【 虚しい恋 】by柳川隆一

ヒロインは柳川くんの彼女ですが、あまり大事にされてません。

ですからヒロイン、愛されてる感じがなく悩んでいます。





「なあ、アイツら・・・・・部屋で何してんのかな?」
「アイツらって、咲人と檜山と柳川だろ? ほんで女2人」

「そうだよ、女だよ! キツそうな美人と、大人しそうなコだろ? 羨ましいよなぁ〜〜」
「男女5人でナニしてんだろうなぁ〜〜! おい、覗きにいくか?」

ドリームフラワーサービスの社員寮で、班長の鹿内がニヤニヤと2階を見上げている。
それに合わせて神田も見上げているが、こっちは顔が曇っていた。

「・・・・・・柳川には彼女がいるでしょうが! なんで他の女を・・・・・・」
「そうだよなぁ〜・・・・・あの子、いい子だもんな〜」


「小春ちゃんみたいな可愛い子、彼女にしといて・・・・柳川の野郎・・・・・」

そんなとき、寮の玄関から「こんばんは〜〜」という声が聞こえてきた。

「小春ちゃん?」
「なんだよ、柳川の彼女かぁ〜〜・・・・・・・俺が出る!」

巨体には似合わない俊敏さで玄関に出た鹿内が、その体に相応しい大声で柳川を呼んだのは、しばらくしてからだった。。。



今日は仕事が早く終わったので、彼氏の柳川君のところに遊びに来ました。

本当は2人が休みの日曜に会う約束になってたんだけど、2回続けて柳川君に用事があって会えなかったんだ。

だから会いたくて、前の日にクッキーたくさん焼いて持ってきたんです。

寮についてすぐ呼んでくれた柳川君は、どうしたのか中に・・・・・・彼の部屋に入れてくれなくて。


さっきから「あー・・・」とか、「うー・・・」とか、「ちょっとマズいんだけどなぁ〜〜」とか言ってて。

「柳川くん? あの・・・クッキー作ってきたの、一緒に食べよ?」
「・・・・・・・あのさ、ちょっと今日は無理なんだ、帰ってくんないかな?」

「あ、ごめんね・・・・何か用事あったんだ」
「ああ、すまねぇーな」

急に来た私が悪いんだし、帰ろうとしたときだった・・・・・後ろから女性が声をかけたのは。

「柳川っ!!! いったいいつまで待たせるのよ! 呼ばれて出てったっきり、私を待たせるなんて10年早いのよっ!」
目鼻立ちがハッキリした美人が、腕組みして立ってたの。

「柳川〜〜〜!!! 早く部屋に戻るわよ!!! ・・・・・・・なに、その子?」
「お前は口の利き方、少しは考えろよな!」

ずいっと後ろから出てきたその人は、私の前に出てジロジロと遠慮なく見てくるんだけど・・・・・・まさか。

まさか柳川くん、この人と一緒にいたいから・・・・・・私に帰ってほしかったの?

「なに、この子・・・・・まさか柳川の彼女なの? あんた彼女いたんだ〜〜!!!」
「うっせーな! 別に彼女なんかじゃねぇーよ! ほら、あれだ・・・・・俺のストーカーだわ」


・・・・・・・私って彼女じゃなかったんだ。

・・・・・・・ストーカーだったんだ。


「ストーカー!? あんたみたいなチャラ男に? 嘘でしょ?」
「ほんと、うるせーなぁーー!! いいからお前は部屋に戻ってろよ!」

「ほんでおまえさんは、とっとと帰る! 分かったな! ハウスだ、ハウス!!!」

しっしっ・・・・・・片手を犬を追い払うみたいに振った柳川くんに、私は何も言えなくて・・・・・・そのまま寮を後にしたんです。




柳川くんとの出会いは、ナンパでした。

「君、可愛いねぇ〜〜〜」
その言葉は私と一緒に歩いていた友人に向けられたもので、私じゃなかった。

友人と3人で歩いているとき声をかけられ、柳川くんと班長さん達の4人でカラオケに。

お酒なんか入って、ふわふわした気分で歌ってる柳川くんを見てたなぁ・・・・・

カッコイイなぁ〜〜って、見てたっけ。


「ね、君さ 大人しいね〜〜」
ドカッと隣に座った柳川くんに話しかけられて、ドキドキしながら何を答えたか覚えてないほど緊張したっけ。

グイッとグラスを煽る柳川くんの、綺麗な顎のラインに見惚れてた・・・・・・・気がついたらカラオケ屋さんを出て、2人でコーヒー飲んだりしてて、それで・・・・・・・それで。

