーの麗しい顔が私を覗き込んでるの?
嬉しいよ、大ファンだもん嬉しいよ!

・・・・・・・・それにしても、綺麗な顔だな〜・・・・・いつまでも見ていたい・・・・・

「陽子ちゃん、分かる? ここ病院だよ! 君さ、突然倒れちゃったんだよ? 何があったの?」
「倒れた? 私が?」

「そうだよ、僕が帰ってきたら台所で倒れてるからビックリしたんだよ〜〜〜」
え?この言い方って、ミッチーでもないし、妙に知ってるし・・・・・はてさて、役柄の誰かなの?

「なに? なんで僕を見つめてるのさ?」
「・・・・・・あなたは、誰ですか?」

「えええ??? 頭打った? 頭打ったんだね!」
慌てて先生〜と叫んで出て行った彼は、もしかして・・・・・タカシくん?

吾輩は主婦である・・・の、中の登場人物であるタカシくんだとしたら、まさか・・・・・まさか!?

よろよろとベットから降りた私は、ドアの近くの小さな鏡を覗き込み・・・・・・・そこに写っているのは。。。

「斉藤由貴だ・・・・・しかもDVDの時より若返ってるし、っていうか斉藤由貴、可愛いよね〜」
アイドルだったんだよね、私も同じ年代だしドラマも見てたなぁ〜〜〜・・・・・

スケバン刑事! 漫画の方が好きで先に見てたけど、ドラマになって嬉しかったな〜。。。

じゃなくて! ・・・・そうじゃなくて! あのジジイ、この世界に飛ばしたのか。。。

・・・・・ っていうかさ、じゃあこの世界にいた元々の「みどりさん」は、どこに行ったの!

私は、どうすればいいのよ! 漱石の真似しないといけないの?

あれ? そういえばさっき・・・・「みどりちゃん」じゃなくて、私の名前を呼んでたよね?

違ったっけ?

ズキッ・・・・・ズキズキズキッ!

「痛い・・・・・・痛いっ! 頭が痛いっ」
割れるよぉ〜・・・・・頭が割れるように痛いよぉ〜・・・・痛くて、涙が出てくるよぉ〜・・・・・・

「あ、陽子ちゃん! 痛いの?先生来るからね、来るからね!」

痛さのあまりその場に蹲った私に、オロオロとタカシくんが様子を伺っているのが分かって・・・・顔を向けた。

「痛いよぉ〜・・・頭が・・・・・痛い・・・・・」
ポロポロと痛みで涙が出てくる私を、タカシくんが呆然と見てるのは、なんで?

「こんな時だけど・・・・・・陽子ちゃん、可愛い」
「・・・・・・・いたい・・・」

そしてまた、私は意識を・・・・・・失った。




「先生、あんなに頭を痛がるなんて、どこか悪い所があるんじゃないんですか!」
「MRIも撮りましたが、そんな様子は見れませんでしたね、今晩はここに入院していただいて明日別の検査をしましょう」
「お願いします」

診察室で向かい合う医師とタカシ。

「それと・・・・彼女が僕を見たとき、誰だか分からなかったみたいなんです」
「夫の貴方をですか?」
「ええ・・・・気のせいかもしれないんですがね!」

タカシのその言葉に医師の顔が、曇った。

「・・・・・・意識が戻りしだいカウンセリングをしてみましょう」
「カウンセリングですか?」
「ええ、外的な要因が無いときは、内的なものも検査しないと」
「・・・・・お願いします」


そんなやりとりがあった中、私は目を覚まし・・・・・再びミッチーの麗しい顔のアップに、うっとりとしちゃう・・・・

「えっと、陽子ちゃん? 僕を見てうっとりしてるの?」
「うん♡」
「僕は誰ですか?」
「分かりません!」

「笑顔で言うけど、本当に僕のこと・・・・分からないの???」
「はい!」

「カウンセリングですね」
医師に連れられて行った陽子ちゃんに、僕は不安を覚えていた。



「記憶喪失ですね」
「はあ???」
いやいや、記憶喪失とかじゃなくてパラレルワールドに入り込んだんだって!!!・・・・・・なんて言えるわけないや。

「先生、記憶喪失って・・・・どういうことなんですか!」
「彼女の場合、解離性記憶喪失といって普通に記憶を無くしたというものじゃ無いんです」

「眠っていた別の人格が何事かの出来事で表面化したというもので、早い話が彼女は貴方の今まで知っていた人とは別人なんです」
「別人・・・・・・」

お医者さんが私に向かって、さっきも聞いてきたことをもう1度繰り返した。

「あなたの年齢、名前をどうぞ」
「鈴木陽子、45歳」
「ではこの方が夫だと見覚えは? この方の名前は?」
「・・・・・・・見覚えはありません。 名前も知りません」

