①【世界が終わるときも、君がいればいい】

新章です。
甘いタイトルですが、内容は甘いかな?




「御盆休みってどうするの、陽子ちゃん」
季節は夏、世間では夏休みと云われる時期で、僕たちにも休みが与えられるんだけどね。

お盆の時期にお巡りさんが皆 休み・・・なんて事はなくて、公休日は増えるけど休む時期はバラバラなんだ。

「いつもは実家に入り浸りなんですけど、今年は華月姉が・・・『初めての恋人との初めての連休、実家になんていないで2人でどこにでも行ってきなさい!』って・・・・・・」
華月お姉さま、素敵な提案をありがとうございます。

実は、一緒に居たかったんだ・・・・・陽子と。
他に誰にも会わない処で朝も、昼も、夜も・・・それこそ寝るときも、君と一緒がいいんだ。

「あの・・・それで休みのローテーションが・・・」
うん、陽子ちゃんはいつかな?

まずお盆の時期が三浦さんね、家族で墓参りに行くんだ。
その前の週は芹沢君、ちょっと先取りして混まないうちに彼女と休みを合わせるって? いいじゃない、僕たちと一緒だね。

お盆の次の週が伊丹さん、え? 腰痛のケアに整体に通うんだ・・・ お大事に。

ああ、一番最後の週が陽子ちゃんのお休みなのね。
ん、分かった! 僕もそこに合わせて休みを取るよ。

気にしないで、杉下さんはロンドンに有給も合わせてかなりな期間行っちゃうし、特命係は暇ですから。

じゃあさ、どこに行こうか?

海? 山? 高原とかもいいね!
海は・・・ふふふ、もちろん水着だよ・・・・・って嘘嘘! だから頭抱えなくていいよ。

泳ぎたいならホテルのプールの方がいいよ、日焼けもしないし。
え? 泳げないんだ陽子ちゃん。

気にしないでいいよ、今度僕が教えてあげるから・・・ 今度のデートはプールかな?

じゃあさ、僕の案を言ってもいい?

「湖の湖畔の別荘で、ずっと・・・ 一緒に過ごさない?」
「湖の湖畔・・・何かロマンチックですね」
「知り合いに借りれることになってね、そこでのんびりしようか?」
「湖畔の別荘・・・ 素敵です! でも・・・・・」
あれ? 気に入らないのかな?

「神戸さんと一緒に居られるなら、私は別にどこでもいいです」
にっこり笑顔で無邪気に言う陽子ちゃん。

もう、もう、君は・・・・・・どこまで僕を嬉しがらせるんだよ!

「DVD屋さんでレンタルして、神戸さんのお家でのんびりでも私・・・んんんっ」
これ以上言われたら、今夜は大変なことになっちゃうから塞いじゃえ!

ねっとりと舌を絡ませて、彼女の口内を隅々まで味わえば・・・・・・くすっ
この頃、陽子ちゃんも僕の舌に絡めて応えてくれるから、キスはどんどん厭らしいものになってくるんだ。

「んっ!・・・・はぁ・・・僕の家でのんびりはいつでもできるから、行こうよ」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「息きれちゃった? ごめんね」
まだ息の荒い陽子ちゃんの手を、そっと握って・・・そっと引き寄せて・・・

先にソファーから立った僕と手を繋いだままの彼女、じっと顔を見ながら彼女を引き寄せ立たせて。

そのまま僕は後ろに進む。
彼女は導かれて・・・・・ゆっくりと後を追って・・・・・やがて、僕たちの寝室に。

パタン。
閉じられた扉は、2人の世界へと導くための手段の1つ・・・・さあ、一緒にいこう。

2人の世界へ。。。




そして今日は、朝から別荘地に向かって僕は愛車を走らせてるんだ。
食材を買いたいという陽子ちゃんに、途中デパートに寄って・・・・着いたのはちょうどお昼過ぎだった。

別荘の前に車を止めて、荷物を中へと運んでいたら・・・・・あ、管理人の遠藤さんが手伝いに来てくれたみたいだ。

「こんにちは、お世話になります」
僕はにこやかに遠藤さんに挨拶をしていたら、陽子ちゃんも横に来てペコリと頭を下げている。

「3日間、お世話になります」
「私はこの別荘地の管理人で遠藤と申します。 何かあったら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
「家内が少しですが食材を揃えておいたので、遠慮なく使ってください」
「助かります」

