④闇色の月【騎馬隊編】

【密会】①のあと、ポジョンを見送った後のスンマンです。
※※※※※

身体中に痣が散っている……
ポジョンが付けた赤い痣が……
「ふふ……私のものだと印を残して行きおった」

風呂場へ行き、水をかぶり頭を戻す。

着替えた後、寝台に残る情交の跡を消しておく。

そして茶を煎れ香りを楽しんでいると、昨日家に帰したタンシムが戻ってきた。

「おはようございます、スンマン様」
「ああ……おはよう」
「今朝は何を食べられますか?」
「そうだな……タンシムの作る物なら何でもよい」
可愛らしいタンシムの言葉に微笑んで答えた。

「そうだ、昨夜は酒が過ぎたから軽いものがいいな」
「わかりました」

一礼してぱたぱたと奥に行ったタンシムを見送り、今後の予定を紙に書き出す。

「ふふ……今日は騎馬隊の面子は使い物にならないだろうがな……」

書き出した紙を見て考えに沈んでいく。

「ん~馬が足りぬか?」
「良い馬じゃなくても集めちまえば?」
音もなく現れたピダムが紙を覗いている。
「ふふ……来たか」
「良い馬は、そりゃ走るけど練習用には勿体無いぞ」
「それも考えたがな……今の騎馬隊の連中は馬の実力に足元にも及ばないだろ?」
「ん~馬に馬鹿にされてる」
「だがな、普通の馬ならそこそこ形になる実力はついている……朗徒だからな」
「そうだな」
「甘えがでるのだ」
「甘え?」
「ああ……鉄は熱い内に叩かなければ物にはならぬ」
「?」
「未熟で学ぼうとする意欲のあるうちに、最高の水準を叩き込む」

ニヤリと笑うスンマン。
「するとな……不思議なことに、最初の水準を自身の秤として覚えるのだ」
「あ!ってことは」
「知らずに高い技術を覚え、維持して、下の者に伝えていく……それが普通だと思って」
「そして新羅の騎馬隊が最高になる……」
「そう言うことだ」
「はっ!はぁ~…お前に学ぶことは沢山ありそうだな」
「ふふ……ついてこいよ」


タンシムが朝食を持ってきたので、二人は食べ始めた。

「タンシムうまいよ」
ピダムが親指を立てて旨そうに食べている。
「ピダムの分もありがとう、タンシム」
「いえ、スンマン様のついでですから」
「ふふ……」


食事の終わった二人が騎馬隊の執務室に着いたとき、すでに中にはユシンとポジョンがいた。

スンマンの肩を組んだピダムと部屋に入ると、僅かにポジョンの顔色が変わった。

「さ、これからの訓練の事を考えた。見て意見がほしい」
ポジョンには構わずに話し出すスンマン。

「馬が足りないような」
ユシンが見ながら呟いた。

「一人一頭ではなく、二人で一頭とします」
「なら……数はあいますが練習にはどうでしょう」
「騎馬隊は馬の世話も含めます、一人一頭だと世話の時間も勿体無いですから交代で訓練も世話もできるでしょう」

「馬は引き続き集めるのですか?」
ポジョンも真剣に紙を見て意見がでてきた。
「貴族達の所有する馬で良いのが居れば献上してもらいます」
「貴族達が言うことを聞くでしょうか?」

良い馬というのは其だけで一財産だ、利権ばかり追う貴族達が、王命だといえ言うことを聞くはずがない。


ニヤリと笑うスンマンが自分を指差した。
「ふふ……私を餌に使います」
「餌?」ピダムが問い返す。
「私が直接、馬を献上する貴族の屋敷に出向き、検分するとふれをだせば……」

「あ!……聖骨の公主様と話す機会を持てる」
ピダムが口笛を吹いた。
「自分まで使うのか?」
「ふふ……利用価値があるものは残さず使うさ。……昨日の宴に男装で行ったのも私を認識させるためだ」


「貴女は何という公主様だ」ユシンが呻くように感嘆した。
「王命として今日、貴族達に伝達します。 なので、ユシン殿」
「はい、スンマン様」
「しばらく私は訓練に参加できません。 ピダムに訓練の指揮をさせて下さい」
「はい、わかりました」
「昨日の貴族達の様子なら……私を息子に射止めるため我先に申し出てくるでしょうからね……ふふ」

