①【戦国の薔薇】

お遊び企画、信長のシェフin薔子!

今年の初夢でミッチー信長様を見て、書いたお話のバージョン違いになります。
薔子のようで、薔子じゃないというか、パラレル設定というか(笑)

神戸さんと出会ってない(出会わない世界の)薔子です。

信長のシェフ、Part2がとにかく嬉しいです。



「・・・・・・ここは?」
私が目覚めたのは、落ち葉の中で・・・・・ どうしたんだろう。

確か私は警護をしていて・・・・・警護を・・・・ダメだ、思い出せない。

それよりここはどこだろう?
私は起き出し自分がどこに居るのかを、まずは知ろうと歩き出したんだ。

「・・・・・くんっ」
火薬の匂い?

見れば少し先の木の影から妙な格好の男2人が、これまた時代劇みたいな銃を構えて何かを狙っている。

狙っている? 銃身の先を見れば人が!!!

私はとっさに小石を拾い、その2人の手元に投げ当てた。

《ガァーン! ガァーン!》
2発の銃声が山に木霊するが、あれだけ腕がブレれば当たらないはず・・・・

やばっ! 邪魔された2人が私に刀を抜いて切りかかってきた。
腰の警棒を抜いて応戦しようとしたけど、大勢の気配に2人が逃げて行った。

そのままその場にいた私。
囲まれてしまったけど、もしかして私がした事と勘違いされるだろうか?

様子をみていた私だけど、取り囲んだ男達の中から1人が進んできて・・・・

「久しぶりだな〜・・・薔子殿。 御館様はこっちだ! ついて参れ」
「おやかた・・・さま?」
「いいから、ついて来い」
グイグイと引っ張られた私は、そのまま連れて行かれた。

「薔子! 久方ぶりじゃの・・・」
「???」
誰だろう? 私は、この人を知っているのだろうか?

「儂が分からぬのか?」
「申し訳ございません・・・・」
「儂が分からぬのならば、これはどうだ・・・・・・ 尊」
「尊・・・・・誰ですか?」

「ふ・・・くっくっくっ・・・・・面白い」
「あの・・・」
話が見えない私に、目の前の男が近づきそして・・・・・いきなり抱きしめてきて、唇が重なる。

「んんっ・・・・・はぁ・・・・」
「・・・・・お主は覚えがなくとも、儂の女じゃ! 一緒に来い」
「あの! 儂の女って、私は・・・」
また塞がれた唇は、まるで余計なことは言わせないとでも言うようで。。。

ただ、慣れないディープなキスに頭の中が真っ白になってしまう・・・・・
でも私、今まで恋人もいなくて・・・・キスも、こんなディープなの初めてなのに。

尊って、誰だろう?

「今宵が楽しみじゃ・・・」
高笑いしながら歩いていく御館様の後ろ姿に、つい呟やいてしまう。

「楽しみって・・・・どういう意味だろうか?」
このとき私は、何故歓迎されたのか分かってはいなかった。




私の名前は鈴城 薔子。
警察庁サイバー犯罪対策室室長で、警視正の階級にある。

警察官バッジ、拳銃と弾、警棒、防弾チョッキ、防刃シャツ、メイクポーチ、男物のスーツ一式。
これが私の持ち物の全て。

私を城に連れ帰ったのは、織田信長・・・・信じられないけど、ここは戦国時代のようだ。

岐阜城では客人というよりも御館様の側室として、部屋も与えられ自由も与えられている。

藤吉郎(のちの豊臣秀吉)に聞けば、私は前にも一度、現れているらしい。
そのときに御館様の御手がついたとか、なんとか言われたのだが・・・・どういうことだろう。

私はまだ、誰ともそういう関係になったことはないし、好きな男もいない。
だから、御手つきなんて・・・・・・ないんだから!

