【ある新羅の一日……】

何だか日常のドタバタが書きたくなってしまって……

短編シリーズは【】←この様に表記したいと思います。
何気なくドタバタな一日をどうぞ

※※※※※
まだ夜の暗さに朝陽が負けているようなとき………

スンマンの宮に元気に飛び込んできた者がいた。


「おい!スンマ~ン」
「馬鹿者! 止めぬか!」
ピダムが飛び込んで行き、アルチョンが必死に止めていた。

「え~? 別にいいじゃんかよー……遠乗りに行こうって、言い出しっぺはスンマンだぞ」
「それにしてもだ! こんな朝っぱらから騒ぐ奴があるか!!」
ついつい力が入ったアルチョンが、まさか自分の声の方が五月蝿いとは思わずにいた。

「まがりなりにも公主の宮だぞ! 行くな!!」
「俺ならいいんだよ~ん」
「ピダム! 入っていくな! あんなに漢にしか見えなくても公主なんだ!」

ぴたりと立ち止まったピダムが……呆れたようにアルチョンを見た。

「アルチョン、お前の方が失礼だと思うぞ」
「ん? 何故だ?」

二人が立ち止まった部屋の中から笑い声が聞こえてきた。

「くっくっくっ……私は構わぬぞ」
スンマンの玲瓏とした声が中から聞こえてきた。

「んじゃあ~」
女官が扉を開け、二人は寝室へと歩く……

豪奢な寝台に寝転んでいるスンマンが、口に人差し指を立てていた。

寝間着の白い長衣が少しはだけている。
「スンマン?」
側に寄ったピダムが慌てて自分の口を手で塞ぐ……その様子が不思議でアルチョンも側に寄ると……

「ふふっ……静かにな」
「これは……」
「可愛い娘だろう?」

タンシムがスンマンにしがみつくように眠っていた。

……そぉ~っとタンシムの腕を身体から外し、寝台から降りたスンマンが隣の部屋を指差した。

「起こすと可哀想だからな……」

口を開けて呆けたアルチョンも我に返り、ピダムを伴って部屋に向かった。

スンマンが茶を煎れ二人の前に置き飲む頃には、アルチョンが憤慨して眉を吊り上げていた。


「公主というのに女と同衾するなど……いくら新羅でもあり得ません!」
「アルチョン、女同士だぞ?……同衾なんて」

優雅に茶を口に含んでいたスンマンが、にやりと笑ってピダムを見た。

「ピダム……女同士でも案外な……」
「へ?」きょとんと目を丸くしてスンマンを見詰めるピダム。
「ふふっ……あの娘とは添い寝しただけだ」
「不謹慎です!」アルチョンが怒っている。

それを、ちらりと見やったスンマンが愉しそうに笑う。

「何故だ?……昨晩は人肌が恋しくてな、つい……」さらり、と髪をかきあげてピダムを見るスンマンが、艶かしく……アルチョンの眼が泳いだ。

「まぁ、ちょっと寒かったもんな!」ピダムが呑気に答えた。
「だろう?」
「スンマン様! おふざけが過ぎます!」
「では聞こうか……アルチョン殿」

「はい、スンマン様」
「男なら女を抱いても不謹慎じゃない?」
「はい!」
「ならば私は?……男と寝台に居れば良かったのかな?」
「はい!」物の勢いとは恐ろしい……後にこの、つい出た言葉をアルチョンは後悔した。

「ほぉ~……」愉しそうに目を細めたスンマンに、アルチョンの《しまった!》という顔が写る。

「あ!いや、そうではなくて……スンマン殿!」
「男なら良いのか……ピダム、私と寝てみるか?」

ぶぅー………
それまで面白そうにアルチョンを見ていたピダムが、思いっきり茶を吹き出し、むせて咳き込んだ。

「げほっ……うっ…他を当たってくれ」
「そうか……ならばアルチョン殿はどうか?」
「ぶっっ!」
アルチョンも茶を吹き出していた。

「なんだ二人とも、私を抱けぬか?……不甲斐ない奴等だな~……くっくっくっ」
「早く遠乗りに行こうぜ~……馬見たい! 馬!」ピダムが焦れてスンマンを急かした。

「分かった、着替えてくる」
席を立ったスンマンが、着替えに部屋に入るとアルチョンも席を立つ。

「私は公主様の護衛に戻る! ではな!」
そそくさとピダムに言いおいて宮を出ていった。


「ふふっ……逃げたか? からかい甲斐のある御仁だな……」
着替えを終えたスンマンが、居なくなったアルチョンの事をこう言っていた。

※※※

……何なのだ! あの公主は!

