続☆プロローグ:冬企画【現代に続く新羅…スキー編】

※※※

《からん~~》

店に入ってきたスンマンは慣れた様子でコート架けに上着を引っかけカウンターに座った。

「いらっしゃい」
マスターがにこにこと笑って迎える様子は常連のようだ。

カウンターに座ったスンマンは奥のテーブル席のポジョンには気がつかない。


オフホワイトのアンゴラのセーターがふわふわと暖かそうだ……黒のスキニーパンツが長い足を引き立たせている

「うわっ綺麗な人ですね~~でも男性?女性?」
山下も目を奪われてまじまじと見ている。

「胸があるって事は女性ですね~~」

アンゴラのセーターが胸の膨らみを包んで柔らかな曲線を描いていた。


《……美しい人だ……》
ほんの数時間だが恋人になった人。

自分からあの方の手を離した私に、何も思う資格はないだろう。
だが、胸の苦しみはあの夜以来とれない……

ブー…ブー…ブー…ブー
スンマンの携帯が鳴る

「……アル、今日は会いたくないんだ」
「静かに飲みたいだけだよ……」
「……お前は友達だ……それ以上でもそれ以下でもない」
「バイ!」

マスターがグラスを差しだしたのを、くぃっと飲んだスンマン

「はぁ~……」
気だるげに髪をかきあげる仕草が艶やかな魅力を含み……店中の男達の目を惹き付ける

「どうされました」
マスターの低い声にほっとした顔をするスンマンが不思議だった。

《あの夜、キスをする恋人が出来たのではないのか?》

「友達にな……」

スンマンの声に神経を集中していた……息を止めるほどに


「フラれて隙が出来たみたいでな……悪趣味な悪戯で友達にキスされてしまった……」
「お若い……」
「マスター……だがそれから会いにくくてな……」

カウンターはスンマンだけだからかマスターも会話を楽しんでいるみたいだ

「もしお友達が本気でしたら?いかがですか……」
マスターの言葉に私も頷きそうになった……どう見てもアレは本気だろう

「ぷ~~~」
吹き出したスンマンが拳を口に当てて、くつくつと笑いだした。

「アイツは女にモテてモテて困ってるほどさ……よりによって私のような武骨で男みたいなのを相手にするわけないだろう……」

くっくっくっ……と笑い続けたスンマンが、ふとグラスを見下ろし寂しそうな笑いに変わった。

「そう……私などを好きになる男など、いやしないさ……」
「お客さん……貴女は自分の魅力を分かってないね」
マスターの言葉に顔を上げたスンマンは一層、寂しげな微笑みを深めていた

「でもマスター……生まれて初めて恋人にしたかった人に数時間でフラれた……私に魅力など無いのだよ」

「恋を忘れるには、新しい恋をするだけですよ……お客さんなら大丈夫!」

スッと出てきたカクテルを口に含み味わうスンマンを見ながら……

ポジョンは胸の締め付けられる苦しみが深まるのを感じる……心臓を針で刺されるような痛みも増えて感じていた。

「室長!!」
「あ?」
「聞いてますか?」
目の前の山下のことをすっかり忘れていた

「あっ、すまない」
「もう~~せっかく私が室長に付き合って下さいって告ったのに~~……聞いてないって信じられない」
「山下?!」
「今、彼女いないんですよね!だったら付き合って下さい」

突然の告白にポジョンが固まっていた。

それを了解ととったのか山下の笑顔が炸裂している

「室長~~……ポジョンさんって呼んでいいですか?」
「ちょ……ちょっと待て山下!!」
「もう~~ポジョンさんたら照れちゃって可愛い~~い!」

向かいあった席から隣に移動した山下がポジョンに腕を絡ませて擦り寄ってきた

「……ポジョン?」
スンマンが奥に座っているポジョンを見て、次いで山下を見て……絡まる腕に視線がいった

「マスター……また来る」
「…ありがとうございました」

グラスの底に紙幣を挟んだスンマンがコートを手に外へと出て行った。

「あ……」
ポジョンはその場で凍りつき、山下だけが楽しそうに笑っている

※※※

雪の降る町を一台のリムジンが走っていた
後部座席には楽しそうに話すトンマンとピダムが乗っていた

「ぷはぁーーー!」
「トンマン、美味しかった?」
「料理上手いんだなピダム」
「ああ、高校の時バイトしてた先で覚えたんだ」
「美味しかったぁ~~~」
無邪気に喜ぶトンマンにピダムが腕をまわし肩を抱きよせていた。

