②《あの日、僕は上にいくと誓った》キャシャーン

続きでございます。




「あのっ、内藤さん・・・これからお世話になります」
「ん? ああ・・・」

僕の部屋に連れてきた彼女の開口一番は、これだった。
まあ、長々とお世話することもないだろうけど・・・

将軍に捨てられた哀れな彼女は、僕にしか拠り所はないはず・・・ 暫らくは利用価値がないか探してはみるけど

・・・・・・・ 最後は、軍部のジジィ共に与える餌にしてもいい

若い女の肌はジジィ共には格別の味わいがあるらしいからな・・・・・・くくく
しかもあの上条将軍に娘同様に育てられていたんだ、ねちっこいジジィ共には将軍への鬱憤晴らしに喜んで慰みものにするだろう

壁に寄りかかりそんな事を考えながら彼女を見ていると、僕の考えなど知らない彼女は・・・
物珍しそうに、無邪気に部屋の中を見て回っている

「内藤さん! キッチンを見てもよろしいですか」
「どうぞ、ご随意に・・・ ここが今日から貴女の住まいなのですから」
「冷蔵庫が空っぽ・・・」
「今、会社のものに届けさせているところです」

「私は1度会社に戻ります。 帰るのは夜遅くなので気にせず寝ていてください」
「分かりました・・・・・あのっ!」
「まだ何か」

呑気な彼女の声に苛立ちながら部屋を出て行こうとした僕に、また彼女の声がかかりイラついた声で答える僕に彼女は・・・・・

「いってらっしゃい! 気をつけてくださいね」
『いっちぇらっちゃい、お兄たん! きをちゅけてね〜〜〜』

ああ、まただ・・・・・・ 彼女の言葉と僕をみて笑う屈託のない笑顔が・・・・・・彼女とあの子が、重なる

「・・・・・・・いっ・・・てくる」

逃げるように部屋を出た僕は、車を走らせながら・・・・・・・・泣いていた

あの子が・・・ 僕の妹が・・・何十年も思い出さないよう蓋をしていた箱が開くように・・・・・・あとからあとから思い出が溢れてきて・・・

「ぐぅう! ・・・・・ああ・・・あああ・・・・があぁぁああああ・・・・・・・・かおる・・・っこぉぉ・・・・ 」
僕は車を止めて思いきり、泣いた

日興ハイラル社の幹部にふさわしい部屋は持っているが、ほとんど軍部にある部屋か会社にいる毎日の僕はごくたまにしか帰ってはいない

しかし妙な荷物というか、彼女が気になって、その日、深夜を過ぎて帰ってみた

リビングのテーブルにフキンをかけた夕食が用意されており、メモには【起こしてください 】と書いてあった
オカズの中の1つを摘まんで口に放りこめば・・・・・うん、なかなか美味い

さて彼女は・・・・・・・ 部屋の中を見渡しても彼女はいなくて、寝室へと向かえば僕のベットで眠る彼女を見つけた

「男の部屋にいるくせに警戒心ってものがないのか?」
「ん・・・・・・ んん・・・」
「・・・・どうした」
眉間にシワを寄せて苦しそうな表情のまま魘されている彼女の横に屈んで・・・

「・・・・・お・・に・・・たん」
「!!!」

偶然だ・・・ ミキオ中佐の事を呼んでいるんだ・・・ この娘は、あの子じゃない!
僕はあの子以外、僕の心の中には誰もいれない・・・・・・入れないんだ

「うう・・・・・・たん・・・ずっ・・・いっしょ・・・」
「・・・・・・薫子 一緒だよ・・・」

いけない、情をかけるな・・・・・制止の声が頭の中で響いているが、目の前の苦しそうな顔が・・・・・重なって・・・・
僕の手は、額に、頬に・・・優しく触れて・・・声をかけていたんだ

「おに・・・・たん・・・・だい・・・すき・・・」
「僕もだよ、薫子」

その夜は、あの子の面影を胸に・・・ 彼女を抱きしめて眠った。。。




ミキオ中佐が彼女を探していると知った僕は、いつ彼女の事を話そうか・・・ 彼に取りいる最も効果的な方法を考えている
考えてはいるが、僕は・・・・・・ 彼女をもう手放せなくなってきている

「今日はシチューにしました。 お口に合うといいんですが」
「ああ・・・美味しそうだ」
「着替え、バックに入れてあります。 洗濯物はこれだけですか?」
「ああ・・・ 」
「これから会社ですか? 気をつけて・・・ いってらっしゃい」