どかどかと歩いてトンマンの宮に戻ったアルチョンが、先程のスンマンの愉しそうな笑顔を思い出し怒っていた。

……公主と言えば一国の姫だ! 男の成りはする! 剣を使う! 女と寝る! 破天荒にも程がある!

アルチョンは宮の中、トンマンの寝室へと続く間の前で部下のヤンギルと護衛についた。

……全くなっとらん! 公主と言えば亡きチョンミョン様のように、淑やかで賢く謹み深いのが理想なのだ!


……まぁ、公主服を着た時の美しさは、チョンミョン様にもひけを取らないが……

……だが! 普段の男装はどうだ? まるで男にしか見えん! 腕は立つ! 気迫も並ではない! 誰よりも漢らしい!


そこで……アルチョンは端と気がついた。

自分はトンマン公主が心配されているから、ピダムを止めようとしていたのだった。

「スンマンとピダムが組むとろくな事にならん……二人だけにせぬように様子を見てほしい」
出来るだけでいいから……とトンマンは付け加えていた。

トンマン自身、もう二人を止めるのを諦め始めていた……


「しまったぁ~!」
びっくりしたヤンギルを尻目に、護衛の人数を増やす手筈をしてアルチョンは宮を出ていった。

二人を追いかける為に……

※※※

「どうだ……気に入った馬はいたか?」
厩舎に並んだ馬を見比べたピダムが、やがて一頭の馬の顔を撫でた。

全身が真っ黒のその馬も、大人しくピダムに撫でられていた。

「こいつがいい」
「ふふっ……ピダムと性格が会うだろう」
鞍を載せ、ピダムが跨がっても大人しくしているその馬に、馬番が驚いていた。

「スンマン様にしかなつかねぇのに……」

厩舎に居る二十数頭の馬は、スンマンが中原から連れてきた馬達だった。

どれも立派な馬で、一頭でも売ればいくらになるか分からない名馬達だった。


「これだけ馬を集めて……何をする気だスンマン?」
「騎馬隊を作りたいのだ」
「騎馬隊?」
「ああ…… 馬を操り馬上から弓矢を射り、敵を撹乱させる機動力も欲しい」
「戦にか?」
「将来、必要になるはずだ……」
「そうだな」
「遠乗りから帰ったら姉上に聞いてもらうか……」
スンマンが自分の愛馬に鞍を載せると、馬が嬉しそうに嘶いた。

「さ、遠乗りに行こう……朝飯は市場で何か食べるか」
「おう!」


さっ…と二人が馬に乗り走り出した。

あっという間に城を出た二人の姿は、遠く小さくなりやがて消えた。


アルチョンが厩舎に着いたのは、とっくに二人が出た後だった。

※※※

「それでアルチョン殿は、残念がっておられるのですか?」
トンマンが、くすりと笑いながらアルチョンをからかう。

「残念がってなどおりません!」
への字になった口を見てトンマンが楽しそうだ。

「しかしながら、スンマン公主様には少し自重してもらった方がよろしいのでは?」ユシンが話を聴いて考えている。

「ユシン殿?」
「御自身がどれほど尊い存在なのか、分かっておられるのかと……」
「スンマンは十分に自分自身を分かっています」

「しかしながら」
「私の剣にも楯にもなると……言っていました」
「それは我等が致します!スンマン殿は聖骨ですぞ!」力が入ったアルチョンに、トンマンは静かに言った。