そして、御館様も・・・・・城に戻ってからというもの、毎夜同じ布団で眠るも・・・・・添い寝ばかり。

その夜も、私は御館様の寝所に呼ばれて、一緒に寝たのだった。

「・・・・・」
背後から抱きしめられて寝ていた私だが、不穏な気配に目が覚め・・・・・その気配を伺った。

天井から様子を伺っていたその気配が、音もなく降り立ち此方を見ている。
私は敷き布団の下に忍ばせていた刀を、握り・・・・・・・相手が動いた瞬間、私は飛び起き刀を抜いた。

私は子供の頃から剣道を習い、真剣も度々手にとっていた。

キィーーーーン! キィン、カキィン・・・・

まさかその経験が、ここで生かされるとはな。

「何者だ」
打ち負かした相手に、刀を向けながら詰問すれば起きてきた御館様が、笑っていた。

「はっはっはっ、お主と寝るようになって儂は安眠できるようになった」
忍び込んだ曲者を、呼び寄せた家臣に牢へと連れていかせて、2人になったときそう言われた。

「・・・・・・それにしても、此処にきて3日。 毎晩だなんて襲われすぎじゃないですか?」
「儂はそれほど人気者かのぉ〜〜〜」
「・・・・・警備体制に何か問題があるのでは?」
「分かるか、薔子? 面白い、ではお前が見直してみろ」
「分かりました」

やることがなくて退屈していた私は、その日から城の外や中を見て回り、絵図面と照らし合わせていったんだけど。
なにこれ? 警備なんて穴だらけじゃないの!

もしやの事態のとき城を抜けるための抜け道は、分からないよう隠してはあるけれど、それ以外にも・・・・・はぁ〜

「・・・・・・・ならば逆転の発想よね。 此処に罠をしかければ・・・・ついでに、手引きした者にも出てきてもらおうか」
私1人じゃ無理だから、御館様に人数をもらって・・・・秘密裏に罠をしかけておく。

そうだ、楓さんには罠を教えておかなきゃ。
まあ、楓さんならきっと交すでしょうけどね。

私は楓さんを探して台所までやってきて、この時代には珍しい短髪の男の子に出会った。
その男の子っていう言い方は失礼かな?

名前はケン君、料理人。
そして私と同じ時代から来た人だった。




「薔子さんて向こうじゃ警察官だったんだ」
「そうよ。だからって訳じゃないけど真剣でも平気なの」
「すごいですね」
「すごくないよ〜・・・料理はからっきしなんだから」
へへっと笑う薔子を、ケンが眩しそうに見ているのを面白くない夏がいた。

「薔子さん、何が食べたいですか?」
「ん〜・・・ マヨネーズが食べたいな」
「え? マヨラーなんですか?」
「うふふ・・・ 向こうじゃそれほどでもなかったんだけど、何だか今、無性に食べたいの」
「新鮮な卵も、油も酢もありますから、今夜はマヨネーズに合う物をお出ししますね」
「ありがとう、ケン君」

にっこりと笑う薔子に、頬を染めたケンがドギマギと立ち上がったのを期に、薔子も台所から離れ楓を探しに行った。

「なにが、まよおねず・・・だよ! でもあの女、ケンと同じ村の出身なのか・・・」
それにしても、黙って立っていれば麗しい若衆にしか見えない薔子が、ひとたび笑えばまるで、華が咲いたようで。

女好きの秀吉が、何かにつけて面倒をみようと張り切っているのも、頷けた。
秀吉だけではない、織田軍の武将という武将が、顔を合わせたが最後・・・薔子に好意を持っているのだった。

薔子も鍛錬したくて武将達に声をかけ稽古をつけてもらっているのだから、広がるばかりだった。

そんなとき信長に将軍からお召し状が届いた。

なんでも前にケン君の料理を食べた将軍が、それ以来御執心で・・・何か名目をつけては呼ぶんだそうだ。

「大変だねケン君」
「今回は薔子、お主も共に参るが良い」
「え、私もですか?」

「ふん、あの蛙め儂の周りに新しく見目麗しき若衆がいると聴いて、見たいのじゃよ。物見高い将軍じゃ」
「・・・・・・いつの時代もそういう輩はいるんですね」
「ほぉ? 薔子・・・何か分かっておるのか」

