❷【終わりから始まる、恋。。。】

続きになります。
何だかイタミン落ちになりそうな展開ですが、いえいえ、私のところは神戸さん落ちですから(笑)
では、どうぞ。。。



私はこの間、人生で初めてできた彼に、振られた。

それもそうだろう、私はお世辞にも、社交辞令でも『綺麗』とはいえないんだから。

極度の人見知りで相手の顔がまともに見られない、そんな私は 学生の頃から前髪で顔半分を覆っている 。

でも今、渾身の勇気を奮い立たせて、やって来たのは美容院で・・・・

腰まであるボサボサの髪と、この前髪を切ろうとやって来たんだけど・・・・・・・やっぱ、ダメだぁぁーーー

美容院の前から回れ右!した私の襟首をもって逃亡を阻止したのは、我が姉で。。。

「こぉーら、陽子!!! 逃がさないんだからね!ほら、さっさと入る!!!」
「今度にしようよぉ・・・ 」
「ダメ!!!」

姉に腕を掴まれズンズン中に入り、予約してあったからかすぐに椅子に座らされた。

「前髪はバッサリやっちゃって! あとは・・・手入れがしやすいように、お任せで!」
「分かりました」
もう、流れに任せるしかない・・・・・・ああ、心臓がバクバクいってる

「緊張しないで・・・ 可愛くなろうね」
「よ、よろしく、お願いします」

それからはシャキシャキいうハサミの音と、髪を梳く櫛の感触と、美容師さんの指の感触が、目をつぶった私の全てになった。

・・・・・・・・・・数時間後、目を開けた私が鏡の中で見つけたのは、見知らぬ人で。。。

ふわふわと、ゆるくカールしてる髪は胸くらいの長さの女の子。
ぱっちりした目は大きくて、私をじっと見つめている。
鼻筋も通ってて、唇はぷっくりして濡れた果実のようで、まるで 化粧品のCMみたいに可愛い女の子。

「さすが我が妹、可愛いじゃないの!」
「へ?」
「・・・・・陽子、まさか自分の顔忘れてるの?」
「・・・・・・・・これって、私? 嘘だぁ〜〜! ポスターか何か貼り付けてんでしょ?」
「はぁ〜・・・ そんなこったろうと思ったわ。 ほれ! これを見なさい」

差し出された手鏡を覗き込めば、そこには鏡と同じ人物が・・・・・・・パクパクと口を開けたり閉じたり。

「これが私???」
「1ヶ月後の私の結婚式には自分で化粧して出るのよ! 優しいお姉様が手とり足とり教えてあげるから」
「・・・・・・・・」
「陽子? どうしたの、陽子! ・・・・・・・・気絶してるわ、この子」

全く、世話の焼ける妹だわ。
せっかく可愛いのに隠して隠して生きてるんだから、勿体無い!
さ、これから普段着や仕事用の服も買わないとね〜

・・・・・・・・何があったのか分かんないけど、私に綺麗になりたいって頼むくらいだから、よっぽどの事があったんだろうね

妹は昔から可愛くて、気の優しい子だった。
それがいつの間にか前髪で顔を隠すようになって、人付き合いも苦手になって、どんどん科学の世界に篭ってしまった。

今じゃあ警察の刑事だなんて・・・・・・ビックリだわ。

「陽子、次行くんだから、寝てないの!」
「・・・ああ、お姉ちゃん」
「さ、次行くわよ! ついてこぉーい!」

慌ててついてくる妹を、姉は温かく見守り・・・・・・・・それから怒涛のように服を買っていったのだった。
そのエネルギーに、陽子が真っ白に燃え尽きてしまうまで。。。




「つ、疲れたぁぁーーー」
捜査一課に登庁した陽子は、朝から情けない声を上げながら机に突っ伏している。

あれからも肌のお手入れの方法だとか、スタイリングの仕方だとか、果ては仕事にはコレを着ていきなさいだとか。
姉のパワフルさについていけない陽子は、慌てて今朝は家を出て来たのだ。

いつもの服で登庁した陽子は、 まだ伊丹も三浦も来ていない机で、仕事前の休憩と自販機にやって来た。

お気に入りの缶コーヒーを買って、ソファーで飲んでいると・・・・・・

「陽子ちゃん、おはよう・・・」
背後から神戸の声が聞こえて、陽子の肩が跳ねた。

ガコン!と自販機で水を買った神戸がソファーで座る陽子の横に座ろうと振り返ると・・・・・・

「あれっ? 君・・・ 人違いしちゃった、ごめんね」
きょとん、とした顔で私を見た神戸さんが慌ててそう言うけど、そっか、素顔見せたことないもんね。

私だって、分からないんだ・・・・・・ それなら、このまま、逃げちゃえ!!!