にっこりと微笑む彼女を見つめ、たった1週間で・・・・ ・この暖かな空間が、彼女が、離せなくなっている自分に愕然としている

どんなに遅くなっても部屋に帰る自分、寝ている彼女を抱きしめて眠る安息、いってらっしゃいと向けられる笑顔と言葉に暖かくなる胸のうち

この僕が、そんな事で・・・ 絆されてしまうなんて

ミキオ中佐に、言えるのだろうか・・・・・・
言えば彼は当然のように薫子を、自分の手元に置くだろう・・・・・・僕はもう会えなくなる

そんなとき、僕はミキオ中佐に呼び出され彼の執務室へと向かった




男にしてはえらく綺麗な顔を持つ内藤が、父から薫子を与えられたと報告を受けた私はすぐに内藤を呼び出した

与えられただと! 薫子を、あんな男に!
あいつはジジィ共に自分の身体を与えても軍部に食い込もうとしている男だぞ

そんな奴に・・・・・・ 私の薫子を・・・・・

「薫子の元に案内してもらおうか?」
現れた奴に抜き身の刀身を突きつけて居場所をきけば、素直に案内するという

ついて行けば内藤の部屋のようで・・・・・鍵を開けて入る内藤の腕を掴んで睨みつけると

「薫子さんに変な真似はしていません。 ご心配なく」
「・・・・・・そうか」

部屋に入ると薫子がいない・・・・・ 耳につくのはシャワーの水音と鼻歌・・・・・・薫子め、呑気にもほどがある

「シャワー中のようですね」
内藤の言葉の終わらぬうちにガチャっと風呂場のドアが空き、バスタオルを巻いた薫子がリビングへと出てきて

「きゃぁぁーーーー」
思いっきり悲鳴を上げ、背中を向けてしまう ・・・・・・しまった!

薫子の背中には母に出会う前につけられた酷い火傷の痕があり、妹は気にしていたんだ
私はともかく、内藤も見てしまっている事に私は上着を脱いで薫子の背中に羽織らせた

内藤をみれば、どうしたというんだ・・・・・・男のくせに青い顔して戦慄きながら薫子を凝視している
訝しく思うが今は薫子を・・・

「その傷は・・・ いつ! いつついた!」
内藤が飛びつくように薫子の腕を取り顔を見ている

「ああ・・・まさか・・・そんな・・・そんな・・・・・薫子、傷を見せて」
羽織らせた上着を脱がし背中を食い入るように見つめる内藤の手が、震えながら薫子の傷に触れていく

「・・・・・間違いない・・・・薄くはなってるけど、この傷は・・・あの子の・・・・・」
「何が間違いないんだ。それより薫子を離せ!」
「薫子! 僕を忘れたのか? 僕のことを思い出さないのか?」

「内藤さん・・・・・・」
「薫だ・・・・・ お兄たんだ」

「・・・・・・・お兄たん・・・・・・・・」

そう言った薫子が糸の切れた人形のようにその場に倒れるのを、私と内藤が慌てて抱きとめたのだった

薫子はそのままベットに運び、リビングでは内藤と2人睨み合うように立っている

「薫子は私が屋敷に連れ帰る。 それでいいな 」
「よくありません! 屋敷に帰ればきっと今度は何処か知らない所に捨てられる」
「じゃあどうすると言うんだ」
「今のまま僕のところに居ればいい」

「彼女が僕の薫子だと分かった以上、僕の側から離させはしない」
「お前の薫子・・・・・ だと」
「ああそうだ! 薫子が3歳のとき別れたがそれまでは2人一緒に生きていたんだ・・・ 死んだとおもっていた」

「ではお前が薫子の兄なんだな」
「ああ・・・だが血は繋がってはいない・・・ミキオ中佐と同じでね」
「ふん、私と同じだと?」
「ああ・・・・違いますね。 僕の方があの子を愛してる」

