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前編【記憶の底に、失くした恋・・・ 】by段野竜哉

結子先生が事件に巻き込まれない、そんな世界でのタッちゃんのお話です。

地味な女の子と、なんとなくそういう関係になったタッちゃん。

いつ別れても別に何ともない、好きでもないんだから・・・・・な、酷い人なタッちゃんですが、意外に一途な男だったと別れた後で自覚するというお話です。

ちょっと酷い男なタッちゃんですが、書いちゃいます。





「・・・・・・・?」

くん・・・・・・すれ違った女から、懐かしい匂いがした。

俺はすぐに回れ右して、すれ違った女の後を、追ったんだ。


俺は、段野竜哉・・・・・株の取引からクラブの経営まで手広くしてる、いわゆる事業家だ。

「竜哉さん、どうされたんですか? 店は向こうです」
「少し、散歩だ」

経営するクラブに視察に行く途中で、俺は反対側へと歩き出したんだった。

俺はその女を追いながら、自分でも分からない衝動に動かされていた。



「えっと、たしかこの近くに・・・・・・あ、あった! 新宿キッチン」
私は会社の人達に頼まれて、この新宿キッチンというお店にお弁当を買いに来たんです。

同僚の浅野さんに書いてもらった地図を頼りに来たんだけど、あれ? ここなら会社から5分もしないよね?
地図の通りにきたら15分もかかっちゃったのに・・・・・・


・・・・・・早く買って帰らなきゃ!!!

私は店に入って持ち帰りのお弁当を頼んだの。

3人分のお弁当を持って会社に帰る私は、急いでいたから・・・・・・私をつける人影に気づくなんてこと、なかったの。。。


「遅いわ! もう昼休憩おわっちゃうじゃない・・・」
「ごめんなさい」

「あんまり遅いから私達、お昼もう済ませちゃったの。 だからそのお弁当・・・・・もう、いらない」
「え?」

「じゃ、そういうことで・・・・・ごめんねぇ〜〜紫月さん」
「紫月さんもお昼食べないと! あ、もう時間ないわね〜〜クスクス・・・・・」

そう言って同僚の浅野さん、麻生さんが去って行った。


「お弁当の代金なんて、払ってもらえないよね・・・・・はぁ〜〜」

きっとあの地図も、わざと遠回りに書いてあったんだろうなぁ・・・・・
まるで子供の嫌がらせみたいな意地悪が、あの2人から続いてるんだ。

私の何がいけなかったのかな?

ちょいちょい続くこんな事に、私は心の痛みを隅に押し込んだ。

「・・・・・・今夜の夕飯と、明日の朝食にしよう! うん、早く食べちゃおう!」

私はお弁当を1つ取り出して、大慌てで食べたの!
だって昼食べとかなきゃ、帰るまでに持たないよ!!!


・・・・・・今後はもう、あの2人には関わらないようにしよう!

私は、そう心に誓ったの。




「竜哉さん、例の件・・・分かりました」
「・・・・・・話せ、深町」

「名前は紫月 陽子、あの会社に新卒で入社した今年6年目の27才。 仕事は真面目で上司からのウケも良いようです」
「・・・・・・そうか」

「あの日買った3人分の弁当ですが、同僚の分でしたが時間がかかったためキャンセルされたそうです」
「・・・・・・・会社から5分もしねぇー店じゃなかったか?」

「・・・・・・頼んだ同僚の1人に遠回りな地図を書かれ、遅くなったそうです」
「・・・・・・・ふぅ〜〜ん。いじめられっ子ってわけか」

「穏やかで、いつもニコニコとしている彼女は周りからも、上司からもウケが良いようですが、それが親のコネ入社の浅野、麻生の2人には気に入らないようです。ちょくちょく嫌がらせを受けているようです」
「・・・・・・どこでも、つまんねぇー奴はいるんだな」

「それで、面白い話を小耳に挟んだのですが・・・・・」
「聞かせろ」

深町の話を、俺は聞いていた。



「あの・・・私、行きたくないんです!」
「なんでぇ〜、この前のお詫びにさ、私達2人がコンパに連れてったげるって言ってるのに〜〜」
「そうそう! 遠慮しなくても会費は払っておいてあげたから〜〜」

会社の更衣室で捕まった2人に、無理やり連れてこられたのは、オシャレな会場だった。

彼女達はちゃんとドレスアップした服装なのに対して私は、普通のワンピースにカーディガン・・・・・・どう見ても場に不釣合いでしょう〜〜〜!!!