スッと立ち上がった私が、そのまま捜査一課に戻っても神戸さんにはバレてないみたいだった。

まあ、事件現場でバレちゃうよね・・・・・・

そんなことを考えてると伊丹さんが眠そうにやって来て、私を見て『誰だこいつ』って顔をしている。
面白いから黙ってよぉぉ〜〜。

「あのね、お嬢ちゃん。 ここは捜査一課なんだけど、何の御用かな?」
ね・・・猫なで声だぁ〜〜。

「黙ってないで何とか言えよ」
もう口調が崩れてるし、私は堪えられなくなって思いっきり吹き出した!

「なっ! お前、モグラかっ!」
「そうですよ。 あんまりモグラモグラ言われるからバッサリ切ってきました」
「おまえ・・・・・ほんとに、モグラ?」
「そう言ってるじゃないですか! って、伊丹さん? 伊丹さん!」

急にふにゃふにゃと崩れていく伊丹さんに、慌てて支えようと長身の彼を抱きとめるけど・・・・・・
無理! こんな大きな男の人、支えきれない・・・・・・・・

「ふぎゃっ! 重い〜〜〜」
私は倒れた伊丹さんの下敷きになって、ジタバタしているだけで、抜け出せなくなっちゃった。




えーっと、さっきのコってどこの部署なんだろ?
僕は、恋を自覚してからは陽子ちゃんと何とか寄りを戻そうと、まずは挨拶をしにいくことにしたんだ。

陽子ちゃんは毎朝、少し早めに登庁して自販機のお気に入りのコーヒーを飲むんだ。
だから僕もね、頑張って早起きして来てるんだよ!

毎朝ってのは出来ないんだけど、週に2、3回は挨拶してるんだ。

で、今朝も捜査一課のフロアの自販機のそばで待ってたんだけどね・・・・・・
ソファーに座ってたのが陽子ちゃんだとばかり思ってたんだけど、そこにいたのは雑誌から抜け出したみたいに可愛くて綺麗なコだった。

人違い・・・ そう思ったんだけどさ、彼女あのポケットの多い陽子ちゃんと同じコート着てるんだよね。

でもさ、もし陽子ちゃんなら前髪切ったんだよね。
ゆるくウェーブのついた髪はツヤツヤで、睫毛が長くて目も大きくて・・・・・濁りのない綺麗な目を、俺は見たことがある。

公園でお弁当を食べてる時に吹いた風が、チラッと俺を見つめてる君の目を見せてくれた時があったんだ。
一生懸命俺を見ている君の目を、思い出せば・・・・・・うん、さっきの子の目だ。

俺は捜査一課へと、陽子ちゃんを追いかけて行った。

捜査一課の部屋につけばまだ来てる人はまばらで、俺は伊丹さん達のデスクのある方に迷わず進んで行った。

「・・・・・何してるの?」
「重い〜〜・・・・・背骨が折れそう・・・・誰か、お助け〜〜」

床に腹這いになった陽子ちゃんの上に、伊丹さんが仰向けにひっくり返ってる状態って、何なのさ!!!

とにかくジタバタしてる陽子ちゃんを救出すべく、伊丹さんをどかそうと腕を持つ。
その腕を肩に担いで、上体を起こせば陽子ちゃんが這い出してくる。

「はぁ〜・・・どこのどなたか存じませんが助かりました。 ありがとうございます」
「どこのどなたって・・・俺だよ、陽子ちゃん」
「あ、神戸さん・・・」
「伊丹さんどうしたの?」

「はぁ・・・ 実はコレコレ、こうで・・」
「つまり、陽子ちゃんがあまりに綺麗で可愛くなったからビックリして気絶したんだ」
「いやぁ〜・・・・・そんなこと」
「あるよ! ・・・・・だってさ」
この時、俺は彼女の肩に両手を置いて自分に向き直させて・・・・・・

