②月に照らされ、陽に焦がれ……

時代考証とかはドラマとガイドブックと雰囲気で突っ走ってるので………大目に見てくださいm(_ _)m
公主様=王女様と同じ意味です。
※※※

「アルチョン様が来られました」

侍衛府に残っていたアルチョンがトンマンの侍女に促され部屋に入ってきた。

見慣れない男に怪訝そうな視線をやるも、トンマンと親しげに酒を酌み交わす様子に少し警戒をときながら見渡せば………ふむ、問題なのはピダムだな。

ぶすったれた顔で酒を飲んでるピダムの、肩を叩いたアルチョンはトンマンに一礼した。

「アルチョン殿、座って下さい。………さ、どうぞ」
「公主様お手から………ありがとうございます」

トンマンが盃に酒を注ぐとアルチョンが感激のあまり涙ぐみそうになった。

「こちらはアルチョン殿。私の護衛花朗です。………アルチョン殿と一緒に私を護衛してくれることになったスンマンだ」
隣に座っているスンマンを紹介したトンマンだった。


「護衛とは………侍衛府(シウ゛ィブ)に配属されるということですか?」
「私は花朗ではないので………公主様の個人的な護衛ということです」
スンマンが柔らかく口をはさんだ。

「そうですか……」
………ふむ、どういう人物なのか見定める必要があるな。
アルチョンの細い目が、目の前のスンマンを疑うように更に細くなった。

ミシル側からの間者かもしれぬ…………公主様の為にも、やはりここは私がどういう輩か確かめねば!!

「スンマン殿といったな?………酒はお強いか?」アルチョンが空になったスンマンの盃に酒を注いだ。

「………どうでしょうか。弱い方ではないと思います」
鼻息荒く酒をすすめるアルチョンに微笑みながらスンマンが盃を空けた。

さっそくアルチョンが盃に酒を注ぐのを見ていたスンマン。
ふふっ………私を酔い潰して尋問でもするつもりかな………姉上に忠義一筋の方らしい。

それに先程から剣呑とした目で私を見ている………ピダムといったか。

こやつはもしや姉上に…………


ああ………面白い。………姉上の周りは実に、面白い人物がいっぱいだな………

今度はスンマンがアルチョンの盃に酒を注ぎながら………スンマンは楽しくて仕方なかった。

※※※

アルチョンとスンマンの飲み比べが始まった。

トンマンが面白そうに見ている。

それを気にしつつ………「公主様、穀物の買付は終わりました」ピダムは嬉しそうにトンマンに報告した。

アルチョン達の盃が次々空になり、酒を注ぎあうのを横目で見ながらトンマンはピダムの報告を聞いていた。
「全ての兵糧米が戻ったんだな」
「はい公主様」
「そうか、ご苦労だった」

トンマンからの労いの言葉に嬉しいピダムだったが………目がすぐにアルチョン達に向けられるのを寂しく感じた。

ふと見れば、トンマンの盃も空になっていた。
ピダムが注いでおくと……
「ありがとう、ピダム」にこやかに酒を飲んだトンマンに嬉しくなったピダムが、また………また、と注いでいた。


「アルチョン殿、明日にでも、私と一つ手合わせして頂けますか?」
「手合わせですか?」
「公主様の護衛花朗のアルチョン殿に、私の腕を判断していただきたいのです」

それもそうだな………アルチョンは納得した。

「公主様の護衛だからな………失礼ながらスンマン殿の腕前も知っておいた方がいいな………うむ」
「では明日を楽しみにしております……………公主様、その辺で御酒はお止めになられた方が………」


つっ……とトンマンの盃を取り上げ自分が飲み干したスンマンは、侍女に茶を頼んだ。


「私はまだ大丈夫だ」
久しぶりの酒だからもっと飲みたかったトンマンが、口を尖らせて不満気に言った。

「余計な事を………」
横で、ピダムが眼を剥いて睨んでいる………
「久方ぶりの酒なのでしょう?……もう十分お飲みになられましたよ」
ピダムの憎悪の光線を、しれっと軽く微笑んだスンマンは受け流した。


