③【月の嘆き】

【月の嘆き】続きます。

【黒獅子と月…】の《下》のときにスンマンとピダムが別れ、何年も後にトンマンの元で再び出会ったら……という暗い話です。

ちなみにピダムはトンマンに恋し始めていてスンマンは過去の話というスンマン虐めみたいな設定です。

※※※

「トンマン公主様」
「ピダム、どうした」
「どこかに行かれるのですか?」
「ああ……スンマンと乗馬をするのだ」
「そう…ですか…」

スンマンと聞いて固くなった表情のピダムにトンマンは「お前も来るか?」と誘った。

「……行きます」
少し躊躇うようなピダムに……
「どうした、変な奴だな」
からからと笑うトンマンが厩舎に歩いていった。

トンマンは何も知らない……ピダムがトンマンと知り合う何年も前にスンマンと知り合っていたなど。

ましてや何日の間とはいえ契りあった仲とは……知らないのだ。

厩舎に着くと先に来ていたスンマンが馬の顔を撫でていた。

「姉上!」
にこやかに微笑む美貌の公主が自分を見て眼を鋭く細めるのを見て……ピダムは内心焦っていた。

「スンマン!待たせたか?」
「私も今来たところです」
「今日はピダムも連れてきたのだ、いいだろう?」
「姉上の御心のままに……」
艶やかに微笑むスンマンが……眩しい
……あの頃、幼さが見えた顔も二十歳を迎え完成された美貌へと変化していた

まるで花の蕾が開くように……白い肌に切れ長の大きな瞳、紅い唇はふっくらとしていて柔らかそうで……

トンマンと似てはいないが目移りするほど美しい公主達だった。

「今日はどう致しますか、姉上……天気も良いから少し遠出をしましょうか?」
「そうだな……たまに町に出て市場の賑わいを見たいな」
「ふふ……では市場へ行きましょう……ポジョン!」
「はい、スンマン様」

影のようにスンマンの後ろに控えていたポジョンが地図をスンマンに見せていた。

「賑わっているのはこっちかな?」
「スンマン様、安全も考えるなら此方がいいかと」
「ならば、そっちにしよう……先導してくれ」
「分かりました」

ポジョンに頷き微笑むスンマンをじっと見詰めるピダムが奥歯を噛みしめている事を誰も気がつかなかった……

※※※

四頭の馬が気持ち良さげに駆けていく……
王宮を出て、草原を抜け青空の下でのびのびと駆けていく……

先頭がポジョン、次がトンマン、そしてスンマンが走り最後はピダムが走っていた。

途中、泉で休憩したが…さほど時間をかけずに出発したからか市場へは昼前に着いた

「姉上……お腹は空きませんか?」
「大丈夫だ」
「私は空いてしまいました」
「ならばしばらく別行動しよう、ピダム来てくれ」
「姉上……ではポジョンもお連れください、アルチョン殿もいないのですから」
「スンマン?」
怪訝な顔をするトンマンに微笑むスンマンが飯屋に入っていった。