「陽子ちゃん、こんなに可愛くなっちゃったんだもん。 俺だってビックリだよ☆」
うふっ! にっこり微笑んで彼女を見れば、とたんに真っ赤になる彼女・・・・・・

しかも、身長差で上目遣いになっちゃうし、このまま抱きしめて俺の腕の中に閉じ込めてしまいたくなるよ。

・・・・・でも、彼女はハッとした様な顔したらスルリとすり抜けて、俺から離れて行った。

ああ、そうだ・・・ 僕は君に酷いことしたんだった。
でも、それでも、僕は・・・・・・君を・・・・・君に、恋してるんだ。

「伊丹さん、しっかりしてください。 伊丹さんってば!」
陽子ちゃんが伊丹さんの身体を揺さぶってるけど、目を覚ましそうにないな。

「気がつきませんね・・・ どうしましょう」
「暫くしたら気がつくんじゃないの? それよりさ、陽子ちゃんはどうして髪を切ったの?」
だって、極度の人見知りで相手の視線が怖いからって前髪伸ばしてたんだろ?

だったら、どうしてバッサリ切ったんだ?

「・・・・・姉が来月、結婚するんです。妹が出席しないわけにもいけないし少しでも身綺麗にしなさいって言われて」
「そうなんだ」
「・・・・・それはきっかけで、私、前に進みたかったんです」
「それは俺の事で?」
彼女にすまなくて、自然に小声になってしまうけど・・・・・俺と別れたから?

「そうです。神戸さんの・・・・・・・おかげです」
俺のせいだと責められるのかと思えば、彼女は俺のおかげだと言った。

「私、前から変わりたいと、今の自分から抜け出したいと思ってたんです」
「それで?」
「・・・・神戸さんとお付き合いしてる間も、少しでもマシになりたくて・・・でも、結局変わるのが怖くて尻ごみしてました」

こんな私なんて神戸さんに呆れられても仕方ないんです。
女としての価値が無いんだから・・・

でも私、このままじゃ嫌だって思って!
今度もし、男の人と付き合うとしたら、今度は私・・・・・・女として好きになってもらいたいんですよね。

「僕も陽子ちゃんのこと女の子として・・・」
「嘘はいいです。 神戸さんは私の持つ情報がほしかった・・・ 女として私を好きにはなってないでしょう?」
「それは・・・・・・・」
じっと見上げる彼女の瞳に、僕は何も言えなくなってしまった。

「ここにも馴染めてきましたし、伊丹さんと言い合うのも楽しくて・・・だから、清水の舞台から飛び降りたんですよ」
だから、神戸さんのお陰なんです。

知ってたんだ、知ってて・・・ 僕が別れを言い出すまで君は、必死に彼女としていてくれたんだね。

「うぅーーん」
「あ、伊丹さん! 気がつきました?」
「・・・・・モグラ? うおっ! ・・・・・ふぇーー」
「・・・・・・また、気絶しました。 なんか失礼だな、突ついちゃれ!」

伊丹さんの腰や腕を突つく陽子ちゃんに、頬がゆるむ。

「陽子ちゃん、メガネ持ってる?」
「はい、持ってますけど」
「じゃあかけなよ。 伊丹さん、この様子だとまあた気絶しちゃうよ!」
「そうですね・・・ かけときます」
ゴソゴソと鞄からメガネをだしてかけるんだけど、大きな枠のメガネが何だか可愛い。

「俺、君と話がしたい。 今夜、時間とってくれるかな」
「・・・・・・・ごめんなさい」
「・・・・・・嫌、だよね。俺となんて」
「そうじゃなくて・・・・・・嫌なんじゃなくて、苦しいんです。神戸さんのそばにいるとまだ・・・」

