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⑦月に照らされ、陽に焦がれ…

※※※※※
「何処の誰だ! 答えろ」アルチョンが剣に手をかけながら詰問した。

「やれやれ……間者か……」
「はぐらかすな」
「人にものを訊ねるのにアルチョン殿は……剣を使うのか?」
「その時による」
一触即発……アルチョンの躯から気迫が昇る。

ぱらり……スンマンの左手から長い紐が垂れた。

と見た瞬間、アルチョンの手に紐が巻き付いた。

スンマンの手から伸びた其れは、アルチョンの手を剣ごと巻きとり動かせなくしていた。
「むぅ~」

「ふふっ……私が手ぶらで歩くとでも?」
「お主は武術を何処で学んだのだ」
「おや……聞くことが増えたな、アルチョン殿」くつくつと面白そうに笑うスンマンが扉を開けた。

「外に出ませんか?」
「ふっ、望むところだ!」

しゅるる~………アルチョンの手が自由になった。

途端に二人が外に飛び出してきた。
「むん!」
「………」
アルチョンが剣を抜き、スンマンの手がしなる。

剣に巻き付いた其れが、よく鞣された皮を編んだ物だと見てとれた。

「ふん」気合いと共に胴をはらうが……ふわりとスンマンが真上に飛び、アルチョンの肩を踏んで屋根に飛び移った。


「仕方ない!」
びしゅっ……空気を切り裂き襲った其れが、アルチョンの振り上げた剣と首に巻き付いた。

そのまま、ぐいっとスンマンが引くとアルチョンの首が締まる。

「ぐふっ……」アルチョンの顔がたちまち真っ赤になった。


……もう、気が遠くなる……虚ろになり…意識が切れる寸前、ふっと首が楽になった。

「げほっ、ごほっ……」膝をつき必死に呼吸するアルチョンが、そのまま倒れた。

「しまった!」屋根から飛び降りたスンマンが、慌ててアルチョンを抱き起こした。

※※※

……アルチョン殿……アルチョン……

遠くから呼ぶ声がする。

返事をしたいが声が出ず、体も動かない。

朧な意識の中、何か柔らかな物が唇に触れた。

隙間から水が口に入り………喉が渇いている事に気がついた。

『ごくり…ごくっ』……やけに大きく聞こえた音が、己の喉からと気がついたのはしばらく経ってからだった。

また、己の唇に柔らかな物が触れ……与えられた水を貪るように飲んだ。

目を開けると、眼前に拡がる白い美貌が心配気に覗き込んでいた。

「大丈夫か?」
「あ……ああ」
「すまない……」
「いや、私も急すぎた。……一つ聞く、公主様はお主の何になる」
「私の主君だ。この剣も、命も捧げる」間髪入れずに答えるスンマンの顔には信念が浮かんでいた。

「分かった……信じよう」にこりと珍しく笑顔が見えたアルチョンだった。

「立てるか?」
「何の、花郎アルチョンこれくらい……」立ち上がろうとして目眩がした。

「むん……」
「おい!」
ぐらり、と倒れそうなアルチョンを抱き止めたスンマンの顔が、近かった。


「無理はするな……部屋で休め」
「あ……ああ」

アルチョンを部屋まで運んだスンマンの躯が熱かった。

「もしや、熱があるのではないか!」
「大人しくしてろとピダムに言われてたんだがな」にやりと笑うスンマンの額には、玉のような汗が浮かんでいた。

「私より、お主の方が休まねば」
「ふふっ……宮に帰ってピダムに診てもらうさ」
ふらりと外へ出ていこうとするスンマンの腕を掴むと、自分の寝台へ寝かせた。

「ピダムを呼ばせる」
「大丈夫だ」
「私が無理させたのだろう。黙って待っておれ!」

外に出たアルチョンは飛天之徒の郎徒を呼び、ピダムを呼びに行かせ水を汲んで戻った。

スンマンの額に手拭いを濡らし置き、冷やす。

「……アルチョン殿」
「なんだ」
「ピダムを呼んで、貴殿がここにいたら……公主様は……」
「侍衛府の郎徒を付けてある」
「私はピダムが来るまで寝ているから、貴殿は公主様の所へ戻れ」

