②【戦国の薔薇】

信長のシェフin薔子! パラレル世界バージョン第二弾でございます(長いって・・・)
薔子のようで、薔子じゃない・・神戸さんと出会わない世界の薔子が、織田信長に出会ってしまった。

そして、愛するようになり・・・結ばれました。

ただ、時代を超越してきたケンが色んな人に狙われるように、薔子も・・・・・
ドラマ沿いのような、違うお話ですので・・・それでもいいよと言われる方のみ、読んで下さいね。

今回は南蛮人とのお話で、通訳なども全て捏造です。
歴史的にもこの時代、銃は買うものだったはずなのですが、高いお金を払って買うより自分たちで作った方が早くないかな?
なんて考えちゃったお話になります。




「のう薔子・・・ 今度、松永が南蛮人を案内してくるそうじゃ・・・」
「南蛮人を・・・それは何を目的に?」
「・・・・・銃じゃ! もっと性能の良い銃を手に入れるのじゃ」
「・・・・銃を買うより銃を作れる者を、育てたらいかがですか?」
「ふん、松永が連れてくる人物次第じゃ」

「ということは、技術者なのですね」
「・・・・・・よい、今は薔子・・・そなたが所望じゃ」
その言葉どおり、私にのしかかってくる愛しい殿に、恥ずかしい声を挙げさせられて・・・・夜は更けていく。

城の外も内側も穴だらけだった警備を立て直し、抜け道や忍びなら通れる要所を改造したおかげで毎晩のように襲われることもなくなった。

・・・・・おかげで私はまた、暇に。

御館様に仕事はないかと尋ねれば、返ってきた言葉が『南蛮人が来る』というものだった。

この時代、来るとしたら・・・・・ポルトガル、スペイン、オランダ・・・・・かな?
私の育ったイギリス人が来るのはまだ先だったはず・・・・・

それより連れて来るのが、あの松永なのが・・・・要注意だな。

「考えごとか? 余裕じゃの・・・ これでも儂以外のことを、考えられるかっ!」
「あっ・・・・あああ・・・・んんっ・・・」
身に余るほどの快楽に頭の中が真っ白になって・・・・・・・

もう、あなたのこと以外・・・・考えられない。

「感じておれ薔子。 ・・・・・未だ初々しいそなたが、たまらんのじゃ」
激しくなる律動に揺さぶられて、身体の奥深くまで責められながら私は・・・・・歓喜の声を上げていた。

「良い声じゃ・・・・ 薔子っ!」
「あああん・・・・・とのぉぉ・・・・」

その夜も、薔子の切なくも色っぽい嬌声が信長の漢を滾らせ、煽り、そして・・・男としての自信を輝かせている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ったまらんのぉぉ〜・・・ あの声! あの声を聞くだけで息子が勃ってしまうわい」
「だから御館様の寝所の近くには近寄らぬことじゃと、申したであろうが!」
「しかし、この声・・・・・声だけでも聞きたいんじゃ!」
「確かに、身の内から昂ぶる、声じゃ・・・」

下級武士の警護の者達の間では、薔子の閨の声が話題になっていた。
その声を聞けば、年を取った爺でも若かりし頃を彷彿とさせるほどの昂りを得られると。。。

「無礼者! 主の寝所を伺うだなど、無礼であろう!」
信長が薔子を抱くたびに、楓がそういう輩を追い払っているのはあまり知られてはいない。

・・・・・・それが、毎晩の日課になるとは、楓も思ってはいなかったのだが。




「御館様、ポルトガルから参られたマリオン様と、通詞の山田です」
『マリオン、彼が織田信長です』
『・・・・よろしく』

通詞の山田は若い男で、父親からポルトガル語を習い通詞の仕事に着いていた。
並みいる諸侯がポルトガル人だけではなく通詞である自分をも、大事にし敬うことで最近、自分を過信している。

・・・・というよりも、自分が通詞をしなければどんな偉い人でも話ができない。
自分の方が異国人と話せるのだ、こんな田舎大名よりも自分の方が上だ!と、考えているのだった。

「ではマリオン、お前は確かに銃が作れるのか?」
信長の言葉に通訳をする山田の顔を見るマリオン・・・ 彼は銃の売買される堺に行く前に、松永に雇われた山田に誘われて岐阜城へとやってきたのだが。