そんな2人のやり取りを見て僕は、ホッと胸を撫で下ろす。
・・・・・実は、この別荘は僕の祖父のものなんだ。

遠藤さんとは小さい頃から、此処に来たら遊んでもらってたからさ、僕のこと今でも『尊坊ちゃん』って呼ぶんだ。
何だかそれが気恥づかしくて、知らないふりをしてもらうよう頼んじゃったんだ。

ここは別荘地としては有名で、幾つも別荘が並んでるし、少し行けば貸しバンガローもあるんだよ。
この辺りは私有地になるから、バンガローのお客さんが来ることはないんだけどね。

「ところが、最近のマナーの悪い輩が、私有地でもお構いなく入って来ては騒ぐものですから、困っているんです」
「え、そうなの? じゃ、しっかり鍵をかけなくちゃ!」

遠藤さんの話でビックリしたんだけど、私有地に入り込んで騒ぐだなんて・・・
警察には言ってあるのかな? パトロールとか見回ってもらわないと。

「ええ、それは相談してあるんですが・・・はぁ、頭が痛いことです」
「・・・・・そんな物騒になってるのか」
「た・・・・神戸さん達がいらっしゃる間は私も見回らせてもらいますよ」
「すみません遠藤さん」

ん〜〜〜・・・・・
車から荷物を運んで、遠藤さんが帰り、僕はソファーに座りちょっと考える。

地元の不良達が入り込んでくるなら、3日の予定だけど・・・明日帰ってもいいかもしれないな。
あーあ、誰にも邪魔されずに湖畔を散歩したり、夜は星が見事だからさ・・・2人で草むらに寝っ転がって見るのもいいと思ってたのに。

中止かな・・・・・

「神戸さん! お昼は何がいいですか?」
「着いてすぐ作るのも面倒でしょ? この近くにカフェがあるから、食べにいこうよ!」
キッチンから陽子ちゃんが呼ぶから、そばに寄ればお昼の相談でした。

何か作ろうとしてる陽子ちゃんの手から、材料を外して・・・・そのまま腰に腕を回して抱きしめる。
頬っぺたにチュッとして、彼女と手を繋いでカフェに向かいランチを注文した僕達はこれからの予定を話してるんだけど。

『君達すっげー可愛いね〜』
『俺達さ、すぐそこのバンガローにいるんだ!』
『よかったらおいでよ〜、っていうか来て来て!』

チャラい男達・・・20代前半の3人の男が、女性だけのテーブルを囲んでナンパしてるのに、周りの客達が眉を潜めている。

落ち着いた雰囲気のカフェなのに、騒々しい男達の声に帰る人も居て・・・・・店も迷惑だよな。

僕達のランチを持ってきた店員も、すまなそうに僕達や他の客達に謝って回っていた。

「食べたらすぐに、出ようね」
小声でそう言った僕に、にっこりと微笑む陽子ちゃんは頷いて、ランチのパスタを食べ始めた。

「ん・・・美味しいです」
「んふっ、よかった」
2人でランチを堪能して、陽子ちゃんはデザートを頬張り、僕はコーヒーを飲んでいると、さっきまでナンパして騒いでた男達が静かなのに気がついた。

チラッとそっちを見れば・・・・・・ああ、女性達が帰っちゃったのね。
あんまり強引に誘うから、周りの不快感を感じた女性達が嫌がって帰ったんだろう。

陽子ちゃんが食べ終わったみたい・・・・・んふっ、幸せそうな顔しちゃって!
美味しかったの、そう・・・よかった。

陽子ちゃんの唇の端っこにクリームが付いてたから、親指でそっと取って・・・・・その指をペロッと舐めた僕。
ん、甘いや・・・

その僕を見ている陽子ちゃんが、みるみる真っ赤になっちゃって・・・・・
熟れたリンゴのようなほっぺに指を触れると、ふふふ・・・・・熱い。

「どうしたの?」
「だって・・・私の・・・クリーム・・・パクって・・・・」
「デザート、ごちそうさま! ・・・・・・美味しかったよ 」
そんな僕の言葉に俯く君が、可愛くて・・・・・たまんないよ。