「では昨日まで、あなたの生活環境はどういったものでしたか?」
話せないよね? さっきもそうだけど自分の昨日までの生活なんて、話せないよね!!!

「・・・・・・覚えてません」
っこれを言うのが、精一杯だよぉぉ〜〜〜

コンビニ行く途中でトラックに跳ねられて、謎のジジイにこの世界に飛ばされたなんて・・・・言えっこないじゃんよぉぉ〜〜〜!!!

これからどうなるの? 頭がおかしいって何処かの病院に隔離されて、人体実験とかされちゃうのぉ〜〜〜

「そんなことしないよ? 一緒に家に帰ろう?」
「家?」
「そうだよ・・・・・あ、泣かなくていいからね」
「・・・・・・だって、何にも分かんない・・・・・・分かんないよぉ〜」

いきなりこんな事になって、でも目の前のタカシくんが優しく微笑んでくれて・・・・・・一気に涙腺が崩壊しちゃった・・・・・

「大丈夫だから・・・・ね」
「うぅぅ・・・・・うぇ・・・ひっく・・・・」
抱きしめてくれる身体が暖かくて、その暖かさが心に染みて・・・・・抱きついて泣いちゃった。

「ごめんなさい・・・・」
「ううん、いいんだよ」
病院のロビーで2人で缶コーヒーを飲みながら、さっきの醜態が恥ずかしくて謝っちゃう私。

そんな泣くようなタイプじゃないのに、私ったら子供みたいに泣いちゃって・・・・ああ、恥ずかしい。
でも、本当に私はどうしたらいいんだろう?

「僕はね矢名タカシって言うんだ、陽子ちゃんにはタカシくんって呼ばれてた」
「タカシくん・・・」
「そ、僕の事はそう呼んでね?」
「私はタカシくんと結婚して何年ですか?」
「15年になるよ」

「15年・・・・・」
「僕達にはね中2の娘と小3の息子がいてね、まゆみと、じゅんって言うんだ」
「まゆみちゃんと、じゅんくん・・・」

「んんっ、違うよ。 まゆみと、じゅんでいいんだ」
「でも・・・・・」
私にとっては初対面だし、いきなり呼び捨てって、言えるかな・・・・・

「大丈夫だから。 僕は帰るけど、明日また来るからね?」

帰るって単語に反応して、急に寂しくなった私はタカシくんのシャツの裾を掴んでしまう。

「陽子ちゃん・・・・・ 明日さ、なるべく早く来るから」
じっと見つめてくれるタカシくんの目が、優しくて・・・・・コクンと頷いて、手を離した。

「なんか陽子ちゃん、可愛いね」
「そんな事ないから! 私・・・可愛くないから」
「可愛いって言われて照れてる〜」
「違う! ちーがーうー!!!」
そんなジャレてる時は楽しくて、タカシくんの笑顔を見送って病室に戻ったら・・・・・・途端に押し寄せる孤独感。


取り敢えず・・・・・整理しよう。
私は向こうの世界で、死んで・・・・・この世界に来た。

しかも見た目は若返ってる斉藤由貴で、自分でも可愛いなぁ〜とか思ってる。
年齢も37歳と、向こうにいる時より若返ってるし・・・・・・

でもドラマの中なら私が乗り移ってるのは、タカシくんの奥さんの《みどりさん》なんだど、どういうわけか自分の名前で呼ばれてて・・・・・何でだろう?

『ひゃひゃひゃ・・・・・大ファンなタカシくんに、ウットリじゃのぉ〜』
「・・・・・ジジイ!!!」

私は病室の隅に現れたジジイに駆け寄り、何をするのかと怒りまくったが、当の本人は飄々と私の怒りを流してやがる!!!