『マリオン、確かに銃を作れるのかと言われている』
『ああ、作れる。 僕の持つ技術を伝えるために来たんだ』
「彼は確かに作れると申しております」

「ではマリオンとやら、銃の技術を儂に伝える対価を、貴様の望みを聞こう・・・・」
信長の言葉を、山田はそのまま伝えるはずが・・・・・

『マリオン、君の技術は大変なものだ。 織田信長みたいな田舎大名じゃなくて、もっと金のある大名のところに行かないか?』
『山田? 君が連れて来たんだよ? 今更ほかの人のところに行くというのかい?』
『ああ! 連れてくるって仕事は終わったんだ。 もっと高く買ってくれるところに・・・・なぁーに、この場は俺が誤魔化してやっから』
『僕はお金が目的じゃないんだ! この国は放っておいたら食いつぶされてしまう』

『僕は自分の技術で、この国が世界と渡り合えるようになって欲しいんだ。 銃は確かに高価なものだけど、この国は商人達に言い値で取引させられてるんだ!』
『そんな事どうでもいいさ。 俺はお前を使ってもっと大金を掴むんだ! お前の言葉は俺しか分からない、だからお前は俺の言うことを聞かなきゃ、この国でやっていけないんだよ!』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「松永、何か揉めているようだの」
「どうしたことでしょうかの、マリオンが何か面倒なことでも言うているのでは?」
「・・・・・・ふん、しばらく待つか」
「・・・・・・御館様、もしやマリオンは御館様に恐れ慄いておるのでは」
「言葉が通じないとはいえ、その様な雰囲気ではないわ」

松永が山田のそばに行き、何事かと尋ねれば彼は、しれっとした顔でマリオンが報酬について聞きたいと言っていると答えた。

『山田、僕はこの方に僕の技術を伝えたいと思う。 他の人のとこには行かないよ』
『どうしてだ! なんで岐阜の田舎大名に、しかも会ったばかりの大名に・・・他に行ってみればいいじゃないか』

山田の言葉にマリオンが、ふっと笑った。

『僕だってこの国に来るまでに色んな人物と会ったよ。 でも、彼は誰とも違う・・・ 言葉も通じない異国人の僕の話を冷静に、真剣に聞いている。下手をすれば理解の追いつかないことも、理解しようとしている』

『こんな人、初めて会ったよ。 だから僕は、僕の技術を彼に託したいんだ』
にこやかに山田を見るマリオンだが、山田の思惑とはまるきり違う展開に彼はイラついた。

『お前は俺の言う通りにすればいいんだ! もっと権力も金もある所に行くんだよ!』
『嫌だ、僕はこの人がいいんだ』
『なにぃ〜〜〜 黙れ!』




松永が離れ信長のそばには後ろに控えている薔子だけ・・・ すっと近づいた薔子が、信長の耳に囁く。

「なにっ! そうか、そう言うことか」
「あの山田という男・・・・・鼻につきます」
「・・・・薔子は、言葉が分かるのか?」
「子供の頃、私は英国で育ち学校で色んな国の子供達と一緒にいました。その時、日常会話くらいを習ったんです」
「えいこく、とはどこの国のことじゃ」
「イギリスです」
「え・・げれす? ・・・・・ふん、お前は不思議な女よ」

「何をお話になられていますか? この老いぼれにも教えてくだされ 」
松永が、じとりとした視線で薔子を見るも、すぐに笑顔にとって変えた。

松永の言葉にニヤリと笑った信長。

「なーに、儂の可愛い側室が閨のことでな・・・・・気にするな」
「え?」
「わーはっはっ、それはそれは失礼しました」
「御館様!」
いくら誤魔化すためとはいえ、何てことを言うんだこの人は!

