④B【世界が終わるときも、君がいればいい】

こちらはバットエンドになります。

神戸さんと陽子ちゃん、すれ違いのまま終わります。
悲しいお話は嫌な方は、これ以上見ないでくださいね。

☆注意・・・私では初めての死ネタになりました。本当にご注意くださいませ。

ハッピーエンドもありますので、お口直しにそちらの方も読んでいただけると嬉しいです。



「あ、着替えたいな・・・鞄は・・・」
そろりとベットを降りた僕は、鞄の中からお気に入りのパジャマを出して、着替えた。

鞄の中に手紙が入っていたけど、彼女・・・鈴木さんからのものだよね。
僕は鞄の底に、読みもしないで、その手紙を深く沈めたんだ。

「はぁ〜・・・せっかくの休みが、おじゃんか」
ベットで横になり安静にしてるんだけど・・・・・・何しろ暇で。

僕は窓の外を見て時間をやり過ごした。

それから何度か大河内さんや杉下さんが来てくれて、僕の身体の痛みも取れ、4日めに退院となった。

休みがあと2日あった僕は、自分の家でのんびりと過ごし、休み明けには元気に登庁できたんだ。

いつもの通り、暇な特命で・・・杉下さんの後ろを付いて歩く毎日が過ぎていく。

捜査一課のあの子、鈴木陽子さんだっけ?
何度か捜査現場で顔を合わしたんだけど、僕は挨拶程度に会釈するくらいで、彼女も同じ。

ただ僕が彼女の側にいると伊丹さんが飛んで来る様になっちゃって。

前にもまして、僕を威嚇するようになっちゃったんだ。

心配しなくても、僕は彼女に興味も関心もないんだけどなぁ〜・・・・


・・・・・・ただ、ときおりだけど遠くから、感じるときがあるんだ。
大きな瞳にいっぱいの、哀しみの視線を・・・・・・・

だけど僕は、わざと気がつかないフリをする。

だってさ、彼女のこと考えると頭痛がするんだ、しかもとびきり痛いの!
痛いのって嫌じゃない? 僕は嫌なんだ。

そうして過ごしていけば、僕の中から鈴木陽子って人間は、見知らぬ他人のまま・・・・・消えていったんだ。



「まぁーた、来やがった!」
「ふふ、すいませんねぇ〜 上司のお供で仕方ないんですよ」
「・・・・・特命だってだけで嫌なのに、俺はあんたが大嫌いなんですよ! 警部補!」
「あら、嫌われちゃいました?」
「がぁああーーーー! 」

叫んで行っちゃった伊丹さん。
僕は杉下さんの側を歩きながら、事件現場を色々と見て回るんだけど・・・・おおっと!死体は勘弁!

「陽子さん、何か分かりましたか?」
「あ、杉下さん。 ・・・・・実は」
被害者の周りで調べているのは、モグラちゃんこと、鈴木陽子さん。

地面を這うようにルーペ片手に調べてるなんて、仕事熱心にもほどがあるよね。
だってどんな死体でも、顔を近づけて舐めるように調べていくんだぜ?

腐乱死体にもそうしてたから、僕は死体と同じく彼女も苦手になった。

・・・・・・・なんかさ、気持ち悪いよね、彼女。




神戸さんが無事に退院したときいて、私はホッとした。
私自身も入院中なんだけど、先生が言うには疲れが溜まってるんだって。

入院中はよく寝て、食事もキチンと食べていた私は、神戸さんの1日あとに退院したんだ。

「これで忘れ物はありませんか?」
「ないと思います。 あのっ、大河内さんに退院の面倒見てもらって、すみません」

入院中も、毎日のように顔を出してくれた大河内さん。
毎日、差し入れのケーキが美味しくて・・・・私、少し太ったかも?