だから・・・と、苦しそうに眉をよせる君をみて、それ以上なにを言えると言うんだろう、俺が。
君を苦しめている張本人の、俺が。

でも、だからって君を諦めたり出来ない俺は、その場で姿勢を正してから深々と頭を下げた。

「か、か、神戸さんっ!! なにを?」
「今までのこと申し訳ありませんでした」

90度に身体を曲げ、頭を下げる俺に陽子ちゃんがあたふたしてるのが見なくても分かる。

「いえっ、あああああの! 恋愛は自己責任ですから、私だって至らない点ばかりのモグラですし、神戸さんばかりが悪いなんて思ってないですからっっ!!!」

「頭をっ、頭を上げてください!!!」
彼女の泣きそうに焦った声を聞きながら、優しい彼女につい口角が上がってしまう。
俺だったらどんなに謝られても許せないからさ・・・・・

「早く頭を上げてくださいっ!」
「じゃあ、これで許してくれたんだよね、俺のこと」
「はい、許しました。 だから・・・・・・」
くすっ・・・ 彼女がどんな顔してるか、想像しながら頭をあげれば。

まいったな、涙目の上目遣いにクラクラと目眩がしそうになる。

・・・・・・・・・愛しい、と胸に込み上げてくるこの感情。
絶対に、手に入れてみせると、誓う。

「許してくれて、ありがとう。 ・・・・・でもね、俺さ」
「へ?」

ぐいっと腕を掴んで引き寄せた彼女を抱きしめて、その耳元で囁く。

「別れてから君の事しか考えられなくなってるんだ」
「ひゃあ!」
ふぅ〜って耳に息を吹きかけたら、あら、イイ反応じゃないの。

「だから、もう一度・・・・・・俺のこと好きになってよ、ね?」
「そ・・・それは」
「なに都合のいいこと言ってんだよ! こっちこい陽子」

力任せに急に俺から引き剥がされた陽子ちゃんが、伊丹さんに捕まってる。

「お前は陽子に不純な動機で近づいて、それでフったんだろ? あんまり都合のいいこと言ってると逮捕するぞ!」
「これは僕と陽子ちゃんとの問題です。 ・・・伊丹さんには関係ないですよね?」
「ばぁーか、ばぁーか!!! こいつは俺の班なんだよ。 別れたソンの方が関係ないんですぅ〜」
「なっ! 僕の名前はタケルです!」
「けっ! 自分がフった女に恥ずかしげもなく言いよる奴なんてソンで十分だっ!!!」

「なんですか!」
「やるか、おらぁ!」
頭に血が昇った僕等は2人とも、ファイティングポーズで向かい合う。

一触即発、まさにそんな感じに火花を散らした僕達だけど・・・・・・

《がごん、ごん!!!》

「いたっ!」
「いってぇーー」

頭に走った衝撃に何事かと横を見れば・・・・・・・・陽子ちゃん?
どこから取り出したのか、陽子ちゃんの手には鈍く光る一斗缶が・・・・・・って、それどこから出したの???

「2人とも落ち着いて下さい! もう皆、来てるんですよ! 」
「おいおい嬢ちゃん、いくらなんでも乱暴だぞ?」
「だって、だって、2人とも幾ら叫んでも止めてくれないんですもん」

「それによくそんな物、ここにあったなぁ〜」
三浦さんの声に手にした一斗缶を慌てて床に置く陽子ちゃんの顔が真っ赤っかだ。

「これは今日のオヤツにと思って家から持ってきたんです」
ああ、陽子ちゃんデスクの上にはお煎餅が山になってる・・・・・中身を出したんだね。

「・・・・・・伊丹さん、庇ってくれてありがとうございます」
「まあ、いいってことよ」
ぺこりと頭を下げる陽子ちゃんに、満更でもない顔してる伊丹さん。

「神戸さん、誘ってくれてありがとう、でも今は、考えられません」
「ん、分かった。 “今は”考えられないんだね」

今は考えられない・・・・・・ならば、時間が経てば僕との事、考えられるって意味でしょ!

「ずぅーっと考えられないって言っとけ、陽子!」
「先輩、言い過ぎですよ!」

ふん! 外野は黙ってろよ!
これからが俺のスタートなんだから。。。



終わってから、始まる・・・・・・・・そんな恋もあるんだ。

・・・・・・・逃がさないからね、覚悟してね☆


意味ありげに『ふふん』と笑う神戸に、陽子の背筋には悪寒が走るのだった。




はい、短編ですがいかがでしたでしょうか?
こういう風に違うヒロインも楽しいですね。

では、楽しんでいただけたら嬉しいです。。。
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プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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