④《真白き、君》〜〜異形の客〜〜

さてさて第2話です。

ネタバレありの、好きなシーンを好きに妄想して書いてますので、事件の方はちょっと横に置いとく感じになります。

それでもいいという方には、感謝山盛りです♡


なかなか更新できなくてすみません。
この第2話も半分ほど書いたところで時間がとれずに放置してました。

のんびり亀更新ですが、よろしくお願いします。






さくっ!

揚げたてのアジフライを小さなお口で噛んだ姫から、CMみたいに良い音が鳴った。

ここは俺のお気に入りの定食屋なんやけど、普段は頑固モンの親父さんが切り盛りしてるんや。

無愛想な厳つい親父が揚げてるとは思えへんほど、絶品のアジフライを食べさそうと入った俺ら・・・・・・ぷぷぷっ!!!

あの岩石みたいな顔した親父が姫を見てポカンって手が止まったんや!

きっと人形みたいに綺麗な姫に、親父もポォォ〜〜〜ってなったんやろな!


姫の本日のお衣装はというとやな、薄い水色のフワッとしたワンピースで、濃いブルーのコートを羽織ってるんや。

足元は膝までの白いブーツで、ワンピースと同じ色のストッキングを履いてて、上品な服がバリバリお嬢様!って感じなんだわ。

三つ編みの編み込みしてまとめた髪は、可愛らしゅうてよう似合うとる。


「ごきげんよう」
そう言って入っていく姫に、定食屋の親父に『ごきげんよう』って・・・・・・・ウケてもた。

「私、来てみたかったんです。有栖さん、ありがとうございます」
「喜んでくれて良かった! ほな席すわろか? メインはアジフライやからな」

俺たちはカウンターに並んで座りアジフライ定食を注文したんや。


ほんで出てきたアジフライを、姫が人生初で食べた様子が最初なんや!

最初は何もつけずに食べた姫が、一口ソースをつけて食べ、一口醤油をつけて食べ比べたんやけどね。

「どうや姫〜〜・・・アジフライにはソースやろ〜〜」
モグモグ食べてる姫が、う〜〜んと腕を組んで顔を傾げ・・・・・・・また一口分、箸で切り分けたアジフライにチョンっと何かをつけて食べたんや。

「姫、今なにつけたん? え? その白い粉っぽいの何?」
「お塩です! 全部美味しいんですけど・・・・・・・・私は・・・・・」



「嘘やぁ〜〜・・・・・こんなん、あんまりやぁ〜〜・・・・・・」
「どうされはったんです? 先生!」

「時絵さぁ〜〜ん、今日な姫をアジフライの美味しい定食屋に連れてったんです! ソースも醤油も試してもらって姫は何をつけて食べるんか聞いたら・・・・・・・・あああああ〜〜〜」

ソファーの上で悶えてる俺に焦れたのか、時絵さんは姫に「どうやったん?」と直接聞いたんや。


「私は・・・・・何も付けずに食べる方が好きです!」
「あら、新しいパターンや」

別に何をつけようが個人の好き好きやし、そこまで俺が騒ぐのもおかしな話やけど、ほら! あるやん! 好きな子には自分と同じにしてもらいたいっていう独占欲みたいなやつ!


だぁ〜〜かぁ〜〜らぁ〜〜・・・・・・・ちょっとショックやねん。。。


「よし! 今度はコロッケでリベンジや!!!」
「くすくす・・・・・・楽しみにしています」

ニコニコと微笑む姫に、俺は次の《デート》を申し込もうとしてるんやけど、これはちょっとハードルが高いかな〜〜〜・・・・・・

時絵さんは微笑みながら「お茶淹れまひょ」と台所に消えてくれたし、火村はまだ帰ってこんし、今が言いだすのがベストなんや!


行け、行け、ゴーゴー! 行け、行け、俺っ!!!






