相棒 ≪囚われ人≫ by. 大河内

大河内さんってきっと苦悩しているように見えるんですよね・・・ 過去の恋に囚われたままの人
でも、映画とかのメイキングで見る神保さんは笑顔が素敵でクラクラします(大河内さんの仏頂面も好きですが)

***

「でぇえーーーい」
「やぁーーー」

≪バシッ パシン パンッ!≫

「めぇーーーん」

武道場に竹刀の音と気合いの声が交差して1時間・・・終わりにした2人が並んで防具を取れば現れた顔は汗だらけ・・・・・・  だが2人は稽古をした充実感で笑顔になっている・・・大河内の場合は口角が少し上がったくらいなのだが

「今日は付き合わせてしまいました」
「先輩が証拠品を返しに行って不在でしたものね」

くすくす笑う薔子に大河内も頬を弛める

「しかし鈴城さん、相当な腕前ですね」
「いえ大河内さんもです・・・これからは私も稽古に誘って下さいね」
「こちらこそお願いしたい」

「警視庁に稽古仲間が増えました」

嬉しそうに笑う薔子に大河内の目が細められた・・・

「お礼と言っては何ですが鈴城さんこれから予定は? よければワインでも飲みに行きませんか?」
「私は事件がなければ退庁するだけです・・・けど」

監察官の私などが誘っては迷惑でしかなかったな・・・大河内の胸には監察官という職務に皆が怯え忌み嫌うことが蘇っていた

「ああ・・・都合が悪ければいいのですよ」
「違うんです! お腹が空いてるんでワインよりご飯が食べたくて」

≪ くぅ~~~ ≫

薔子の腹がタイミング良く鳴って・・・大河内は「くっくっくっ」と堪えきれずに笑い、薔子の頬が恥ずかしさで赤く染まる

「では食事とワインを私と御一緒していただけませんか?」
「はい」

シャワーを浴びた後、職場に戻り連絡しあうことを決めた2人はそこで別れたのだった

***

「美味しい・・・」

大河内が連れてきたイタリア料理店の個室で食事をする2人・・・だが大河内は女性にしては食欲旺盛な薔子の食べっぷりに感嘆していた

見ている此方が気持ち良い・・・美味しそうに食べる女(ひと)だ

「このチキンのクリーム煮すごく美味しいです」
「その様ですね、鈴城さんの顔を見れば分かります」

「美味しいものは美味しいと言ってあげるのが食べ物に対する礼儀ですから」
「ほぉ~」

「人は搾取し続けなければ生きられない生き物・・・ならば自分の血や肉になるものに感謝の心を忘れるな」
「聞いても宜しいですか? 誰の言葉ですか?」

「父の言葉です」

確か鈴城さんの御両親はイギリス在住だと報告書にはあったが・・・

「我が家の家訓は感謝の心を忘れずに・・・ですから それより大河内さんは進んでおられないような」
「ああ・・・貴女の美味しそうな食べ方に見惚れて自分の方は忘れていました」

「ふふ・・・大河内さんの牛ヒレステーキも美味しそうですよ」
「食べますか?」

ついこう言って私は、しまった!と後悔した・・・私の様な者が口をつけた皿を勧めるなどと・・・

だが彼女は嬉しそうに自分の皿のチキンを一口切り分け私の皿に乗せ、私が切り分けるのを待っていた

「メニュー見てて迷ってたんです ソースも美味しそう」

慌てて切り分け彼女の皿に乗せれば、躊躇いもなく食べてしまう

「美味しい」

そして・・・幸せそうに笑う・・・不思議な女(ひと)だ

これだけを見れば無邪気な人だと思ってしまうが、先程の稽古での印象は・・・

太刀筋というか・・・その剣の運び方や戦法で私は、その人の本質が出てくると思っている

相手の攻撃をかわし少しの隙を見極め攻撃する冷静さに、自分から隙を作り誘い込む狡猾さ、思わず踏み込んだ私から一本取る鮮やかな手並み・・・彼女の太刀筋は目の前の無邪気さなど消し飛んでしまうほど巧妙だ