若衆姿の薔子だが、信長の言葉に真っ赤になって照れる様子は・・・ 艶やかな【女の顔】になっている。

「愛いやつじゃ・・・」
「ほんに御可愛らしい・・・」
信長に、松永に、見つめられた薔子が、ますます照れてしまい・・・その可愛らしい様子に山田の喉がなった。

『マリオン、もういい。織田信長に銃を伝えればいい。だが、報酬は俺にももらうぞ』
『山田? 何をするつもりなんだ?』
『あの女、俺の報酬にもらうぞ』
『なんだって? ダメだ、ダメだよ山田!』

「マリオン殿の報酬についてお話をさせていただきます」
「よかろう、申してみよ」

山田の提示した金額は、目が飛び出るくらいの金額で・・・・ 松永が差し出した名物・九十九髪茄子(ツクモナス)と同額。

「それと、その若衆・・・いや、その女もマリオン殿は所望です」
「金は払うてやろう・・・だが、儂の側室は、やらん」
「それでは、マリオン殿は他の方の所に行かれます」
「ふん、薔子が欲しいのはマリオンではあるまい!」

「山田、お前ではないのか?」
「何をっ・・・失礼な!」
山田が癇癪を起こしたようにイラつき始め、その様子を面白そうに見ている信長、そして薔子は・・・

『失礼だが、貴方はどれほどの報酬を望んでおられますか?』
突然、流暢なポルトガル語でマリオンに話しかける薔子に、マリオンはきょとんとし、山田は驚愕で薔子を見る。

『僕は・・・住まいと安全の保証、そして食べていければそれでいんです。 僕は銃という人を殺める罪深い物を作っています。 だけど、それで・・・この国の方達を救うこともできる。僕はそれだけでいいんです』
『欲のない方ですね。 通詞の方は貴方の報酬を目が飛び出るほど要求してきましたが』
『・・・・・彼には困りました。 でも良くしていただいているので強く文句も言えません』
『では貴方の意向を殿に伝えますね』

薔子は信長にマリオンの本当の目的を話して聞かせた。

彼は宗教上の信念により、商人達に食い物にされているこの国を憂いて、自分の技術を伝えに来てくれたこと。
報酬は安全に住めることと、食事など身の回りの世話など、慎ましいものだということを・・・・

それをじっと聞いていた山田は、今までの会話も薔子に聞かれていることを知り、愕然とし・・・・顔色が無くなった。

「分かった。 マリオン殿にはこの城に住んでいただこう。 身の回りのことなど気を配るように・・・・・サルにでも申し付けるか」
「・・・・・・この男は、如何いたしましょうか?」
「通詞の仕事で私腹を肥やしているようじゃな・・・・」

すらり立った薔子が、腰の刀を抜き放ち山田の喉を、狙う。

眼光鋭く山田を見る薔子。
その切っ先の鋭さと、まるで眼でも射殺せるほどの迫力に山田は震え上がり、松永の目が細められる。

「お・・・お許しを・・・」
「許さん・・・・我が主君であり、唯一の殿を・・・田舎大名だなどと・・・万死に値するわ!!!」
「ひぃぃえぇ〜〜〜おゆっ・・・お許しを〜〜〜。命が助かるならば何でもします!」

『ならば、その命を差し出せ! 命の限り殿に忠誠を誓えっ! 誓わねば、この場で斬る!』
ポルトガル語で怒りを露わにする薔子に、山田は・・・・魅せられていた。

なんて苛烈な・・・・・まるで地獄の業火のように燃え上がる、炎だ。
美しく、強く、激しく・・・・・そして、先ほどの可愛らしさ・・・・なんて人だ・・・いや、人なのか?

弥勒菩薩か摩利支天か・・・・ その激しい炎で敵を焼き尽くしてしまうような、戦女神。

通詞の自分さえ、明日のことは分からない世の中だ。
いつ戦に巻き込まれて死んでしまってもおかしくない日々。

この人・・・いや、この御方のためになら、俺は死ねる。
命の限り働いて、笑って死ねる・・・ この御方のためになら。。。

『俺は貴女に仕えたい! この命、貴女に使ってもらいたいです』
『・・・・・・忠誠を誓うのか、この私に・・・』
『・・・・貴女にだけ、誓います』
平伏した山田に、刀を納めた薔子が信長の前に座り、つ・・・と、手をついた。