「もう食べたし、出ようか」
「はい」
僕達はまた手を繋いで、森の中の道をゆっくりと歩いて、別荘に戻るんだ。

「神戸さん、お夕飯はバーベキューにしますか? それとも・・・ローストビーフとか?」
「え、ローストビーフできるの? 食べたいな〜」
なんでも陽子ちゃんによると、立派なオーブンがキッチンにあるのと、塊のお肉を買っておいたからってことなんだけど。

「・・・・・・・ローストビーフ初めて作るので、帰ったらすぐに取りかかります」
くすっ・・・・・・ 意気揚々と宣言する陽子ちゃんに、無理しないでいいからって言って、木の影に引っ張り込んだ。

「のんびりするのが目的なんだから、陽子ちゃんもそんなに働かなくていいんだよ」
「私がしたいんです! 神戸さんに少しでも美味しいものを食べてほしくて」
「ありがとう。 じゃあ僕も手伝うからね。2人で作ろう」
「はい!」

嬉しそうに笑う彼女を抱きしめて・・・・・・唇を重ねて、彼女の唇も舌も味わう。
んふっ! さっきのクリーム味だ。

しばらく堪能していると、背後に人の気配が・・・・・・

陽子ちゃんを離して僕の背中に隠しつつ、振り返れば・・・・・さっきの店のナンパ男たち。

・・・・・・・ 店からつけてきたって訳か。

「おい、オッサン! 可愛い彼女連れてるじゃないか」
「俺らの方が彼女に似合うんじゃないのぉぉ〜」
「ねぇーー彼女〜〜〜そんなオッサンより俺らに付き合ってよぉぉ〜〜」

相手は3人か・・・ ま、負ける気はしないけど、民間人に先に手は出せないし、様子を見るか。
様子を見ている僕のことを、ビビっていると勘違いしたナンパ君達は僕らに近づき、周りを囲んだ。

「俺らさ、そこのバンガローに泊まってんだけど、女連れてこなかったからつまんないんだよね」
「だから、オッサン! 彼女、借りるね〜」
「ああ、心配しなくても彼女は返してあげるよ」

「「「俺らが、存分に使ったあとでねぇぇ〜〜〜」」」

うひゃひゃひゃ・・・・と笑い合う3人が、俺は3回するからとか下品な事を話しているのを、聞きながらドス黒い感情が湧いてくるのを止められない・・・

「言いたいことは、それだけ? 僕はオッサンだけど、恋人を君らに差し出すほど臆病者じゃないよ」

「なんだと!」
「やってやろうぜ!」
かかってきた男達・・・・・・警備部の逮捕術を華麗に披露した僕は、あっという間に3人の男を地面に倒した。

トーテムポールよろしく重ねた男達からは情けない悲鳴が聞こえてきた。

「・・・・・これ以上僕達に絡んだら、今度は警察に通報するから。分かったか!!!」
「わ・・・・分かった」
脱兎の如く逃げていく男達に、少々痛い目を見た彼等が・・・・これで静かになると思っていたんだ。。

まさか、こんなことになるなんて・・・・・・思ってもいなかった。




少しのハプニングはあったけど、別荘に戻った僕達はローストビーフに挑戦するという陽子ちゃんと、仲良くレシピ検索から始めたんだよ。

「えっと、塩コショウをして・・・・・オーブンも予熱しておいてっと」
「陽子ちゃん、フライパンで焼き目をつけてからアルミホイルで包んでオーブンって書いてあるよ」
「今から焼きまぁーす!」
「ふふ・・・ 楽しいね」

ジュウジュウ焼いていく陽子ちゃんの横で、タブレットを見ながら手順を教える僕。

「いい感じじゃない?」
「これくらいかな〜」
フライパンを覗き込む僕達・・・・・・陽子ちゃんの顔が近くにあるから、チュッとほっぺにしておく。

「隙あり・・・」
「料理中は危ないです」
なんて戯れあいながら、オーブンにお肉を入れて・・・あ、付け合わせに・・・・やった!