「さ、行きましょう公主様」
ピダムに促されトンマンが市場を一通り見て回ると……お腹が空いてきた。

スンマンが入った飯屋に三人も入っていくと……

席を見回してもスンマンがいない……
「スンマンがいないな」
トンマンが呟くと店主が料理を運んで並べた卓に三人を座らせた。

「先に料理を注文していたのか……それでスンマンはどこだ?」
店主に聞くと市場を見て回ると出ていったらしい。

「私が探してきます」
ポジョンがトンマンの命ずる前に動いた。

……俺を避けてるのか……
ふとピダムは思い、にやりと笑った。

……避けるという事はまだ意識しているんだな……

ピダムは自分で気がついていなかった……自分が捨てたスンマンを何故気にするのか、何故こうまで気にかかるのかを……

ほどなくスンマンとポジョンが戻り四人は食事を食べ、市場を後にした。

帰り道……
泉で休憩しているトンマンの横でスンマンが懐から紙の包みを出した。

「姉上もいかがですか?」
「何だ?」
「果物の砂糖付けです」
「一つもらう」
「ふふ……どうぞ」

ぽいっと口に放り込む公主達が笑いあう……それをポジョンは静かに見て微笑んでいた。

馬を調べ異常がないと確かめると草を食む馬の首を撫でている。

ふと先程の事が思い出され……笑みを深める。
「今度は二人で来たいな」
スンマンが微笑み人の通らぬ路地でしばし口付けた……菓子の味の甘い口付け。

「なにニヤついてやがる」
ピダムが側に寄ってきていた。
「……」
「黙んまりかよ…」
「お主は何が言いたい?」
絡んでくるピダムが分からなくてポジョンが聞いた。

「別に……」
俺だって分からない……どうして気になるのか……ただ、自分の物を盗られたような怒りが込み上げてくる……

徐羅伐で再会したスンマンの、俺を見る眼に感情が動いている間は気にならなかった……むしろトンマンに知られないかとヒヤヒヤしていた。

それが……あの日からスンマンの眼が、声が、態度が変わり……それからだ、落ち着かないのは。
「お前……スンマンが好きか?」
「愚問だ」
「え?」
「あの方は私の命だ……」
ポジョンのスンマンを見詰める眼が優しく細められる。

「だからピダム!」
「何だ?」
「スンマン様を忘れろ!」
「あ゛?」
「執着するな…いいか、スンマン様を忘れろ」

……スンマンを忘れる?……
無表情になったピダムから離れたポジョンは、公主達に出発するよう促しに行った。

※※※

王宮に戻りトンマンと別れたスンマンは隊員達の訓練に励んでいた。

汗を垂らし玲瓏とした声で指示をだすスンマンは隊員達の憧れでもあった。

公主様が俺達を教えてくれる、出来たら褒めてくれて微笑んでくれる……隊員達の一人一人が次第にスンマンと絆を結ぶのもピダムは面白くなかった。

何もかも面白くない……

トンマンは未だユシンやアルチョンを重用し俺を軽んじている。

騎馬隊はスンマンが掌握し俺など補佐だ……せめて騎馬隊を俺の物にできればトンマンの俺を見る目も変わるか?

訓練を終え執務室に居たスンマンを捕まえて話した。
「何用だ」
「スンマン公主様……いや、スンマン」
「ふふ……呼び捨てなど許した覚えはないが……」

汗に光る額に髪が張り付いて……ふいに昔の事が思い出された……二人で稽古をした、あの頃。

お前の汗の香りが……好きだったと……何故、忘れていたのか……

「スンマン……」
足元を掬うように抱き上げ、奥の部屋の仮眠用の寝台に寝かせ覆い被さった俺にスンマンが抵抗する。

「何をする!…離せ!…離さぬか…」
「お前は今も俺を好きだろ?」
「昔の事だ!あの時……お前は私を捨てた!離せ!」
「ぐっ!」
脇腹を膝で殴られ、手で喉を絞められた俺はスンマンの手首に力を入れ捻ると喉から手を外す。

「つっ……」
そのまま両手を一つに併せ持っていた紐で縛れば、スンマンの眼に蒼い焔が立ち昇る……

「ピダム……私を本気で…怒らすな……早く離せ……」
「その格好で何ができる……また俺のものになれ……」
「私は誰のものでもない!」

服の紐を解いていき現れる真っ白な肌に手を滑らせた……絹より滑らかな……お前の肌……昔、手にした俺のもの……

首筋に顔を埋めると懐かしい匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

「お前は俺のものだ……昔も今も……」
「昔のピダムならば……私の嫌がることはしなかった」
「!」
「昔の、兄と慕ったピダムなら……子供のように純粋に私を求めてくれた」
「……スンマン」

「今のお前は誰なのだ?」
「俺は変わったのか?」
「あれから何があった?……なぜその様に私に固執する?……捨てたのはピダムだろ」

「スンマン……」

「あの時……すがれば良かったのかと後悔した……徐羅伐で再会し、私との事を無かった事にしてほしいと言われた私は……あの夜」
スンマンの眼に涙が滲む……

「チョンミョン姉上の霊廟で自害しようとした」
「…!!……」
「救ってくれたのはポジョンだった……」
「あいつが……」
「ポジョンが自分の命よりも私を愛すると分かり……私は初めて……愛される喜びを感じた」