ふん!と顎をあげて 不快感を煽るような顔して目の前の内藤は私を見ている

父のこともあり内藤の言う通り、ここに置いておく方が安全だろうと判断した私が帰るとき内藤が

「薫子のことを思うなら、将軍には文句も言わない方が得策ですよ」
「・・・・・いずれ迎えにくる。 我が妻としてな」

私は決意を胸に、父に会うべく陸軍本部へと向かったのだった

「・・・・・・薫子は、僕が守る」

内藤の言葉など、私には知らぬこと・・・・・・

「父上、薫子を妻にします」
「許さん、許さんぞミキオ!」
「許すも許さないもありません、私が決めたことです・・・よろしいですね」

「・・・・・・・勝手にしろ。 だが私も勝手にする 」
父が手を振ると、合図を受けた兵士達が部屋の奥から出てきて私を拘束しようと手をかけてくる

「何をする!」
「失礼します」
「何をするのだ! 離せ! 命令が聞こえないのか!」
兵士達に腕を掴まれた私に父が薄っすらと笑う・・・・・・

「息子を部屋に閉じ込めておけ」
「はい!」
「離せ! 」
兵士に連れられて部屋を出て行くミキオを見つめる将軍は、薄っすらと笑いながら呼吸マスクを顔にあてる

「己の非力に気がつくか、ミキオ?」
所詮ミキオは私の庇護の元で踊るしかないのだが、あいつはそれに本当の意味で気がついてはいない。。。

「薫子とのことはお許しになってもいいのでは?」
「シズカか・・・・いつからそこにいた」
「・・・・最初から」
部屋の奥から現れたのはミキオの本当の妹・・・2つ下の上条 シズカだった

だがその姿は同じ上条家の娘でありながら薫子とは真逆だった

バッサリと切った髪は男のようで、後ろに綺麗に流してある
黒のスーツに腰に帯びているのは日本刀、スラリとした身体は身長も高く将軍を眺めてる顔は美しいが・・・ ふてぶてしくもある

流れるように美しい歩き方で奥から出てきた彼女は、将軍の横で・・・大きな机の端に少し、腰掛ける

「兄上には薫子のような優しい女が必要です。 認められてもよろしいのでは」
「・・・・・お前は認めるのか?」
「ええ、軍部の誰かの娘もいいが、高慢ちきなプライドだけは高く頭が軽い女を【お姉様 】だなどと 、呼びたくはないですね」
「・・・・・」

「ああ・・・私は私が思うままにさせていただきます」

そうして部屋を出て行った娘の後ろ姿を、暗い瞳で見ている上条将軍は呼吸マスクで顔を覆っていた




「さて、薫子を保護しているのは・・・内藤とかいう男だったな。 今どこだ」
「・・・・それが今は・・・」
言い淀む部下をジロリと睨めば内藤は今、軍部の幹部と会っているという・・・

「案内しろ!」
「はい」
部下に案内された部屋の前に立ち止まり、ドアをノックする・・・が、反応がない
部下を返したあと、懐から銃をだす

・・・・・・・・チッ! どうせ綺麗な男を目の前に老い先短いジジィが欲情してるんだろうが、終わるまで私が待てるか!

ドアの鍵穴に向かって銃を1発、ガァーーンという衝撃音が辺りに響くが構わずに鍵の壊れたドアを脚で蹴り開ければ・・・・・・予想通りの光景が現れる

ソファーの背もたれに体を預けている男のシャツの前を開いて、年寄りのシミの浮いた手が撫で回し、乳首を弄り回している
そのジジィは何が起こったのかと怒りに満ちて振り返ったが、私の姿を見るとみるみる媚びた物へと変わっていく

吐き気がする・・・・・ 私も兄も生まれた時からこの顔をした大人に囲まれて育った

「これはシズカお嬢様・・・ 何かご用ですか?」
「お前に用などないが、そこの男に用がある」
「は? 貴女のような人が、この男に?」

・・・・・・・・私には媚びへつらいながら、内藤には嘲りの顔を向ける
・・・・・・・・特権階級とは、腐ったジジィの集まりだな

「今すぐその男を渡せ。 そして二度と触れるな」
「何を仰っているのやら・・・・・・シズカ様には我が息子との縁組を将軍に申し上げているところです。このような下賤な男を側に召されるのは得策ではないと思いますぞ」

・・・・・・・・私に縁談だと? しかも相手がこのジジィの息子! 目眩がしそうだな

私はツカツカとソファーまで近寄り内藤の顎を掴んで此方に向ければ・・・・・・・・噂にたがわず美形だな。
目があった内藤に微笑みかけ、顎から頬へと手を移動させた

まだ内藤の前に屈んでいるジジィは未練がましく太腿を触っている

「・・・・・・・どけ!」
ジジィを睨み どかせた私は内藤を立たせ、抱きしめた

「 これからこの男の後ろには私がついていると思え」
「そんなこと許されるはずがありません! シズカ様が 下層階級の男の後ろ盾になるだなどと」
ジジィの悲鳴じみた叫び声に不快感しかない私は、内藤を抱きしめたまま彼の手首を引き寄せ・・・・・・その下層階級の印に口付けを落とす