「鈴木さんは華奢な方ですから、もう少し太られても良いのでは?」
「いえいえ、女の子は痩せてた方が可愛く見えるんですよ!」
「・・・・・・あなたは、そのままで十分に可愛らしいですよ。 ・・・いえ、愛らしいというか・・・」
「え?」

「にっ、荷物は、こ、こ、これで全部ですね!」
そのまま私を置いて、荷物を持って部屋を出た大河内さんの、耳が・・・・・・・真っ赤だった。

しばらくしたら思い出してくれたのか、部屋に戻って来てくれた大河内さんの罰の悪そうな顔が、おかしくて・・・
私は、くすくすと笑ってしまっていた。


それともう一人、顔を出してくれる人物が。

「おら、プリンだ! ありがたく食え!」
「ちょっと、伊丹さん! 放らないで下さいよ」
コンビニ袋をポーンと放り投げる伊丹さんに、慌てて受け取ろうとするけど上手くキャッチできなくて。

「どんくせーなぁ〜」
「うるさいですよ! ここは病院です!」
「へいへい」
「プリンだ、プリン!」

「なぁ、お前・・・・大丈夫か?」
「・・・・・・」
「ソンのことだ、お前・・・忘れられるのか?」
「・・・・・・・分かりません」

「退院したらよ、飲みにでも連れてってやるよ!」
「楽しみにしています」
「お、おう! 楽しみにしてやがれ!」

そうやって気にかけてもらえて、私は幸せ者だなぁ〜。

それは退院しても同じで・・・・・

事件現場で特命係が現れたとき、伊丹さんは必ず私を神戸さんから遠ざけて、隠してくれた。

まだ神戸さんを見ると胸が痛くなるけど、伊丹さんや芹沢さん、三浦さんの仲間に入って事件を追っていると忘れられた。

そして、大河内さんが食事に誘ってくれて・・・ワインの飲み方を教えてもらっています。

そうやって時が過ぎて、私は・・・神戸さんとの恋を、思い出にできそうになっていた。


「まだ、神戸のことを引きずってらっしゃいますか?」
「大河内さん・・・・あれからもう3年、神戸さんも特命係から警察庁に戻られましたし。 もう、私は大丈夫・・・だと思います」
「・・・・・では、鈴木さん。 いえ、陽子さん・・・」

畏まった大河内さんが、ソファーの上で座り直してポケットから小箱を取り出した。

「わ・・・私は、あなたより随分年上で、女性に気の利いたことも言えないような無骨な男です。でも、あなたを・・・・・愛しています」
「大河内さん」
「わ、わ、わ・・・私と結婚してはいただけないでしょうか?」
「・・・・・・・私なんかで良いんですか?」

「あなたが良いんです! ・・・・あなたがあの時、病院で泣いてる顔を見たとき私は・・・あなたを守りたいと思った」

「私が過去に愛した人の事は、告白しました。 私が湊を愛したから、あいつは死ななければならなかった」
「それは大河内さんのせいではないです! きっと湊さんも、貴方を愛してた・・・誰よりも何よりも・・・」

「そのことで私は一生、償うしかないと思いました。 正直、この様に愛する人が現れるとは思ってもみませんでした」
緊張した顔で、いつもより苦虫を噛み潰したような顔をしている大河内さん・・・

無骨だけれど何事にも真摯な人。
過去の事で自分を責め続けていた人。

その人が、私を見つめて愛していると言ってくれている。

・・・・・・私なんかを、真剣に・・・守りたいと、愛していると。

私の中にはまだ、神戸さんを思う気持ちが、残り火の様に小さくなりながらも、確かにある。
この気持ちのまま、この不器用で真剣な人の申し出を、受けても良いのだろうか?

大河内さんに感じる安心感に甘えて、2人で食事を重ねてきたけど・・・・
もし、申し出を断れば私は・・・・・彼をも失うのだろうか?

この時はじめて自覚したのは、彼への依存だった。
私がこの数年、神戸さんの事を乗り越えようと苦しんでいた事を誰よりも知って、穏やかに包んでくれた人。

悩みがあれば夜中にメールしても、直接電話をかけてくれて話を聞いてくれた。
穏やかに、穏やかに、苦しみから守り、救い、優しく頼りがいのある人。

「神戸のことを思うままで、それでもいいんです。 私にそばに居させて下さい」
「大河内さん・・・・・・そんな、そんなのダメです。 貴方に悪いですから」
「いいえ、ちっとも! 陽子さんは私にもう一度、人を愛するということを思い出させてくれました」