「取材もかねて編集部に宿とってもろてなぁ〜〜・・・・・・くぅぁあ〜〜〜・・・・・ええ感じやでぇ〜〜、まるで横溝正史の世界や〜〜・・・・・・ 」

温泉宿についた俺は、上機嫌で火村に電話かけたんや。

『俺も泊まりにいっていいか?』
「おい! 気色の悪いこというな!」

「有栖さん、散歩に行きませんか?」
「おう、ちょっと待ってな・・・・・・じゃ、姫と散歩行くから切るなぁ〜〜」

『かぐやも一緒なのか・・・・・・』
「おう! 姫は温泉初めてやからな! 取材の手伝いしてもらうって事で一緒に来たんや」


『・・・・・・・・・・かぐやは、いいのに僕はダメなのか』
「ダメダメ! じゃほんまに切るなぁ〜」


俺は電話を切って入口に立ってる姫を見たんや。

「なんや、まだ着替えてないんか?」
「着替える???」

こっちで待っててな!
姫を部屋の中にあげて俺は隣の部屋で浴衣に着替えて・・・・・・じゃあ〜〜ん!!! どや?

「部屋についてたやろ? 旅館じゃ浴衣に丹前(たんぜん)がマナーなんや」
「そうなんですか・・・・・では、着替えてまいります」

「うん、待ってるで〜〜」
「はい」

パタタっと隣の部屋に戻った姫がしばらくして浴衣を着て戻ってきたんやけど・・・・・・・・お! 女性用の浴衣は赤いんか〜〜

男物の浴衣と色違いなんやな・・・・・・しかし、姫は浴衣も似合うなぁ〜〜・・・・・・

髪もゆるくアップにしてあって首回りがスッキリして、うなじとか色っぽいなぁ〜〜

「幸村さんに着せてもろたん?」
「はい!」


そ、俺が温泉宿に行く話をしたら姫も行きたいってなって、幸村さんがあっさりOK出してくれたんやけど、保護者同伴やからOK出たんや。

それでも俺は、ええんや。
幸村さんは部屋で控えてるだろうし、俺はこうやって姫の浴衣姿を堪能しながら宿を探険できるしな〜〜

それに俺の取材の手伝いしてくれるって話やから、資料まとめとか姫にしてもらおうかな!


幸村さんに持たされた丹前を姫に着せてあげて、宿の中でも見て回ろうか?

「はい!」
「・・・・・・・・可愛いなぁ〜〜」

ウキウキしてるの見てて分かるほど姫は、はしゃいでるんや。

「ほな、行こか」
「はい」

浴衣着たビスクドールは、また違った美しさがあって廊下ですれ違う他の客達が、振り返って二度見してんのをみながら俺はロビーに来たんや。

壁にかかってる鏡で自分の姿を映して見ると、姫も真似して俺の横でポーズをとってる。

「楽しいか?」
「はい!」

「あ、あれはお面ですね・・・」
鏡とは反対側にある般若のお面を興味深そうに見つめる姫。

何を見ても目をキラキラさせてる姫は、ほんまに可愛らしいんや。



そのときや、入って来た客を見て女将が「ひっ!」と小さく息を飲んだんは。

「「???」」
俺と姫が女将のおる方を見たとき、仲居さんが客を案内しようと近づいて「ひぃぃ〜〜」とビビったんや。

そらそうやろう、その客は顔を包帯でぐるぐる巻きにして、おまけにサングラスまでかけてたんや。

「お客様、松籟(しょうらい)の間に御案内、お願いします」
女将から鍵をあずかった仲居さんが、その客を案内するのに俺らの横を通ったんやけど、ソイツ・・・・・俺らの横に来たら、ガッ!と俺たちの方に向いたんや。