チョンソがお湯と茶器を持ってきた。
どうやら予め用意を頼んでいたらしい。

「公主様、これをゆっくりとお飲みください」
スンマンは美しい仕草で茶器を操り、器に茶を満たしトンマンの前に置いた。


「良い香りだな」
「大陸(中国)の花の茶です」
「ほぅ~……スンマン殿は大陸へ行かれたことがあるのか」
アルチョンが尋ねた。
「はい何度か……さ、公主様」
トンマンに飲むよう促したスンマンは艶然と微笑んでいた。

「悪酔いしなくなりますから」

アルチョンとピダムの前にも茶が並んだ。
「かたじけない」
「………」
返事もせずにピダムは茶を飲んだ。
二人が飲むのを見ながらスンマンも、ゆっくりと茶の香りを楽しんだ。


※※※

「う~ん……いい気分だ!」
トンマンが池の上に掛けられた橋の真ん中で伸びをした。

それを見ながらスンマンも伸びをした。


二人は酔いざましに庭園に来ていた………池の灯りに、ふんわりと浮かぶ蓮の花が美しい。


アルチョンと二人、後ろに控えて眺めながらピダムは、ふと思った。


並んで立つ二人の対照的な美貌が不思議と引き立てあい似合っていた………


トンマンの大きな瞳が愛らしく、通った鼻筋にぷっくりした唇すべてが美しかった。

スンマンは切れ長の瞳に薄い唇、すらりとした躯がトンマンより頭一つ分も大きい。

決して似てはいない二人なのに………どこかが似ていて、似合っている………ピダムは、そんな事を思っていた。



だが!! それと奴が気に入らない事とは別だ!!

「明日、奴と手合わせするんだって?」
だしぬけにアルチョンに話をふった。
「ああ………スンマン殿がどういう腕か見定めたいからな………公主様があれだけ親しげにされているならミシル側からの間者とは考えにくいが………」
「ミシルの?」ピダムの目が鋭く光った。
「花朗ではない御仁だからな……氏素性が分からぬから疑いたくもなる」
「明日か………俺も手助けするよ」
「お前がか?」
ついぞピダムの口から出たことのない言葉に驚くアルチョンだった。

「なぁ、公主様にも見物してもらおうぜ……アルチョンが連れてきてくれよ、な!……なぁーってば!」奴に公主様の前で赤っ恥かかせてやるんだ。


さっきから、ぶすったれた顔をしていたピダムが……今はけろり、と笑っている。

「ピダム!……分かっているとは思うが、スンマン殿は公主様の知り人だ。……礼をもってなさねばならない」
不安な考えが頭に浮かび、ピダムに念を押すアルチョン。

「わかってるさ」さも当然、といった顔で返事をするピダムに頭が痛くなったアルチョンだった。

……明日はユシンにも来てもらおう………

ピダムの様子に一抹の不安が過ったアルチョンは、決心していた。

「明日が楽しみだなぁ~」ピダムが呑気につぶやいた。

※※※

「風が涼しくて気持ちいい………」
「酔い醒ましには格別です」
「私はそれほど酔ってません」
「頬も額も、いい色に染まってますよ、姉上」
「そうですか?」
トンマンが自分の頬に手を当てると確かに熱い……久しく飲まなかったから、弱くなったのか?

「姉上………明日御時間はございますか?」
スンマンの瞳がまた悪戯っ子のように輝き始めた。


「明日、アルチョン殿と手合わせいたします。………見物に来られますか?」
「なぜ、手合わせを?」トンマンは不思議そうに尋ねた。


「ふふっ………花朗でもない私が、公主様のお側に居るための通行手形のようなものです」
「………いつまで知らぬふりをする?」
「そうですね………7日位でしょうか?」
「分かりました。……7日たてば私が貴女の事を皆に教えます」
「風が冷たくなってまいりました………そろそろ、宮へ帰りませんか?」

