上.【黒獅子と月の物語】

やってしまいました。
スンマンが先にピダムに出会って恋人になった話です。

スンマン×ピダムですのでご注意下さい
※※※※※

最初にそいつと出会ったとき、まだ十才かそこらで……やけに小綺麗なガキでさ、俺は十七才で……いっぱしの剣客気取りだった。

師匠のムンノを訪ねてきたヨムジョンとかいう商人が、師匠と話をしてる間の暇つぶしに構ってやった

いや! 正確には構ってやろうとしたのに無視しやがったんだ!

腹が立って、そいつに木の枝を渡し俺も木刀を構える。

本気で打つつもりは無いが、軽く尻くらい打ってやるつもりだった。

「何の真似だ?」
子供のくせに鋭い眼光で見つめるソイツに………

「師匠の代わりに俺が稽古してやるよ」
「私はムンノ殿がいい」
「ムカつくな~俺はムンノの弟子なんだよ」

問答無用で木刀を打ち込むと、ふわりとかわされた。

「あれ?」
「仕方ない。……では行くぞ!!」
木の枝で打ち込んできたソイツと二回、三回と打ち合った。
だが、まだまだ子供だ俺様の敵じゃない!
ひらりと避けて、変わりに木刀で手首を打つとソイツは木の枝を落とした。

「やった~へへっ、子供は子供らしくしてろよ」
「つっ……」

「ピダム~~」
師匠の怒鳴り声で、俺は逃げ出した。

「あの馬鹿が」
「私は大丈夫です」
「では、近くの寺でしばらく剣を見ましょう」
「ありがとうございます」

「ピダム出てこい……私はこの方としばらく寺で生活する。お前も来るんだぞ」
そうしてソイツと修行するはめになった。

ソイツは半年に一度現れて、修行し帰っていった。

もう何度目かな……あれから五年は経っていた。

※※※

着いて早々、ピダムを探していたスンマンは目指す長身の影を見つけて駆け寄った。

すらりと立つその影は細身だが鋼のように鍛えた体に、日に焼けた端正な顔を持っていた。

笑う顔が大好きな兄と慕う男……

「ピダム」
「おう!スンマン」
「この前言っていた洞窟を教えてくれ」
「なんでだ?」
「そこで修行しようと思って」

半年ぶりに会うスンマンは背が高くなり、しなやかな躯と月光のように輝く美貌の主へと変化していた。

歳は十五、六のはずだが育ちすぎだ!
年頃の娘にしか見えない。

「俺も行ってやるよ」
「そうか!よかった……なら早速行こう」

昔から男の恰好はしているが、美しく育ったスンマンに近所の悪ガキや男が言い寄ることが多々あった。

寺で修行したり町に出掛けると必ず男が後をつけてくるからか、ここ二、三年くらいは山の中で修行することにしていた。

そんな悪ガキや男どもに何故か俺はムカついて、スンマンに隠れてそいつ等をぼこぼこにしていた。

「着いたら早速稽古しよう」
「ああ……」

楽しげに歩くスンマンの後からついてきたピダムが……町で見た春画を思い出していた。

あいつの身体も、あんな風に変わったのかな?

※※※

稽古したあと、洞窟の前の泉で体を拭いたピダムが出かけた。

「食べ物取ってくるから火をおこしておけよ」
「ああ、わかった」
薪を拾い、火をおこし……汗を流したくて服を脱いで泉に入った。

ピダムが戻るまで時間はあるはず……そう思ったスンマンは知らなかった。

前の日に洞窟の側に生きた鳥を隠しておいたピダムの事を……

出かけたと見せかけ、森の茂みの影からずっと見張っていたことを……

泉に入る生まれたままのスンマンの姿を見て、息を飲み込んだピダムの事を……

スンマンは知らなかった。


※※※

鶏肉を火で炙り、二人で食べた。

いつものように蓙と毛皮を敷いた寝床にピダムに体を寄せてスンマンが眠った。
兄の様に思うピダムがまさか、自分を女として見ていたとは思ってもいなかった。

夜……すやすや眠るスンマンの服の紐を解き、前をはだけて白い肌を見ているピダムがいた。

「きれいだ……」

長くすんなりとした首から肩の丸みに続く線も、鍛えているからか普通の娘より締まっている腕も、サラシで巻いてあるが其処だけは柔らかそうな胸も……

「綺麗だ……」

町で妓房に入ったものの……妓女の荒れた肌や、きつい香の匂いがどうにも嫌で逃げ出したピダムだが……

スンマンの肌の匂いが好きだった。

稽古をして汗が滴ると漂ってくる匂いが好きだ。

首筋に鼻を寄せてスンマンの匂いを嗅ぐと、いつもの淡い花の香りがした。

すべすべな……焚火の灯りに、ほんわりと反射する白い肌が見飽きない。

「さむ……」
首から衿を大きく開かれて風が入るのだろう、スンマンの肌が粟立っていた。

そぉ~っと服を元に戻すと毛皮を掛けてやる。
「う…ん…」
もぞもぞと動いたスンマンがピダムにぴったりと寄り添う。

先程のスンマンの肌の艶やかさにピダムは躯が火照り暑くなっていた。
その熱さがいいのか、スンマンが寄り添う……

「こいつが女……」
スンマン自身が稽古を始めて、しばらくしてからピダムに伝えてきた。

「私は女だ」
「嘘だぁ~…確かに小綺麗なガキだけど………ほんとに?」
「ふふ……本当だ」
「何でそんな事俺に言うんだ?……稽古を手加減してくれとか」
「そうではない……ただ、やはり力では男には敵わないから不都合がないよう伝えただけだ」
「わかったよ」