「そばに、居させてくださいませんか?」
私は、知らずに流していた涙を大河内さんの大きな手に拭われながら・・・・・・頷いていた。

「私で、良ければ・・・・末長く・・・お願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
頭を下げる私達は、互いに見合い・・・・微笑みあった。

指にダイヤの指輪を嵌めてもらいながら、私達は・・・・・・口ずけを交わし。

その夜、初めて・・・私は神戸さん以外の人と・・・・・結ばれた。




「へぇ〜・・・大河内さんもついに! とうとう! ご結婚ですか」
「ああ・・・その事なんだが、相手は鈴木陽子さんだ」
大河内さんの言葉に、僕は摘まんでいたピーナッツを指から落としてしまった。

大河内さんから話があると誘われ、いつものバーで待ち合わせた。
ワインを頼んで、飲んでいると現れた大河内さんは、ワインに口もつけずに結婚するといいだして・・・・

「・・・・・・物好きですね〜。 別れた元彼に、結婚の報告ですか?」
「思い出したのか? 陽子さんと付き合っていた時のことを」
「いいえ、全然! いいんじゃないですか? 大河内さんもいい年ですし、誰かと結婚した方が出世も出来ますしね〜」

からかい口調でそう言えば、あ・・・・怒っちゃったかな?
じとり、と睨まれちゃった。

「神戸、いいのか? 私が陽子さんと結婚しても・・・・本当に良いんだな」
「いいですよ〜・・・僕には関係のない人ですし。 あ、式には呼んでくださいね」

ヘラッと笑いながら祝福している僕。
思い出せない過去の恋人なんて、言われても他人と同じ・・・・・・なのに。

なんでだろう、何か胸の中が・・・・・もやもやする。

高いワインを奢らせて、自宅に帰った僕は・・・・ふと、思い出してクローゼットから1つの鞄を出した。
底に沈めた手紙を拾い、窮屈なネクタイを緩めてソファーに座った。

ほんの興味から、彼女があの時どんな事を書いたのか、見てみたくなっただけ。

封筒から便箋を出して、読んでいく僕は・・・・・目で文字を追いながらも、頭の中には様々な映像が浮かんでいく。

その全てが鈴木さんのもので・・・・・

真っ赤になって照れてるとこ、恥ずかしがってるとこ、一途に僕を見ているとこ。
彼女と一緒に過ごした日々が、ものすごい速さで頭の中に流れていく。

酷い目眩と吐き気に襲われて、僕はやっとの事でトイレに行って、胃の中のものを全て吐いていた。



・・・・・・・思い出した。

思い出した、思い出した、思い出した!!!



・・・・・・・・思い出して、僕は、絶望した。

あれから3年以上が経った。
手紙にはお手伝いでいいから、僕が治るまでそばに居たいと書いてあったのに・・・・・

僕は、彼女に・・・・・何をした。

冷たい言葉と態度で、彼女を否定し拒否し・・・・・・意識を失うほどのショックを与えた。

その後も、殊更・・・冷たく扱っていた自分を、恥じた。

恥じるなんてもんじゃない!
今すぐにこの世界から、消えてしまいたいと思うほど・・・・・・僕は、自分が嫌になった。


僕の世界の全てだった、陽子・・・・・

彼女のためなら、この命さえ笑って捨てられると本気で思えるほど、愛してる。

愛してるんだ、陽子・・・・・

二度目に君と付き合う時に、もう二度と泣かせないと誓ったのに・・・・・

きっと、泣かせてしまったんだろうな。

ああ、ああ、ああ・・・・・・・・

今すぐに狂えたら、僕は幸せなんだろう・・・・・狂ってしまいたい!!!