「この者、私に下さい。 私の語学をこの者に仕込み、きっと御館様の役に立ててみせます」
「好きにせい・・・ただしだ」

「山田とやら・・・ 薔子に害を成せば儂が、斬って捨てる! いいな」
「はい!」
こうして山田は薔子の忠実な家来となったのだった。

のちに、薔子が自分の話せる言葉を山田に教え、彼はこの時代では考えられないほどの語学を納めたのだった。
しかし、普段は薔子の執事のように、戦国時代に馴染めるよう気を配っているのだった。

そして山田の主な仕事は、マリオンの通詞として銃を作る材料の指示から製法に至るまで、昼間は付きっきりで通訳していたのだった。




《私の語学をこの者に仕込み、きっと御館様の役に立ててみせます》

薔子の言葉に松永が首を捻る。
山田は通詞としてポルトガル語を話すことができる・・・・・ではそれ以外の国の言葉を、あの薔子という女は話せるというのか?

山田はあの場で忠誠を誓った通り、今では薔子の為にと走り回っておる・・・・・楽しそうに。
マリオンも御館様の役に立つんだと、慣れない土地で銃を作る工房を建てている。

この情報、どこに売れば高く買うじゃろうの・・・・・
それにしても、あの女・・・ 只者ではないようじゃの。

「御館様、あの薔子という御方はどういった御方なのでしょうか?」
「儂の女じゃ・・・ それ以上でも、それ以外でもない」
「薔子殿は、ポルトガル語いがいにも南蛮語が話せるので?」

「ふふん、出来ると言うておったわ! 不思議な女じゃ・・・・」
なんと! 他にも話せるとは・・・・そうか、そうか、面白いことになったわい。

松永がその直後、石山本願寺の顕如を訪ね、聞いたことを話していた。

「南蛮に通じているのですか? あの薔子という者は」
「そのようですな。 普段は刀を使うておるようですが、話によれば《けいぼう》なる伸び縮みする棒を愛用しているとか」
「それももしや南蛮仕込みですか? あの時、離れに行く時の信長の顔色は、酷いものでした。それが再び私の前に現れたとき、健康そのものの顔色になっていた・・・・それも、南蛮に関係があるのですかね」


「・・・ふふ、面白い。 松永殿、私をその者に会わせてはいただけませんか?」
「顕如様が会うような者ではないと思いますが、その者は実は・・・御館様の側室でしてな。連れ出すことは・・・」

無理無理・・・と、笑いながら大仰に首を振る松永に顕如が微笑む。

「松永殿ほどの策士ならば、造作もないこと・・・ 違いますか?」
「まぁ・・・無きにしも非ずというか・・・ 顕如様のために一肌脱ぎましょう! それには顕如様にも協力していただきたいのですが・・・・ 」

ふっ・・・ すでに算段済みであろうが、この策士めが!
顕如の内心の呟きは、能面のような微笑みに消されていた。

それから暫くたった、ある日。
お茶が好きな信長のため、茶会を催したいと顕如から親書がきたのは、松永の策だった。

「ふん! また何を企んでいるのか・・・・顕如めが!」
「聞いた噂によれば・・・ 石山本願寺の秘蔵の茶器を出すとか・・・・私も一度は拝見したいですなぁ〜」
「・・・・・・秘蔵の茶器か・・・ 面白い」

ニヤリと笑う信長は松永に行くと答え、段取るように命じて・・・薔子を見る。

「薔子、お前も来い、よいな」
「はい」
茶会の場所は京のある寺で催されることになり、信長自身も自慢の茶器を持って行くことになった。

「顕如にだけ茶器を出させるものか! 」
「ふふ・・・御館様が駄々っ子のように見えます」
「儂が駄々っ子・・・・・童だとでも言うのか! 薔子、許さぬぞ」
「きゃっ!」
2人だけで酒を酌み交わしていた夜の帳の中、信長は薔子の腕を引き、そのしなやかな身体を抱き込み、組み伏せた。

「・・・・・童にこの様なこと、出来るまい?」
自分の身体の下に組み敷いた薔子を楽しそうに見降ろしている信長。

その手が袖の袂から入り込み脇や、腰を撫であげていく・・・・

「ひゃっ! いけません御館様・・・ ここは寝室ではないです」
板の間に信長の座す場所だけ一段高く畳が敷かれている居間のようなところで、背中には虎の敷物が薔子を受け止めている。