「行くぞ」
私が歩けば内藤もついてきて、部屋の外に出る

「なぜあの様なことをされたのです? 」
「気まぐれ・・・・ではなく、薫子を保護してくれた礼だ」
「既に僕の毒牙にかかっているとしたら?」
綺麗な男が挑戦的に煽ってくるのは、ふふふ・・・ いい刺激になる

整えた服装で私を見る内藤の・・・その妖しい視線が、私の興味をそそる

「それはありえないな」
「なぜ?」
「あの兄が薫子に触れた男を生かしておくわけがない・・・ 君は生きている。それが答えだ」
ニヤリと何か企んでいそうな黒い微笑みを浮かべて、上条シズカは内藤を見ていた


「さて、付き合ってくれ」
そう言って僕を引き連れ軍部の廊下を歩く目の前の人を見ていた

僕より短い前髪から覗くその美貌・・・・・・上条将軍の懐刀として有名な娘、シズカ。。。
女の身でありながら軍部で少佐の地位にあり、戦地では機略に飛んだ作戦で我が国を勝利に導いたと聞いている

ある意味、兄であるミキオ中佐より将軍に近い存在・・・ そんな人が僕を探していたとは
先程の僕の後ろ盾にというのは、冗談だろうが・・・知り合いになっておいて損はない

いや、彼女の心が掴めたら・・・・・・僕にとって大きな力になるはず

「ここだな・・・」
ここはミキオ中佐の執務室・・・ だけど扉の前に2人の兵士が見張りに立っている、なぜだろう

「父に薫子を妻にすると宣言したんだ・・・我が兄ながら真っ直ぐすぎて呆れるよ」
「・・・・・・薫子の身が心配です」
「ああ、だから兄を連れて今から薫子の元に向かう・・・少し待て」

そう言うと彼女は スタスタと兵士の前に立ち、2人の腹を同時に殴り気絶させ中へと入り・・・じきにミキオ中佐をつれて出て来た

「行くぞ!」
僕のマンションへ3人で向かった




部屋に辿り着いたとき、中から薫子の悲鳴が聞こえて・・・・・・ 僕達の予想が当たっていた

鍵を開け中に入れば兵士に囲まれ今にも泣き出しそうな薫子が、それでも必死に捕まらないよう箒を振り回しているところだった

何か言おうとした僕より先に、腰の日本刀に手をかけたミキオ中佐より早く、男達の中へと突っ込んでいくシズカ少佐がいた

物も言わず男の背中に飛び蹴りし、倒れた隙間から素早く薫子の横に立つシズカ少佐の早業に僕はポカンと見ていた
あれだけの鍛えた男達を前に動じず、背後に薫子を庇いニヤリと嗤ってみせる彼女に鮮烈な印象を受けた

「・・・・・私の事を覚えているか?」
「はい、シズカ少佐!」
「この子は私の可愛い妹・・・ 例え父の命でもこの子に手をかけることは私が許さん!」
「しかし我々は命じられたら遂行しなければいけません 」

「兄に斬り殺されるのと、私の部隊に転属するのと、どちらを選ぶ?」
「薫子は渡さん」
日本刀を抜いたミキオ中佐が、本気だと目で語っている

「・・・・・・藤堂、だったな」
過去に見知っているのかシズカ少佐が、兵隊の隊長らしき男の前に進み出て・・・・・・両腕をその男の首に回して、甘える様に身体をすりつける

男は直立不動・・・ピン!と背筋を伸ばして・・・固まり頬を赤く染めていく

「どうだ? 私直属の部隊に転属させよう・・・・・・だから手を引け。 行ったが女は見つけられなかったと報告しろ、いいな」
「・・・・・はい、シズカ少佐」
「ふふふ・・・ 私はな 私に忠実な男が好きだ・・・お前は? お前は何に忠誠を誓う?」
「自分はシズカ少佐に心よりの忠誠を誓います」
「・・・・・・・それでいい。 では帰って報告を・・・もし、何か動きがあれば私に報告しなさい」
「はい!」

