番外編② 《麗☆花萌ゆる皇子たち》

今回のお話は、ヘスに片想いしているウク皇子のお話です。

暗いです。




「私が、先だったのだ・・・」

ヘスが、今のヘスになり・・・ミョンの病を治すため、寝る間も惜しんで書物を読んでいたことも。

屈託なく笑うヘスが、輝いていることも・・・私が、先に気がついたのだ。


幼い頃から【 皇子 】というだけで、期待や羨望、欲望・・・己の望みを叶えるため、擦り寄る者や、蹴落そうと狙う者、思惑のある者ばかりに囲まれて育った。

そんな生活の中、ヘスは私に【 何も望まない 】娘だった。


よく笑い、よく怒り、そしてよく泣く娘だ。

・・・・・だが、それは皆 周りの者のためだった。

鬱いだ者には明るさを、虐げられた者のためには怒りを、そして悲しい者とは涙をともに流す、そんな優しい娘だ。


純粋な笑顔に、目が離せなくなった。

相手の身分にも関係なく悪いことは悪いと怒る、その真っ直ぐな心に惹かれた。

ミョンのため必死に学ぶヘスの、ひたむきさが・・・・・愛おしいと、思った。


まだヘスがソと婚姻する前のことだった。

町を歩いていると、幼い子が腹を空かせ食べ物を盗んだと、騒いでいた。
身なりの良い若者が、幼い子を棒で叩いていたのをヘスは止めに入った。

「こんな幼い子を棒で叩くだなんて、あなたは正気ですか?」
「俺の食事を中断させ、汚い手で触ったから食欲もなくなった! これはそいつの罪だ!罰を与えて何が悪い!」

「そんなに太ってるんだから、食欲がないくらいで丁度いいわよ! 背中から血を流してるわ、罰はもう十分でしょ!」
「なんだと! 失礼な女だな・・・・・だが、美しい」

その男は子供からヘスに狙いを変え、酌をしろと迫った・・・・・が、ヘスに返り討ちにあって逃げた。

ヘスが子供に訳を話させれば、父親が足を痛め仕事ができず家族皆が飢えているという。

「手当てしたいから、あなたの家に行きましょう」
「ヘス・・・」

その子の家に行けば、兄弟姉妹と動けない父や病弱な母の世話をしているようだ。


普通なら幾らかの金を渡し、それで終わりだろう・・・だがヘスは違った。

病弱な母の容態を見たヘスは、その薬の知識で薬湯を与えた。

怪我をした父には、子と一緒に特製の貼り薬で治した。

偶然にも屋敷に出入りしていた野菜売りだった父には、それ以外に屋敷の下男の仕事も兼ねさせた。

そうすれば賃金があたり、収入が安定するからな。


一時の金ではなく、将来を見据えて助けるヘスのやり方に、本心から感心したのを昨日の事のように覚えている。


あの娘は、この世のどんな女性とも違う・・・・・おそらく、前のヘスとも。。。


だが私は、今のヘスが良い。
ときに年上のように聡く、ときに幼子のように無邪気で、ときに儚く美しく、そして怒りでは鮮やかに鋭い刃のようなヘスが、良い。



ヘスを手に入れたい・・・・・たとえソを思っていようと、私の側で、私と共に生きて欲しいのだ。

「どうすれば、手に入れられる?」

分かりきった事だ。
ソの夫人となったヘスを、我が手にするには権力が要る。


そう、誰も何も、口を出せないほどの力を・・・・・・




この頃の旦那様は、よく離れで考えられているが、その様子が・・・ 今までの旦那様とはまるで別人のようだ。

理由は分かっている、私の従姉妹のヘス・・・・・あの子を、お望みなのだ。


私も、もしヘスが旦那様を好いていたら第2夫人として、迎えただろう。

だがヘスは、第4皇子様を・・・ 好いていた。


夜な夜な私のために書物を読み、学んでいるヘスを・・・・・生薬を配合させ、懸命に私の身体を考えてくれるヘスを、私は裏切れなかった。


恋をした相手と結ばれたいと、若い頃の私も無茶をしたものだ。