「お一人で大丈夫ですか?」ポジョンが心配そうに尋ねた。

「ユシン殿、護衛も兼ねてポジョン殿をお借りしたいのだが……」
「分かりました」
「そしてポジョン殿、貴方の母御のミシル宮主にお会いしたい……案内して下さい」
「はい、スンマン様」
二人が執務室を出ていった。

「何という豪胆な方だ」
ユシンが言うとピダムも頷いていた。

※※※

二人はミシル宮に向かって歩いていた。
騎馬隊の執務室は、王宮の外れに建ててあった宮を改装して使っていた。

厩舎には近いが、王殿やトンマン公主の宮やミシル宮には遠かった。

「スンマン様…母に何用ですか?」
スンマンが尋ねたポジョンの腕を掴み、近くの建物の使われてなさそうな部屋に入った。

壁にポジョンを立たせ肩を掴み………いきなり口付けた。

「スンマン様、どうなさいました」
「ピダムが肩を組んだくらいで顔色を変えるな、ポジョン」
「申し訳ありません」
「ピダムは我が友だ……妬くな」
「はい、スンマン様」
「私の男はお前だけだ……案ずるな」
「スンマン様……」
再び深く口付けた二人は、しばらく動かなかった。


部屋を出てミシル宮に着いた二人は、ポジョンが一緒なので中には入れた。

侍女に取り次ぎを頼むと待つほども無く、案内された。


「ほほほ……スンマン公主様には、今日は何用でしょう」
「今日は騎馬隊の事できました」

そこでスンマンが、貴族達の所有する良馬を献上してもらうためミシルの名前を使いたいと話した。

「私の名を?」
「はい、いかがでしょう」
「面白い方です。貴女は……御自身を餌に望む物を釣り上げようとしている」
「ふふ……私は私の価値を知っているだけ」
「聖骨の公主様……」
「はい、そうです」
にっこりと微笑むスンマンにミシルが頷いた。

「宜しいです、私からも働きかけましょう」
「ありがとう、ミシル宮主」
「新羅の騎馬隊に私も期待してますの」
「ふふ……」
「ほほっ……」
笑いあう二人は、どこか似ていた。

「そうそう…ポジョンはお役にたってますか?」
「ええ、よく騎馬隊の連中の世話もしてくれます」
「それは良かった」
「では、これにてごめん」
「スンマン公主様……」
「はい?」
「一つ菓子でも食べませんか?」
「ミシル宮主?……」
「これ、菓子と茶器を持て」


しばらくして……色とりどりの菓子と茶器を、侍女に運ばせたミシル宮主。

「私が」
茶器を受け取り、優雅な仕草で茶を煎れるスンマンを……じっと見ている。

「おいしい……スンマン様は何でもお上手なのですね」
「茶は好きなのです……だから煎れますが、それ以外はしません」
菓子を一つ摘まんだスンマンが、何の躊躇いもなしに食べた。

「ん!……美味い」
「ほほっ……よかった」
「これは何処で?」
「倭国の干し菓子です。作り方を知り、試しに作らせてみたのです」
「甘くて疲れた時などに良いですね」

「貴女は……この国を支配したいとは思わないのですか?」
「思いません」
にべもなく即答したスンマンに宮主が笑う。
「なぜでしょうか?…失礼ながら資質も実力もおありなのに」
「望みません」
にっこりと微笑むスンマンが、また菓子を口に入れた。

「私は……この新羅の礎になれればそれでいい」
「礎に?」
「私はどうも、自分が長生きする気が無くて……姉上の為に、新羅の為になるのならいつでも命を捧げる覚悟です」

「眩い方だ…幼い頃より変わらない光を纏うておられる」
「ふふ……ミシル宮主、それは違う」
「はい?」

スンマンが、にやりと笑って菓子を一つ口に放り込んだ。
「私が纏うているのは………闇だ」
「闇?」
「ええ……」
「それならば私も纏うておりますね」
「ふふ……私とミシル宮主は似ているのかもな」