「小春ちゃんって、可愛いねぇ〜〜 ねぇねぇ、俺と付き合ってみない?」
「え? わたっ、わたしっ? 私と???」

「そ、小春ちゃんと♡ どう?」
「あっ、あの・・・ふっ、ふっ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

「んじゃ、決まりねぇ〜〜〜!」

・・・・・・・柳川くんは、私のどこがよくて『付き合おう』なんて言ってくれたんだろう?


トボトボと歩いて帰る私は、今までのことを思い出していた。


アパートで一人暮らししてる私の部屋に来るようになった柳川くんは、よく私の作るご飯を喜んで食べてくれたっけ。

くす・・・・・『うまい! 小春ちゃんのご飯は、うまいねぇ〜〜』なんて口一杯にご飯を頬張って食べてくれてたなぁ・・・・・

初めてのキスは付き合って1ヶ月過ぎたころで・・・・・・・初めての彼氏だから、キスも初めてで・・・・・・そう言えば柳川くん、驚いてたっけ。

会うたびにキスをしてくれて・・・・・・・彼に抱きしめられて、キスされるの好きだったなぁ・・・・・・


付き合って3ヶ月、キス以上はしない柳川くん。

私もね、おかしいな〜〜・・・なんて思ってたんだよ? だって男の人って、その、エッチとかしたいんでしょ?
でもキス以上はしない柳川くんに、最初は慣れてない私を大事にしてくれてるんだって、思ってたんだけど、それも2ヶ月を過ぎたころから、もしかしてって思うようになったの。


もしかして、キス以上しないのは・・・・・・・私だと、【 その気 】にならないんじゃないかって。


もしかして私のアパートに来るのは、金欠の柳川くんにしてみたら・・・・・・タダでご飯を食べられるから?

それとも会うたびに・・・・・・貸して欲しいと言われるままに、お金を渡すから?


あ・・・・・・・キスも、お金を渡したあとだ・・・・・・・・そっか、そうなんだ。


私は、ただ彼にとって・・・・・・都合のいい銀行みたいなものだったんだ。


だから、“ 好き ” なんて言われなかったんだね。 ああ、分かっちゃった・・・・・・・そっか、そうなんだ・・・・・




咲人と檜山と梨央ちゃんに、口うるさい舞に俺の5人で、寮の部屋で鍋してるときだった。

下から班長の野太い声で呼ばれて行けば、あちゃーーー・・・・・・来ちゃったか。

2週続けてコイツとの約束、ドタキャンしたからなぁ〜・・・・・俺に会いたくて来ちゃったんだな。

モテる男は辛いわな!


街でナンパした女の子の1人だった小春ちゃん。

今どきの眼鏡女子の小春ちゃんは、最初っから大人しくて男慣れしてない感じでさ、なんか気になっちゃったんだよね。

ほんでカラオケ屋で話しかけて、「コーヒー飲みに行こう」って、先にお持ち帰りして2ショットに持ち込んだんだ。

俺を見て真っ赤になりながら、キラキラした潤んだ目で見てくる彼女が、可愛いなって思ったんだ。


ま、早く言えばさ・・・・・この子なら早く “ ヤレる ” って思ったんだ。

だって俺のこと熱っぽく見上げてくるし、俺のくだらない話にもニコニコ笑顔だし・・・・・・これってさぁ、俺に惚れてるってことっしょ???

だから「俺と付き合わない?」なんて軽く言えば、思う通りに頷く彼女。


それからは早々に小春ちゃんのアパートに上がり込んだ俺は、毎週休みの度に彼女の部屋に転がり込んだ。

男と付き合うのが俺が初めてな小春ちゃんは、そりゃもう甲斐甲斐しくてさ〜〜!