「ポテトサラダだ。 俺好き〜・・・やった」
「うふふ・・・ 朝作っておいたんです!」
「今朝って待ち合わせ早かったでしょ? 陽子ちゃん何時に起きたの?」
「・・・・・・5時だったかな?」
首を捻る陽子ちゃんの手からポテサラのタッパーを取って冷蔵庫に入れ、きょとんとしてる彼女の肩を抱いてリビングに。

「少し寝なよ、身体が持たないよ」
「でも、オーブンの様子を・・・」
「いいから! 僕が見るからさ、陽子ちゃんは寝ていいよ! じゃないと大変だよ」
「何がですか?」

「だって今夜は、寝かせる気ないんだもん!」
「・・・・・・・・・・(真っ赤)」
んふっ、真っ赤になっちゃって・・・・・・・・可愛い。

「可愛い・・・・・・陽子」
「かんべ・・・・・んんん・・・・・」
僕の言葉ですぐに赤くなる可愛らしい恋人の反応に、煽られた僕は彼女の果実のような唇を味わって・・・・・

ソファーに沈めた恋人のエプロンを外し、背中のファスナーを外して、そっと・・・そっと、葡萄の皮を剥がすように剥いていくんだ。

黄緑色の身じゃなくて、真っ白な艶やかな肌が・・・・肩が見え、鎖骨が見え、胸の谷間が見えて・・・
きゅっと吸い上げて、赤い華をつけていく僕を陽子ちゃんはジッと見てるんだけどね。

その目がしだいにトロンと潤んでくるのが、たまらないんだ・・・・・・

フロントホックのブラを外せば、ぷるん、と弾ける胸に口付けて・・・・・途端に震える彼女に、口角が上がった僕。

「か・・・かんべさん・・・」
「いい? 陽子ちゃんを食べても、いい?」
こくん、真っ赤でも、恥ずかしがってても、頷いてくれる君が、愛しい。。。

そのまま僕等はソファーで愛し合ったんだ。

すやすや眠る陽子ちゃんに毛布をかけて、僕はオーブンを見にいくんだけど・・・・ん、美味しそうな匂いがしてる。

ワインセラーから揃えてもらったワインを見て、陽子ちゃんでも楽しめそうな口当たりの銘柄を選んで冷やしておく。

夕飯までには完璧に冷やしておけるよな。
今夜はワインと、美味しいディナーを楽しんで、デザートは・・・・・んふっ!

何度食べても美味しい、最高のデザートを一晩かけて食べようかな?
幾夜、身体を重ねても飽きない恋人は、初々しいままで僕の欲望を枯らすことがないんだよね。

そういえば・・・・・芹沢君にさぁ〜聞かれるんだよね。
何回続けてヤレるのかって!

え? 普通じゃない?
愛する女性がさ、僕にだけ見せる愛らしい反応や、痴態・・・・・彼女を煽るつもりでいるのに、それを見た僕が結局は煽られて何回も・・・・って。

「で、で、で? 一晩で何回なんすか? 教えてくださいよぉぉ〜〜〜」
「ん〜・・・(耳打ち)ごにょごにょ・・・・・・これくらいは普通でしょ?」
「!!!!!!! ・・・・・・本当すか?」
「あとね、自分はイカなくてもさ・・・彼女だけとかも、ね☆」
「でぇぇ〜〜〜、そんなテクニックあるんですか警部補!」
「普通でしょ?」

「尊敬します!!!」
そんな事もあったっけ。

「俺なんて疲れてて、2回も出来ないんすよ? 警部補より若いのに・・・・」
「ご愁傷様」
芹沢君、ファイトだよ。

さてと、陽子ちゃんが起きる前に僕はシャワーで汗を流しておこうかな。
ふふっ、よく寝てる・・・ すべすべのホッペを一撫でして、シャワールームに向かった僕。


「くそっ! あんなオッサンにやられるなんて、冗談じゃねー!」
「GTRかよ、いい車に乗ってやがんな」
「この別荘だって俺達のバンガローより広そうだよな」

「くそっ、くそっ! なんで俺たちに女がいなくて、オッサンが若い女とヤり放題なんだよ!」
暗い目で別荘を見る男達は、物騒なことを企んでいたのだった。

「夜になったら、みてろよ。 地獄のサプライズを仕掛けてやるよ」
へへへ・・・・・・・ははは・・・・・・うひゃひゃひゃ・・・・・・男達は不気味な笑声を残して去って行った。