『お前が見ていたDVDに1番近い世界ということで、全くそっくりというわけではないのじゃ』
「そうなんだ・・・・・」
『だからの、お前はそのまま気負わずに、この世界で生きなさい』
「でも・・・・・」
『それが元の世界にいられなくしたワシからの、罪滅ぼしじゃよ。 ではな!』

唐突に消えたジジイ・・・もとい、神様の言葉どおり・・・気負わずに生きてみようかな、この世界で。
そう思って、眠りについた私だけど・・・・・・

はぁ〜・・・ 眠れない。。。

やっと眠れたのは朝方で、次の日の朝早くに来たタカシくんに起こされてしまいました。

「あれ? 陽子ちゃん眠れなかったの?」
「あ・・・うん、何か色々考えると不安で、目が冴えちゃって・・・」
「ごめんね、もっと寝てていいから・・・・・」
「ありがとう」

着替えとか保険証とか、色々と持ってきてくれたタカシくんが、嬉しくて・・・・・私に背中を向けて、屈んで何かしてる隙に、シャツ1枚の背中に、そっと触れてみた。

「ん? なに?」
「ううん・・・何でもないんだ」
「なになに? 昨日は寂しかったの?」
「・・・・・・・うん」

そう・・・寂しかったんだよね、この世界にたった1人放り込まれて・・・明日からどうすればいいのかって漠然とした大きな不安が離れなくて。

眠れなくて・・・・・・人の温もりがほしくて、ついタカシくんに触りたくなって・・・・・
寂しかったかと問われて、素直にうん!て答えちゃった。

「・・・・・・可愛い」
呟くタカシくんは、ベットのそばに座り私の手を握ってくれた。

「こうしてるから、少し寝なよ」
「うん」
タカシくんの手の温もりにすぐに眠くなっちゃった。


「おはよう!」
「・・・・・タカシくん」

ぐっすり眠った感じだけど時計を見たら1時間しか経ってなかった・・・・・って、あれ?
まだ繋いでる手を見て、ずっと手を握っててくれたことに気がついた。

「・・・・・・ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
手を離せばずっと同じ体勢でいたタカシくんが、痺れた〜〜〜って騒いでて・・・・・申し訳ないのに笑ってしまった。

タカシくんの優しさに涙がでて、泣き笑いの顔になった私・・・・・・どうしよう、タカシくんが好きだよ。

「・・・・・んもう、泣かないの」
「はい」
涙を拭っていると先生に呼ばれて、看護師さんに案内されてついて行く。

問診を受けて、痛みも吐き気も何もないと言えば退院だと言われた。

「ただし、あなたの場合は特殊なケースですので定期的に通院して下さい」
「はい」
「予約はこちらで取りますが、カウンセラーの先生による経過観察になります」
「・・・・・・はい」
「心配しないで下さい。あなたの心のケアが目的ですので」

診察室を後にして、私は病室に帰ったけど・・・・・・此処をでて私はどこに帰るんだろう?

「家に帰るんだよ? 当たり前だろ?」
「でも私は・・・・・前とは違うから」
「大丈夫だから・・・ちゃんと家族で話し合ったんだよ」

そういうタカシくんに連れられて、矢名家に帰ってきた私はドキドキしながら古本屋のサッシのドアを開けた。
ここはタカシくんの実家の古本屋なんだ。

レコード会社を辞めたタカシくんを強引に引っ越してきたのは、前の私・・・・・・・マンションを売ろうと考えた結果だった。

でも、私は前とは違う人格になってしまった・・・・・そんな事を家族が受け入れるんだろうか?
お母さんの見た目に中は別の人格・・・・・そんなややこしい事を、受け入れるんだろうか?