「御館様、私に美しい衣装を貸してください」
「ん、分かった。 ・・・お主に似合うとびきり美しい物を用意いたそう」

そうして京都御所に向かった織田信長一行は、するすると御所に着いたのだった。
御所の控え室にて着替えた信長が、若衆姿の薔子とケンを伴い将軍の前に挨拶に出た。

季節の挨拶などを、腹を探り合いながら交わした将軍と信長。
ニヤリと余裕な信長とは違い、オドオドと忙しない将軍の対比が薔子を微笑ませていた。

チラチラと将軍から視線を受けながらも、素知らぬ顔で背筋をピンと伸ばし、座っている薔子は男に見えても美しいのだった。

「今宵はのケンに料理をさせ、宴としたいのじゃが・・・」
「よろしいですな。 ではケン! 料理を拵えよ」
「はい」
ケンが台所に向かえば、将軍の視線はもう・・・薔子から離れなくなり、無遠慮に、しかも欲を孕んだねっとりとした目を向けている。

パチン! 手に持っていた扇を綴じた音が、辺りに響いたとき将軍はさも、今思いついたように声を出した。

「そうじゃ、宴には華を添えた方がよいのぉ〜・・・ところで信長、この若衆は舞うことができるかの?」
「・・・・・宴にて披露させましょう。 よいな」
「はい」
一礼し用意をしに出て行った薔子は、さきほどの控えの間に戻って、信長から借りた衣装の包みを開いて・・・・・・

「はぁーっはっはっはっ! なんだこりゃ・・・・・くっくっくっ、面白い。 これを着るとするか・・・」

まだ笑いが収まらない薔子が、それでも服を身につけはじめたのだった。




ケンの料理も整い、上座の・・・御簾の向こうに将軍が。
その前には信長を筆頭に織田家の武将達と、将軍の側近の公達も宴に列席していた。

「ほぉ〜ほっほっ・・・ 信長といえど田舎者の無骨者。 京の雅さなど欠片ももってはいまい。 あの若衆が拙い踊りを披露するのを、あれ猿真似じゃと、笑うてくれるわ」

公達たちには特に舞や芸事に煩い者たちを集めておいた。
少しでも間違えば、笑い者にして信長への溜飲を下げることができる。

たとえ上手く踊れたとしても、最後には・・・・・・・ほっほっほっ。
秘策があるのじゃからのぉ〜〜〜。

「ほぉ〜ほっほっ・・・楽しやのぉ〜」
1人、上機嫌の御簾の向こうに不穏な空気を感じていた信長は、それでも顔だけは余裕綽々を装っていた。

料理を食べつつ酒も進み、望むは余興・・・・・そのタイミングを計ったかのように、薔子が宴の席へと姿を表したのだが、その姿は。

金糸銀糸に彩られた眩い上着は、信長の物で・・・・分厚い生地のそれを着込んだ薔子は、凛々しくも麗しい若衆で・・・・・

ぽぉーーん・・・ぽぉーーーーん・・・鼓の音が響くなか、扇を閉じたまま舞う薔子の姿は、ケンがみても凛々しくて・・・男にしか見えない。

遠くから見ている侍女たちが頬を染めて話しているのは、きっと薔子のことだろう。

ひとしきり舞った薔子が、金糸銀糸の上衣を・・・・するりと舞いながら、脱いだ。
後ろを向いた薔子の手が、今度は自分のポニーテールのように結った髪を縛る紐を解く。

そして、両腕を袖のなかに引っ込め・・・・・・着流しの上衣だけを胸の併せから一気に脱げば。
現れたのは女性らしい花の薄絹の衣。。。

胸の豊かな膨らみも、長い髪がゆるやかな曲線を描きその華の顔を女性らしく彩る。

一瞬で、男性の凛々しさから、女性の儚い雰囲気をまとった薔子は、舞も女舞に変え踊り切った。

つっ・・・と、畳に手をつき頭を下げる薔子に、歓声が上がったのは織田家の武将たちからで、次には公達たちが賞賛の声をあげたのだった。

一礼した薔子が信長を見やれば、満足げに頷いている。

そのまま下がろうとした薔子が、立ったとき・・・・・何かが放たれた!