・・・・・どうして、僕は陽子を忘れたりしたんだろうか・・・

あれほど愛していたのに、どうして・・・・ どうして・・・・・・・

僕は、その夜・・・・一晩中、目眩と吐き気に襲われて・・・・・トイレからでられないほどで。

泣きながら、何度も何度も、どうして・・・・・と、繰り返していた。


・・・・・・どうして、僕は陽子を忘れてしまったんだ。
・・・・・・どうして、今更、思い出してしまったんだろう。

・・・・・・どうして、君は、大河内さんの花嫁になるんだろう。

・・・・・・どうして、どうして、どうして。。。。。


どうして、僕は・・・・・陽子という世界を失っても、生きているんだろう・・・・・・

どうして・・・・・・・


それから大河内さんと飲むたびに、僕は陽子の近況をさりげなく聞き出していた。

あれからも捜査一課にいたこと、伊丹さんに可愛がられていること、熱心さを買われ昇進試験にも刑事部長から推薦をもらって警部補になったこと。

真面目な陽子は、がんばり屋さんだものね・・・・良かったね。

そして、僕の事を3年以上かけて・・・・乗り越えたこと。

そうか、僕を・・・・・・吹っ切れたのか。

今は式場を決めて、式や披露宴の事など2人で決めているとか。

・・・・・・・・・・ウェディングドレスがよく似合うと。

ダメだよ、大河内さん。
いくら記憶がないと思っていても、元彼に彼女のこと惚気るなんて・・・・・・・・・ダメだよ。

会いたい・・・・・・・陽子。
一目、会いたい・・・・・・日々募る思いに、狂おしく胸を焦がす僕に、大河内さんは言ってはならないことを、言ったんだ。

「プロポーズした日に、彼女を抱いた。 驚くほど滑らかな肌、素直な反応・・・・・素晴らしかった」
「・・・・・・・・」
「神戸、どうした?」
「いえ、別に・・・・」

俺が、初めての相手だった。
俺が大切に抱いて、慣らしていったんだ。

俺が・・・・・・俺が!!!

自分でもこれほどドス黒い感情が渦巻くなんて、思ってもなかった。

陽子は僕のだ、僕のなんだ!
大河内さんの話で陽子を抱いた時のことを、まざまざと思い出した僕は・・・・・・もう1度、彼女を抱きたいと思った。

もう1度だけでいい・・・・・彼女の肌、可愛い反応、熱く絡まる彼女の中・・・・・それらを感じたい!

式まであと2ヶ月を切った頃、大河内さんが出張に出かけることを知った僕は、陽子に電話をかけた。

僕からの突然の電話に戸惑いながらも、大河内さんの友人としてお祝いしたいという僕の言葉を信じた君は・・・・・

僕の家にディナーをしに、来てくれたんだ。

最初は緊張した様子の陽子だったけど、デリバリーだけど美味しい料理を堪能してる間に、よく笑って話が出来る様になった。

彼女に勧める口当たりの良いワインに、睡眠薬をたっぷりと仕込んだ僕なのに。

「眠くなって・・・・・」
「いいよ、少し眠れば・・・・」
ベットに運び込む頃には熟睡してる彼女を、俺は・・・・・・・抱いた。

「・・・・・あっ・・・・・んん・・・ああん・・・・」
眠っているのに、ちゃんと感じてイっちゃう陽子が嬉しくて僕は、何度もイカせてから・・・・・張りつめた僕自身を挿入したんだ。

脚を拡げて、曲げて、僕が挿入してる様子を見下ろしながら狂ったように激しく腰を振った。
陽子も素直に嬌声をあげて応えてくれた。

「愛してる・・・・愛してるんだ、陽子」

「こんな事して、ごめんね。 でも・・・・・陽子が欲しくて狂いそうだったんだ」

「この間、記憶が戻って、もう陽子には僕がいらないんだって・・・分かってるけど・・・・」

「愛してる・・・・・愛してる・・・・・・陽子っっ!!!」

泣きながら僕は、彼女の中を蹂躙している。
酷いことをしているのは分かってる、最低な男だってことも分かってる!
それでも、もうすぐ他の男の花嫁になる君を・・・・・感じたかったんだ。

このことで陽子からでもいい、大河内さんからでもいい、責められても例え・・・ 殺されても構わない。
いや、この先・・・何十年と大河内さんの妻となった君を見続けるくらいなら、僕は殺された方が幸せなのかもしれない。