ああ、胃が痛くなってきたよぉぉ〜〜〜

隣を見ればタカシくんがウキウキしてるし。

「ほらっ、皆〜〜〜・・・陽子ちゃんが帰ってきたよ〜〜〜」
タカシくんの声にDVDでみた面々が出てきた。

じゅん、まゆみ、姑のちよこさん・・・・・矢名家の家族が、私を見て・・・・・・笑顔で迎えてくれた。

「陽子ちゃん、皆はね陽子ちゃんが前と違う人だとしても、一緒に居たいって言ってるんだよ」
ニコニコと笑顔で出迎えてくれる皆に、私は頭を下げた。

「よろしくお願いします」
「大丈夫だよ、お母さん」
「お母さん!」
抱きついてきた じゅんを受け止め抱きしめながら、私は受け入れてくれた家族のために頑張ろうと、誓った。

皆で家の中に入れば、うわぁお!!! DVDで見たままの古本屋があった。
茶の間に上がって、キョロキョロとする私を台所や、ちよこさんの部屋に案内したタカシくん。

「2階も見てみようか?」
「2階?」
確か映像特典のDVDだと、セットとしては階段は茶の間の横についてるけど、2階の部屋は茶の間の横に並んでるって聞いたんだけど・・・・・・

ちゃんと階段を上がった上に部屋があった・・・・・あはは、当たり前だよね。

「ここは子供達の部屋だよ」
襖を開ければ子供達の部屋で、ベットが2つ、机が2つ入っていっぱいになってる。

一通り見て外に出れば、向かいは・・・・・・夫婦の寝室だと言われた。

中は箪笥と鏡台・・・・・夜は布団を敷いて寝てるんだって・・・・・
DVDでは見てるけど、本当に私はこの世界に来たんだなぁ〜って、初めて実感した。

「何か思い出す?」
「・・・・・何も。 ・・・・・ごめんなさい」
っていうか、別人格だって言われなかった? 記憶を求められても、出てこないよ・・・・・

「あ、そうか・・・別の人だって医者に言われたっけ」
「・・・・・・ごめんなさい」
「陽子ちゃん・・・・」

「私なんかがこの体に居て、ごめんなさい。 皆が求めてるのは私じゃないのに、ごめんなさい」

昨日からずっと考えてた・・・・・・
いきなり中身が違う人格とか言われても、ここの人達は優しいから受け入れてくれるんだろう・・・・・

さっきの笑顔の皆が、DVDで見た皆とそっくりで・・・・・胸に申し訳なさが押し寄せてきちゃった。

「記憶を無くしたんじゃなくて、私は別の人で・・・ 皆が求めてるのは、前の陽子さんで・・・・・」
「陽子ちゃん・・・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・・」
俯く私の背をタカシくんがさすってくれて、思わずまた泣いちゃった。

『ぐすっ・・・チィーん』
『おばあちゃん、鼻かんだら聞こえちゃうよ!』
『お母さんも泣いてるよ?』

【 ガラッ!!! 】

「何やってんの、皆で」
タカシくんが襖を開けたら、まゆみ、じゅん、ちよこさんが立ってて、ちよこさんはティッシュで鼻をかんでた。

「お母さん、泣かないで!」
ぽすん、とじゅんが抱きついてくれて・・・・・子供の小さな身体が、今はもう戻れない元の世界の息子と重なって・・・・・・抱きしめた。

「お母さんは悪くないよ、悪くないよ」
「・・・・・・・ありがとう」
たぶん、意味が分かってないんだろうけど・・・・それでも励ましてくれる気持ちが嬉しい。

「私もよく分からないけど、でもお母さんはお母さんだから・・・・悲しまないで」
「ありがとう」
優しい子だな〜・・・それに可愛いし、私こういう娘ほしかったんだ。

「陽子さん、そんな不安にならないで! 今はね、病み上がりだから元気になってから考えましょ」
「ありがとうございます」
明るい笑顔で言ってくれる、ちよこさんに有り難かった。

「ね、何か入れない?」
ちよこさんの言葉で、皆でご飯を食べることになった私は涙を拭いて手伝おうとして・・・・・・

子供達と ちよこさん部屋を出て行って、タカシくんが襖を閉めて・・・・・・私を抱きしめてくれた。

「タカシくん、私・・・手伝いに行きたい」
「うん、でも少しこのままで・・・・ね」
「・・・・・うん」

タカシくんに抱きしめられてると、何だか落ち着く。。。




そのまま日が過ぎて、私は矢名家での生活に徐々に慣れ始めていった。
大家族で囲む朝食の仕度も慣れてきたんだけど、都合の良いことに私の味付けは《陽子さん》と一緒らしくてホッとした。

「さあさ、朝ごはんよぉ〜」
「「「いただきまぁーす」」」
皆で食べる朝ごはんが美味しいね〜・・・

あれ? そういえばDVDなら向かいのクリーニング屋さんの娘の やすこさんが、毎朝食べに来るのに・・・・・こないよ?