飯は旨いし、寮のムサ苦しい部屋と違って良い匂いするし、キレイで清潔だし、居心地良いんだわ。

俺はゴロンと寝転がってスマホで株見たり自由にしてんだけど、彼女は大人しい子だからさ、そのままそっとしといてくれるんだ。

喉が渇いたなぁ〜〜って思えば、お茶やコーヒーなんか出てくるし、なんか甘いもん食いたいなぁ〜〜って思えば、手作りのクッキーやケーキなんか出てくるしさ。

ほんと、居心地いいんだわ・・・・・・



「ちょっと柳川! なにボーッとしてんのよ! さっきの女、アレはなに?」
「・・・・・・女?」

檜山が聞いてくるのをいい事に、舞の奴ベラベラ喋ってやがる。

「下に行ったままコイツ戻って来ないでしょ? 見に行ったらさぁ〜〜玄関に女が立ってんのよ! なんか地味で大人しくて目立たない女だったなぁ〜〜・・・・・・・ね、あの子! 柳川の彼女なの?」
「・・・・・・・おい、柳川! もしかして小春さんか?」

「小春? 小春っていうの、あの子の名前??? うわぁ〜〜、お婆ちゃんみたいな名前〜〜」
「舞! ちょっと言い過ぎだよ!」

「梨央も来ればよかったのに! その小春ちゃん、柳川に帰れって言われて泣きそうだった。 青い顔してて、面白かったわよ!」
「舞!!! 酷いよ、そんな言い方」

「だって本当の事だも〜〜ん・・・・・・だいたい柳川の分際で彼女いるって事が生意気なのよ!!!」

キーキー喚いてる “ お嬢様 ” が、なにを思い出したのかクスクスと笑いだした。

「でもあの子、いかにも必死って感じだったのよね〜〜・・・こんな最低なチャラ男に、本気で好きになってるみたいでさ〜〜・・・・・それなのに柳川ったら、ストーカーだの、帰れだの、最後は犬を追い払うみたいに『シッシッ!』ってやってたんだよ! まあ、あんなブスは柳川しか彼氏になってくんないだろうし、必死なのも分かるけどね〜〜」

クソ生意気で突っ張らかってる舞は、楽しいオモチャを見つけた子供みたいに、小春の事をボロクソに言いまくった。


ま、確かに舞ほどの美人が見れば、小春なんか道端の石ころみたいなもんだよな。

メガネかけて、真っ直ぐな黒髪ストレート・・・・・無難なワンピースにガーディガンって格好は、ひたすらに地味だった。


「あんたみたいなチャラ男が、よくあんな地味な子で我慢してたわね・・・・・・もしかして、お金でも巻き上げてたりして! あ〜〜〜!!! 柳川のその顔、図星でしょ!? 私の言ったの当たってるでしょ!!!」
「うるせーよ」

「やっぱ当たってんだ〜〜〜・・・・・。 ねぇねぇ、じゃあさ・・・・お金巻き上げるために、あの子とエッチしてたりして? うわぁ〜〜女として、悲惨の極みよね! ブスなばっかりに柳川にいいようにされてさ、それでも離れたくないってしがみついて・・・・・・うわっ、キモッ! 女として悲惨すぎて鳥肌立っちゃった!」
「やめろよ・・・・」

「私ならこんなチャラ男、お金貰っても御免だけど・・・・・・ブスって後がないの知ってるから、なりふり構ってないんだ〜〜・・・・・キャハハハ!!! 可哀想〜〜〜お金渡してエッチしてもらってるんだ〜〜〜」