「薔子さん!」
ケンが思わず叫んだが、薔子はそれを手の平で受け止めた。

「卵?」
2つ、3つ、5つ・・・・・一度に投げられた卵を見事に受け取り、袂に入れていった薔子。

「なんだ無礼者め」
「此奴が卵を投げた犯人だ」
秀吉や他の武将が卵を投げている男を、取り押さえて止んだが・・・薔子の袂からは沢山の卵が出て来たのだった。

「しかし・・・卵を割らずに受け止めるとは、いやはやお見事なり」
「この女人は信長殿の家臣なのか? それとも踊り女か?」
「どちらにしても・・・・・美しい」
「そうじゃ、美しい女じゃ・・・」

公達たちの賛辞に、にっこりと薔子が微笑めば白く塗った公達の顔も、赤くなっていた。

「来い、薔子。 儂の酌をせい」
「はい、御館様」
信長の隣に座った薔子が、朱塗の盃に酒を注ぐさまを将軍が、ねっとりと見つめている。

見目麗しさで目をつけた薔子が、男ではなく女だったと分かったことで、将軍の欲望は膨らむばかり・・・・

欲を孕んだ目で、物欲しげに見つめる将軍の視線を知りながら、薔子は信長に艶やかに微笑み、たおやかにしなだれかかる。

《くすっ・・・ 私を見せびらかしたい御館様。 ならば御期待に応えましょう・・・ 》

「余の酌をすることを許してやろう、近う寄れ薔子とやら」
たまらず呼びつける将軍だが・・・・すかさず信長が薔子の前に出た。

「この者は我が側室。 見せてはやるが、そばにはやらぬ。薔子、主はもう下がれ」
「はい」
下がる薔子を最後まで目で追いながら、将軍は。

「信長殿、あの女を余にくれぬか? いや是非とも!」
「申し上げた通り、あの者は我が愛妾・・・答えは否! 」
「な・・・なんじゃとぉ〜〜〜・・・無礼であろう!」
「宴も終わったようなので、儂は失礼するとしよう!」

高らかに宣言すると退出した信長に、将軍が文句も言えず悔しがっていた。

「きいぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜」

信長が御所から岐阜城に戻る日、将軍は側近を呼びつけ何やら秘密の話を、ごにょごにょとしていたのだった。
そうして、信長の一行が岐阜城を目指しているなか、ある館に泊まった。

薔子は当然、信長に召され寝所を共にしているのだが・・・・・・夜更け、忍んできた者が。
薔子を狙い、掻っ攫っていこうとしたのだが、薔子に返り討ちにされた。

将軍の手の者だった男達は、這々の体で戻って主に報告をし・・・・・・再び、キィ〜キィ〜喚いて悔しがった将軍なのだった。

「ふっ・・・薔子は儂のものじゃ。 誰にもやらん・・・たとえケンでもな」
「儂のものじゃって・・・・・私は警護はしますが男女の関係にはなりませんから」
「時間の問題じゃ・・・ 儂に恋狂え薔子・・・・・・愛でてやるぞ」
「んんっ・・・・・・・」

深い、深い口ずけを交わしながら、薔子は思った

もしかするとこのまま此処に居れば、私はこの信長を愛してしまうかもしれない、と。
それが、不安なのか、期待なのか、胸がざわつくばかりだった。




「薔子さんの舞姿、とても綺麗でした」
「ありがと、ケン君。 でもあれね・・・本当は見よう見真似なの!」
「ええ? ほんとですか! すっげぇー」

「祖母が日舞をしていてね、小さい頃から見せられてて・・・それを思い出しただけ」
「お祖母さんが・・・」
「それよりコレ、美味しい!」

薔子がつまんでいるのは干しエビを使ったお焼きで、小腹の空いた彼女のためケンがサッと作ったものだった。
薔子は薔子で、城じゅうを探検し警備のため侵入しやすい場所に罠をはったり、扉をつけたりと頑張っていた。

楓と2人で見てまわっている薔子、なので横には楓が立っているのだが・・・彼女は食べようとはせず、その場から立ち去った。

そうして石山本願寺との和睦のときが、きた。

料理はケンに任せ、薔子は若衆姿で信長の後ろに控え、何かあればいつでも応戦できるよう気を抜かずにいる。
が、表向きは静かな湖畔のように穏やかで、華やかな美貌を凛々しく魅せていた。