俺は慌てて姫を背後に庇ったんやけど、こらこら姫、出てこんの! 姫はぴょこんって顔だしてるし。


「!?!?」

姫が顔を出したとき、きっとその客は姫を見たんや!
その客が、姫を見て息を飲むのを俺は、聞いたんや。

少し先に行った仲居さんを慌てて追いかけたように見えたその客は、ロビーから消えたんやけど。。。



「部屋に入っても、あの格好のまま」
「包帯とったら透明人間やったりして!」

「冗談やなしに指名手配の凶悪犯だったらどないしようって番頭さんと言うてるんです」
「ほら、最近シャンデリアなんやらいう過激派のぉ〜〜」

「シャングリラ十字軍ですね」
「ええ!」

仲居さんの報告に円陣組んで話してる俺たち、ちなみに上から、仲居さん・俺・女将さん・番頭さん・俺。
俺の横の姫がポツリと、話したのは。

「・・・・・・・1、顔に怪我をして治療中、もしくは傷があり見られたくないため、2、誰かに追われていて見つかりたくない逃亡犯・・・・・3、見られること自体を恐れている、ある種の恐怖症、トラウマから・・・・・・考えられる可能性はこれくらいでしょうか?」
「姫、ときどき火村みたいやな・・・・・・・」

「そんな火村先生に及びもつきませんから・・・・・」
「くぅわぁ〜〜〜その恥じらう顔も可愛いなぁ〜〜」

「私ら、どうしたら良いんでしょうか」
女将さんの困った顔に、姫も真剣に考えてる。

「ひとまず今夜は泊まっていただいて、そっとしておいた方がいいと思います。 顔をハッキリ見ないことには逃亡犯として警察にも報告できませんから」
「姫、ナイス!!!」

俺もそれしか出来へんと思うわ!
こういう所が客商売の難しい所やな〜〜〜・・・・・・女将さんも頷いてるし、ほなひとまず解散!

俺は姫と宿の周りを散歩して、夕食は姫の部屋で幸村さんと一緒に食べたんや。



そして翌朝、露天風呂の方に入りに来た俺は、離れからの仲居さんの悲鳴に駆けつけた。


昨日の包帯男の部屋で、1人の男性が死んでたんや。。。






すぐに警察を呼んで姫とロビーで控えてたら、鍋島さんと小野さん(小町さんって呼んでもいいかな? 小野やし小野小町からとったアダ名やねん)と、坂下君が来た。

「いやぁ〜〜まさか先生とこんな所でお会いするとは」
「僕が一番驚いてます」

「それに真行寺さんもいらっしゃるなんて!」

ん? んんっ?? なんや坂下君・・・・・えらい嬉しそうな声出してるなぁ〜〜

「のちほど第一発見者としてお話を伺います」
「はい」

ぞろぞろと離れの松籟の間につくと、鑑識さん達が仕事してるんや。
姫は俺の背後でジッと観察してるんや。

現場には出さない様にしてたんやけど、俺と同じに仲居さんの悲鳴で駆けつけたからなぁ〜・・・・・俺と同じ第一発見者になるんや。

絞殺された男は、誰も知らないうちにこの部屋にいて、殺された。
これは・・・・・・アイツ好みの事件やと思うし、鍋島さんならきっと火村に連絡入れとるんやろうな。

フロントは24時間態勢で、深夜に玄関から入った者はいない。
ならば裏口から・・・・・と鍋島警部達と裏口まで見に行ったけど、閂がかかってて中から手引きしないと入れないようになっとる。

「有栖川さん、状況からこの旅館の従業員、宿泊客全ての方に殺害が可能だったという事になります」
「そうですね」
「つまり有栖川さん、真行寺さん、御二方も容疑者の一人です」

いやいやいや、ちょっと! ちょっと、ちょっと!!!

「姫まで疑うんですか!? 小町さん!」
「何ですかその呼び名!」

「まあ素敵♡ 小野小町からとったんですか? 」
「そうや! 姫は かぐや姫から、小町さんは小野小町から! いい呼び名やろ?」

「却下します!!!」

「素敵なのに・・・・・小町お姉さま♡」

姫の声が可愛くて、小町さんに懐いとるなぁ〜〜

チラッと小町さんを見れば、姫を見て満更でもないような顔にも見えるんや。

まあ、ニコニコ笑顔の姫に懐かれて、悪い気するもんもおらんわな!