「ああ、やすこは我が家に出入り禁止にしたんだ」
「え?そうなの?」
「そうだよ、毎朝他人のウチに食べに来るなんて事が、そもそもおかしいんだから!」

「陽子ちゃんは気にしなくていいの! さ、ご飯食べよう!」
「うん・・・あ、ご飯よそうね」
「うん!」

その頃、出入り禁止になった やすこが、私の秘密を暴露しようと何事か考えてるなんて知らなかった・・・・・



夜、寝室でタカシさんと2人でいると・・・・・

「ねえ、陽子ちゃん・・・・・聞いてもいいかな」
「なに?」
「陽子ちゃんは、僕のこと好き?」
何でそんなズバリ聞くのよ〜〜〜・・・恥ずかしくて真っ赤になっちゃうよ!

「あはっ、真っ赤だ〜・・・陽子ちゃん!」
「・・・・・からかわないでよ」
「からかってないよ、真面目だよ〜・・・・でさ、どうなのかな?」
真剣な顔のタカシくんに見つめられて、私も・・・・・・好きって気持ちが昂ぶってるから、思い切って言っちゃおう!

「・・・・・・病院で目が覚めた時に一目惚れしました」
「それで?」
「不安で仕方ないときタカシくんが優しくしてくれて・・・・・どんどん、好きになってます」
「んふっ・・・・・そっか、そうなんだぁ〜〜〜」

「でも、タカシくんは・・・・・・《陽子さん》が好きですもんね、偽物の私なんか迷惑だろうし」

そう、そうだよ・・・・・私のこと優しくしてくれるのは、《前の陽子さん》に入ってるからで・・・
仕方なく・・・・・だもんね。

「あのさ、毎日こうやって生活しててさ、毎日陽子ちゃんの笑顔見ててね、僕・・・・・最初に陽子ちゃんと付き合ったときのこと、思い出すんだ」
「え?」
「だからね、きっと別の人だとしても根っこは繋がってるんだよ、きっと!」
「そう・・・なのかな?」

「そうなの! それでね、僕さ・・・前の陽子ちゃんも好きだけど、今の陽子ちゃんも好きになったんだ」
「・・・・・・私のこと?」
「そう・・・ 今の陽子ちゃんも♡」

「私のこと・・・・・好きになってくれたの?」
「そうだよ・・・どっちも好きって言う男は嫌われるかなって、言えなかったんだ」
「嫌わない! 嫌わないよ! タカシくんの心の中の片隅でもいい、好きになって欲しかったから・・・」

「陽子ちゃん」
「タカシくん」
タカシくんに抱き寄せられて、抱きしめられて・・・・・タカシくんの顔が近くに・・・・・

チュッ☆

「今夜・・・・・いい?」
「・・・・・・うん」

布団の上に倒れこむ私はタカシくんにキスをされて、パジャマを脱がされて・・・・・・

「震えてる?」
「あ・・・・少し、怖くて・・・」
「そっか、陽子ちゃんは前のこと覚えてないんだもんね・・・・・ってことは、初体験!?」
「やだ! 言わないで・・・」

「優しくするよ・・・・・陽子ちゃん」
「タカシくん・・・・・」

その夜、私とタカシくんは・・・・・・初めて結ばれました。


「はぁ・・はぁ・・・陽子ちゃん、大丈夫だった?」
「・・・・はぁはぁ・・・ うん、でも・・・」
「でも? え? 何か良くなかった? あんなに反応してたのに!?」
「そうじゃなくて!」

「向かいの部屋、子供達の部屋でしょ? だから声が出ないよう我慢してたのが、苦しいの」
「ああ・・・そうか。 でもさ、そのせいかな? すごい敏感だったよね」
「言わないで・・・」