大人しく帰っていく部隊を眺めて、目の前の少佐を見れば・・・・・・・薫子が抱きついていた

「シズカ姉さま、薫子のために来てくれたのね」
「ああ、可愛い薫子・・・ もう大丈夫だから」
しっかりと抱き合う姉妹が 無事を喜び合う様子は微笑ましいんだけど、ミキオ中佐が苦虫を噛み潰したような顔をしているのが気になってしまう

「・・・・・・薫子を振り向かせる最大の敵は、お前でも私でもない。 シズカだ」
「・・・・・・何となく分かります」

「「・・・・・・・はぁ〜」」

内藤とミキオ、2人の溜め息が同時に聞こえた

「じゃあ薫子に聞くよ・・・・・・これからどうしたい?」

内藤のマンションの部屋で薫子が淹れた茶を飲みながら、4人はこれからを話し合うことにした

「私は・・・」
「私の妻になれ、薫子」
「ここで僕と一緒に暮らそう・・・ 思い出したでしょ?」

「私は・・・」
決めかねている薫子の困り顔は、ミキオと薫を行ったり来たりと眺めている

「内藤・・・ お前の気持ちはどうなんだ? 薫子のことを妹として案じているのか、男として求めているのかどちらだ」
「僕は薫子がたった一人の家族だと思ってる・・・ だから今まで離れてたぶん2人で暮したいと思っています 」

「私・・・ どうしたら・・・」
眉を下げる薫子の困り顔にシズカがクスクスと笑っている

「姉さま! ・・・・笑わないで下さい」
「薫子の気持ち、私が決めてあげるよ」

シズカが立ち上がり兄のミキオの背後に立って、何事かと振り向いたミキオに屈んで・・・・・・・
唇を重ねる

「ふぐぅ・・・・」
外さないようミキオの後頭部に手をやって、抵抗する兄の唇を翻弄する
角度を変え、何度も、何度も・・・・・・

薫子の顔が困り顔から驚きのものへと変わり・・・・・・ そして

「いやっ! ミキオお兄さま! いや!」
薫子の叫びに顔を離したシズカが、彼女を見る

「さ、薫子・・・ 今思ったことを正直に言ってみなさい」
「私・・・・・お兄さまが・・・ 好き・・・ 他の人に触れないでほしいの」
「薫子・・・ 私もお前が・・・」

「・・・・・・・ということで、後は兄上と薫子の問題だな・・・・内藤、少し私と席を外そう」
「・・・・・仕方ありませんね、おつきあいします 」

内藤とシズカはマンションの屋上にきて、手摺りにもたれていた

「これで・・・ あの2人もうまく行くだろう」
「しかし将軍がお許しになるでしょうか?」
「・・・・・・・・・許すも許さないもない。 もし薫子をどうかすれば、あの兄のことだ・・・ 父を許せずクーデターでも起こすだろう・・・今は、まだ早い 」
「これからどうするおつもりですか」