「だが……」
「戻れ……」
言われてみれば、公主様の周りが手薄になる……護衛花朗として、戻るべきだろう。

「分かった」
「ふふっ……早く、行け」
「お主は寝ていろ!」
「ああ……」目を閉じたスンマンだった。

部屋から出たアルチョンが、瞬く間に夜の帳の中に消えた。

が、アルチョンは気がついてなかった。

物影から、じっと此方を見ていた者が居ることを……

※※※

「だから大人しくしてろって言っただろ~」ピダムが勢いよく戸を開けた。


「……スンマンどこだ」きょろきょろと見渡せど空になった寝台が見えるばかりだった。

さっと、寝台を触るとまだ温かい……
「あの馬鹿、どこ行った」


「うう……」
声のする方を見れば郎徒が一人、倒れていた。

「どうした」

ピダムが起こすと、気がついた郎徒から事情を聞いたピダムが慌てて飛び出して行って……戻った。

「お前も来い!」郎徒を掴んで引きずって行った。


トンマンの宮に飛び込んだピダムの慌てようにアルチョンが異変を察した。

「どうした」
「スンマンが誰かに拐われた」
「なに?」
「俺が行ったら寝台が空だった。郎徒が倒れてて……聞いたらスンマンを運んで行ったと」

「誰が!」アルチョンがピダムに詰め寄る。
「知らないよ」
「一体、誰が……ピダム!」トンマンが鋭く呼ぶ。

「お前はその郎徒をここに連れてきなさい」
「そう思って外に立たせてあります」
「よくやった。アルチョン殿は侍衛府を使って宮殿の外へ出ないよう門を閉じなさい」
「はっ」
「ユシン殿も呼んで下さい」
「はい」
「宮殿の外には出さぬよう、一刻も早くスンマンを見つけるのです」トンマンの焦りようが尋常ではない……

アルチョンは不思議に思ったが、先に手配しなければならない!

※※※

トンマンの宮がにわかに騒がしくなった。

手配を終えたアルチョンがユシンと共にトンマンの宮に戻った。

その間トンマンは、郎徒から話を聞き終わっていた。


「郎徒は何と」ユシンが聞いた。

部屋にはトンマン、ピダム、アルチョン、ユシンが円卓を囲んでいる。
「アルチョンが出た後しばらくして、部屋に男達が入ってきたそうだ」
「どんな奴等ですか」
「それが黒づくめとしか覚えてない」
「なんだと、弛んどる!」
「ただ、その中の頭らしき男がスンマンを運ばせる時に……『肩をぶつけないよう慎重に運べ』と指示したらしい」

「その様に指示を出すなら、殺すつもりは無いようですね」ユシンが考え込んでいた。
「公主様、スンマンとはどういった人物ですか」
「……」
「ふらりと現れたにしては宮殿の地理にも詳しいしな」ピダムが思い出したように言いながら、トンマンを見ていた。