「童というた そなたが悪い。 儂が漢じゃと、その身に思い知らせてくれる」
喰われる・・・そんな気持ちになりながらも、私は結局・・・この愛しい人には敵わなくて。

首筋から唇で丁寧に舐め上げられる、その唇と髭の感触で・・・ふるり、と身体が震えてしまう。
着物の胸元を拡げられ、剥き出しの乳房に喰らいつかれながらも、どうしてだろう・・・・

この人の愛撫は、いつも熱くて・・・・・・とびきり 優しい・・・・・
この身を差し出し、愛撫に身悶えながら果てれば、やがて愛しい人が身体の奥深くまで侵入してきて・・・・・

「あっ・・・んん・・・おや・・・かたさ・・・ま・・・・・あっ! はあ・・・・」
私はもう、信長様に揺さぶられ感じるだけで・・・・・口をついて出るのは、あられもない声ばかり。

私の声に嬉しそうな御館様・・・・・あぅっ! え・・・? 中に埋められている殿が、大きくなった?

「あ・・・との・・・とのが、おっきくなって・・・」
「儂が童ではない証じゃ・・・・・その身でとくと感じるのじゃ薔子」

その後は、艶やかな薔子の声が・・・切なげに、悦びに溢れて漏れ聞こえるばかりだった。




茶会当日・・・ 京の寺に集った顕如と織田信長。
信長の申し出で茶室をそれぞれ設け、嗜好をこらし互いをもてなすという申し出を顕如も受けたのだった。

寺の本館と離れにある部屋を茶室としてそれぞれが選び、家臣に設えさせている間・・・ 2人は少数の家臣とともに会合していた。

本館の部屋を顕如が、離れの部屋を信長が選び・・・ 信長は薔子に茶室の拵えを命じたのだった。

「薔子さん、お茶ができるんですか?」
「お茶とお花は母親から仕込まれててね。 ただ、現代風になっちゃうから・・・・こっちじゃ奇異に見られるかもって心配はしてるんだけど・・・」
「心配してるって顔じゃないですよ薔子さん。 なんだか嬉しそうです」

うふふ・・・・・華がほころぶ様に笑う薔子に、ケンの頬が赤味を帯びた。

「ケン君のお茶菓子は何にしようと思うの?」
「今回は抹茶に合うよう、手でつまんで食べられるメレンゲの焼き菓子にしました」
「ああ・・・口の中でほろほろと溶けていく感触が抹茶に合うね〜」
「はい! たくさん作るから薔子さんも食べて下さいね」
「後でいただくね。 色は白かな?」
「はい・・・白いメレンゲに焦げ目の茶色が入ります」
「そう・・・ん、分かった」

ケンが台所に戻り一人になった薔子は、湯を沸かすために火を入れ、茶器の中から鍋を取り出しかけておく。
その間、庭の草花を貰った薔子が城から持ってきた大皿に、手作りの剣山で生けていく。

茶を点てる用意を全て終えた薔子は、茶器を磨きながらその時を待っていたのだった。

まずは本殿の顕如の茶室での茶会・・・
本殿の方は豪華な絵の描かれた床の間などがあり、顕如は部屋事態には手を入れず静かに茶を点て振舞った。

信長や松永が茶を受け飲み、次は薔子の待つ離れへ・・・・

障子戸を開ければ目に入るのは生けられた花の大皿。
その傍らには若衆姿の薔子が、背すじをピンと伸ばした姿勢で待っていた。

「これはまた・・・・・美しい・・・」
凛々しい薔子の姿に、華やかな生け花、そして飾り気のない板の間・・・・・・それらが落ち着いた空間の中で調和し、一幅の掛軸のように絵になった。

「薔子、茶を点てい」
「かしこまりました」
薔子が流れるような動作で茶を点て、顕如に運んでいく。

ケンが運んだ茶菓子も並び、茶会は成功した。

「・・・・見事ですな、殺風景なただの部屋がこの様に美しい部屋になるとは」
「茶会の支度はこの薔子に任せておる」
「この茶も私が使った物よりも、美味しく感じました・・・何を使われていますか?」
「茶葉を石臼で何度も挽いているだけで、特別な物ではありません」

「では、美味しい茶を点てて頂いた御礼として薔子殿・・・私も貴女に茶を点てましょう。此方へ」
「・・・・」
えっと、どうしよう・・・チラリと信長様を見れば頷いてるし、これは行って来いって意味だよね?