「離して! 私、嫌です!」
「往生際が悪いわね!!! あんたは私達の引き立て役で、その見すぼらしい格好で横に突っ立ってりゃいいのよ!!!」

「そう! 私達の引き立て役をしてればいいの!!!」

「なんで、こんなこと・・・・・嫌がらせするんですか?」
思いきってそう叫んだ私に、両腕を掴んだまま、2人は憎々しげに、私を見つめてる。

「「周り中から慕われてる『良い子ちゃん』なアンタが、気に入らないのよ!!! 腹が立ってメチャクチャにしたいほどね!!!」」

綺麗なドレスを着た2人の綺麗な顔が、般若のように怖い顔で私を睨むのに・・・・・・・私は、恐怖で足がすくんで・・・・・・ズルズルと2人に引きづられていった。


・・・・・・穏やかに、毎日を過ごせたらそれで良かった。

・・・・・・誰にも嫌な顔せず、真面目に仕事して、目立たずに・・・・・・そう心がけていたのに。


私は2人に、こんなにも・・・・・・憎まれていた。

2人の憎悪にさらされて、私はもうなす術もなくなっていたの。




『クスクス・・・・・・』
『なぁーに、あの格好・・・・・・ここは庶民が来る場所じゃないって、教えてあげたら?』
『・・・・・・・見すぼらしいわねぇ〜〜・・・・・まるで野良猫ね』

さざ波のように聴こえる声の数々・・・・・・・・私は、いつまでここに居れば良いんだろう?

帰りたくても両側からガッチリと2人に腕を掴まれ、逃げられない私はにこやかに挨拶する2人に挟まれながら、見世物のピエロになっていたの。

「この人、私達の会社の先輩なんです。 無理やりついてきちゃって・・・・・困ってるんです」
「場違いだって言ってるのに〜〜・・・そんなにセレブのパーティーに興味があったのかしら? 困った先輩!」

会う人、会う人に、2人がそう言ってるのを聞きながら、逃げ出せない私は下を向いて、我慢するしかなかった。。。

そんな私の様子に、2人は心底楽しそう・・・・・・・


あ、ダメ・・・・・泣いたら、ダメ・・・・・・そう思ってもポキっと心の何かが折れそうになってた私は、涙を我慢できなかった・・・・・・・・




「なんだ、こりゃ・・・・・」
深町からの話で来てみたパーティーだけど、ほんとに嫌がらせしてんだな。

自分達はドレスアップしてるくせに、彼女は普段着のまま・・・・・腕を掴んで逃げられないようにして、晒しもんにしてやがる。

「キレイな顔して・・・・・・・クソみてぇーな女だな」
どんだけ恨まれてんだよ、紫月さんよ・・・・・・・

真ん中の紫月さんに目をやれば、下を向いてやがる。
周りから聴こえる声は、彼女を傷つけるものばかり・・・・・・無理もねぇーな。


面白半分に見物に来ただけ・・・・・・なのに俺は、下を向いた彼女の頬に・・・・・・流れる光るもんを見つけて、身体が動いちまったんだ。


「ちょっと、いいかな?」

目の前にピカピカの黒の革靴が立ったと思ったら、低い声がかけられた。


「なんでしょうか?」
「私達に、なにか?」
彼女達の声が、余所行きの声に変わった。

「少し、話がしたくて・・・・・・かまいませんか?」
「え、ええ! 貴方のように素敵な方なら、いつでも♡」
「私も、お話がしたいですわ♡」

・・・・・・語尾にハートマークがついてるって事は、きっと凄くカッコイイ人なんだ。
・・・・・・なら、彼女達が気を取られてる隙に、逃げ出せないかな?