もう、君以外に愛する人は現れない僕は・・・・・きっとこの先、一人きりだろう。
陽子・・・・・この夜が、僕の最後の愛の夜だよ・・・・

彼女の中に僕を、何度も注ぎ込んでから・・・・彼女をキレイにホットタオルで拭いて服を着せてあげた。

次の日の朝、ソファーで眠った僕に寝込んでしまったことを謝る陽子。

・・・・・・・大丈夫、彼女は気がついていないようだ。

彼女を自宅に送り届けた僕は、その日は休んで・・・・・自宅でぼうっとしていた。

大罪を犯した僕は、どうやって償えばいいのだろう。

でもね、昨夜・・・・・思い切り君を愛せた僕は、後悔はしていないんだ。


願わくば、この思いを持ち続けることを・・・・お許しください。
願わくば、彼女が健やかに幸せに生きていく様子を、ほんの片隅からでいい・・・見守ることをお許しください。

願わくば・・・・・・彼女に危険が及ぶなら、僕を身代わりにしてください。

願わくば・・・・・・・・・・・・。

それから式までの間は、あっという間で・・・・・今日が、その日になったんだ。




「いいんですか、俺なんて式に呼んで・・・」
「スピーチもしてもらうぞ」
「まあ、用意はしてきましたが・・・・・本気ですか?」
「監察官に友人がいると思うか、しかも私に。 ・・・・・お前しかいないんだ!」
「ふふっ、光栄です。 素晴らしいスピーチ、期待しててくださいね」

「・・・・でも、その仏頂面は・・・・いただけませんよ」
花婿のこれでもかってくらいの仏頂面に、僕はクスクスと笑い出していると・・・

「花嫁様が到着されました」
式場の人の声に、大河内さんと僕が振り向けば、そこには・・・・信じられないくらい美しい花嫁がいた。

白いウェディングドレスは、デコルテが開いてて・・・陽子の綺麗な首や華奢な肩を、魅せている。
アップにした髪にはティアラがのってて、豪華なネックレスも陽子に輝きを添えていた。

しずしずと進む陽子は、照れ臭いのか頬を染めて俯いていて。
上目遣いでこっちを見た顔に、僕の身体が愛しさに貫かれてしまう。

僕は黙って大河内さんの背中を押して、彼を待ってる花嫁の方に行けと、目配せした。

「き・・・綺麗だ」
「ありがとうございます」

『綺麗だよ、陽子』
僕は胸の中で、そっと彼女に呟いた。

その場を後にして、式場のチャペルに移動した僕は、にこやかに参列者に交じり2人が来るのを待っていた。

やがて大河内さんが来て神父の前に立てば、厳かなパイプオルガンが流れ、美しい花嫁がバージンロードを父親と歩いてくる。

あれ? 父親だと思った人は、杉下さん? なんで杉下さんなの?

そのまま式が始まり、誓いの言葉も終わりキスを交わす2人に・・・・・拍手を贈った。

参列者は花弁やライスシャワーを渡され、チャペルの玄関に並んで2人を待つ。
やがて現れた幸せそうな2人に、それを降り注ぐんだけど。

覚悟していたとはいえ、陽子が他の男の妻になる儀式に、胃が痛く、吐き気もしてる。
それらを抑え込んで、愛想笑いを貼り付ける僕って、偽善者の極みだろうな・・・・・

滞りなく式が終わりを迎えようとしている。

・・・・・花嫁の手を取って逃げたら、どうなるかな?

そんな事を考えていた僕に、派手にぶつかった男がいた。

え? なんだよ、あの男・・・・・結婚式に参列する格好じゃないよな?
安物のジャンパーにズボン、どう見ても式には無関係の人だよね?

何となく見ていた男が、手に包丁を持ち出すのを見て、身体が動いた。

「大河内〜〜〜・・・思い知れぇぇ〜〜〜」

狙いは大河内さんかっ!!!