「ついてきて下さい」
「はい」
私は顕如の後ろをついて、部屋を出て行った・・・・ 一人で。

顕如の案内で長いこと進んで・・・ 辿り着いた部屋は、茶室ではなくて。
ここって、どこになるんだろうか?

装飾の施された襖や、御簾のかかった一段高い所とか、これってきっと貴賓を迎えるための部屋・・・だよね。
私は懐に仕舞ってある警棒を確認し、示された場所に座る。

「おお、これこれ。 美味い菓子がありましてな・・・ ささ、どうぞ」
「いただきます・・・・・美味しい」
パクッと口に入れたのは、サクサクとしたクッキーで・・・この時代にクッキーってことは、カレンとかいうアノ子が作ったのかな?

「ふっ・・・くくく。 美味しそうに食べるのですね、あなたは」
「美味しいですから」
美味しい物食べると、笑顔にならない? 私はなるんだよね・・・だからたまに御館様が私に食べさせてくれるんだけど。

食べてる顔が面白いって言われても、内心、複雑なんだ。

「ところで貴女は織田殿の御側室だとか、間違いはないのですか?」
「間違いありません。私は殿の側室です」
「・・・・その様ですね。 この間と今と、貴女は違っている」
「何がですか?」
「あの時は清らかな乙女、今は男を知っている・・・・」

なんちゅーこと言い出すんだよ、この坊主!
意味が分かって真っ赤になる私を、顕如の目が細められて・・・・・

「ほう〜・・・ 途端に女の顔になる。 いいですね、美しい・・・ 私は美しいものが好きです」
何かだんだん視線がネットリしてくるんだけど、帰っていいかな?

「美味しいお菓子を、ご馳走様でした。 では主君の元に戻ります」
私が立ち上がったとき、顕如が話しかけてきた。

「あの和睦の場で、信長殿が美麗になられたのは、どういった事なのでしょう? 私はそれが知りたい」
「化粧です。 では失礼し・・・・ます・・・・あれ?」

世界が歪む・・・・・・なに? 何が起こった!
あの菓子に毒が? って、私に毒を盛って何がしたいの!

「心配せずとも少し、眩暈がするだけです。 貴女を我が寺に運ぶためにしばらくの間、眠っていて下さい」
「嫌だ! 訳の分からんとこに連れて行かれるなんて、真っ平御免なんだよ!」
「ほっほっほっ・・・ 活きが良い方だ。 他の女とは違う・・・」

ぐらりと傾いた私に手を出し捕まえ様とする顕如を避け、懐の警棒を出した。
シャキーンという金属音に、少し正気になる私。

とにかくここを出て、御館様の居る所へ・・・・・戻るんだ。

「薬が効いてきておる。 大人しく捕まりなさい・・・」
顕如の合図にバラバラと僧兵が私を囲んで居る。

えっと・・・・1、2、3・・・ああ、視界が揺れるから何人居るのか分かんないや。

「捕まえなさい・・・丁重にな」
「はっ」

男たちの伸ばされた腕を警棒で打ち払い、できた隙間から部屋の外に出た。
霞む目で見るのは無理だと、閉じて耳を頼りに襲ってくる僧兵を倒していく。

右に、左に、揺れて壁や障子にぶつかりながらも、前へ前へと進んでいく私を、僧兵たちは捕まえることができない。

焦れた僧兵が刀を抜くも、私はチタン合金の警棒でバッキリと刀を折った。
薬のせいで力の加減なんて出来やしない!
向かってくる者を、全力で叩き伏せるのみ・・・・・・・

「悪いが、この状態で手加減などできない。かかってくるなら腕の1本、脚の1本、圧し折られても良い者だけ来るがいい!!!」
「なんだと!」
目を開けながらも耳に頼って向かってくる僧兵たちを、遠慮なく倒してく私は・・・・何に見えるのだろうか?