そんなやりとりだけで、いつも男の服を着て…男以上に稽古熱心で…既に腕前もピダムに迫る勢いのスンマンが………

初めて女だと意識した。

「……ピダム?」
「あっ!わりぃ、起こしたか?」
「そんなことないよ……ふふ……」
「何が可笑しい?」
「ピダムの匂い……」
「匂うか?」
スンマンがそろそろ来る頃だと、この前服は洗ったばかりだが……
くんくんと自分の腕を嗅いでみる。
「落ち着くんだ……新羅に帰ってきたって思える」
「スンマン……」
「ふふ……大好きな匂い……」
くぅーくぅーと寝息をたて始めたスンマンに……薄暗がりの洞窟の中、瞠目し赤くなったピダムがいた。

思えば……師匠との冷戦とも言える関係から不貞腐れ、世を舐めきっていた自分に真正面から対峙したのはスンマンだけだった。

こうして二人で稽古をして寄り添って眠るのも、子供のころ師匠と旅をしていた時以来だ……


あの事件以来、師匠から拒まれた自分……

十才のスンマンが忙しい師匠から俺に教われと言われ、きちんと礼をもって真っ直ぐに見つめた……あの日。

初めて二人で寄り添って眠った……あの日。

俺はスンマンに教えるためにも真面目に師匠に稽古をつけてもらっていた。
そんな俺の変化に師匠が一番喜んでいた。

スンマンにいつまでも強い俺を見せたいために……スンマンの為に……

……なんだ、俺はスンマンが好きなのか……

焚火の灯りが小さくなった。

※※※

「う……ん…」
「やめ……なぜ?……」
「……私が…そこまで…」
「おい、スンマン!」
うわ言のように何か言っているスンマンを起こそうと体を揺する。

「あ゛あ゛ーー」
体を弓なりに反らして震えたスンマンが……目を開けた。

見開いた瞳いっぱいに涙が溜まり、溢れて流れた。
「はぁ~…はぁ~…」
「どうした…スンマン」
「な…なんでもない」

寝床から出て外に行ったスンマンを、俺は追いかけた。

泉の畔に座っているスンマンが、自分の体に腕を回し抱き締めていた。

そっと……そのまま後ろから抱きしめた。
一瞬びくっと震えたが大人しくされるがままになっている。

「何があった……」
「子供の頃の夢を見た」
「夢?」
「ふふ……侍女に毒を盛られたときの夢を……」
「毒を?……そいつ斬ってやる」
瞬時に物騒な眼差しになるピダムにスンマンが微笑んだ。
「私が斬りすてた」
「さすがスンマンだ」さすが俺のスンマン……

「侍女は父上の崇拝者でな……父が私に煩わされているから毒を盛ったのだと……」
「父……」
父親が娘を?
「私は父にも母にも忌み嫌われ……拒まれた……」
「まさか親が?」
「ふふ……」
微笑む顔に涙が流れた。

腕を解いてこちらを向かせたら、手で顔を覆ったスンマン……

「見ないでくれ……泣き顔など……見ないで……」
そっと両手で顔を覆った手を外した。


長い睫毛を伏せ、瞬きする度に流れる涙が月光に反射する……

白い美貌が堪えきれない哀しみに揺れていた。

「俺は親に捨てられ師匠に拾われたんだ」
「そうだったな……」
「俺達……似てるよな」
「親に捨てられた子供と、殺されそうになるほど厭われた子供と……似てるな」
スンマンが笑おうとして……泣き顔になった。

「ピダム……」
しなやかな躯が俺の腕の中に転がり込んだ。

俺の体に腕を回し泣きじゃくる……
「ここは風がある、洞窟に戻ろう」
首を振り余計に力を入れて縋りついてくるスンマンが………愛しい。

腕に力を込め抱きしめた。
抱き締めて判った、女性らしい細い腰と体の曲線………紛れもなく女だ

泣いてるスンマンの顎を掴み、顔を仰向かせ………口付けた。
「んっ……」
柔らかな唇と触れあって……もっと欲しくなる。

服の紐を解き、隙間から胸を触る。

「あっ!ピダム?」
驚くスンマンの唇を外して抱き上げて洞窟の寝床まで運んだ。
寝かせると俺も横に滑り込む。
「スンマン……」
「ピダム?」
「お前が好きだ」
「え?」
「俺のものになって」
「ピダム……」
服を脱がせようとする俺と、脱がないスンマンの攻防が続く。