「私を抱くなら抱けばよい……その後、私は死んで詫びる……ポジョンにな」
寂しげな微笑みを浮かべたスンマンを見て……俺は……

「すまなかった……」
手首の紐をほどき服を戻すとスンマンから離れた。

「あの時……俺はお前を選ぶべきだったな……」
「詮なき事を……戻りようもない昔だな……」
スンマンの手首についた痣に跪ずいた俺は口付けた。

涙が流れ、ぽたぽたと床に落ちていく……
「だが…俺は…確かにお前が…好きだった……お前の温もりがあればそれだけで良かったのに……」

「ピダム…姉上に…お前の純粋な心で向かうのだ……私が愛した…あの頃のお前で……」
「スンマン……すまない!……すまなかった…」
「ふふ……もうよいではないか……明日からは友として接しよう」

「俺を……友と?」
瞠目したピダムが泣き顔のままスンマンを見上げた。

「この世に私達のような縁の友がいてもよいであろう」
「すまない」
「だがなピダム……」
「なんだ?」

「今のままではお前に姉上はやれぬ……姉上に相応しい男に私が鍛えてやる……友としてな」
ニヤリと笑うスンマンが稽古に明け暮れたあの頃のようで……ピダムも頷いていた。

「ああ!お前の言葉ならこの世の中で唯一、信じられる」
「ふふ……ならばもう行け!ポジョンに殺されるぞ」

スンマンの顎が指し示す先に憤怒の顔をしたポジョンが剣に手をかけ今しも抜きそうに殺気を迸らせている。

「悪かったなポジョン!」
悪い憑き物が落ちたように……スンマンの知る昔のピダムが其処にいた。

「ほんとに、すまなかった!」
ピダムが部屋を去るより前にポジョンがスンマンに駆け寄り跪ずいていた。

「ポジョン……」
「大丈夫ですか?スンマン様」
「側に……」
胸の中にしがみつくように抱きついてきたスンマンを……寂しげな微笑みでポジョンは抱きしめた。

「……ピダムを選ばれてもよろしいのですよ」
弾かれたようにポジョンの胸に顔をつけていたスンマンが見上げると……寂しげな微笑みで自分を見るポジョンがいた。
「なぜ?」
「お好きなのでしょう?……ピダムが」

瞠目したスンマンの眼に……涙が滲み……そのまま一筋、頬を伝った。
「スンマン様……」

ポジョンが何か言おうとした、その時……どん!と胸を押されたポジョンと押したスンマンが寝台から下りるのが同時だった。

「……あっちへ行け!」
「スンマン様」
「側に寄るな!もう、いい」
「スンマン様?」
「お前に抱かれて……お前に愛されて……私の中でもピダムが過去になった……私の中の乾きが満たされた」

「もう私は……お前だけなのに……お前はピダムに押し付けたくなったのか」
「なにを……スンマン様?」
「やはり私のような者など……お前も嫌になったのだろう……だから」
ずっと顔を附せているスンマンの足元にぽたぽたと涙が落ちた。
「もう……行け」

ポジョンが抱きしめたが躯を捻り拒むスンマンを力づくで抱きしめた。
「私だけ思って下さるのですか?……貴女が」
「……」
「失言です。愚かな私を許して下さい……私をお許し下さい」
「ふっ…ぐっ…」
手を噛み、嗚咽を我慢するスンマンを見てポジョンがたまらなく溢れる想いのままに抱きしめる……

「泣かないで……貴女が泣けば私はどうしたらいいのか分からなくなる」
「お前の……せいだ」
「愛しています……愛している……私だけの貴女を……離しはしない」

ポジョンが噛み痕の残る手に口付け……指を舐めていく
「あっ!」
一本一本指を丁寧に舐められ……しゃぶられ……スンマンの眼が熱く欲望に染まる……
「ポジョン…私にはお前…だけだ」

掠れた声が熱を持ち、自分を呼ぶ熱い声がポジョンの体をも熱くさせ……躯を逆巻く激情がポジョンの眼も、繊手を舐める舌も熱くさせる……

「もう貴女を離せない……永遠に……」

※※※

花朗イケメン選手権☆が何故か進まず……
此方をUPします(笑)
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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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