「父に認めさせる。 なぁーに、方法は幾つか考えてある。 それに今、父の頭の中は延命しかないからな・・・ 」
「 あなたがいればミキオ中佐は大丈夫ですね」

「ああ・・・ 私は兄の味方だ・・・・ 小さな頃からずっとな」
不意にシズカ少佐が・・・・・・目の前の彼女が、哀しそうに呟くのを聞いてドキリとする

満月に照らされた彼女が急に、1人の女なんだと思えるほど儚げになって・・・・・目の前から消えるんじゃないかと思えて・・・・・僕は思わず

「んんっ・・・・・・」
彼女の唇を乱暴に奪った

さっき彼女が兄としていた口付けの何倍も激しいものを・・・・・・
舌を挿しこみ、絡めて、僕の口内に吸い込み・・・・・息もつけないほどの口付けを・・・・・・

分かってしまったんだ、彼女の気持ちが・・・・・・・きっと彼女はミキオ中佐を・・・・・・
そう思った途端、僕は・・・ 僕の気持ちに・・・・・気がついてしまう

いつものようにジジィに差し出した身体を、ねちっこく愛撫されている間・・・ 僕の身体も心も凍りついたまま、ただの人形のようにソファーに座っている

生理的な反応はするが、誰に抱かれようと、何度ジジィに刺し貫かれようと・・・ 僕の身体は冷え切ったまま・・・
そんな僕の前に彼女が現れた

鮮やかな極彩色のように毒々しく、でも魅き込まれてしまう印象の人

そんな雲の上のような階級の人がジジィを退け僕を抱きしめ、下層階級の印の刺青に唇を・・・ 彼女の形のいい唇が刺青の上を這う感触に、僕の身体は熱を帯び始める

その彼女の哀しい顔を見たくなくて、僕は貪るように唇を重ね続けた
彼女の身体から力が抜けても、尻餅のようにズルズルと床に座り込んでも、僕は彼女の唇を離さない

そんな僕たちは、空にかかる 大きな月に照らされながら・・・・・・・口付けをしているんだ




それから薫子は、僕の元で生活していた。

半年も経った頃だろうか・・・ ようやく将軍からの許しをもらったミキオ中佐が薫子を迎えに来たのは

次の日には結婚式だと言ったミキオ中佐に驚いたけど、言った通りに翌日、御膳を並べた座敷で羽織袴の新郎と打掛けの新婦 で三々九度をしているなんて・・・・・・・

「どうだ? 薫子が綺麗だろう? 」
「ええ、綺麗ですが・・・流石ですねあれほどの打掛け、どこから探してきたのやら・・・感服します」
「あれは祖母のだ。 箪笥の奥から引っ張り出してきた。 それに場所も広い座敷のある所だと上条の別邸しか思い浮かばなくてな・・・・・ 」
「へぇ・・・ 由緒ある上条家ともなればあれほどの品がわんさかありそうですね。僕のようなものには想像もできませんが・・・ 」

「どうした、やけに絡むな・・・・やはり寂しいか?」
「いえ別に・・・ 」
「なんなら慰めてやろうか? 」
「・・・・・・・いえ」

僕が考えていたのは薫子のことではなく、別のことで・・・ あまりにも違いすぎる貴女と僕のこと・・・・・
下層階級の僕が貴女に懸想しても、叶うはずもないと目の前に突きつけられた気がしているんだ

離れた方がいいのかもしれない・・・ 薫子が生きていた今、あれほど上層階級にいこうとした野望も消えた僕はジジィ共に媚びなくなってた

それでも僕の身体を好きにしたいというジジィも現れ襲われたけど 、その都度シズカ少佐が現れて助けてくれた

そのうちそんな事も無くなって、僕は日興ハイラル社の社員として仕事をこなす毎日で・・・・・・
用事で軍部に行った時はシズカ少佐とお茶を飲んだりしているという

まあ、お茶だけじゃなくて・・・キスはねだられるんだけど・・・・・・ 最近はそれ以上のことも・・・・・・
ジジィ共には平気だった行為も彼女相手だと、苦しくて・・・

彼女にとって僕は、ペットのような感覚だろう・・・ それが堪らなくて・・・ こんな感情は、分からない

分からないまま、苦しくて・・・・・・・ 離れれば この苦しさから逃れられるだろうか

「来い!」
急に腕をとられた僕は彼女に連れられて屋敷の奥へと歩いていき、1つの部屋へと入った

真っ直ぐベットへと向かう彼女に引っ張られるまま、布団の上に放り投げられ・・・・・覆いかぶさってくるシズカに荒々しいキスをされている

「・・・・・・・薫」
「え・・・」
初めて名前を呼ばれた

「薫・・・ お前は私のものだ」
「シズカ様・・・」
「お前が嫌だと言っても離しはしない・・・ いいな薫!」

真剣なシズカの目に、射すくめられて・・・・・ 僕の胸に込み上げてくるものは何なんだろうか

「一緒に暮らそう・・・ いいだろ薫?」
「・・・・・はい」

それから僕たちは啄ばむようなキスを繰り返して、やがて・・・・・・1つに繋がって・・・・・・・

これが、愛なんだろうか?
シズカを想う自分に問いかけてみる・・・・・・・・分からない

ただ、今の僕は・・・・・・満たされている

・・・・・・・・・・・・満たされて いるんだ




もう何というか、全くの別物になってしまいましたが・・・・・・こういうのもあってもいいですか?
キャシャーンという映画で戦争を考えてしまいますが、私にはそんな大きな問題を書ききる文才がなくて。。。

ただ愛しい人と笑い合う生活を皆が送れればいいなって・・・

ミキオ中佐も内藤薫も、幸せな毎日を送って欲しくて書きました。

最後まで読んでくださり ありがとうござました (^ー^)ノ

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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