「お前等がコケにされたって奴は、この別荘にいるのかよ」
「ええ、ヒドイんすよ! 俺らがちょっとソイツの彼女と話しただけでボコられたんすから」
「ここは遠藤さんにシメてほしくて」
男達に遠藤と呼ばれたのは30歳くらいで、アーミー柄の服で身を包んでいた。

「シメるだなんて人聞きが悪いな。 俺たちはサバイバルゲームをしてて、ここに迷い込んだだけ・・・そうだろ」
ジャキィーーン! モデルガンを手に持った男達・・・・アーミー柄の服に身を包んだ10数人が、嫌な笑顔を浮かべて別荘を見ていた。

「さあ、サプライズ・パーティーの始まりだ」
「おー」

遠藤がこのチームのリーダーで、別荘の中にいる敵を炙りだし殲滅するというゲームを、始めようとしていた。
最近、仲間内だけでの対戦では飽きてきた遠藤が、始めた新しい遊びとは・・・

気取った別荘の人間が、地元である彼等を馬鹿にすることはよくあった。
そのことに腹を立てたチームの面々に、別荘を敵と仮想して攻撃をしかけるゲームを遠藤が提案し、チームで実行していたのだった。

なぜ警察沙汰にならないのかといえば、襲われた別荘の人間が報復をすると脅されて、泣き寝入りをしているのだった。

そうして味を占めた遠藤達は、いつでも襲える別荘を探していて・・・・・もう、狂暴な衝動を抑えることができなくなっている。
それゆえに ナンパ男達の嘘を間に受けて、神戸の別荘をも襲うことにしたのだ。

段取りの最終確認をしながら、遠藤達の顔には薄ら笑いが張り付いて不気味なものになっている。

周りを取り囲んでじわじわと獲物を追い詰め、別荘から飛び出してくるのを、舌舐めずりして待っている快感を思い出しているのだ。

遠藤の指示で周りを取り囲むため、散っていく仲間たちを見て、遠藤も草むらに身を潜めた。

窓から中を伺えば、2人の男女が楽しそうに、幸せそうに食事の準備をしているところだ。


「お肉、切りますね」
包丁で薄く肉を切っていく陽子ちゃん。

赤味がかった色のローストビーフは、ちょっと焼きすぎちゃったかな?

「あ・・・焼きすぎました」
「全然、大丈夫だよ! 美味しそう〜」
「ま、いっか!」
「そうそう」
薄く切ったローストビーフと、ポテトサラダ、パンとワイン用にチーズとナッツ。

ワインを開けて、陽子ちゃんに注いで・・・あ、僕のは陽子ちゃんが注いでくれるんだ。

《カチン・・・・》

グラスを合わせて乾杯した僕達がワインを一口飲んだとき、それが始まったんだ。

《ガシャーーーン!!!》

「何の音だ」
「ガラスが割れた音です」
何が起こったんだ! 音のする方に見に行こうとしたとき、明かりが消えた。

「真っ暗・・・ ブレーカーですかね?」
そんなのんきな声の陽子ちゃんを、暗闇の中で引き寄せ・・・・耳元に囁いた。

「ブレーカーが落ちるほど電気製品使ってないでしょ? きっと外の引込み線を切られたんだ」
その意味が分かったのか、陽子ちゃんの身体がこわばってきた。

切られる・・・・ってことは、人が、態と、したこと。
僕らは、襲われてるんだ。

暗闇の中で、じっとしていても狙われるだけ!
僕はポケットのキーを確認して、外に出て、車で逃げようと思ったんだ。

「陽子ちゃん、車で逃げよう」
「はい」
2人で手探りで玄関に向かおうとリビングを移動していると ・・・・・・・・部屋の中に誰かが、いる!