「そうですね、夜も更けてきました。………帰りましょう」
トンマンが歩き出そうとした、そのとき……………



がくん!!
「――っうあ、」自分で思うより酔いが回っていたのか、トンマンの膝が崩れた。


危うく、地面にそのまま転びそうになったトンマンの、宙を泳いだ腕をスンマンと、飛んできたピダムが支えた。

「公主様!」二人の声が重なった。


「だ………大丈夫だ………大事ない」恥ずかしい、恥ずかしい~~……あれくらいの酒で歩けなくなるなんて………穴があったら入りたいっっ……

トンマンの顔は真っ赤になっていた。


「だ………大丈夫だ!……もう、大丈夫だからっっ」

ピダムとスンマンに両腕を取られたトンマンが、真っ赤になって二人を振り払い歩き始めた。

力みすぎて、いつもよりも大股に歩いていくトンマンをアルチョンとピダムが追いかけていった。


スンマンも歩き出そうとした、その時。


「もうし、そこな御仁。………少し、待たれよ」孔雀の扇を手にした男が近づいてきた。


訝しげに見ているスンマンに近づいてきたのは………

※※※

トンマン達が庭園に出る少し前………


新羅において知らぬ者はいない女傑の部屋へ、飛び込んできた者があった。

女傑ミシルの弟、ミセンだった。


「あ……姉上!大変です」
「何です、騒々しい」弟の派手な登場に 片眉を上げてミシルが見た。

「姉上!知ってますか?………ええ、ええ、私はいつかこういう事が起きると思ってましたよ!」
「だから、何ですか!」
止まらない弟の言葉に、両眉を吊り上げ始めたミシルに、怯え始めたミセンがやっと本題に入った。


「トンマン公主の宮に知らない男が入って、なんと、まぁ~酒席を設けたのですよ!姉上」
「酒席くらい、トンマンも設けるでしょう」
なぜそんなに大騒ぎするのか………じろり、と見返すミシル。

「姉上、考えてもみて下さい。トンマン公主の宮で初めての酒席なんですよ」
「酒を飲みたくなったのでしょう。私だとてする事です」
「そうではなくて!………女官の話では初めて見る男が酒席を希望して、トンマンが言われるまま設けたのです」
「よほど………親しいのか……」ミシルが考え始めた。


「ミセン公、その者の素性とトンマンとの関係を調べあげて下さい。」
「はい、姉上」
さっさと腰を上げ、部屋を出ていこうとするミセン。


その背をミシルの声が追った。
「こちら側につかせるのですよ」
「はい、姉上」
恭しく礼をしたミセンが今度こそ部屋を出ていった。

「どのような人物なのか………楽しみだわ」

※※※

ミセンに呼び止められたスンマンは、訝しげに振り向いた。

「これは………また……」
何か世辞を言おうと口を開けたミセンが……ぽかんとスンマンを見詰めた。


自分よりも遥かに年下で、遥かに背が高く、眼を見張るほどに美しい男。

月のように冷たく耀く美貌の………

何も言えず、ミセンの喉が『ごくり』と唾を飲んだ。

「何かご用か?」
涼やかな声が通っていった。

はっ、と我に返ったミセンはいつもの甲高い笑い声を上げた。

「はぁ~っ、はっはっはっ………余りにも貴殿が美しいので、私が……この私が何も言えなくなりましたよ」
「………」
スンマンは無言で、無表情で相手を見詰めた。

「私はミセンと申します。」
「………」
「失礼ですが、今宵は何処で休まれるのでしょう?」
「………」
「もし、宜しければ我が拙宅へご案内致します」
「………」
無表情なまま、一言も発せずに見つめてくるスンマンに、いつもになくミセンが挫けそうになった。


「珍しい酒も御用意致しますが……」
「……なぜ、私を?」
食い下がるミセンに煩わしそうにスンマンが言った。

「……トンマン公主様と、我が姉ミシルとの誤解を解きたく……私が橋渡し役を買って出たのです」
誘う理由としては、些か強引ですが……仕方ない!

ミセンは、わさわさと扇を振った。

「私には行く理由がない……」
艶然と、咲き誇る牡丹のように微笑んだスンマンにミセンの扇が止まった。

そのまま歩きだしたスンマンを、ただ呆然と見送ったミセンだった。

※※※
意外にミセン公も好きなので登場させました。
絡んでもらいます(笑)
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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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