そこで火村が到着するからとロビーに戻った俺たちの前に、遅れて登場する火村。

「遅くなりました」
「まるで金田一耕助の登場やなぁ〜〜」

そしたら火村が俺の前に立って顔に指をさしたんや。

「犯人はお前だ」
「しょうもないこと言うな!」

慌てて鼻の前にある火村の指を下ろした俺やけど、悪い冗談は言うなや!


火村も交えて死体のあった松籟の間に戻った俺ら。

「かぐや、被害者の相羽徳明(あいば・のりあき)の情報を集めてくれ」
「はい! ではお部屋に戻ります」

とてとて出て行った姫を坂下君が振り返って見て、小声で「可愛いなぁ〜〜」って言ってんの、俺は聞き逃さんかったで!

悪いけど、姫は渡さへん!!!


それから火村と部屋の中を確認していきながら、状況を確認していった。

・部屋中の指紋が拭き取られている。
・浴室を使った形跡がない。
・髪の毛1本、検出できない。

それに・・・・・・唯一、鑑識が見つけたアメニティーの歯磨き粉のキャップが、浴室の排水口に落ちてただけ。
もちろん指紋はない。

使ったであろう歯ブラシは、ご丁寧に持ち帰ってる・・・・・・その事に火村は引っかかったんや。

洗面所で歯を磨き始めて歩き回る事はあっても、浴室の排水口にキャップが落ちていたって事は、わざわざ浴室まで歯磨き粉を持ってきたということになる。


感心する鍋島さんを見ながら、俺はふと姫が昨日言うた言葉をつぶやいた。

「そういえば姫、昨日の包帯男を見てこないな事言うとったなぁ〜〜」
「なんだ?」

「1、顔に傷があるから。 2、追っ手に追われる逃亡犯。 3、ある種の恐怖症やトラウマ・・・・・」
「・・・・・・・・・さすがだな」

「そうやろ? 姫は優秀やねん! だんだん火村に似てきたんちゃう?」
「・・・・・・・・」

俺の言葉に火村は・・・・・・


「違う、かぐやは真っ白な心で物事を観察し、ありのままを見ているんだ。 ・・・・・・何の先入観もなく、何の悪意もなく、ただ純粋に見つめて真理を知るんだ」


「俺は、違う・・・・・・真っ黒な闇を抱えて見ているからな。 ・・・・・・犯罪者と同じ視点で・・・・・」
「火村・・・・・・・」
俺にしか聞こえない声の大きさやから良かったけど、その言葉は諸刃の剣や。


「これから私、被害者のアパートに行ってみます。先生どうします」
「お伴します」

鍋島さんと火村が行くんなら、俺も行く!!!

って、思うたんやけど小町さんに、容疑者の1人やからって止められた。

しゃーないから、姫の部屋に遊びに来たんやけど・・・・・・・姫も調べ物で忙しいんや。

「・・・・・・・ノートパソコンやと電波悪ないか?」
「大丈夫です! 衛星回線を使用してますから」

「・・・・・・・もしかして、それも真行寺家のとか言わんよな?」
「もちろん、真行寺家専用の衛星回線でございます。 何かと物騒な世の中ですので、会社のデータなども含めて真行寺グループで使用しております」

「どんだけ金持ちなんやぁぁ〜〜〜」
「ほっほっほっ、有栖川先生、こちらで紅茶などいかがですか?」

幸村さんのいれた美味しい紅茶とお菓子をいただきながら、くつろいでたら小町さんと坂下君が探しにきた。



「・・・・・・・・ここ、旅館ですよね?」
小町さんの第一声は、それやった。

まあ、無理もないわな・・・・・・・昔ながらの旅館の部屋に、執事が居て、マカロンとか色とりどりの菓子の乗ったアフタヌーンティーのセットがワゴンであって、机の上には画面が3つも繋がったパソコンを使うビスクドールがいる。

畳なのが目の錯覚やと思うもん!