部屋中に舞のキンキン頭に響く喚き声と、笑い声が響いたとき、【 ガタンッッ!!! 】ってドアの外から聞こえたんだ。

バタバタと走り去る音のあと、ドアを開ければ班長達が雪崩込んで入口を塞いじまったんだ。


「そうだ、あの子が落としてったコレ、何だろうね〜〜」
舞の手には紙袋があった。

それを見た咲人の目が輝き出す・・・・・・きっと小春ちゃんが作ったクッキーだって、分かったんだな。

「そ、それ、こはるちゃんの・・・・・クッキー!!!」
手を伸ばす咲人を掠めるように舞は袋を開けて、中を覗き込んだ。

「うわあああーーーーーコレって手作りのクッキー? なんかモテナイ女の怨念こもってそう・・・・・・あーあ、気味悪〜〜い!!!」

そう言った舞が、部屋のゴミ箱にクッキーの入った紙袋を・・・・・・・捨てたんだ。

「ああ〜〜〜!!! こはるちゃんの、クッキー・・・・・・」
咲人が慌てて紙袋を拾って、大事そうに抱えて部屋の隅に座り込んじまった。

「たべもの、そまつにしたら、いけません!」
「そうだな、咲人は好きだもんな・・・・・小春さんのクッキー」

「ぼく、たべます! こはるちゃんの、クッキーたべます!」
「俺にも1枚くれよ、咲人」

「ひやまくん、どうぞ」
そうして咲人と檜山がクッキーを食い始め、班長達はゾロゾロ下へと帰っていった。


「そんなクッキー食べてないで、お鍋食べましょう? もう煮えてるわ」
「よく平気な顔で、食えるな・・・・・・」

「え? 何が?」
ケロリと何でもない顔して食い始める舞に、俺は目眩がした。

なんだ、コイツ・・・・・顔は綺麗なくせに、心は自己中ってか?


・・・・・・・・アイツは、小春ちゃんは、人のこと悪くは言わない、絶対に。

そうだ、咲人の事だって小春ちゃん・・・・・何でもない顔して普通に接してた。

自分の作ったクッキーを咲人が食べて、美味しい美味しいって言ってるの、ほんとに嬉しそうに笑って見てたっけ。

「こんなに喜んでもらえて、私もすごく嬉しいです! また作ってきてもいいですか?」
「わぁーい! ぼく、こはるちゃんのクッキー好きです! また食べたいです!」

「じゃ、約束します」
「んっ!!」

小指を差し出した咲人に『指切りげんまん』だと教えて、小春ちゃんも嬉しそうに小指を出してたっけ。。。

そんな2人を俺と檜山が、眺めてたな・・・・・・・






トボトボと歩いてる私は、たまに背後を振り返ってしまう。

「追いかけてなんて来ないよね・・・・・・」
ほんのわずかの可能性に、心が傾いてくけど・・・・・現実は、柳川くんは追いかけてくれなかった。

暗くなってきた街で、ますます落ち込む私は、重い足を引きずってるんです。

いつもなら電車で帰る道だけど、なんだか歩いていたくて・・・・・・トボトボと歩いて・・・・・・・ポタポタと流れてくる涙をそのままにして、下を向いて歩いて・・・・・・・


「ひっく・・・・・ひっく・・・・・」
公園を見つけた私は、中に入りベンチに座り込んで・・・・・・涙で前が見えないから、落ち着くまでここにいよう。

カバンからタオルハンカチを取り出し、目を覆って・・・・・・わんわん、子供みたいに泣いちゃいました。



タッタッタッタッタッタッタッタッタッ・・・・・・・規則正しい足音が聞こえたら、今度はザリザリって土を踏む音がして、最後に足音は私の前で。止まった。。。


「はぁ・・・はぁ・・・ここにっ、いた!」
「・・・・・・・グスッ、神田さん」

黒髪に金のメッシュが入った神田さんが、息を切らせて私の前に立ってて・・・・・・どうしたのかな?

「はぁ・・・はぁ・・・あ〜〜〜しんどっ! こんなに走ったのいつ以来だよ!」
「あ、あの・・・・コレよかったら飲んでください」

差し出されたのは水のペットボトル。 まだ封の開いてないペットボトルを差し出す小春ちゃんは、真っ赤な目をしてた。


「泣いてたんだ」
「・・・・・・はい」

彼女の目はまだ涙が溢れそうに盛り上がってて、手に握った小さめのタオルで目を拭いてた。

グスッ・・・なんて音が聞こえるけど、こんな優しい子がなんで泣かなきゃいけないんだよ!!!

寮に遊びにきた小春ちゃんがさ、オレ達が刑務所上がりだって知ったとき、なんて言ったと思う?