私は、そぉぉ〜〜っと腕を動かしてみた。
彼女達の力が緩んでるから、スルリと抜けそう・・・・・・・・今だ!!!

私は腕を引き抜いて、そのまま後ろに走って行ったの。



「あ、逃げたわ!」
「もう、ちゃんと押さえとかないとダメじゃん!」

「アンタが掴んでないからでしょ?」
「なによ、私に文句言うの?」

浅野と麻生が言い合っている間に、目の前の男はスッと離れていった。




「・・・・・・どこだ」
「こちらです」
会場の外で待っていた深町が、俺を案内したのは1階下のレストランの側のトイレだった。

・・・・・・頭、いいんだな。 会場のすぐ側じゃなくて、1階下とはね・・・・・見つからないよう考えてやがる。

もし追いかけられてもあの2人はきっと、1階まで降りて探すだろう。
ほとぼりが冷めてから逃げた方が、見つからない・・・・・・・地味な女なのに、逃げ方は知ってやがる。


それが妙に、俺の興味を引いた・・・・・・・


トイレに隠れてた女・・・・・陽子だっけ?が出てきた。

丸っこいメガネをかけた陽子は、俺を不思議そうに・・・でも真っ直ぐに見ていた。

不思議そうに見ていた陽子が、何かを思い出したような顔して・・・・・・・なんか俺も、見覚えあるような・・・・・・・



「・・・・・・ 竜哉くん?」
「・・・・・・陽子か?」

まさかガキの頃、同じ施設で育った幼馴染みと再会するとは、思ってもみなかったな。

「久しぶりだね〜・・・ スゴいカッコ良くなってて、ビックリした〜〜」
「なあ、メシでも食おうや・・・・・いいか?」

ニコッと笑った陽子が嬉しそうに頷く・・・・・・・その明るい笑顔が、記憶を蘇らせた。

よく結子の手伝いをして小さな子の面倒見てた陽子は、結子とそっくりな笑顔で『俺たちの家』を明るくしていた。


「竜哉くん、ほんとにこんなのでいいの?」
「ああ・・・・・・うめぇよ、この肉ジャガ」

俺は陽子の家に上がって、手作りの夕飯を食べてた。

「有り合わせで悪いんだけど・・・・・・ご飯は炊きたてだから! のり玉もあるよ!」
「・・・・・・ははは、ガキの頃だぜ? 好きだったのは」

「えーー、美味しいよ! ほら、かけてみなよ!」
「バカッ! いきなりかけんなよ! こぼれちまったじゃねぇーか!」

「いいから、食べてみて? 今でも美味しいよ!」
「・・・・・・うまい」

白い湯気のでる炊きたてのメシに、黄色いふりかけは、よく施設で食ってたな・・・・・・結子のメシが劇マズで、水で流し込んだ後、メシにかけて食ってたっけ。

テーブルにこぼれたふりかけを指で集めて、自分のメシにかける陽子は、昔からそうやって皆の世話をしていた。


それから俺は、たまに陽子の部屋でメシを食うようになり、そして・・・・・・・なんとなく俺は、陽子を抱いた。






「・・・・・・初めて、だったのか」
「うん・・・・・」

男と付き合ったことない陽子は、もちろん俺が初めてで・・・・・・化粧っ気のないコイツと同じで、素直な反応が気に入った。

そう、ただ・・・・・・気に入っただけだった。


陽子の部屋はいつ行っても ぬくくてさ、居心地がいいんだ。

俺を見て笑う陽子や、居心地がいい部屋、美味い飯・・・・・・・それに素直に俺に感じるコイツの身体。

全部、気に入った・・・・・・・それだけだった。

別に惚れた腫れたって事じゃねぇーーー、そんな感情、はなっからねぇーよ。


「こいよ・・・・・」
「あ、竜哉くん・・・・・」