トンマンは口を結んで考え込んでいたが、心が決まったのか話し始めた。

「スンマンからまだ話すなと言われていたが……こんな時だ!いいだろう」

「スンマンは陛下の姪であり、私の従姉妹だ」

ユシンが、アルチョンが、ピダムでさえ驚きに目を見張り、体が固まった。

「幼い頃から中原へ渡られている……スンマン公主……」
貴族や王室に詳しいアルチョンが呟くように呻いた。


「スンマンの話では中原と新羅を往き来して、チョンミョン姉上に情勢とかを報告していたらしい……」

「チュンチュに姉上の手紙を届け続けたり……色々と陰ながら支援していたらしいのだ」トンマンは初めて会った夜を思い出していた……

「まだ……二日しか経ってないが、スンマンは大事な仲間だ。同じ聖骨の身で、私に忠誠を捧げると誓ってくれた。……何としても探し出すのだ」

「はっ!」

※※※

「あの方の具合はどうだ」
「熱が高く、薬も直ぐに吐かれております」
「熱を下げるのだ……薬を私に」
「はい、こちらを」

薬を手に部屋へ入ってきたのはポジョンだった。

アルチョンの部屋から寝ているスンマンを運びだしたポジョンは、ミシルの宮の地下の部屋へと運び込んだ。

無理がたたったのか高熱にうなされたスンマンは、アルチョンの部屋から意識を失ったままだった。

「……ぐふっ…」
口に薬を流し込んでも、むせてしまわれるな……

ポジョンは薬を口に含みスンマンの唇に重ねた。


先程見た光景に似ている………

この方がアルチョンに水を飲ませるためにした光景に……


もう腕が上がらないほど、右手が使えないほど無理をしていた……この方ができた精一杯のこと。


その光景を見たとき……人をこれほど、憎いほどに羨ましいと思ったことは無かった。

母は同じでも……常にハジョン兄上に馬鹿にされ、汚れ仕事をしてきた自分。
羨むことはあったが憎くはなかった。

いつか認められる、いつか報われると思い続けた。

……諦める事にも馴れていたが。


器の薬を全てスンマンの唇に流し込んだポジョンは、額に手を置いた。

冷たい水で手拭いを濡らし当てる。


肩は医官に見せ、我が家門の薬を塗った。

後は……ゆっくり休めば治るだろう。


寝台の横に椅子を置き、じっとスンマンを見つめるポジョンの手には小さな壷が握られていた。


ミセンから渡された壷だった。

「熱が下がったら此れを使え、そのまま飲ませるのだ」愉しそうに笑いながらミセンが話している。

「しばらくしたら意識は虚ろに、体は熱く火照ってくるだろう……その時に思いきり……な!」うひゃひゃ~と笑う叔父に壺を渡された。

「もし、お前が出来ないのなら言えよ。私が替わろう」
はぁ~はっはっはっ……扇を振りながら出ていった叔父の後ろ姿を見送った。


「薬を使って、この方を……私はどこまで堕ちるのか」

ふっ…と自嘲の笑みを晒してスンマンをみた。

「呼吸が穏やかになった……」嬉しそうに呟くポジョンは、壺を部屋の隅の箪笥の上に置いた。

また、スンマンの横に座り様子を見続けた。

※※※

「ん~……よく寝たな」
あれから丸一日が経っていた。

熱が下がり、すっきりと目覚めたスンマンは寝台に起き上がった。

体力を消耗しているからか、躯が鉛のように重い。

「ここは……どこだ?」
「私の母の宮です」「ポジョン殿……私が、何故、ミシル宮にいるのだ」
「……母の命で、貴女を……」
「ふふっ……秘薬を用いて抱けとでも言われたか?」
口の端を吊り上げ笑うスンマンが、何となく母に似てるとポジョンは思った。


瞳に蒼い焔が立ち昇るスンマンに静かに微笑んだポジョンだった。
「お元気になられた」
「ポジョン殿……」
「安心なさって下さい……貴女をどうこうするつもりはありません」
清々しい笑顔を浮かべたポジョンは嘘を言っている風には見えない。

「さ、もう少し眠って下さい……医官を呼びます」
「いや、公主様の所へ戻らなければ」

「まだいけません……母は本気です。私が駄目なら他の誰かに貴女を……完全に御体が回復するまで此処に居てください」

「公主様が心配なさるな……」
「それは私が何とかします」
「……だが、それだとポジョン殿は母ミシルを裏切るのでは?」
「私は、母を裏切りません」
「だが……」
「命をしくじるだけです」
「ポジョン……」

※※※
「調べはついたのか」トンマンの激がとんだ。

「はっ、調べによるとミシルの宮に入ったと目撃がありました」ピダムが報告した。

あれから一日経っていた。

依然としてスンマンの姿は消えたままだった。

「宮殿の外に出ていないのは確かです」スンマンが消えてから寝ずに働いているアルチョンが報告した。

「ならば……ミシルの宮に行くぞ」トンマンが出ていこうとしたとき。

「あの~」チュクパンが現れた。

「公主様にお渡ししたいものが」
「何ですか?」
「サンタクから預かったんですが、必ず公主様にお渡ししろとうるさくて……」チュクパンの懐から手紙が出てきた。

さっと拡げて読んだトンマンが安堵のため息を吐いた。

「スンマンからの手紙です」

そこには……ミシルに狙われたが、助けがあったこと。
ついでに回復するまで後二日其処にいることも記されていた。

「心配は無いようですが……最後にスンマンが書いたことは実行しましょう」

※※※※※
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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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