「バイトって何だ?」
「レストランで皿洗いしてたんだが料理長に気に入られてさ……料理の手ほどきしてもらえたんだ」
「へぇ~」
「今のレストラン業にも役に立ったから……感謝しなきゃな」

二人は美室財団のレストランに行き、ピダムが材料も調味料も持ち込んでご馳走したのだった。

「ご馳走さまでしたピダム」
にっこりと笑うトンマンの微笑みにピダムの眼が愛しそうに細められた

「明日は空港で待ち合わせよう」
「ああ……でも専用ジェットでって、さすが新羅家だな」
「そうか?」
「くっくっくっ……トンマンには普通だものね」

きょとん!と丸い瞳を一層大きくするトンマンの頭をピダムがくしゃっと撫でる

「トンマン……触れてもいい?」
「え゛?」
黒曜石の瞳に星を散りばめたピダムが腕に力を込めて……顔を近づけた。

途端に背筋を伸ばしカチコチに固まるトンマン……

「ぴぴぴぴぴ……」
「ひよこの真似なの?」
くすっと笑ったピダムがおでこにチュッとキスをした

「今はここで我慢するよ」
「……すまない」
「もしかして俺って嫌われてる?」
拗ねた顔と声でトンマンを真正面から見たピダムの、母譲りの色香ある視線に焦りながらもトンマンは頭を横に振っていた

「な…なれてないだけだ!ピダムの事は……」
「俺の事は?」
「嫌いじゃない」
「ふぅ~~ん……」
ピダムの眼に違う光が浮かぶ

「あっ! そうじゃなくて……すき…だと思う」
「思う?」
「まだ分からん!」

「くすくす……待ってるよ、トンマンが好きだぁーーって叫んでくれるの」
「叫ぶ!」
「うん、待ってるよ」
もう一度おでこにチュッとキスをしてトンマンを抱きしめたピダムが満足そうにしていた

「あ……スンマン」
腕の中のトンマンの呟きに車を止めさせ、一緒に外を見ると確かにスンマンがいた

「何か様子がおかしいな……」
ピダムが探るように眼を鋭く光らせた

※※※

「雪が……」
ふわふわと降りてくる雪を見上げて道の途中……スンマンは立ち止まっていた

「綺麗だな……」

掌の上で触れた傍から消えていく雪を見ながら……先程の光景を思い出す

《可愛らしい女性と腕を絡ませ……恋人なのだろうな》

再びゆっくりと見上げた夜空が……揺れている

《断ち切らなければな……だが何故こんなに気になるのだろう》

《恋人がいるんだ……あの寂しそうな笑いも、もうしないだろう》

頬に額に目に鼻に……降り続く雪が当たって気持ちいい……

「どうされました?」
ピダムが車を降りてきていた。

弾かれたように俺を見た彼女の目の端には確かに涙が光っていた。

「ポジョンが何かしましたか?」
「ふふ……私が未練がましいだけなのだ」
「それほど弟をお好きですか」
「分からない……だが、ポジョンのあの寂しそうな微笑みが頭から離れないのだ……」

一瞬にして理解できた……彼女の気持ちは本心からだと。

弟のあの何をも諦めたような顔を気にしてくれていたのだからな

今まで俺はスンマンというお嬢様が暇潰しか好奇心でポジョンを構いたいのかと……ほんの少し疑っていたのだ

「アイツは馬鹿だ!」

「くっくっくっ……兄がそんな事言っていいのかな?」
「愚か者を馬鹿と呼んで何が悪い」
ニヤリと笑うピダムにスンマンも小さく笑う

「アイツは貴女を好きなのに自分の価値観で縛られている……愚かな奴だ」
「……私にポジョンを惹き付ける魅力など無いのが悪いのだ」
ピダムが何か言おうとして躊躇っていた、そのとき

派手な車のブレーキ音とドアを閉める音のあと金髪の青年がスンマンの元に走ってきた

「僕の女神を苛めるのは誰?」
「アルバート!!」
スンマンが見るとピダムを睨み付けながらスンマンの横に並んだアルバートに肩を抱き寄せられた

「アルバート……止めろ」
スッと体を離すスンマンの腕を掴んだアルバートをピダムが掴んだ

「嫌がるのを無理強いするのがお前の流儀か?」
「何だと!」

ピダムとアルバート、二人の眼に火花が散った

「アルバート・フォレスト……その方に失礼は許さない……」
ピダムもアルバートもスンマンの声が変わり、雰囲気も変わったことを肌で感じた

二人が見やればスンマンの眼に怒りの蒼い焔が浮かび燃えている……

「その方は姉上の大事な方だ……お前でも失礼は許さない」

「OK!分かったスンマン……降参する」
両手を挙げて一歩引いたアルバートのサラサラの金髪が揺れていた。

「ピダム殿、姉上を頼みます……もう行かれよ」
「スンマン様は?」
「ふふ……私はどうとでもしますから」
「では、また」
ピダムがトンマンの待つ車に向かい走り去るのを見てからアルバートに向き直った。

「ごめん、スンマン……君が泣いてると勘違いして」
「鋭いな……いいとこいってる」
小声で呟いたスンマンが歩き出すとアルも横に並んだ

「スンマン、僕の車に乗らない?送るから」
「……」
「お腹減ってないか? 美味いレストラン見つけたんだ、行かないか?」
「……アルの奢りだな?」
「もちろん!」
「ふふ……なら行くか」
「やった!……じゃ、此処に乗って」

真っ赤なフェラーリの助手席のドアを開けたアルバートが、スンマンを座らせると嬉しくて堪らないという顔をして運転席に座った。

サラサラの金髪が嬉しそうに揺れていた。

※※※

「こっちか?」

山下には詫びて断ってからスンマンの後を追ったが……時間がかかったポジョンは探し出せないでいた。

自分を見た彼女の顔が一瞬、嬉しそうに微笑み……次いで山下を見て固まり……二人の絡み合う腕を見て目を見張っていた。

そして、コートを手に掴み店を出る前にチラリと自分を見た彼女の…………あの瞳。

寂しく、諦めたような瞳。

およそ彼女には似合わない頼りなげな瞳。

凛とした彼女や無邪気な彼女、ニヤリと笑う兄にも似た彼女、そして蒼い焔が浮かび燃えている彼女……そのどれもが力強く意思を持ち貫く強さを持っていた

だが、あの瞳は……

《傷つけてしまった……あの方は私などに本気だったのだ……》

《信じられなかった……あの方の言葉を信じられずに……傷つけてしまった》

《今更、今更だが……逢いたい》

《逢って話したい……お詫びしたい……許しを乞いたい》

走り回って探していたら息がきれ、胸が酸素を求めて膨れ上がる。

「はっ……はぁ~はぁ~はぁ~」
通りにでて立ち止まるとリムジンが横に止まった。

「ポジョン!!」
兄のピダムが降りてきて……一発殴られた。

「お前は馬鹿だ!!」
「はぁ~……あ、兄上……」
「彼女を探してるんだろ?」
こくこくと頷くポジョンに今来た方向を指し示すと走って行った。

「間に合うかな……」
《物事にはタイミングがある……最適な時や一瞬がある……お前は間に合うか?》

ピダムは車に戻り自身の愛しい人を抱きしめた。

「俺は《時》を間違えない……ずっと離さないよトンマン」
「いや、ずっとこのままは困るぞ。トイレもあるし暑苦しいし」

恋人のズレた答えが可愛くて、ピダムはきょとんとした丸い瞳のトンマンの頬に唇を落とした。



走って行くポジョンの横を真っ赤なフェラーリが通り過ぎる……

助手席に座るスンマンと一瞬、目が合うが……フェラーリはそのまま走り去っていった。

「はぁ~はぁ~はぁ~……くそっ!!」
《明日からの北海道旅行で……話はできないだろうか?》

私は明日に一筋の光を見つけていた……それが蜘蛛の糸より細くても縋り付きたかった……

※※※

さてプロローグはこれにて終了です

次からは本編です
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Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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