姫はふかふかのラグの上に座っとるんやけど、いつもの可愛らしいワンピース着てるし、小町さんが目をこする気持ちも分かるわぁぁ〜〜〜


呆然と立っている小町さんと坂下君に、幸村さんが座布団をすすめ、湯気を立ててる紅茶のカップをミニテーブルにコトっと出してるし。

「温かい紅茶など、いかがでしょうか? 私は真行寺家の執事をしております幸村と申します。 小野様と、坂下様ですね? いつもお嬢様がお世話になっております」
「い、いえ、私は何も・・・・・私は捜査一課の小野と申します」

深々と頭を下げて挨拶する幸村さんの態度に、小町さんも慌てて挨拶を返してる。

「かぐやさんにお話を聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「分かりました、どうぞ」

幸村さんに促された姫が、一旦パソコンから離れて2人と話をしてるけど、俺が言うたのと同じ事しか言えないわな。

一通り聴き終えた小町さんが帰ろうとするのに、坂下君が急にマジな顔して ・・・・・・・なんや、なんや?

「あの・・・・・・僕も『姫』って呼んでいいですか? 」
「それを聞きたかったんかい!!!」

「あの、それは有栖さんに聞いてもらわないと・・・・・・有栖さんしかそう呼んではいらっしゃらないので」

「先生っ!!! いいですか?」
「うぅぅぅ・・・・・・・・まあ、いい・・・かな」

本当は嫌やねんけど、名前呼びよりはいいかと、考え直したんや。
それからは小野さんは小町さんで、かぐやちゃんは姫になったんや。

2人が他の宿泊客に話を聞きにいくっていうから、俺もついてったんや。




「・・・・・・・できた! 火村先生はどこかしら? 」
「たしか被害者の方のお住まいに向かわれたと聞きましたが、確認いたしましょうか?」

「そうね、一度聞いてみて? 幸村」
「かしこまりました」

幸村が火村先生に電話をかけているあいだ、私は集めた情報をもう1度見ていた。


被害者の相羽徳明さんは大学生。
でもこのところ自分のアパートの部屋に引きこもっているのね。

・・・・・・・引きこもってる方が、のんきに旅館へなど来るかしら???


人と人との出会いや出来事は、まるでパズルのピースのよう・・・・・・

いくら引きこもりでも一人暮らしでいれば、必然的に最低限のお出かけはするもの。
夜中のコンビニ通いをしてた彼は、通っていたコンビニの店員が興味深く見ていたとは思いもしなかったでしょうね。

『なんか飲み物のケースに怯えながら取ってたの印象的でしたね〜〜』
「飲み物のケース?」
『ガラスなんすよ! なんか・・・・・自分が映ってるのが見たくないようだったなぁ〜〜』

ガラスに映る自分が嫌・・・・・・

『相羽って私の高校の同級生です! 昔は明るかったのに、だんだん暗くなってて・・・・・男子のイジメとかって噂聞きました』

『その人の家によく配達に行ってます! 俺、ピザ屋のバイトで配達するんですが、見ちゃったんですよね〜〜 洗面所の鏡がヒビ入ってて・・・・・あれ、あの人がしたんでしょ? 危ない奴だと思ったんだ』



・・・・・・・・・色々な人が見た、彼の断片の記憶のピースを、私は繋ぎあわせてみた。


・・・・・・・・・そのピースは、哀しい形をしていたの。。。





「ねえ、幸村」
「はい、お嬢様」

「自分の姿を見るのが怖いなんて、あるのかしら?」
「自分の姿を、ですか? ・・・・・・・・そうでございますね〜〜」

一瞬考えるそぶりな幸村は、だけどもう答えが浮かんでいるの。

「自分の姿を醜いと思い込んでしまう、心の病がございます」
「そうなの・・・・・」

私は幸村の言葉もレポートに書き、彼の調査報告書を完成させた。
印刷したレポートを幸村がファイルに入れてくれ、美味しいお菓子と紅茶をいただいていたら、火村先生が部屋にやってきたの。