和睦の立会人として客人が大勢いるのだが、その中でも先日将軍と一緒に薔子の舞姿を見ている公達たちは、薔子を見ては騒ついている。

信長の前に座る顕如も、目新しい顔の薔子を計るように見ている。

その視線を全身に受けてなお、薔子は平然と座っていた。

その目は信長を見ている。
彼の安全を第一に考えている警護の眼で、淡々と。。。

和睦が滞りなく進み、顕如の料理人が持ってきた菓子が振舞われることになった。

「薔子、これは分かるか?」
「マカロンですね。色とりどりで美しい・・・ 」
「でも・・・くん?」
おかしい・・・・ 何か匂いがキツ過ぎる気がする。

「ニクズクのマカロンでございます」

「松永、お主・・・食うてみよ」
御館様の言葉に顕如自身が真っ先に1つを食べ、ついで松永が1つ・・・それに安心したのか御館様が、1つを食べた。

料理人の勧めで4種類全部を食べた御館様が、そのあと様子がおかしい!!!
なんだ?何が起こった!

「失礼!」
私は御館様のそばにより、マカロンを袖に隠し、口に入れた。

「うっ・・・・これは!」
「おお、これはいけない・・・ 旅の疲れが出たようです。離れでしばらく休むとしましょう」
柴田勝家殿が御館様を支える、反対側を支えながら退出したのだが・・・・

部屋について寝転がる親方様の様子が心配で、柴田さんにケン君を呼びにいってもらう。

程なく着いた彼が親方様が持ってたマカロンを味見して、吐き出した。
夏さんに水と塩を持ってくるよう頼み、御館様に飲ませるのを、横で身体を支えながら見守るしかない私。

指を突っ込んで吐かせるケン君に、苦しそうな御館様の背をさする私。
私がついていながら・・・・・この人に何かあったら、私・・・私・・・・

全て吐き終えた御館様に、もう大丈夫とケン君が声をかけ、詰めていた息を吐きだし・・・・・泣きそうになった。

・・・・こんなの今までの私じゃない!
そう自分に反発しながらも、和睦の席に戻るという御館様に待ったをかけた。

「御館様、着替えが終わったら私にメイクをさせて下さい」
「めい・・・く?」
「化粧のことです。 顔色がまだ少し御悪いですから、化粧で健康な肌色に致します」

「ふむ・・・してもらおうか」

煌びやかな衣装を着た御館様に、私はポーチの中からファンデーションを取り出し軽く肌にのせていく。
チークで頬に赤味をさし、さも健康的な顔色に仕上げて・・・・

ちょっと悪戯心が出てきた私が、チラリ・・・と御館様を見れば、私が何か考えていることを察した彼が、にこり、と笑う。

「何か思いついたか、薔子」
「遊びを・・・ 御館様の麗しさを増してみたいと・・・」
「ふふん、薔子の思う通りやってみよ」

その言葉に私は、ブラウンとゴールドのアイシャドーを取り出し、指の先で薄く、ごく薄く・・・・・つけていく。

仕上げに薄く色づくグロスを御館様の形の良い唇に、薄く・・・・・できた! うわぉ!!!

もともと美形な御館様に、薄くとはいえ化粧を施せば、妖しい美しさが加わり・・・・・うっとりしちゃう〜〜〜

「薔子・・・ お主の好みか? 目の色に、欲が出ておる」
「めっちゃ、タイプ! ってか、抱かれてみたい・・・」
きゃぁ〜〜〜・・・思わずポロっと言っちゃった!!!

「そうか、では今宵・・・抱いてやろうの」
「へっ? あっ! 私ったら何てこと・・・・」
真っ赤になった私の顎を持ち上げた御館様が、口付けてくるのを、私は・・・・待っている。

ちゅっ・・・ 軽く触れたソレに、物足りなく思うって、私は・・・・私は・・・・・

「・・・・御館様、そろそろ戻らねば」
柴田さんの声にハッとしたんだけど、柴田さんと楓さんが居る中でキスって・・・・・恥ずかしい〜〜〜。

「愛いやつじゃ・・・」
はっはっはっ・・・・って、高らかに笑いながら出て行く御館様の後ろを、着いていく私に楓さんが笑っていたように見えた。




帰りかけた顕如を止めて、料理を運ばせる御館様。
化粧を施した顔に、顕如の目が細められているけど、私の自信作だもの・・・・・・他の客達は妖しい美しさの御館様にざわつき始めた。