陛下の御子を流産させたという罪で、皇宮のある松獄(ソンアク)を追われたウク皇子様達は、私の住む田舎に来られた。

馬で町にいた私は、偶然見たウク皇子様に一目で恋をした。

豪族の父にウク皇子様の妻になりたいと言った私は、父の力で婚姻をしたわ。

政略結婚ということは重々承知よ。

・・・・・愛されてない事も、承知よ。 構わないわ! だって皇子様の分まで、私が愛せばいいだけだもの。



皇子様が望まれるのなら、第2夫人を迎えていいと、いつも思っていた。

ああ、だけど・・・・・他の人が好きなあの子を、旦那様に嫁がせる事はできなかった。

私にとっては、あの子は妹や娘同然なんだもの!


だけどそのせいで、旦那様が変わっていくのは耐えられない。。。

ああ、どうすれば良いのだろう・・・・・・


・・・・・地方に流された皇子様は、まるで羽根をもがれた鳥のようだった。

私は・・・・・・私は、もがれた羽根を取り戻し、皇子様を空高く羽ばたかせてあげたかったの。


ウク皇子様・・・・・・自由に、空を・・・ 駆けてほしいのです。






誰にも、何も、言わせない・・・・・・その様な存在とは、ただ1人だ。


・・・・・皇帝。。。


皇帝になれば、ソからヘスを奪い、私の物にできる。

では皇帝には、どうやってなるか。 良く考えるのだ。

正胤を退け皇帝の座につけば、それは逆賊だ。 ・・・・・だが逆賊を倒せば、そやつは英雄になる。


英雄になり、皇帝に・・・・・・


私はどう進めばよいか・・・・・・考えろ、考えるのだ。



ソが使臣として後晋に向かってからは、ヘスは茶美園に毎日いた。

私はなるべく茶美園に顔を出したのだが、ヘスはオ尚宮の看病で大変なようだ。

「ウク皇子様」
「ヘス・・・」

滋養によいとされる魚をオ尚宮に持ってきた私は、ヘスに渡した。

「うわー、いい魚ですね! さっそく煮付けにしてオ尚宮に食べてもらいます」
「ああ、そうしてくれ」

「ウク様、ありがとうございます!」
屈託なく笑うヘスを、久しぶりに見た・・・・・私に笑いかけるヘスを。

「ミョンも手伝いたいと話していた、体の調子も良いようだから、頼んでみてもいいのでは」
「ありがとうございます。ミョン姉様には屋敷の方でもお世話になってるのに・・・」

「ミョンも元気になり、何かしたいのだろう」
「ミョン姉様、良かった」

「ヘスのおかげだ。私からも礼を言う」
「いいえ、私など大した力もありませんから」

謙虚なところも、好ましい・・・・・

「ヘス様、陛下のお茶の用意を」
「あ、もうそんな時刻だった? 分かったわ」

女官がヘスに陛下のお茶といったが、見かけない女官だな。


「私付きの女官のスジンさんです。すみませんウク様、私もう行かなきゃ・・・ お魚ありがとうございます!」
「あまり無理はするなよ、ヘス」

「はい!」と返事をしてバタバタと行ったヘスと女官だが、女官がチラリと私を見た気がした。


あとから聞いてみれば、オ尚宮がヘスに付けた女官のようだ。

・・・・・オ尚宮の女官か、私を警戒していたようだ。


ふふっ、だが肝心のヘスは私を警戒しない。

あの屈託のない笑顔を、今も私に向けてくれる。


いつか、必ず、ヘスを手に入れよう。


その間、ソに預けているだけだ。 最後に、私の隣に有ればよいのだ。。。






短いですが、ダーク皇子に変わってしまったウク皇子のお話しでした。


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私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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