③《羽化した蝶は、誰に留まるのだろうか?》

さてさて、陽子ちゃんと神戸さん・・・いったいどうなるんでしょうか?



『おい! もうソンは特命部屋へ帰ったぞ。 とっとと帰ってこい、モグラ!』
伊丹さんからの電話があり、私はトイレから出て捜査一課へと戻った。

戻ってすぐに、パソコンで復元したリコーダーの中身を伊丹さん達に聞かせれば、容疑者としてあがった人物との会話が入っている。

「これ、あの壊されたリコーダーの中身なのか? ぐちゃぐちゃに踏んづけられてたろ?」
「中のチップにあまり傷がなかったのが幸いしました。 雑音を取り去るのに時間はかかりましたが・・・・」
「すごいよ陽子ちゃん! 俺、正直こいつの復元て無理だと思ってた!」
「ほぼ徹夜になりましたが、頑張りました!」

「よし、こいつで逮捕状をとるぞ!」
伊丹さんと芹沢さんが容疑者の確保に、三浦さんが逮捕状の請求にと動いたなか、私はもう一度音の雑音を取り去ろうとヘッドフォンをした。

私の席にあるデスクトップのパソコンとノートパソコンを繋いで、作業している中、最期の雑音が酷い部分と格闘して・・・
聞こえたのは、容疑者に刺され息絶える直前の被害者の、想いが残っていた。

それは恋人に当てた言葉で・・・私はこの言葉を別のリコーダーへとコピーしておく。
被害者の最後の言葉を、伝えたくて。。。

しかし、容疑者が取り調べで語ったことは、被害者の恋人との肉体関係や、別れたがっていた女性に頼まれて脅すつもりがやり過ぎて殺してしまった、そんな惨いものだった。

恋人も引っ張ってきた伊丹さん達に、この被害者の最後の言葉を伝えたいと言えば、私も取調室に入ることができた。

『・・・・はぁはぁ・・・・トモコ、ごめんな・・・・ 俺、ドジっちゃった・・・・・・・明日のたんじょう・・ごほっ・・・・・プロポー・・・・・とも・・・・・・あいし・・・・・・』

「被害者の最後の言葉です。 トモコさん、彼はあなたを死ぬ直前まで想っていたんです」
「それが? たいして稼ぎもないくせに愛してるだの、結婚しようだの・・・ウザいったらありゃしない!別れてって言っても離れやしない! ・・・・殺すしかないじゃないの!」
「では貴女が被害者を殺すよう、頼んだのですね」

『トモコごめん・・・・・・俺なんかが出会って・・・・・・俺なんかが・・・・・愛して・・・・・・』
最後の部分を聞かせると、恋人は急に大人しくなり自供を始めた。

私は伊丹さんに変わり、取調室を出たのだった。

「なんだか、やりきれないなぁ〜・・・」
休憩したくて、自販機コーナーに行き、好きな缶コーヒーを飲んでいると・・・・・

「何がやりきれないの?」
「神戸さん・・・」
現れた神戸さんが、私の隣に座って覗き込んでくる・・・・・・のに耐えられず、視線を外しちゃった。
朝のことを思い出さないよう、今あったことを思い出す。

神戸さんにリコーダーのコピーを聞かせ、首謀者は恋人だったと話せば、彼も黙って何かを考えてた。

「・・・・・・やりきれないね」
「はい」
「でも俺、被害者の気持ちが少し、わかる気がする」
「神戸さんが?」

「俺のことなんだと思ってるの。 ・・・愛しても報われない、だから気持ちを止めようとしたって、心は言う事をきかない・・・・・・ きいてくれない」
「・・・・・・苦しいですね」
「苦しいさ、それでも諦めきれないのなら、想い続けるしかないじゃん!」

神戸さんは、誰を思ってるんだろう・・・ 彼の表情で、そう思った。
深刻な顔してる神戸さんの横顔を見つめて、恋愛に疎い私でも、彼が今・・・誰かを思っているのは分かった。

じっと床を見て何かを、誰かのことを考えている神戸さんに、私の胸が、ズキン!と痛みだす。

・・・・・・・まだ、神戸さんのこと、好きなんだ、私。

片想いって辛いよね、苦しいよね。
大好きな神戸さんには、こんな気持ちを味わってほしくない・・・・・だから、だから私。

「神戸さんのこと、応援します!」
「え?」
「私、神戸さんが辛いの嫌なんです! だから、だから、応援します! させて下さい!」


「誰のことを想ってらっしゃるのかは知りませんが、私で役立つならキューピッドでもなんでもします!」
「陽子ちゃん・・・・・」
「私じゃ役不足でしょうが、いつでも使ってください!」

ははは・・・・・参ったな。
俺が好きなのは、君なんだって・・・・・気がついてないし、応援するなんて言ってるし。

・・・・・・・彼女は、もう、俺のことなど何とも想ってないのだろうか?

俺のことを応援するだなんて、少しでも俺に恋心を抱いていたら、言えないよね?