布団に潜った私を同じように潜ってきたタカシくんが捕まえて。。。

「ね、もう1回しよう♡」
「・・・・・・・うん」

声を殺してタカシくんを受け入れながら、私は愛される喜びに溺れていた・・・・・

「んんっ・・・・・んんん〜〜〜」
「いいよ、陽子ちゃん・・・・・すごく、イイッ!」

終わった後は、タカシくんに抱きしめられて・・・・・眠りについた。


「ねぇねぇ、あんたさ〜・・・趣味ってなに?」
「趣味ですか? 読書とかドラマや映画鑑賞とかですが・・・・・なにか?」
「読書〜〜〜 まあ、古本屋の奥さんには似合いの趣味だよな。 そんな事は関係ないんだけどさ、今度この商店街の奥さん連中と飲み会すんだ」

「いいですねぇ〜」
「そこでだ、あんたも馴染むために出な! 場所と時間はあとで教えるからさ! じゃな!」
「はぁーい! 楽しみに待ってます」

商店街の奥さん達に馴染むために、やすこさん協力してくれるんだ〜〜〜
優しいな、やすこさん!

そんな事もありつつ、今日も美味しいご飯を作ろうと頑張ってます。

「ただいま〜〜〜」
「お帰りなさい! 冷たい麦茶飲む?」
「うん、飲む! 母さんと子供達は?」
「お母さんと じゅんは買い物で、まゆみは少し遅くなるって・・・・きゃ、タカシくん??」

ゴクゴクと麦茶を飲み干したタカシくんが、料理の下ごしらえをしてる私の真後ろに立ってゴソゴソと。。。
腰を撫でつけてくるから、包丁をシンクの中に落としちゃった。

「タカシくん、危ないから・・・」
「んふふっ、陽子ちゃん・・・可愛いぃ〜〜〜」
「まゆみが帰って来ちゃうから、離れて! いま思春期で大事な時期なんだから!」
「じゃあ、じゃあさ・・・・・今夜いい?」

「え?今夜も?」
タカシくんと一線を越えてから、3日と空けずに・・・その、致しちゃってるのって凄いハイペースじゃないのかな?

「ええ〜〜〜いいじゃん、いいじゃん! しようよ〜」
唇を尖らせて強請るタカシくんが、まるで駄々っ子のようで可愛くて、つい笑ってしまった。

「タカシくん、可愛い」
「可愛いって言うなよぉ〜」
「でも可愛いんだもん」
クスクス笑う私に拗ねたタカシくんだけど、耳元で「いいよ」といえばすぐに上機嫌に。。。

そのうち、お母さんと じゅんが帰ってきて・・・すぐに宿題をする じゅんに私は・・・

「偉いぞ〜・・・じゅん!」
坊主頭を撫でてると、短い髪の感触が楽しくて・・・・・・しばらく撫でていたら、じゅんが本当に嬉しそうに笑うから、私も嬉しくなったの。

宿題をする じゅんと、その横で色々と話してるタカシくん。
私はお母さんと夕飯の用意を進めながら、美味しい料理を作っていく。

そうして、まゆみが帰ってきて・・・・・笑顔でオヤツを頬張る皆が、楽しそうで。
私は、泣きたいくらい幸せで・・・・・

好きな人と愛し合い、優しい家族と暮らしてる、この幸せが、ずっと続くように祈ったのでした。




あるとき2階から下に降りる階段で、お母さんや子供達の声が聞こえたんだけど、その内容は・・・

たぶん、あまり訳が分からないまま私と生活することになった子供達とお母さんだけど、細かな違いがわかってきたんだろうね。

「やっぱりね〜・・・記憶がないって、何となく前と違って、しっくりこないんだよね〜」
「おばあちゃん! お母さん、記憶がなくても頑張ってるよ」
「お母さん、記憶ないの?」

・・・・・・ああ、やっぱり。 仕方ないよね、仕方ないんだよね・・・私は私だから《陽子さん》にはなれないんだから。

私はそぉ〜っと2階に戻り、じっと部屋に座っていた。


その日の夜、子供達も寝た時間・・・夫婦の寝室にいた私は1人、じっと考えていた。
お風呂から上がったタカシくんが部屋に入ってきたのを捕まえて、私は真剣に聞いてみた。

「タカシくん・・・・・私のこと好き? ほんの少しでもいいの、私の事・・・・・好き?」
「好きだよ、なに? どうしたの?」
「少し・・・不安になっちゃって・・・」
「どうしたの・・・ほら、ここにおいで?」

両手を広げるタカシくんの胸に、飛び込んだ。。。

「好きだよ・・・陽子ちゃん」
「好き・・・タカシくん、大好き」
抱きしめられて、不安が溶けていく・・・・・・ん? んんっ???