わずかな空気の流れに何かの気配を感じた僕らは、迂回しつつドアに向かう。

そのとき何かが突進してきて、僕の腹に衝撃が!

「うぐぅ・・・・」
腹にも、背中にも、顔にも、暗闇の中で滅多打ちされてる僕の呻き声で、陽子ちゃんが何かを察したらしい。

「陽子・・・逃げろ!」
僕を殴っているのは1人じゃない、大勢の男に同時に殴られているんだ。

これじゃあ、君を守れない・・・・・・・早くっ・・・・・逃げて・・・・・・陽子!

痛みのなか倒れた僕は身体を丸め少しでも攻撃を防ごうとしても、何人もの脚に蹴られて、薄れていく意識のなかで、君が暴漢に襲われない事だけを祈る。

守ってあげられないなんて・・・・ 僕はいいから、早く・・・逃げろ陽子!!!

そのとき、眩しい光が辺りを照らしたと霞む目で見れば、周りから男の野太い悲鳴が上がった。

「神戸さん、私に捕まって!」
「ぐっ・・・うん」
彼女に捕まってやっと立った僕を連れて、陽子ちゃんが玄関に向かった。

でも途中で崩れ落ちた僕には、脚も蹴られて痛めたのか・・・・・もう立つことができなくて。

「陽子ちゃん、よく聞いて・・・・君だけで逃げるんだ。これキーだから。遠藤さんのとこか警察に行って保護してもらって」
げほっ・・・・・・咳をしたら掌に、血が・・・・・ヤバいな、肺が傷ついたのかな・・・・

「神戸さん、血がっ・・・・・」
「いいから、早くっ! 行け、行くんだ」
俺を支えようとする彼女の腕を払って、早く行くようにって言ってるのに・・・・・

陽子は、今にも泣きそうな顔をしながら、行かないんだ。

科捜研にいた陽子は、体術なんてしたことないし、科学に強いってことを除けば普通のか弱い女の子なんだ。
ほら、震えてるじゃん!

早く、行って! 行くんだ!
首を横にふった陽子が、キッと目を瞠り僕の手を強く、握った。

「神戸さん、絶対助けるから!」
そう言うと僕の腕を引っ張って・・・・・・・背中に僕をおぶったんだ。

「火事場の馬鹿力〜〜〜」
何かを杖にして僕をおぶった陽子ちゃんは、外の車に向かったんだけど・・・・見張りに誰かがいて、近づけない。

彼女は横にある物置小屋に入り、奥に僕を寝かせて扉に鍵をかけた。
物置と言っても建物はログハウスで、離れようにっていつでも使えるようにはしてあるはずなんだ。

「うっ・・・・いてっ・・・」
「神戸さん・・・・・大丈夫ですか?」
「うんって言いたいけど、ダメみたい」
はぁ・・・はぁ・・・不自然な息の荒さ、胸の痛み、喀血・・・全てが肺に何らかの問題が起こったことを表してる。