引き寄せてそのままラグの上で始めた俺は、陽子を脱がして身体中いじってやった。

喘ぎ声に、感じて震える身体・・・・・何回かイかせてから、ゴムをつけた俺自身を挿入して中をかき混ぜてやる。

地味な見た目とは裏腹に、脱がせたコイツはスゲェーんだ。

柔らかい乳房はたっぷりとあるし、尻もプリッと形良い・・・・・それに中は、数の子天井で締まりも抜群。

いわゆる名器で、スタイルもパーフェクトだった。


「あっ・・あっ・・・もう、だめ・・・・・たつやく・・・んんっ! イっちゃう・・・・・イっちゃうよぉ〜〜〜」
「イけよ、好きなだけ・・・・・・ほらよ!」

余裕こいてる風にみせてっけど、正直、いつ俺も持ってかれるかギリギリで・・・・・・星の数ほど女は抱いたが、コイツは別格だった。

「くっ!」
「好き・・・・・たつやくん・・・・・」

ガクガクと痙攣してイった陽子の中で、俺もゴムの中に吐き出してた。

イクときに聞く、陽子の言葉は・・・・・・知らないふりをしていた。


俺はコイツに、好きだなんて言ったことねぇし、思ってもねぇ・・・・・・もしそれでコイツが俺から離れようと、それはそれで構わねぇ・・・・・・なんとも思ってねぇーんだから。



「・・・・・・よぉ」
「こんばんは、竜哉くん」

今夜も寄った陽子の部屋で、俺は上着を脱いでくつろいでた。

「どうぞ、召し上がれ」
「・・・・・・オムライス」

一口食って驚いた・・・・・・結子と同じ味のオムライスを、もう1度食えるとは思ってなかったからな。

「結子先生ってオムライスだけは美味しかったでしょ? 作るとき、よく見てたから覚えたの」
「・・・・・・・うまい」

ここに通う理由が、1つ増えた・・・・・・ただそれだけの、日だった。



ベットで抱いたあと、少し俺に くっついてくる陽子。

ベッタリされるのは好きじゃねぇーー・・・・・それを知ってんのか、陽子はいつも控えめだった。

その距離感が、他の女とは違って気に入っていたんだが・・・・・・ここに通って半年か。

・・・・・・・・・思いのほか長いこと来てたな。

1週間に3、4日・・・・・・意外に来てた自分に気がついて、そろそろ潮時かと自覚した。


ガラじゃねぇーんだ、1人の女と続けるのってさ。
女なんて長く続くとそれだけ面倒になるだろう?

恋人面とか、結婚とかよ・・・・・・俺はまだまだ縛られたくねぇーんだわ、だから『さよなら』だわ陽子。


「もう、此処には来ねーわ」
「え? どうして?」

着替えたあと、唐突に言い出した俺に陽子は、キョトンと見ていた。

「地味な女もたまにはいいかと思って、お前を抱いたけど・・・・・・・飽きたんだわ」
「・・・・・・・・飽きた?」

「そ、俺の周りはいつも派手で綺麗な女ばっかりでさ、たまにはお前みたいな地味なのもアリかと思ったんだけどよ。つまんねぇーんだわ」
「・・・・・・・・つまんない」

「じゃな・・・・・あばよ」

俺は後ろも見ずに部屋を出て行った。。。



それで終わりなはずだった・・・・・・・はなから好きだのなんだので抱いたわけじゃねぇー・・・・・それなのに、なんでだ。

1週間もすると俺は、陽子の部屋に行きたくて、仕方がねぇーんだ。

ぬくくて居心地のいい、あの部屋で・・・・・・上着を脱いでネクタイ外して、あったけぇーメシ食って、柔けぇ・・・・陽子を抱きたい。


なんでだ? あんな地味な女、好きでも何でもねぇーのに・・・・・それなのに、なんでだ?