走り出す男を追って僕が追いかけ、男の肩に手をかけ引っ張り、包丁を持っている腕を抑えて俺の膝に打ち付け凶器を取り上げようとした。

何度か打ち付けた痛みで包丁を取り落とした男を、腕をねじ上げ地面に押さえつける。

駆けつけて来た警備員に警察を呼んでもらい、男を引き渡した。

だが男は、諦めてはいなかったんだ。

僕の手から離れた男は、警官の隙をついて逃げ出し、そして・・・・・・

ナイフを取り出した男が再び2人に襲いかかるのに、僕は・・・・・

男の狙ったナイフが、大河内さんより花嫁に向かったのを見た僕は、陽子を抱きしめた。

ドン!という衝撃を受けた背中で、僕は自分が刺されことを知った。

「神戸さん!」
「神戸!!!」

派手な出血に、辺りを血で染めていく僕は地面に転がって・・・・・慌てて陽子が僕の頭を膝に乗せて。
大河内さんや周りの警察関係者に男は取り押さえられたんだけど。

「神戸さん、なんで? 何で私なんか・・・かばうんですか!」
「綺麗だね・・・・陽子」
「・・・・・・・まさか記憶が?」
「うん、つい最近ね・・・・・ごめんね」

泣きそうな大きな瞳から、ポロリと涙がこぼれて・・・・ああ、綺麗な涙だね。

「ごめんね、俺・・・・陽子を苦しめてばかりで・・・」
「もういいんです! 神戸さん、神戸さん」
「神戸、しっかりしろ! もうじき救急車が来る!」

「おお・・・こうちさ・・・・ようこ・・・・たのみます・・・」
「分かっている。 私が全力で守る」

ああ・・・気が遠くなってきた・・・・・俺、このまま死ぬのかな?
陽子を守って死ねるなら、それも悪くないな・・・・・

陽子・・・・・・ああ、陽子・・・・そんなに泣いてくれるの?
俺みたいな酷い男に? うれしいな・・・・・

「神戸さん・・・・神戸さん!」

花嫁が一緒に乗り込んだ救急車の中、応急処置を施されながらも神戸の命は燃え尽きようとしていて・・・・

意を決した花嫁が、酸素マスクをかぶった神戸の耳に何事かを囁く。

その言葉を理解したのか、カッと目を開けた神戸が花嫁を見て、震える手を伸ばして・・・・・・

陽子も、泣きながら神戸の手を取り強く握り、その神戸の手を・・・・・・自分のお腹へと導き触れさせて。

何かを繰り返し言っている神戸だが、それは陽子にしか届かないもので・・・・

頷く陽子に、神戸は・・・・・・1度、花が開くように嬉しそうに笑った。

神戸の目から涙が流れ・・・・・・・ でも、泣き笑いな表情のまま息をしなくなっていた。




結婚式から一転、数日後には神戸 尊の告別式が行われていた。

火葬場から煙になって空に昇っていく神戸を、見つめながら陽子は思う。

救急車の中で過ごした最後の2人のときのことを。。。


『愛してる・・・・愛してる・・・・』

繰り返し言われる言葉に、頷いていた私。
私もと応えれば、目を開けた貴方に・・・・・あの夜に授かった命のことを話せば、貴方は。

・・・・・・・ 嬉しそうに笑ってくれた。

『ぼくの、世界はおわるけど・・・・・陽子がいれば・・・・・いいんだ』

命をかけて愛してくれた貴方・・・・この子は私が育てていきます。

「私も手伝います」
「大河内さん」
「あなたを守ると神戸に誓いました。 あなたも、その子も・・・・守ります」



何年か後、綺麗な顔立ちの男の子が母親に甘えて抱きついてくる。

父親そっくりの男の子は、母親に愛され、のびのびと育っていくのだった。




バットエンド・・・こう落ち着きました。

私にとっては初めての死ネタに!
しかも神戸さんが!!!

式の直前、妊娠している事に気がついた陽子は、式を止めようとしますが大河内は神戸さんの子供だと感づきます。
陽子も神戸さんの家で酔って寝てしまった夜に、夢だと思っていた事が現実だったと、気がつくんです。

2人は大河内の希望で式を上げることにしたという話です。

犯人の男は、監察官の取り調べで懲戒免職になったことを逆恨みしての犯行でした。


・・・・・・・何十年も、他の男の妻となった陽子ちゃんを想い続けて、最後は孤独死する神戸さんは、さすがに書けませんでした。

では、続いてはハッピーエンドをお楽しみください。
こっちは甘々にしますから!
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プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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