興味深い・・・全くもって興味深い・・・

食事を終えた私達はバーに場所を移すのだった

***

「いつ来てもお洒落ですね~」

そう言う貴女だが、黒のソファーにゆったりと座りパンツスーツの長い足を組んで、ゆっくりワインを味わう様子はまるで王族のように気品がある

失礼だがおおよそ女性という雰囲気は無いのだが・・・一番近いイメージで王子・・・いや、王だな

「鈴城さんはイケる口のようですね」

彼女のグラスにワインを注ぎながら言えば素直に頷いていた

「赤ワインもいいのですが・・・」

≪ パチン ≫

すっ・・・と手を顔の横に出し店員を呼ぶ仕草など堂にいっている

「シャンパンのリストを」
「かしこまりました」

渡されたリストを開き1つ1つ見ている彼女の附せられた睫毛が長い・・・

横顔が・・・美しいな・・・はっ!!! 私は何を・・・私が他人に、しかも女性を見つめるだなど・・・信じられない

「お願いします」
「只今お持ちします」

注文したのだろうロゼのシャンパンが暫くしてくるまで、私は自分を落ち着かせていた

「ん~美味しい さ、大河内さんも飲んで下さい」
「いただきます」

一口含めば炭酸と爽やかな香りで・・・先程の食事の後味で油っぽい口内が、流されていくようだ

「ね? さっぱりするでしょう」
「ええ本当に」

それから私達はゆっくりとシャンパンを空け、赤ワインも飲んだのだった

***

「ふぅ~」

したたかに酔ってしまった・・・ワインの一本や二本問題ないと思っていたのだが、今日はこれで止めよう

「大河内さん」
「何でしょうか? 鈴城さん」

「貴方を捕らえている傷は何ですか?」

真っ直ぐに彼女の視線が私を射抜く・・・その眼に戸惑う私は無様なほどに内心狼狽えていたが・・・得意のポーカーフェイスで乗り切る

「藪から棒に何でしょうか?」
「ずっと見えていました・・・貴方の目の奥にある後悔が」

「!!!」

「貴方と知り合って間もない私ですが、だからこそ言える事もあるかと思います・・・友人にも言えない傷はきっと貴方を長年苦しめているように思います」

私を捕らえたまま離さない恋・・・罪と罰・・・湊・・・お前の事を話してもいいだろうか?

自分の中に沈めていた罪を・・・告白し懺悔したい・・・もちろん許されるはずなどないが・・・

「ああ・・・困らせたい訳じゃないんです ただ貴方の目が寂しそうで痛く苦しそうで・・・聞かずにはおられなかった・・・」

「聞いて下さいますか・・・」

情けないがこの時の私は酔っていて歯止めが利かなかったんだ

私は静かに話し始めた・・・湊との事・・・彼と想いが通じたのは湊の結婚後のこと・・・彼が私を庇い隠すためにカモフラージュの女性を作り、その彼女が本気になり・・・  彼の妻がその愛人を殺害し・・・湊は・・・妻を庇うため無理心中を装い死んでいった

そして湊が庇った妻も、手首を切って自殺してしまった・・・  私を庇ったために3人もの命が失われてしまった・・・

私が彼を、湊を愛さなければ・・・そんな事件も起きずに3人は生きていたはず・・・私が、愛さなければ・・・結婚している部下を・・・男を・・・どんなに想っていても封印し続けていれば・・・