「織田殿は、あの様に雅な方でしたかの?」
「頬も赤味があって、健康そのものですな」

ケン君の料理をわしわし食べる御館様の様子に、先程までの《重病説》が吹き飛んだ。

その客達の話ぶりに満足した私は微笑んでいたらしい・・・・
顕如が憎々しげに私を見据えて居るのに気がついて、そのまま・・・・・いや、笑みを深めて艶然と顕如に微笑んでおいた。

「ならば食えっ! 顕如・・・極楽が見えるぞ・・・」
ニクズクを振りかけた肉料理に、躊躇する顕如に御館様の怒号と、妖しい誘いの文句が炸裂した。

汗をかいて固まる顕如だが、ケン君が毒となる量を盛らない料理人だと説明すれば、手掴みで肉を食らった。

この場、御館様の勝利!!!

意気揚々と笑う御館様を、嬉しく思いながら私は・・・もっと警備の幅を広げないといけないと肝に命じた。
食事に毒を盛られてしまう、この人の命を、守るために・・・・・

あの時、はっきりと自覚してしまった自分の思い・・・・・

私は、戦国の世に居る、織田信長を・・・・・・愛してしまった。

・・・・・ 恋になど縁がないと思っていた。
大柄で、真面目すぎて敬遠される私を、好む男性などいなかった。

たとえ出会ったのが私ではない薔子が先だとしても、あの方は私を欲しいと言ってくれた。
私に、自分に恋狂えと・・・・・・愛でてやると、言ってくれた。

私も歴史は知ってる。
あと十数年後に滅んでしまう人だとしても、その日、その時、その瞬間まで私は・・・・そばにいたい。

滅するときは、私も共に・・・・・

「薔子・・・ 心が決まったか」
「はい・・・」
「来い! お主は儂のものじゃ」

抱きしめられ口付けられ、寝所に連れて行かれた私は、その夜、初めて男を迎え入れた。

身を引き裂く痛みの果てに、愛される悦びを感じて・・・ 私は何度も果てて・・・・何度も、愛されていた。


翌朝、私の髪を一房・・・手にとって遊んでいた御館様が、目の前にいて・・・・・恥ずかしくて焦る私。

「何を慌てておる。 そなたはもう儂の側室じゃ・・・ 儂のものじゃ」
「でも、恥ずかしいです」
「敵に向かえば豪胆な働きをする薔子が、床の中では初々しく・・・ 儂も久方ぶりに燃えたぞ。それが証拠に何度も、のう・・・ 」
「もう! 嫌です! 」
布団の中に潜る私を、楽しげに笑う御館様の声が聞こえて・・・・

「薔子、先に出会うた薔子は既に他の男のものだった。 だが、そなたは・・・・儂が初めての女じゃ。 儂に出会うために来た、儂だけの女じゃ」
「・・・・御館様」
「良いか、儂から離れることは許さぬ! 離れると言うならば、そなたは儂が斬る。 誰にもやらぬ」

愛の告白に聞こえるのはなぜだろう?
物騒な、聞きようによったら最悪の束縛の言葉なのに・・・・だって、別れる時は殺されるって宣言されてるわけだし。

それなのに、胸に沸き起こるこの熱い思いは・・・・・胸が震えてしまうほど、嬉しくて。

「嬉しい・・・ 生きるも死ぬも、あなたのそばで! 離れませんから!」
「未来永劫、そなたは儂のものじゃ・・・・・」

激しく口付けられた私は、そのまま信長様に・・・・・愛されて・・・・・



その後、信長の後ろには必ず若衆姿の薔子が寄り添い、戦であろうと離れることはなかった。

手練れの薔子を信長から離そうとする家臣はおらず、その凛々しき美貌は戦国の世においても2つとなく。

憧れる輩は掃いて捨てるほどおったという。




信長のシェフでの妄想でございます!
今年の初夢に出てきたお話も《及川さん役柄物語》というカテゴリにありますので、お暇な時にでも読んでみてくださいませ。
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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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