最初はビックリした顔してたっけ・・・・・オレ達は黙ったまんま、彼女がどうなるか見てたんだ。

嫌そうな顔してそそくさと寮を出て行くか、思いっきり拒否られて逃げてくか、曖昧な笑顔を浮かべて帰るか・・・・・・どうせ、小春ちゃんだって似た様なもんだろうって、オレは思ってた。

柳川が顔を歪めて彼女を見てたから、ああ・・・・コイツまだ言ってなかったんだって、気がついた。


そんな緊張した空気の中で、彼女さ・・・・・・にっこり、いつもみたいに笑ったんだ。

「・・・・・・ そうなんですか」
「え? それだけ? 小春ちゃん、俺らのこと知って、それだけ?」

柳川の焦ったような声にキョトンとした小春ちゃん。

「あの・・・ 何か言わないといけなかったですか?」
オロオロとしだした小春ちゃん。

「なんかあるんじゃないの? どうして黙ってた!とか、知ってたらこんな所に来なかった!とか・・・・・・知ってたら、俺と、付き合わなかったとか・・・さ」
柳川の声が尻すぼみに小さくなるけど、その気持ちはオレら皆も、同じだった。


小春ちゃんはさ、名前の通り小春日和みたいに暖かいんだ。
彼女が来ると一気に寮の中がパァァーーーって明るくなってさ・・・・・・トゲトゲしてた空気もどっか行くんだ。

すぐに彼女はオレ達のアイドルになったんだぜ?
皆、小春ちゃんと話して笑顔になるんだ、すごいだろ?

そんな小春ちゃんが、オレ達のこと知ったんだ、どんな反応するのかビクビクしてたんだ・・・・・けど、けどさ、小春ちゃんは、小春ちゃんだったんだ!


「刑務所に行かれたのなら、罪は償ったんですよね? なら、それでいいじゃないですか?」
「は?」

「皆さんが真面目に働いてるの、知ってます! たまにケンカして怖いときもあるけど、でも、一生懸命されてるの私、知ってます! だから、いいじゃないですか!」

「もちろん、今後は悪いことはしませんよね!」
その言葉に頷くオレらを見て、ニッコリと笑う小春ちゃんは、「良かった」なんて言うんだ。

それから小春ちゃんは、いつも通りにしてるんだぜ? それがどれだけホッとしたか・・・・・・・

咲人もそうだけど、小春ちゃんも毒消しっていうか、オレら狂暴な何かをホワッて緩めちゃうような、消しちゃうようなコなんだって、オレは改めて思ったんだ。



その小春ちゃんが、泣いてる・・・・・・・柳川や、柳川が連れ込んだ女に酷いこと言われて、泣いてるんだ。

小春ちゃんは何も悪くないのに・・・・・・なんでだよ、なんで・・・・・悲しませるんだよ、柳川!!!


それに、こんなとき・・・・・・なんで気の利いた言葉の1つでも、かけてやれないんだよ、オレは!!!


「はぁ〜〜・・・・・思いっきり泣いたら、スッキリしました!」
「小春ちゃん?」

「柳川くんてカッコイイから、あの人みたいな美人さんの方が似合ってますよね・・・・・・・私じゃ釣り合わないって、分かりました」
「そんなことないよ! 小春ちゃん可愛いよ!」

「神田さんは優しいですね・・・・・・・ありがとうございます」
「オレは、そんな・・・・・・優しいだなんて、初めて言われたよ」

「・・・・・・・諦めます。 もともと私のこと柳川くん好きじゃないみたいだし・・・・・・あきらめ・・・・ます」
「我慢しなくていいよ、泣きなよ・・・・・・オレ、泣き止むまで待ってるから」

「神田さん、ありがとうございます」

オレは必死に笑顔になろうとしてる、痛々しい小春ちゃんを・・・・・・・ギュッと抱きしめた。



「咲人さん、クッキーもいいですけど、お鍋も食べませんか?」
「・・・・・・・ぼく、こはるちゃんのクッキー、たべます」

梨央ちゃんが宥めるように声をかけても、頑なにクッキーを食い続ける咲人。

「なによ! せっかく梨央が誘ってんのに、そんなクッキーなんか食べて・・・・・・ほら、クッキー食べるのやめて! 鍋食べなさいよ!!!」
「いやです!」

「なによムカつくわね〜〜〜・・・・・なら、これでどうだ!」
そう言った舞が咲人の手からクッキーの袋を取り上げたんだ。

「かえして! かえしてぇぇ〜〜〜」
「返さないわよ! 」

俺たちの部屋は2階にあんだけど、そこの窓をガラッと開いた彼女は、クッキーの袋をその窓からポイッと捨てたんだ。



それは咄嗟に身体が動いたんだ。

俺は下に駆けおりて外に出た・・・・・・そして俺らの部屋の窓の下に行って、クッキーの袋を探せば、庭木の枝に引っかかってて・・・・・・・んん〜〜〜・・・・・もうちょい!

もうちょい・・・・・もうちょい・・・・・・ん? やっと、取れた〜〜〜!!!


ガサッと音をさせながら袋の中から取り出したクッキーを、1枚頬張る。

「ん〜〜サクサクして、うっまいなぁ〜〜・・・・・・さすが小春ちゃん!」


・・・・・・・青い顔してたな、アイツ。
・・・・・・・涙、こぼれちまいそうだったな。


・・・・・・・何やってんだよ、俺は。


アイツ傷つけて、泣かせて、せっかく来たのに追い返して・・・・・・・小春。


俺は、考える前にクッキーの袋を持ったまま、走り出していた。




寮からアイツの家へ行く道は、何度も通った道だ。

電車でも行けるけど、きっとアイツはトボトボ歩いて帰るだろう・・・・・そう思った俺は、そのルートを突っ走ったんだ。

息が切れるほど走った俺は、公園のベンチで抱きあうカップルを見て、女の方のコートに見覚えがあったんだ。


「はぁ・・・はぁ・・・は? 小春?」
男は黒髪に金メッシュ・・・・・神田か? 神田がなんで、小春を?

近づくころには離れた2人だけど、小春ビックリした顔してやがる・・・・・って事は、神田が・・・・・

声をかけようとした俺の目の前で、神田が小春に顔を近づけていった・・・・・・



「か、神田さん!?」
急に抱きしめられてビックリした私は、カチン!と固まっちゃって・・・・・・神田さんが離れるまで、そのままで・・・・

でもなんで? 神田さんが、私を抱きしめてるなんて・・・・・・え?え? どう捉えていいのか分からなくて、ひたすら頭の中がハテナマークでいっぱいだった。

ようやく神田さんが離れてくれたと思ったら、今度はその綺麗な顔が私の顔に近づいてきて・・・・・・・あ、キスされる。

そう思った私は、顔を俯かせて神田さんを避けてしまった。

「・・・・・・・な、オレにしないか?」
「え?」

「オレ、小春ちゃんのこと大事にするから! 柳川なんかより大事に、大事にするから! だから、だからっ!」
「きゃっ、神田さん?」

狭いベンチに押し倒した小春ちゃんの、小さな身体がオレの下にあって・・・・・その可愛い唇が欲しくてオレは、オレは!!!