くすっ・・・・・鬼神のように不気味な者に見えるだろうな。

なんだか可笑しくて、くすくすと笑っていると、殺気が止んだ。
そのとき楓さんが来てくれたから、私は楓さんの腕を掴んで目の代わりになって貰って・・・・・走って逃げたのだった。

「御館様、薔子様が何かを盛られています」
「何っ! ケンを呼べ! 薔子」
「あ・・・殿が何人も見える・・・・」
殿のそばに来れたことで安心したのか、私はそのまま気絶してしまった。

与えられた部屋の中、布団に横たえられた薔子の髪を梳く信長。
傍らに控えるは楓、秀吉、柴田、ケン、そして松永だった。

「何だと、薔子はあの身体で僧兵を倒していただと」
「はい。 十数人の僧兵たちが腕や脚を折られ、闘えない様でした」
「眩暈が酷く、立って居るのもやっとのようだったが」
「私が着いたとき薔子様は、笑っておいででした」

「笑って? 敵に囲まれて笑っておったか・・・ 何故じゃ、薔子」
寝ている薔子に話しかけた信長だが、薔子の目がパチリと開いたのだった。

パチパチと瞬きした薔子が、自分が皆の前で布団に寝ていることに気がついて起きようとすれば、信長の手が止めた。

「寝ておれ・・・それより何故、笑っておった」
「それは・・・薬を盛られた身体で倒していく私は、彼等にはどう映るのだろうかと考えたら、鬼かなって・・・」

「そう思ったら急に可笑しくなって・・・ 」
くすくすと、小さく笑う薔子の顔を見て、信長が『ふっ』と笑った。

「きっとあ奴らも気がついたのだろう。 薔子、お前の武術が他には無いものだと。だからこそ手が出せず、敵わないとな」

それもあるだろうが、あいつらはきっと鬼神のように強い薔子様の・・・・・・あの微笑みを見たから、魅せられていたから、動きが止まったのではないだろうか。

無邪気さと、慈愛と、気品に溢れたあの微笑みを・・・・・

御館様が夜毎、薔子様と閨を共にするのも・・・鬼神のように強い薔子様が、いつまでも初々しく愛撫に応える様子が、漢としての自信を満足させてくれるのだと聞いたことがある。

薔子様には言わないよう口止めされているが、心の底から愛おしいと思われているのは、きっと・・・・・・

共に闘い、共に生き、滅するときも共にと誓う・・・ 薔子様だと、私は思う。
たとえ何人もの正室様や側室がおられるとしても。

この薔子様・・・ この方は男を、漢へと上げる方・・・その思いで、その心で、漢へと・・・歴史に名を残せるほどの漢に変えてしまう。

このお方が信長様のそばに居れば、いや、おそばに居られるよう私は見守るのだ。

「ならば私に仕事を下さい。 ・・・兵たちを鍛える仕事を」
「兵というより我が織田軍の武将どもを鍛えい、薔子・・・・・だが、今は寝ておれ」
「はい」

髪を梳く信長の指に、嬉しそうに頬を染める薔子が、大人しく目をつぶれば・・・信長が愛おしそうに薔子の髪を頬を撫ぜつづけた。


『欲しい・・・ この女、儂のものにしたい・・・ 不思議な力を持つ薔子、この女を手に入れたものが、この国を手に入れるのかも知れぬ』

『信長がこの女を手に入れてから、策は冴え、身体には力が漲り、覇気も格段と増して眩しいくらいじゃ・・・』

『羨ましやのぉ〜・・・ 儂もこの女を手にすれば、若い力を蘇らせることができるのかも』

『儂の手に、天下を・・・・・・』

松永の細い目に暗い光が、怪しく光っていることを・・・今は誰も、知らない。




信長のシェフです。
Part2になって益々、面白くなりましたね。

毎週、楽しみに見ては妄想が膨らんでおります。
よければ感想など、頂けると嬉しい管理人です。
関連記事

コメント

Secret

プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

ブロとも一覧


Cat Home

暁の唄

ちび眼鏡日記

ひとりごと

月が浮かぶ夜

まきまきまき

うみにふわりふわり

snowdrop

みやびのブログ

よみよみ

SweetBlackな世界

日々のこと

きみと手をつないで

shibushibuuu

ゆめの世界

井の中の蛙

月の舟 星の林

古いおもちゃ箱

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR