②【ミセンの楽しみ……人には迷惑】

スンマン×ポジョンが嫌な方や、善徳女王に興味の無い方はパスして下さいね。
見れなくなったら削除します。

※※※※※

「まったく!!……あの妓女はどこに居るのだ」

また空振りに終わって店を後にしたミセンは、ヨムジョンの賭博場へと足を向けた。

あれから暇さえあれば店を訪ね、【麗しの調べの妓女】を探しているミセンだったが……皆目検討もつかなかった。

女将に金を握らせ、少しづつ口を開かせた事を整理すると……

妓女は店の女ではなく服も部屋も自分で借りた。
ポジョンが店に入ったとき、気に入ったらしい。
女将も素性は全く知らない。


「う~む、もしや人妻が密かに部屋を借り、気に入った男と遊んだ……という事かもしれぬな……」
見つける事は難しいだろう……とは思うものの、色事に諦めるという文字はミセンには皆無だった。

女将には、たんまりと金を掴ませ再び女が現れたら連絡するようにしてある。

「はぁ~……切ないの……」

※※※

「ほぉ~……ミセン公がな。くっくっくっ……」
「また笑われて……夜な夜な店に女を探しに行くともちきりです」

騎馬隊の執務室に二人で居たスンマンとポジョンが、ミセンの噂をしていた。

「それにしても……」
ふふ……と微笑むスンマンの瞳が、悪戯っ子のように煌めいてポジョンを捕らえた。

「自分では気がつかぬが、私の声はそんなによいか?」

「ごほっ……げほっ」
ポジョンがむせび、涙ぐむのを面白そうに見ながら背を叩くスンマン。
「ん?どうなのだ………私の声はお前しか聞いておらぬからな」
「何を言わせたいのですか?」
ようやく落ち着いたポジョンが、首から顔を赤くさせつつスンマンを見る。

「お前の本音だ」
「?」
「お前はミシル宮主の息子で……色供の一族の男だ」
「はい、そうですが」
「女を知っている……幾人もな」
「………はい」
「私は……口付け以外はお前しか知らぬ………お前が私で満足しておるのか解らぬからな……」

ポジョンの顔から笑顔が消えた。
「口付けは……誰となさいました?」
「ん?……」
「誰となさったのですか!」

「ふふ……実はな、酒が過ぎると口付けして廻る癖があってな……ふふ……」
「誰としたかも憶えてないのですか?」ポジョンは驚きで顔が青白んだ。

蒼白な顔のまま立ち上がりスンマンをきつく抱きしめ、口付ける。

「んっ!」
常になく荒々しく乱暴な口付けに息もできず……深く、重なる口付けに身動きもできない……

唇を離したポジョンが、スンマンを抱く腕に力を込めた。

「貴女の声を聴いた叔父さえ許せないのに……口付けなど!……一人、一人、消して廻りたい」
「……心配するな大抵は侍女だ」
「侍女?」
「酔うと人恋しくなるのか、侍女達に寄っていくらしい……安心したか?」
ほっとしたのかポジョンの腕が弛んだ、その隙にするりと抜け出たスンマン。

「執務室で何をする」
「申し訳ありません……つい」
「私の声か、ふふ……」スンマンの瞳が煌めき始めた。

また何か企んでおられるな……困った方だ。

苦笑しながらも愛しげに見詰めるポジョンだった。

※※※

その日の夕刻、ミセンに待望の報せが届いた。

「なに! とうとう現れたか!」
但し、この前のお連れ様もご一緒に……との伝言にミセンは考えた。

「女の目的はポジョンなのだろうが……またポジョンがよろしくして、わしは声だけなど冗談じゃないぞ!」

「ふむ、お連れ様とは言われたが、ポジョンとは言われなかったな……」

「………ハジョンだけ連れていくか」

「さ、家に戻り洒落た格好をしなければな……女が好みそうな……うひゃひゃひゃひゃ~」

「また一人で笑われて……どうしました、叔父上」
「おお、ハジョン!ちょうどよかった」
「はい?」
「この前の店に行かないか?ハジョン」
「叔父上の奢りですかぁ~?」
「奢ってやろう、だから、なっ!行こうではないか」

「はい、行きます」
「そうかそうか」
「ポジョンはどうしますか?」
「あいつは連れていかん!……では、今すぐ家に戻り着替えなさい」
「では、叔父上!きっとですよ」

わたわたとミセンが出ていった後、ポジョンが部屋に入ってきた。

にやにやと笑って自分を見るハジョンが気になったが、構わず行こうとしたポジョンを呼び止める。
「お前は可哀想だな~……」
「何がですか?ハジョン兄上」
「私は今夜、また叔父上の奢りであの店に行けるが……お前は誘うなと言われたぞ」

ぴたりとポジョンの動きが止まる。

「あの店に?……しかし叔父上はこの頃、頻繁に行ってるでしょう」
「今日は違うぞ、店に上がるつもりなのだ。着替えに家に戻られたからな」

洒落者の叔父のこと、例の妓女と逢えるのならまず服を着替えるか……

……スンマン様は何をされようとしているのだ。

ポジョンの顔が青ざめ、すぐに部屋を出ていった。

「ふん!ポジョンの奴、よっぽど悔しかったのか顔色が変わっていたぞ。うひひひっ」

※※※

「女将……手筈通りに致せよ」
「はい、お任せを」
「私からも、あの御仁からも、金をたっぷり取っただろ」
「へっ?……ばれてました?」
「それはいいから、きっちりと……な」
「分かっております」
「ふふ……では、私も準備するか」

スンマンは部屋に入り、服を妓女の服に変え念入りに化粧を始めた。

目の縁を紅く染め、目の上を細い筆で描いていく。
黒い線できわたたせた眼が妖しく光る。

そして色とりどりの花弁を眉を隠すように貼り、目の回りにも貼っていく。

ちょうど仮面を被るように、顔の上半分が花びらで埋もれていった。

不思議な事に、眉も花弁に埋もれ瞳だけ出した顔は妖しくて……スンマンとは解らなくなった。

「あとは……香りだな」

香炉に持ってきた香木を一欠片くべた。
煙りが立ち昇り、部屋中に香りが回る。
「ふふ……さて、どうなるかな?」

いきなり扉が開き、ポジョンが入ってきた。

「…………スンマン様?」
「ほほほ……主さんはどなたですか?」
高く掠れた女の声が、常のスンマンとは違っていてポジョンは部屋を間違えたと思った。

「し……失礼しました」
「主さん、遊んで行かれませんか?」
「いえ、人を捜しておりますので、ごめん」
「つれないことを言われる……」

仮面の妓女がポジョンの腕を押さえた。
その手をじっと見たポジョンが確信した。

「スンマン様ですね」
「ふふ……どうして分かった?」

そっと手を握りしめたポジョンが、愛しげにその手に唇をつけた。

「貴女の手だ……間違える筈がない」
「お前には敵わんな……」

「その花びらは……どうしたのですか?」
「これなら私とは解らないだろう?……お前以外は」
「それで叔父に会ってどうされるのですか?」

「この部屋の奥には、通路に抜ける扉があるのだ」
「それで?」
「ミセン公を騙して風呂にでも入れた隙に妓女と擦り変わる」
「叔父はそれほど甘くはないです……女に関しては」
「無理か?」
「抱けば分かる……貴女と声が違うのに気がつきます」
「似たような物じゃないのか?」
「違います! 貴女の声も香りも他に一つとして同じ物はないのです」
「妓女だぞ? 男を悦ばす事には私などより、よっぽど長けているし巧いだろう」
「私もかつて母から、色供の修行も兼ねて妓房に通うよう命をもらいました。……幾人も女を抱いた」
「………」
「その私が言うのです……貴女は違う、何もかもが他に無いのです」
「お前にとってはどうだ?……私はいいか?」
「いいも何も初めて貴女に触れた、あの夜から。………私はもう貴女の虜です……もう離れられない」
「私がいいか?」
「愛しています……私は貴女のものだ」

にっこりと、満足気に笑うスンマンがポジョンに抱きついた。

※※※

「んっ……ふっ……」
寝台に座ったポジョンの膝に座り、抱きついているスンマンが切なげに呻き首にかじりつく。

ポジョンの手が服の隙間から入り込み、滑らかな肌を楽しんでいた。

「………んっ……」
「スンマン様……」
ポジョンの手の感触に、声を上げないようスンマンは己の手の甲を強く噛んでいた。

びくびくと躯が跳ねたスンマンを、ポジョンが見やると眼に涙が浮かんでいる。

「苦しめてしまいましたか?」
花弁に囲まれた涙を指で拭う。

左手を見ると、甲に噛み痕が赤く付いていた。

「ミセン公が……そろそろ来る…だから……我慢した……」
「大丈夫ですか?」
「……屋敷に行きたい……」
潤んだ瞳で見詰めるスンマンにポジョンも頷いた。

「私もです……誰にも邪魔されずに貴女と過ごしたい」ポジョンの目も熱くスンマンを捉える。

「ポジョン、私の服に着替えなさい」
「はい、スンマン様」

ポジョンが普段、決して着ないような色の貴族の服を着た。

「スンマン様と違って私には似合いませんね」
「頭の結びも取れ……」
言われるがまま紐を解き、髪がざんばらになった。

「お前の服をこの袋に入れて馬に乗せておくんだ。……馬は通路の出口に繋いである」

「馬?」
「奥の扉から出てまた戻れ……ミセン公の様子も見てきてほしい」
「はい、スンマン様」

ポジョンが部屋を出て行った。

※※※

「女将~! 本当に現れたのか?」
「はい。確かに先日の女人です」
「ど……どこにいる? 案内せい」
「それが……」

女将の反応の悪さに嫌な予感がするミセンだった。

「叔父上~!私はどうすれば良いのですか?」一緒に来たハジョンだった。
「気に入った女と部屋に行ってなさい」
「うひひ~分かりました叔父上!」
妓女選びに熱心なハジョンは放っておいて、ミセンは女将に金を握らせた。

「それがですね~……この前みたいに自分で部屋を借りてくれたのは良かったんですがね~」
「えーい!じれったいな! 何があったのだ詳しく話しなさい」

「どうも、あの方の旦那が追いかけて来たみたいで……部屋の中で喧嘩してるんです」
「何だと!旦那?」
「そんな感じです」
「とにかく案内せい!」
ミセンが連れてこられたのは、この前と同じ部屋だった。

ガシャン!!
何かが割れる音が響く。
怒鳴る男の声に女の叫び声が聞こえた。

「こりゃ、いかん!……やっと見つけた女を傷つけられてはたまらん!」


部屋の扉を開けると壺が飛んできて、ミセンは慌てて引っ込んだ。

「どうすりゃいいのか……何とかあの女人を私に譲ってもらえぬかな」
「こんな時にそんな事を言い出したら、お客さん殺されますよ」
「う~む……そうだろうな」
「それにあの女人、情人がいてその男と此処に来たんですから……」
「何だと!……何と気の多い女だ」

「ぎゃーー」男の叫び声が部屋から聞こえた。

すわ、何事かと部屋の中に入ってみれば男が一人、床に転がっていた。

「あわわ、やってしまったか」
「お客さん、逃げて下さい!巻き込まれますよ」

女将がミセンに言うと慌てて部屋を出て行こうとしたが……

ミセンは【麗しの調べの妓女】を見た。
派手な貴族の服を着た男が、その女を抱き上げている。

男は後ろ向きで……肩越しに女の仮面と瞳が見え、男の首に巻き付いている白い繊手の左手の甲に赤い痣がある。

「さぁ、お客さん!早く!」

女将に急かされ出ていくミセンが聞いたのは……

「面倒はごめんだよ!あんた達もどうするのさ!」
女将の怒鳴り声だった。

「女は惜しいが揉め事は頂けん!逃げるが得だわ」
ミセンはそのまま店を出て、ヨムジョンの賭博場で遊んだ。

※※※

「全て貴女の策略ですか?」
「ふふ……お前が来て完成したがな」
「貴女という方は」
「女将、後はよろしくな……」
「心得ております」

二人が奥の扉から出ていった。

「大した御方だわ」
女将が感心していた。

※※※

「叔父上~あんまりだ!」
置いていかれたハジョンの叫びが、辺りに響いた夜……

「はて、何か忘れているような……」


夜更け、ハジョンを思い出したミセンが慌てて店に戻っていった。

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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