「いやっ!」
「小春ちゃん!」

「神田、何してんだよ! 離せよ!」
突然、柳川の声がしてオレは彼女から引き剥がされて・・・・・・・・自分のしでかした事に気がついて、頭から血の気が引いた。

「あ・・・・・オレ・・・・・オレ」
オレはそのまま走って逃げたんだ。。。






「大丈夫か小春っ! 何もされんかったか?」
「・・・・・・・・やながわ・・・・くん?」

ギュッと抱きしめれば小春がしがみついてきたんだけど、すぐに俺から離れちまった。

「・・・・・・だ、大丈夫だから。私は、大丈夫」
「小春・・・・・・」

「柳川くんこそどうしたの? 散歩でもしてたの?」
「俺は・・・・・そう、散歩! 1歩、2歩、散歩!! なんつって!」

「じゃ、私は帰るから・・・・・・さよなら」
「小春! あのさ、さっきは・・・・・その・・・・・」

「もういいよ、柳川くん。 今まで、ありがとう・・・・・もう会いに来ないから、安心してね」
「小春? お前、何言って・・・・・」

振り向いた小春は、真っ赤な目に涙をいっぱい溜めて、それでも笑おうとして・・・・・・ぎこちなくなって・・・・・


俺は小春を引き寄せ、抱きしめたんだ。


「ごめん、小春・・・・・ごめん」
「・・・・・・・」

「俺が悪かった! ほんと、ごめん! だから、さよならなんて言うなよ!? な?」
「だって・・・・・柳川くん、私のこと好きじゃないのに・・・・・・」

「はあ? なんでそんなこと・・・・・・俺がいつ好きじゃないって言ったよ?」
「・・・・・・・好きだって、言われてないから」

「あ・・・・・・・」
そうだ、俺・・・・・小春のこと真剣に好きだって、言ったことない。

俺は、逃がさないよう抱きしめたまま、何度も何度も謝り続けた。



俺はゆっくり話ししようと、小春の部屋に来た。

「何からいえばいいかな・・・・・俺はさ、小春のこと・・・・・好きだよ」
「うそ・・・・・」

「嘘じゃねぇーし! まあ、言わなかったから分かんねぇーのも無理ないんだけどさ・・・・・・実はさ」

それから俺の一世一代の告白? まあ、今までの訳を話したんだ。


初めて会ったナンパの日、声をかけたのは小春を見たからだった。
道の向こうからくる3人の女の中で、小春・・・・・お前が一番、キレイだって思ったんだ。

なんていうのかな・・・・・一目でピン!ときたっつーか、清潔でお日さまの匂いがしそうなお前に、きっと俺、一目惚れしちまったんだ。

男慣れしてないお前に口で丸め込んでさ、まんまと彼氏になった俺だからさ・・・・・お前のこと大事にしたいんだ。

アパートのお前の部屋で過ごす1日は、食いモンも旨いし、居心地いいしで、まるで夢みたいなんだ。

それにさ、小春とのキスはさ、すっげー柔らかくて、甘くてさ、抱きしめてる小春の抱き心地とか、もうすごくイイんだって!

俺とのキスで頬染めるお前にさ、慣れてないの丸わかりだろ? だから、少しづつ少しづつ・・・・・・そう思って我慢してたんだ。

シタくないって事はないんだかんね! 僕ちゃんだって健全な男子だし! 若いし、溜まってるし・・・・・あ、いや、あの、ごにょごにょ。。。


つまり、俺は小春が好きすぎて、手が出せなかったの!!!

ちゃんと好きって言わなかった俺が悪いし、寮の中に入れなかったのも、あのギャーギャー喚く舞が、小春のこと悪くいうの避けたかったんだ。

・・・・・・・・小春? おーい、小春ちゃん? どうしたの? なんで泣いてるの? そんなに泣いたらお目々が溶けちゃうよ?


え? 嬉しい? 嬉しいから泣いてんの? くはぁーー! 泣き虫だなぁ、小春は・・・・・・


俺のこと好き? 諦めなきゃって、思えば思うほど、苦しかった?

・・・・・・・ごめんな、もっと早くお前に言ってたらな・・・・・・ほんと、ごめんな。

おいおい、しがみついてくるなよ、可愛いやつだな〜〜・・・・・・・んんっ!

「柳川くん、キスして?」
「・・・・・・今夜は止まれそうにないぞ? 小春の全部、俺のもんにしちゃうぞ?」

コクンって頷く小春に、一気に煽られちまった俺は、ベットでその夜・・・・・初めて小春を抱いた。


何度も、何度も、好きだと言いながら小春の全部を・・・・・・・俺のもんにしたんだ。



神田とは男同士、きっちり話をした。

もう小春を2度と泣かせないって誓って、神田もそれで気持ちを納めてくれた。

それから舞に会ったとき、ちゃんと俺の大事な恋人だって小春のこと紹介したし、なんか言いそうな舞は俺や檜山に睨まれて黙ったし。

まあ、会うこともないし・・・さ? アイツらと会うより、小春と一緒に過ごす方がいいからさ。

そうやって自然に月日は流れて、俺は小春の誕生日の今日・・・・・プレゼントの指輪を渡そうとしてるんだ。


安物だけどさ、今の俺の精一杯だから・・・・・将来はさ、もう少しマシなの贈るからな。

小春・・・・・ずっと、一緒にいような?






最初ひどい男だけど、やっぱり最後はハッピーエンドがいいですよね!!!

たまに書きたくなる柳川くんのお話でした。
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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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