「待て……んんっ……」
口付けて開いた口の隙間から舌を入れた。
スンマンの舌に絡ませ吸う……頭の芯が甘く痺れる……

舌を噛まれて拒まれるかと思ったが、おずおずと応えはじめるスンマンに……夢中になった。

「んっ!…」
吐息もつかせず絡み合い、舐めあい、吸い合う口付けに…いつしかスンマンも夢中になっていて。

二人ただ夢中に……

「ピダム……」
濡れた赤い唇が俺の名を呼ぶ……
身震いするほど、ぞくり…とした。
「スンマン……」
首筋に顔を埋めて肌に口付けた。

そのまま衿を広げれば白い肌があった。
舐めて吸って……強く吸ったら赤い痣が浮かんだ。

何だか俺の印みたいで嬉しくて、また口付けた。

「あ……」
鎖骨に口付けるとスンマンが小さく声を出す。

「ま…待て、ピダム」
「ん?…なに」
「寒いから……火をもっと焚こう」
「寒いか?」
「私がするから」

するり…と寝床から出ようとするスンマンを抱き締めて寝かせる。
「逃げるつもりか?」
「…そうではない」
「俺がするから其処に居て」
軽やかな足取りで枝を取りに行き、あっという間に戻ってきたピダムがこれでもかと薪をくべた。

洞窟の中が明るくなった。

「さ、スンマン!」
「聞きたいのだがな」
「ん?」
「今から私をピダムのものに……」
「うん!!しよう」
「……その後って考えてるのか?」
「え?」
「私が何を成さねばならないか、知っているか?」
ふるふると頭を振るピダムにスンマンが微笑んだ。
「ピダムらしい……」

「だが私を手に入れたければ、ちゃんと考えてくれないか?」
「考えてるさ!」
「どうする?」
悪戯っ子のように目を輝かせるスンマンを見て、面白がってるのが分かる。

「お前が此処を発つとき一緒に行く!そしてお前の剣になる」
「ムンノ殿はどうする?」
「師匠か……」
「……ただ単に女が抱きたいのか?」
「違う!!スンマンがいいんだ」
「私が新羅に居る間だけの関係か?」
「そんなの嫌だ……ずっと一緒にいたい」
ピダムがスンマンに覆い被さっていく。

貪るように口付けてから唇を離さず顎や喉を辿る。
滑らかな肌が気持いい……

「ピダム……私の気持はいいのか?」
動きが止まったピダムの瞳が潤んでいる。
「俺のこと嫌いか?嫌だった?」
じっと見ているピダムの瞳が潤んで揺れている。

微笑んだスンマンの手がピダムの頬を撫でている。

焚火が明々と燃えていた……

※※※※※

どうしても書きたくて書いちゃいました。

何か私の後ろでポジョンが泣いてますが、まだ話は続きます。
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コメント

まりん様へ

まりん様こんばんは~
そして、はじめまして~

スンマンはドラマには登場しないのですが、トンマンの後に女王になった最後の聖骨の公主様です。

殆どオリジナルキャラと言っていいほどなので、ピダムと書いてしまいました。

よかったら続きも見てください

コメントありがとうございますm(_ _)m

すっごく嬉しいです

りば様へ

あはっ! やってしまいました。

りば様、コメントありがとうございますm(_ _)m
そして夜中に、こんばんは(笑)

この話は、まるっきり別物として楽しんで頂ければ嬉しいッス!(^_^)v

私はどうもピダムに思い入れがありすぎて……色々な設定でピダムに別の人生を歩いてみてほしいと……

でもですね、トンマンとピダムじゃなきゃダメってのもあるんですよね……

これは殆ど《スンマン&ピダムへの衝動》で書いちゃいました。

そしてポジョンには【月の隠れ家】の続きでポジョンっぷりを発揮してもらいます(笑)

それこそスンマン唯一無二の至上主義のポジョンを……

管理人のみ閲覧できます

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やってしまっていらっしゃますね~v

すーさん様今晩は。私の目には、ポジョンが泣いているのと、トンマンが「そうか、別に私じゃなくてもいいのか、そうかそうか・・・よく分かった」て無表情になりながら腹の中怒りで真っ黒になってるのが見えるんですがー。(笑)

このSSのピダムって、ちょうど性の目覚めの時期とスンマンのお年頃が重なって、そういう事になっちゃってるようで、ピダムらしく動物的というか即物的ですねー。(勿論スンマンがピダムに人間の女性としてきちんと認識され、惹きつけてるレベルに達している存在だという事が前提だとは思いますが。)

なので大元神統の血筋としてあれやこれやを知り尽くしてる、大人の男であるポジョンが、それこそスンマンの足元に身を投げ出すように愛を捧げるのとでは、ワケが違うと思います。スンマン様唯一無二至上主義の度合いは、ポジョンの足元にも及ばないと思いますので、ピダムはもうポジョンに闇討ちされちゃっていいと思いますww
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プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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