「陽子・・・助けを呼んできて?」
「いや・・・そばにいます」
「ダメ、君だけでも無事に・・・」
言葉が出てこない・・・・・・・はぁっ! 息が、辛い。

「ぐぅ・・・げほっ! ごほっ・・・・・・はぁっ、はぁっ」
床に血を吐いた僕に、蒼白になる陽子・・・・・・だけど、決して僕のそばを離れないんだ。

ははは・・・・・・・困った子。

必死に僕の背中を摩ってる・・・・・・陽子の手の感触を感じながら、僕の意識は・・・そこで途切れてしまったんだ。

ごめん、ごめんね・・・陽子
守ってあげられなくて・・・・・情けない俺で、ごめんね。

死ぬかもしれないと思ったとき、俺の世界が終わる日に、君だけがいればいいと・・・・
こんな非常事態なのに、そんなことを思ってたんだ。

君の腕の中で終わるなら、俺は幸せだよと・・・・・・言えるから・・・・・・・・




どうしてこんなことに!
神戸さんを早く病院に運ばないと・・・・

私は震える手で持っていたスマホで遠藤さんに電話をした。

「私が連絡しておきますから、神戸さんと隠れていてくださいね」
遠藤さんは驚きながらも、救急車と警察に連絡してくれると話してくれた。

安心した私は、ログハウスの窓からそぉ〜っと外を伺うと、ウロウロとモデルガンだろうライフルを持っている男達がいた。

その少し離れた所で、っていっても逆に私達のログハウスのすぐそこに、昼間の男達3人が何事か話しながらもアーミー服の男達を面白そうに見ている。

ん? ちょっと待って・・・・・もしかして彼奴らが頼んだとか?
何を話してるんだろう・・・・・・ あそこの窓から聞こえそう。。。

私は窓の下にいき、少しだけ窓を開ければ・・・・聞こえる、聞こえる。

「あのサバイバルゲーム馬鹿、俺達の嘘を信じてよぉ〜・・・うまく行ったよな!」
「あいつらにボコボコになった男は放っておいて、女の方は俺達で可愛がってやろうぜ!」
「遠藤って言ったか? あいつらもソコソコ暴れたら、帰るだろうぜ」
「なぁなぁ、誰が先にヤる? 順番決めとこうぜ!」

下品な男達の会話から、襲ってきたのはサバイバルゲームのチームだということ。
昼間の男達が嘘を言って私達を襲わせたということ。

・・・・・そして何の偶然なのか、チームのリーダーが管理人さんと同じ遠藤さん、ということ。

私は再び携帯で電話をかけて、この状況を話した・・・・・頼りになる人達に。

「これでよし! あとは時間稼ぎに・・・・何かないかな?」
私はグッタリとしてる神戸さんに毛布をかけ、物置になってるここにある物を調べ始めた。

あるのは・・・住宅用の洗剤に、洗濯洗剤や漂白剤、ジュースやお茶のペットボトル、それにガーデニングの肥料や農薬各種・・・・・

うん、色々あって・・・・・楽しい。

私は棚の中から洗剤や農薬、それに転がっていたパイプと工具箱を床に並べて作業に入る。

「うぅ〜〜ん」
「神戸さん、苦しいですか? すぐに応援が来てくれますから、それまで頑張りましょう」
ここはすぐに見つかると思うから、早く作っとかなきゃ!

「神戸さん、お水です・・・・・まだ意識がない」

心配で涙が出そうになるけど、泣いてる場合じゃないんだ私!
守らなきゃ・・・・・誰よりも大切なこの人を、守らなきゃ。

助けは向かってくれてるし、地元の警察にも連絡がいってるはず!
遅くてもあと30分、持ちこたえれば・・・・・・私達は助かる!

30分・・・・・ここに誰にも入れないよう、持ちこたえなきゃ。

私は窓の鍵をかけ、ある仕掛けをしながらログハウスを見て回った。

私に出来るだろうか?
体術も何もできない私が・・・・・・でも、しなきゃ!

私を守るために殴られて、自分をおいて逃げろと言ってくれる愛しい人のためにも。

私に何ができるだろう?
腕力も無い、喧嘩をする術も知らない、強くもない私・・・・・・だけど。

私には、私ができる事で闘うんだ。

・・・・・・震えるな、自分。
落ち着くんだ、自分。

私は私のできることで、闘うんだ。




せっかくの夏休み、2人でイチャコラしようとしていた神戸さん。
大変なことに・・・・

続きます。

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コメント

☆鈴寧さんへ☆

> ん~!!最高ですね!!
きゃぁ〜嬉しいです。
今回は守られる側から、守る側への陽子ちゃんです。
でも腕っぷしでは無理なので、自分の得意なことで・・・・・

神戸さんはきっと殴られてても恋人のことを1番に思うだろうなぁ〜と。。。
本当はスタイリッシュに護りたいんだろうけど・・・・今回は許してもらいましょう(笑)

次回の2人をお楽しみに!

ん~!!最高ですね!!

ハプニング?もの大好きなんです!!

一気にバーって読んじゃいました《*≧∀≦》

一体二人はどうなるのやら…(*´ω`*)

殴られても陽子ちゃんのこと守ろうってのが素敵です♡
Secret

プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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