普通、言わないよね・・・・・・・

がっくりと凹む俺に、それでも君は一生懸命に励ましてくれようとして・・・・・・・そんな君が、大好きなのにな 。

「あのっ、あのっ! 今夜、私でよければ飲みに行きませんか? 愚痴でも何でも聞きます!」
そっか、この手があったか・・・・・・・

君は俺の恋を応援してくれると言っているし、キューピッドも買って出てくれた。
ならば、それを最大限利用させてもらおうか。

「・・・・・・・聞いてくれるの? 何でも?」
「はい! 話すのは得意じゃないですが、聞き役は得意です!」
「じゃあ、今夜・・・・・お願いできるかな?」
「はい!」
「終わったら連絡して、迎えに行くから」
「分かりました。・・・・・元気だして下さいね、神戸さん」
にこやかな彼女に、笑顔で返す僕なんだけど・・・・・・・はぁ〜・・・

「マジかよ」
彼女が立ち去った後、溜息がでた。

僕が好きなのは、君なんだ・・・・・
でも、君に酷い事をした僕が、前よりも自然に話しができる今の状態を・・・・・・無くしたくない。

そう思った僕は、君からの申し出を断ることが出来なかったんだ。

「ふぅ〜・・・」

とりあえず、君と飲みに行けることを一先ず喜んでおこうかな。
初めて、君と2人で出かけるんだから・・・・・・

付き合っていた頃に、していないことが・・・・・・今はこんなに嬉しいなんて。

ほんと、酷い男だよね、俺は。。。

・・・・・今夜は何処に連れて行ってあげようかな?
君が喜んでくれるような、場所・・・・・

僕は頭の中で幾つかをピックアップして、彼女から連絡があるのを待っていた。

僕はこの時、ちゃんと君の誤解を解いておかなかった事を後悔することになるんだけど、それは後のことだった。




さて、送検も終わった捜査一課の君から連絡があったのは夜の9時で・・・
それから君と飲みにと思った僕だけど。。。

「陽子ちゃん、お腹減ったでしょ?」
「はい」
「飲みに行くより、どこかでご飯食べようよ、僕もお腹減ったし!」
「え・・・でも」
「話ができるような場所に行くから、いいかな?」
「じゃあ、お願いします」

彼女の返事に僕は車のエンジンをかけて、警視庁の駐車場を出てある場所へと車を走らせた。
そこは都心から少し離れた隠れ家的なお店で、落ち着いて食事がしたいときなんかによく来ているんだ。

ここに誰かを連れて来たことなんて、ないんだよ?
カラン♪ ドアベルの音を軽やかにさせて店の中に入れば、ちゃんといつもの部屋へと案内してくれる。

陽子ちゃんの背中に手をあてて、個室に入って行けば・・・きょろきょろと周りを見渡す陽子ちゃん。

「うわぁ〜・・・夜景が見えるんですね、ここ」
「いい景色でしょ? この店、こういう個室がたくさんあるから、落ち着いて食べられるでしょ?」
「神戸さんはセンスが良いですから、選ぶお店もオシャレなんですね〜」
「いえいえ、それほどでも・・・」

「ここは何がお勧めなんでしょうか? 私、こういった場所に慣れてないんで、何を注文して良いのか分かりません」
「それなら、シェフのお勧めコースってのがあるから、それにしようか?」
「はい! お肉の方にしようかなぁ〜 でも魚も美味しそうですね〜 」
さっそくメニューを見て目を輝かす陽子ちゃんが、可愛くて・・・

メニューを見るふりをして陽子ちゃんを眺める。

「じゃあさ、陽子ちゃんはお肉にして、僕が魚を注文して、2人で取り替えっこしようよ」
「それはナイスアイデアです、神戸さん」
「じゃ、注文するね」

料理を頼み、どれもこれも美味しく頂いたあと、食後のコーヒーまで陽子ちゃんと楽しく過ごしたんだ。
不思議なんだけど、彼女と話をしていると凄く楽しいんだ。

ちょっとした事でもくるくる変わる表情、僕の話を楽しそうに聞いてくれるし、余計な緊張なんかしない空気感。
なんだろう? 一緒にいて、落ち着くっていうか・・・・・

でもね、そんな空気感なんだけど、好きな子の前だからドキドキしてるんだよ?
そういう意味では緊張も少ししてるし、でも彼女と一緒のときが、凄く・・・・・イイんだ。

ああ、そう言えば・・・・・・2人で弁当を食べてるときも、こういう雰囲気だったよな〜

「神戸さん、話し・・・どうしましょうか? あ、あの、嫌なら無理に話さなくてもいいんです」
そんな事をボンヤリと思い出していたら、陽子ちゃんが思い出したように僕の片想いについて、聞いてきたんだ。

「・・・・・・・今日は楽しく食事したいな。 ごめんね、僕の話を聞いてくれるっていうのに」
「いいえ、私も楽しかったので」
「・・・・・・僕が苦しいとき、そばにいてくれる?」
「います。 私なんかで良ければ、ですが」
僕の唐突な願いにも、君は即答してくれるんだね。

「陽子ちゃんが、いいんだ」
そう、君が・・・ 素直で天然で、あったかい・・・・・・君が。

最後のデザートを、嬉しそうに食べる陽子ちゃんと、笑い合う夕食。
お腹だけじゃなく、胸まで暖かいご飯なんて、いつぶりなんだろうか?

「また、誘ってもいいかな?」
陽子ちゃんを送って、助手席のドアを開けながら君に問えば、君は・・・・・
にっこりと笑って、元気良く「はい」と返事をしてくれたんだ。

「よかった。 じゃあ、また明日」
「ごちそうさまでした! ・・・・・・また明日・・・」

彼女に見送られて車を走らせながら、僕は・・・もう明日、どこに誘おうかと考え始めているんだ。

陽子ちゃん、嫌いな男と食事なんかしないよね?
人見知りの激しい君ならば、余計にね。

ということは、僕にもまだチャンスはある!

君の中に、もう一度・・・僕への気持ちを蘇らせてみせるから!

そんな事を考えながら僕は、夜の街を走っていたのだった。




なんでしょうか? 文才が欲しい今日この頃。
両片思いみたいなのかきたかったんですがね・・・・・はぁ〜

でもこのシリーズも好きなので、このまま突っ走ります(笑)
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すー※さん

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私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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