「深町さん、竜哉さんなんであんなイライラしてんですか?」
「さっきも机の上の書類、ぶち撒けてましたよ?」
「・・・・・・・竜哉さん」


どんどん俺のイラつきは増して、1ヶ月も経つ頃には限界になった。


《 コンコン 》

それからも我慢してた俺だが、とうとう陽子の部屋のドアを叩いていた。

「・・・・・・・なあ、いるんだろ? 俺だ」
ドアノブに手をやれば、鍵がかかってねぇ・・・・・・・俺はそこを捻ってドアを開けたんだ。


俺の目の前には荷物も何もねぇーガランとした部屋が、広がってたんだ。



「・・・・・・・深町!」
走って帰って来た事務所で、俺はまだ居た深町の胸ぐらを掴んでいた。

「陽子がいねぇーんだ。 どこに行ったか調べてくれ」
「・・・・・・陽子さんなら竜哉さんと別れてすぐ、あの部屋を出て行かれました」

「は? それで、何処にいるんだ!」
「・・・・・・・分かりません」

「調べろ、深町! 今すぐにだ!!!」
「・・・・・・・はい」


深町の報告を受けたのは、数日が経ってからだった。


「竜哉さんと別れた後、紫月さんは会社でのイジメが酷くなり、追いつめられたようです」

「地味で、つまらない女と陰口を叩かれ、あろうことかあの2人の女は、社内でも女好きと噂されていた社員を焚きつけ・・・・・・・紫月さんを襲わせたようです」
「なにっ!!! それで陽子は? 陽子は無事なのか!?」

「その翌日から会社に来なくなった紫月さんは、お辞めになられたそうです」
「・・・・・・・・会社を、辞めた?」

「・・・・・ 部屋を引き払ったのはそれから間も無くで、それ以来、行方が分からないんです」
「・・・・・・・探せ」


「探せぇ〜〜〜!!! 深町、陽子の行方を探すんだ! どんだけ金がかかってもいい! 絶対に探し出せ!」
「はい、竜哉さん」


陽子・・・・・・お前、辛いなら言えよ・・・・・・言ってくれよ。

こんな俺でも愚痴くらい聞いてやるよ!


・・・・・・・いや、俺に話せるわけねぇーか。 俺は自分のことばかりだったからな。 あんだけ居心地よく俺を部屋に入れてくれてたのに、俺はお前に起こってること何も知らなかった・・・・・・・・


いや、知らなかったんじゃねぇ〜〜〜・・・・・・見て見ぬふりしてたんだ。

最低だな、俺は・・・・・・なあ、男に襲われて・・・・・ヤられたのか?

俺以外の男にヤられて、お前・・・・・・傷ついたよな? お前は俺のこと、本気で好きになってくれてたもんな?


それなのに、俺は・・・・・・俺は・・・・・・俺はぁぁあああああああああああー〜〜〜〜〜


「竜哉さん、落ち着いて下さい」

暴れ始めた俺は壁に拳を打ちつけて血だらけになったり、事務所に置いてある来客用のテーブルを割ったりして手がつけられなくなったんだ。

深町や部下に背後から羽交い締めされてやっと止まった俺は、だがそれでも、叫いてたんだ。

「竜哉さん! 竜哉さん!!!」
深町の声に我に返った俺は、しばらく1人してくれと窓辺に立ったんだ。


「深町・・・・・・頼む、陽子を見つけてくれ」
「全力で探します」


夜の景色を見ながら、俺は・・・・・・どうしてあの時、陽子の香りで身体が動いたのか・・・・・・やっと分かったんだ。

ガキの頃、同じ家で寝起きしてた俺と陽子は、真逆なガキだった。

結子に反発してる俺と、一生懸命手伝っている陽子。

いい子ぶってる奴だと最初は反発した俺だけど、ニコニコな笑顔で人懐っこく側に寄ってくる陽子にいつしか、自分のことを話していたんだ。

それから俺は陽子と話すようになり、マセたガキだった俺は陽子のことを好きになっていた。
だが、それからすぐに素直で愛想のいい陽子は、どこかの夫婦の養女になって・・・・・・・出て行っちまったんだ。