「タカシくん???」
「大丈夫・・・好きだよ陽子ちゃん♡ ・・・不安なんて吹き飛ばして、あ・げ・る」
「そういうんじゃなくて・・・・・ああん・・・違うの・・・私が言いたいのは・・・・ああっ」

「陽子ちゃんっっ!!!」

・・・・・・・・そのまま致してしまった私は、この世界にきて流されちゃう癖でもついたのかな?

「良かったよ、陽子ちゃん」
「私も・・・」
「んふっ、身体の相性は陽子ちゃんの方がイイよね」
「え?」

「前はね、まあ僕が会社を辞めたとか色々バタバタしてたからさ、1ヶ月くらいご無沙汰とかザラでさ」
「・・・・・」
「今の陽子ちゃんとは、そういう事がないから僕・・・充実してる♡」
「・・・・・」
「スッキリしたし、寝ようか! おやすみ〜」

・・・・・・タカシくんはそう言うと、自分の布団に戻ってさっさと眠ってしまった。

最近はエッチの後はさっさと寝ちゃうタカシくん。
でもさっきの言葉で分かっちゃった・・・・・・あはは、なあんだ・・・・・そうなのか。

「私はエッチができるから・・・側に居られるんだ。 手軽に都合よく出来るから・・・・・」

なぁーんだ、そうか・・・・・私は、わたしは・・・・・その程度なんだ。
私は布団の中で、声を殺して・・・・・泣いた。



「最近、陽子さん元気ないんじゃない?」
「そうかな? 普通じゃないかな」

・・・・・・・鉛を飲み込んだように胸が苦しい。
でもそれを皆に気どられない様にしないと。

私は笑顔を作って子供達やタカシくんを送り出し、溜め息をついた。

「やっぱり、元気ないじゃないの」
そう、お母さんが呟いてるのを私は知らなかった。

やすこさんが来て、例の商店街の奥さん達の飲み会が今夜あると言われて、お母さんが勧めてくれるから行くことにしたの。。。

私も気晴らしがしたかったから・・・・・お酒を飲みつつお喋りが出来たらって、そう思ってたんだけど。

まさかこれが、やすこさんの企みだなんて思わなかった。



「さ、商店街の奥様会にようこそ、陽子さん! それでは恒例のテキーラ大会〜〜〜」
「え?え?」
「この奥様会の恒例なのよ。初めて入会する人は、あたしとジャンケンして負けたらコイツを飲み干すんだ」

目の前に並べられたのはワンショットグラスに、ライム・・・・・それが50〜60ほど。
どれもにテキーラが注がれてて・・・って、私ジャンケン弱いんだけど〜〜〜

予想通り負け続けた私は、グラスを飲み干しライムを齧ってる。
空けたグラスが累々と並んでるんだけど、あれれ? なんで二重に見えるの?

グラグラと揺れ出す身体をソファーに凭れて、フゥ〜フゥ〜酒臭い息を吐きだしてる。

「ブチまけな〜〜〜腹ん中に溜まってるもん、ブチまけな〜〜〜」

「あんた、何か秘密あんだろ? 溜まってるんだろ? ブチまけな〜〜〜 スッキリするぜ!!!」

「私は・・・・・私は・・・・・」
そのとき心配したタカシくんが、お店に入って来たんだけど、すっかり泥酔した私は気がつかなくて。。。

「ダメだ、陽子ちゃん!!!」
「私は・・・・・記憶喪失なのぉーーー」

「陽子ちゃん!!!」
それから私の意識は、というか記憶が、ぷっつりと途切れてしまった。




はい、一旦ここで切ります。
なんか長いのになりましたけど、いかがでしたでしょうか?

新春のどさくさにアップするという物ですが、書いてる私が1番楽しいです!
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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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