私は自分の大罪に償う術もなく、後悔ばかりが押し寄せてくる

その・・・私の中にある渦巻く感情を・・・彼女の申し出にそれ幸いと話して苦しみから逃れようとする狡い自分に嫌悪感が湧く

すると・・・下を向いていた私の肩を何か暖かなものが包んでくれた

いつの間にか隣に来ていた彼女の両腕が、私を真横から抱きしめているのだと分かったのは暫く暖かさを感じてからだった

「男だろうが女だろうが愛することに代わりはない・・・」
「しかしっ! 私のせいで3人もの命が!」

「貴方が頼んだわけじゃない・・・すれ違う愛が哀しいだけだ」

低すぎず高すぎず聞き心地の良い優しい声が私の耳に触れる・・・だが、私は何も答えられなかった

「・・・」
「間違ったのは彼だ」

うって変わった冷たい声にビクッと肩が跳ねた私を、もっと強く抱きしめてくる彼女・・・

「彼は優しすぎたのかもしれない・・・だが、貴方を愛した時点で妻に誠意を持って別れたいと告げていたら・・・偽装せずに正直に男を愛したと話せていたら・・・」

「湊を悪く言わないで下さい・・・彼を追い詰めたのは私なんだ!!!」
「いいえ、その方法を選んだのは彼です 選ばざるおえなくなったのも彼の選択の結果です」

「離せ! アイツを悪く言うな!」

ギリギリと締め付けられる彼女の両腕はどう足掻いても外れはしない

「・・・私は彼を悪く言うつもりはない 彼もまた命をかけて貴方の社会的立場を守ったのだ・・・いくら愛する人のためでも死ぬ事など・・・実行できる人は少ないのだから」
「え・・・」

「ただ・・・貴方が傷ついている 時が絶っても薄れない罪の意識に苛まれている・・・きっと彼はそんな事望んではいません」
「だが!!!」

「貴方なら・・・愛する人を苦しめたいと思いますか? 貴方なら、自分が死んだ後も愛する人を罪悪や後悔などに縛りつけて・・・生きながらも悔やみ続ける人生を送らせたいですか?」

「それは・・・」

「貴方の愛した方です・・・そんな事望んではいないでしょう 貴方を命懸けで守ろうとした人なのだから・・・」
「私は・・・」

そうだ、湊は・・・私の愛した男はそんな事を望むような人間では無い・・・あいつは優しい・・・優しい男だった・・・

「ぐぅ・・・」

我慢してもしきれない嗚咽が口から漏れそうで私は掌で口を覆ったが、涙が・・・下を向いた顔からポタリと膝に落ちてしまう

「大河内さん・・・今は泣いていいんです 彼を偲んで泣いて・・・いいんですよ」

優しい男を思い出しながら、優しい女の傍で泣く・・・まるで三文芝居のようで・・・出来すぎだ

私のような者には勿体ないほどに・・・出来すぎだ

堪えられない涙を見られないよう眼鏡を外し手で覆っていれば、柔らかな手が私の背中を子供をあやすように撫でていた・・・幾度も、幾度も・・・

一頻り泣いた後、冷たいオシボリを渡され目に当てれば熱くなった頭も冷静さを取り戻す

「申し訳ない・・・大の男が店の中で泣くなどと、一緒にいる貴女に恥ずかしい思いをさせてしまった」
「・・・恥ずかしいなどと思ってはいません」

私は恥ずかしくて顔からオシボリが外せないのだが・・・泣いたこともそうだが自分が男を愛する同性愛者だと話してしまった

それが・・・彼女に不快感を与えているのではないかと考えていた

「安心して下さい 私は大河内さんの秘密を他には一切漏らしませんから」
「いえ、そこは心配してはいません 私とて監察官です!人を見る目は持っています」

「よかった」

ほっ・・・と笑う貴女の顔が、まるで花が綻ぶ様に綺麗だった

「しかしその・・・貴女は平気なのですか? 私の事を知っても・・・」
「平気です・・・心の底から1人の人を愛する事を知っている大河内さんが羨ましいくらいです」

「羨ましい?」

何故だ? 急に寂しげな表情で私を見つめている・・・・・・

「・・・胸が奥底から震えるように人を好きになる・・・その相手が男だろうが女だろうが私はそれほど問題だなどと思いません  その様な事が無い私から見れば・・・羨ましい限りです」