・・・・・・・それがショックで俺は、離れていった陽子を憎み、いつしか記憶の底にしまい込むみたいに忘れてしまったんだ。


それが陽子の匂いを嗅いだあの一瞬で、記憶より先に身体が動いた・・・・・・この香りを逃したくないと、動いたんだ。

なんとなく抱いた・・・・・・それが始まりだった俺たちだけどさ、今にして思えば俺は無意識にお前を、手に入れたかったんだ。

それを、俺は自分から・・・・・手放しちまった・・・・・・ははっ、バカな男だな俺は。


「くそぉぉ〜〜〜・・・・・・俺は、バカだ」

バカな俺だけど、決めたんだ・・・・・・・陽子、お前をもう1度、手に入れると。。。


それから深町の報告で、お前がある温泉地にいると聞いた俺は、すぐに向かったんだ。






「ん〜〜〜・・・・・いいお湯だ〜〜」
朝から露天風呂に浸かれるなんて、すっごい贅沢〜〜〜・・・・・

ふぅ〜〜〜・・・・・・・露天風呂でゆっくりと過ごす私は、さてこれからどうしようかな・・・・・なんて考えてたの。

部屋を解約した私は、ボストンバッグ1つに荷物をつめて、他の家具や何もかもを売ってお金にして、有名な温泉地にやってきたの。

コツコツ貯めたお金も少し降ろして、安い温泉宿に2週間ほど泊まってから、先の事を考えようと思った。

竜哉くんと再会して、恋人みたいに付き合って・・・・・でも私は、竜哉くんが私を好きって言ってくれない事に、とっくに気がついてたんだ。

モテる竜哉くんの事だもの、地味な私なんかすぐに捨てられる・・・・・・覚悟はしてたんだ〜

それでも半年も付き合えた・・・・・奇蹟のような時間は、私の大切な思い出。。。


竜哉くんと過ごした思い出の残る部屋は、1人でいるのが辛くなるほどだから、心機一転! 部屋を処分しようと決心した。

それに酷くなったイジメにも、心が折れそうで・・・・・・会社も辞めちゃった。

「さ、朝ごはん食べに行こうっと!」
旅館の浴衣に着替えて、パタパタとスリッパを鳴らして朝食の会場に向かった私。

「ん〜〜〜・・・炊きたてご飯って、美味しいぃ〜〜〜」
「おはよう陽子ちゃん! 相変わらず美味しそうに食べてくれるね」

「だって美味しいんですもん!」
2週間も泊まってると、仲居さんともお話しできるようになりました。

最初は女の1人旅って事で、すごく警戒されてたんだけどね!

ほら、女が1人でいると誤解されやすいから・・・・・・・確かに失恋や、イジメやなんかで暗い顔してたと思うし。

でもポツポツと話していくうちに、なんだか気が軽くなって・・・ 私もクヨクヨするの止めたんだ!

会社でのイジメは、辞めたら関係ないし・・・ 竜哉くんの事は、あれは失恋とも違うような気がするし・・・・・まだ考えると胸が苦しいけど、いい思い出になればいいなぁ〜〜って思ってるんだ。


そして仲居の皆さんと話してるうちに無職がバレまして、それなら此処で働いてみたらって言って下さって。
私、明日からこの旅館の本館の琥珀亭で、仲居見習いとして働く事にしたんです!

一生懸命、頑張ります!!!



働きはじめて2週間がすんで、少し慣れたかな?って感じなんですが、実際はまだまだなんです。

「陽子ちゃん、これがすんだらロビーで女将さんとお客様のお出迎えしてね」
「はい!」

予約されたお客様のお出迎えも、大事なお仕事なんです!

女将さんも仲居の皆さんも、すごく良い方達で・・・・・私、此処でずっと働きたいです!