すっくと立ったスンマンが一礼して出ていった。

「ポジョン」
「はい、母上」
「この菓子を持っていきなさい……スンマン様が気にいられた」
「これをですか?」
「心配せずとも毒など入っておらぬ」
「はい、母上」

紙に菓子を包んで懐に入れたポジョンがスンマンを追いかけた。

「全く……息子まで毒入りかと疑う私の菓子を、何の躊躇いもなく食べる公主……」

ミシルが菓子を薦めると、ソルォンでさえ躊躇うので出さなくなったミシルだった。

「ほほっ……豪胆な公主だ、ますます欲しくなった」

ミシルが機嫌良く紙に書き、それを弟のミセンに渡したのはスンマンが宮を出て……そう時は経っていなかった。

「姉上?なんでしょうか」
「ミセン殿、これを貴族達に伝達して下さい」

ふむふむ……と読んでいくミセンがミシルを見た。

「で?姉上……これを貴族達に伝えて、我々の得とは何ですか?」
「ミセン殿、菓子を如何かな?」

目の前に並ぶ珍しい菓子を薦めるが……ミセンは笑うばかりだった。

「はぁ~はっはっはっ!姉上もお人が悪い~~……お!そうだ!」
一人で騒ぐ弟をミシルが見やる。
「これを貴族達に伝えねば!……では姉上、ごきげんよう」
そそくさと逃げていった。
「全く……」
頭をふり、スンマンを思うミシル……

「ほほっ……珍しい菓子をまたスンマン様に薦めてみようか」

※※※

「スンマン様!」
ポジョンが走って追いついた。

「母から菓子を預かっています」
懐から包みを出すポジョンの腕を掴み、建物の陰に隠れた。

「スンマン様?」
「口の中が甘過ぎてな……」
重なる唇が離れると……
「本当に甘いですね……」
「だろう?」
「スンマン様は甘いものは?」
「好きだが……今は此方が好物だな……」
ポジョンを引き寄せ口付けて……深く舌を絡ませ、激しく求めるスンマンにポジョンは幸せを感じた。

「スンマン様…」
「今は…ここまでだな」
「分かっております」
「ポジョン殿は執務室に戻ってくれ、私は陛下にお目通りする」
「はい、スンマン様」
「ふふ……菓子を貰えるか?」
慌ててポジョンが菓子を渡すと、包んである紙を広げ一つ口に放り込んだスンマンだった。

そのまま歩き出したスンマンの背中を見送ったあと、執務室に戻ったポジョンだった。

※※※

「陛下には快諾して頂いたし、さっそく布れも出してもらった……」

スンマンの足はトンマンの宮へと向かっていた。

「姉上~居られますか?」
「おお、スンマンか」
部屋に入ると、トンマンの他にピダムとユシン、アルチョンも居た。

「早かったなスンマン」
ピダムが席を立とうとするのを肩を押さえ座らせた。

「姉上……お茶でも飲みませんか?」
「そうだな」
奥からチョンソが茶器を運んできた。

皆に茶を煎れたあと、椅子を持ってきて座ったスンマンが懐から菓子を取り出した。

「これは……珍しい菓子だな」
物珍しげに見つめるトンマンに、微笑みながらスンマンが……

「倭国の菓子を作ったそうです。頂いた物です」
「誰から?」
「ミシル宮主から」
ピダムが派手に仰け反り、ユシンは固まり、アルチョンは目を開いた。

一つ摘まんだスンマンが口に放り込んだ。
「甘い……」

「スンマン殿はこれに毒があるとは思われないのですか?」
「ふふ……思いません」
「大丈夫かよ~本当に……」
「ピダム…食べてみろ美味いぞ」

誰も手を出さない……
「くっくっくっ……」

すっと手が伸びた。
トンマンが一つ摘まんで口に放り込んだ。

「ん…甘い……」
「でしょう?」
「茶を飲んで丁度よいな」
にやりと笑いながらスンマンが……
「後は、口直しをする事ですね……」
「口直しを?」
「ふふ……さて、私は執務室に戻ります。ピダム、私の分も報告しておいてくれよ」

トンマン以外、手を出さない菓子を残してスンマンが去った。

「……お前、食べろよ」
「お主こそ食べてみるのだ」
「……私は、いい」
男三人が譲り合うのを見て、トンマンが溜め息をついた。

※※※

王命が貴族達に伝達された日、すぐにも献上すると答えた貴族が後をたたなかった。

もちろんスンマンの思惑通りに………

※※※※※
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Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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