「失礼ですが、何故?」

ふふっ・・・と寂しげに微笑む貴女は何故だろう、儚げで・・・

「分からないんです・・・好きとか・・・」
「恋愛が分からないという事ですか?」

「はい あまり強い感情を抱く事が無いまま武道や勉強に専念してました・・・つまらない人間なんです」
「しかし貴女は私の苦しみを短時間で見抜いた・・・これはどういう事でしょう?」

「人の感情を読み取る能力はあるんです・・・ですから犯人の好きな被害者などを読み取り演じる事ができる」

自嘲の笑みを浮かべる貴女が苦しそうに見えるのは私の気のせいでしょうか?

「自分に無いものだからこそ興味をそそり、のめり込んでしまうのです」
「しかしそのお陰で私は救われました」

本当にそう思う・・・湊を思い出せば常に悔恨、後悔、罪も付いていたが・・・無くなった訳ではないが少し落ち着いて思い出せるようになるだろう

「大河内さん」
「はい」

「また剣道も飲みにも誘って下さいね」
「はい・・・」

そうして、酔いの醒めていた私はもう少し何か飲もうと鈴城さんに言い出していた

「次は何が良いでしょう」
「僕はワインが飲みたいです」

「私はカクテルでも飲みたい・・・って先輩!」

神戸が乱入してきてしまった・・・この店はよく神戸とも来ている店だからな

「2人がこんなに仲良しさんだとは知らなかったな」

口を尖らせて拗ねる神戸に彼女はニヤリと笑う

「先輩は外に出てて居なかったでしょ? 今日は先輩の代わりに大河内さんと手合わせしたんです」
「え? そうなの!」

神戸が鈴城さんの隣に座り驚いた声を上げているが、当の彼女はニコニコと満足そうに私を見つめている

「楽しかった~~  美味しいご飯に美味しいお酒!  何より剣道仲間が出来たのが1番嬉しいです」
「それは良かった・・・  では、今度は神戸の代わりなどではなく貴女を誘いましょう」

「今度は・・・私が攻めますからね・・・ 大河内さん覚悟! してくださいね」

酔って潤んだ瞳がキラキラと店の明かりを反射して、頬が染まっている・・・・・・急にどこか危うくも妖しく変わった彼女に、私の胸がドキリと跳ねた

どうしたというんだ、私は・・・  女になど興味はない! それは変わらないのだが・・・・・・

ふっ・・・  まあいい、今後は彼女を誘うとするか・・・

「駄目ですよ! 薔子ちゃんを誘うときは僕も一緒が条件です!」
「何だ神戸、お前の許可がいるのか?  彼女はもうお前のものなのか?」

「ぐっっ!  痛いところを突かないでくださいよ!  僕は夢中なのに彼女がちっともその気になってくれなくて・・・・・・  はぁ~~」
「ほぉーー お前でも落とせない女がいるんだな」

「大河内さん! 人聞きの悪いこと言わないでっ!!!」
「事実だろ?」

店員から運ばれたワインを其々のグラスに注ぐも、男2人はコソコソと話し中で・・・・・・ ニヤリと笑った薔子が何かを狙うようにタイミングを待ち

2人がワインを口に入れた瞬間、言った

「じゃーーー 今度は3人で頑張りましょう・・・  どちらが私を満足させてくれるか楽しみだ♪」

≪ ぶぅーーー ≫

色んな意味にも聞こえる言葉に神戸が盛大に噴き出し、大河内は何とか堪えたが目を白黒させていた

やはり・・・ 面白い方だ・・・ 興味深い・・・  実に、興味深い・・・

これ以降、大河内と神戸それに薔子は剣道の稽古で集まることが多くなっていったのだった。。。

***

どうしてウチの神戸さんはよく噴き出すのでしょう(笑)

ええ、私のせいなんですがね・・・ いい男がギャグっぽく崩れるのって好きなもので・・・

(o・・o)/~



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Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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