「スンマンは私とチュンチュに新羅を委ねたいと言い、自分は喜んで礎となると……その為に命も私に捧げると誓いました」

「何処からそれほどの覚悟がでてくるのだ!」アルチョンが驚嘆して呻いた。

「もし必要ならば誰にでも嫁ぐし、誰をも抱いてみせると……聖骨の公主としての使い道もあるからと……」

ふふっ………姉上、もしミシルの陣営を引き込むために必要ならば、〔色供〕として誰をも抱いてみせましょう……

そう言ったスンマンの清々しい笑顔を、トンマンは思い出していた。


「なんという御方だ……」ユシンが呻くように呟くと、アルチョンも頷いている。

「スンマンとピダムが戻ったら私に報せてくれ……少しはお小言も言っておかなければな!」トンマンが立ち上がり便殿へと歩いていった。
※※※

宮殿から出た二人の馬は、日が中天に昇るまで駆け続けた。

途中……市場で朝食を食べ、田畑で穀物の実りを確かめながらピダムと馬を楽しんだスンマンは、草原で寝転んで休んでいた。

馬も草を食みのんびりと立っている。

ピダムも横に寝転んだ。

「なぁ、スンマン」
「ん?」
「お前さ……何で俺に友になろうとか言ったんだ?」
「ん~……何故だろうな、私にも分からん」
「え~~」
「ふふっ……あの時かな」
「ん?」
「宮殿での最初の夜、ソクプムが姉上を侮辱したとき……」
「ああ……あれか」
「私に近付く足音が、ソクプムの言葉が聞こえて怒気を孕んで追い抜いた……そのまま殴ろうとしていたのが分かって……」

くすくすと笑い始めたスンマンに、ピダムも笑った。

「あはっ……聞こえた途端、頭に血が昇ったんだ」
「私もだ」

二人の笑い声が草原を渡っていった。

馬が何事かと主の顔を覗いている……

「あの時かな……お前に興味がでて、比才で闘って気が合うと思ったのは」
「へぇ~」
「お前といると余計な気を使わなくていい……」
「俺もだ」
「ん?」
「お前が公主様を侮辱されて怒ってたのが……嬉しかったんだ。 ユシンやアルチョンも怒るだろうが、あいつ等はそんな姿を見せないからな」
「ふふっ……」
「比才で闘って、呼吸って云うのかな……凄く合うのも楽しかった」
「そうだな」
「本当は聖骨の公主様で、雲の上の人なのにな!」
「飯も食べれば出すもんも出すが」
「おい! 女が云うなって」
「くっくっ……はっはっは~」
「ははははっ!」

穏やかな風が二人のうえを流れていった。

※※※

夕刻、もう日も暮れようとした時刻に二人が戻ってきた。

そのままトンマンの宮に現れた二人は………

「スンマン、ピダム!座りなさい」
二人が座りトンマンがお小言を言おうと口を開けると………

「姉上、今年は南の方の田畑は害虫の被害が酷いようです」
「いつもより収穫高も減ると、農民達が嘆いていました」
「なに!害虫か……」
「はい、いずれ税を免除してくれと貴族から申し入れがあるでしょう」

「分かった、対策を考えなければな」


「それと姉上……提案が」
「何だスンマン」
「騎馬隊を作りたいのです」
「騎馬隊?……今のでは駄目なのか?」
「馬上から弓を打ち、飛ぶように走る騎馬隊がいずれ戦で役に立ちます」
「一から育てるなら大変なことだな」

「最初は徐羅伐の郎徒から選び、後は地方からも集めて部隊にしたいのです」
「分かった、陛下にも話しておこう」
トンマンも頷いた。

「さて、スンマン」
「はい、姉上」
「ピダム」
「はい、公主様」


「今後は二人揃って黙って宮殿を出るな!……せめてアルチョン殿に言っておけ」

「分かりました、姉上」
「はい、公主様」
「特にスンマンは宮殿を出るときは必ず言いおくように」

「ふふっ……姉上、子供ではないのですから」
「あ? そうだな……だがな私の為にそうしてくれないか」
「姉上……」
「突然、チョンミョン姉上のように喪うのは……もう嫌なのだ」
トンマンが涙の滲んだ顔を俯いて隠した。

スンマンが前に跪ずいてトンマンの顔を見上げ、掌で頬を撫でる。

「姉上の許しがない限り死にません……私が強いのは知ってらっしゃるでしょう?」
膝に置かれたトンマンの手を、ゆっくりと両手で包み安心させた。

「もう大丈夫です」トンマンがにっこりと微笑んだ。

「公主様! スンマンの強さは俺が保証しますから」
「ピダムが言うなら安心だな」


そして、ある一日が暮れていった。


※※※※※

書いてる私が楽しんでます

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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