「ご予約の方はどんな方なんですか?」
「初めての方よ。 東京から来られる方で、1番良いお部屋を予約されたの」

「あの最上階のお部屋ですか? 部屋付きの露天風呂もある・・・・・うわぁ〜すごいですね」

何がすごいって、1泊ウン十万するんだもん!
料理も最高級のものが並ぶし、眺めも最高! 露天風呂から眺める夜空は吸い込まれるように綺麗で、一生に一度は泊まってみたいって皆で言ってるほどなの。

気を引きしめて、粗相のないように頑張らなくっちゃ!

「お客様の担当はベテランの菊井さんと、陽子ちゃんにお願いするわね」
「はい!」

そのとき、真っ黒な高級車が車止めに入ってきたから、笑顔で私はその車を見たの。

運転席から誰かが降りて、後部座席のドアを開けてるなんて・・・・・運転手さん付きなんだ。

のんきに見てた私は、自動ドアの向こうで降りる人を見てて・・・・・・・・ん? あれ?



ピカピカの革靴が、ドアから地面に降りた。

黒地にストライプの高級そうなスーツのズボンが見えた。

そのまま優雅に降りてくる人を見て、私は目をパチパチと瞬かせた・・・・・・・・だって、その人、竜哉くんにそっくりなんだもん。

女将さんを筆頭にお出迎えに並んでる私は、1番端っこに立ってるから距離はあるんだけど。

でも、あれは・・・・・・・間違いなく竜哉くん、だよね?


ゆったりと王族みたいに威風堂々と降りるカッコ良さも、端整な顔にいつものメガネも、スラッとした長身も、ああ・・・・・・・間違いない、竜哉くんだ。


「きゃっ、素敵な人〜〜」
「え? ここに泊まるのかな? 食事するときに会えたりして!」

ロビーにいた女性のお客様も騒ぎはじめてる。

私は竜哉くんだと分かった瞬間、くるっと後ろを向いて・・・・・・・・すすすすすぅぅ〜〜〜っと、お出迎えの列から離れていったの。

「陽子ちゃん?」
女将さんの声に振り返るけど、私は竜哉くんに会いたくないから、ペコッと頭を下げて受付のカウンターの中に隠れたの。



竜哉くんだった・・・・・・竜哉くんだった・・・・・・前と同じにカッコいい竜哉くん。

きっと温泉に癒されに来たんだよね? 仕事、すごく忙しいみたいだし、休みをとって来たんだよね?

そんな場所に『地味でつまんない女』がいたら、せっかくの楽しい温泉旅行が台無しだよね?

だから私は隠れなきゃいけない・・・・・なんだったら琥珀亭からいなくなった方がいいかもしれない。

あとで女将さんに言って、別館の方にまわしてもらおう。

私はカウンターの中でそう考えながら、奥のドアから出て行こうとしたの。 そうしたら・・・・・・・




「お部屋はご予約の通りに琥珀亭の最上階にお取りしております。こちらが鍵でございます」
「ああ・・・・・・。 そうだ、女将」

竜哉くんの声がする。
宿帳に記帳してるのか、サラサラとペンの音が聞こえた。

「ここに、紫月陽子が泊まってねぇーか?」
(ドキッ!)

「あの?」
「用があるんだ・・・・・呼んでくんねぇーかな?」
(??? 私に用があるの???)

「申し訳ございません。 他のお客様のことはお話できないのです」
「・・・・・・・ここの別館に泊まってた事は、分かってんだ。 礼ならするから、ちょいと調べてくれ」
(私に用事??? 竜哉くんの物は事務所に送ってあるし、他に何かあるのかな?)

「・・・・・・お部屋にご案内いたします。 菊井さん、お願いね」
「はい! さぁーさ、こちらでございます」

菊井さんの賑やかな声が遠ざかり、私はホッと息を吐いたの。


「・・・・・・陽子ちゃん、ちょっと」
「女将さん・・・・・」

お客様のお出迎えから逃げた私は、女将さんに叱られるんだ・・・・・でも、私が悪いんだから、ちゃんと謝ろう!

私はカウンターから出て女将さんの後ろをついて行った。






長くなるので分けます。

ポイッと捨ててから後悔する竜哉くん。

さてさてどうなりますか(笑)

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すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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