私は幸村にコーヒーを頼み、先生にレポートを渡し読んでもらい・・・・・・・この読んでもらう間がすごくドキドキしちゃうの。


感想を待っていたら火村先生は、コーヒーを一口飲んで「美味い」とつぶやいてた。


「かぐや、よくやった」
この言葉でホッとした私。。。


「しかし毎回思うのだが、かぐやはどうやって情報を集めているんだ」
「あ、それな! 俺も気になっとんのや・・・・・・どうやっとんの?」

有栖さんも私の部屋で合流して、一気に賑やかになったわ。


「私が外と繋がれるのは、パソコンだけでしたから・・・・・・SNSなどでお友達を作ったんです」

「一度かぐやのSNSを覗いてみたいものだな。どれほど人脈があるのか見てみたい」
「見せませんよ? 皆さん、私の大事なお友達ですから・・・・」

にっこりと微笑むビスクドールは、唯一の繋がりの相手を、愛しそうに微笑むのだった。


「それはそうと、かぐや・・・・・・楽しめたか? 温泉は」
「はい! お肌がツルツルになるんですね、温泉って! 楽しいから家でも入りたいくらいです!」

「そうか、よかったな・・・・・・」

火村先生の手が、私の頭をポンポン撫でてて・・・・・・・不思議な感じです。

優しく撫でられるって、こんなに嬉しくなるんですね!

母とも幸村とも違う手の大きさや温もりに、私はいつしか笑顔になっていたの。






事件から数日たった日、犯人が分かった先生は有栖さんをお供に出かけられました。

私は幸村を帰して、今夜は時絵さんの家で泊まる事にしたんです。


そして、その夜・・・・・・・深夜に目が覚めた私は、隣の部屋からの呻き声に気がつきました。

ショールを肩に羽織り、自分の部屋を出て隣の・・・・・・火村先生の部屋の前に立って戸惑う私。

何度か遭遇したこの呻き声に、私は何をどうしていいのかも分からないけど、何かしたくて・・・・・・・・



この部屋の扉が閉まっていたら、部屋に引き返そう・・・・・・・

もし開いていたら、 先生を起こしてしまおう・・・・・・・・もしそれで、先生が怒れば謝まろう。



・・・・・・・・謝っても許してもらえなかったら、ここを去ろう。


そこまで決めて、私はドアの取っ手を引いたんです。

ギィ〜〜〜と軋みながら開いたドアに、静かに中へと入った。


室内に入ると、窓から差し込む月明かりで意外にも、明るかった。


「ぐぅ・・・・・はぁ・・・・・・」

うなされている先生に近づいて、その肩を揺すって起こそうとした私は、いきなりガバッと腰に抱きつかれ、危うく悲鳴を上げそうになったの。

「がぁ・・・・・ううううう・・・・・・」
寝たまま私の腰に腕を回して、子供みたいに抱きついてくる先生に、私はなぜか・・・・・・先生の頭を撫でていたの。


腰に抱きつかれたままベットに腰掛け、ちょうどお腹に顔を押しつけてくる先生の後頭部を撫でてたの。


ふわふわの髪の毛の感触が、なんだか『もも』を思い出してしまいました。

ももより、毛足は長いのですけど・・・・・・・あら、猫と同じにされたら怒られますわね。

先生の後頭部を撫でていたら、いつしか唸り声が消えて・・・・・・気持ち良さそうな『くぅーくぅー』という寝息が聞こえたの。


そのころには腰に回された腕も外れてて、ああ・・・先生もう1度、眠れたのね 良かった。

そーっと、腕を外して立ち上がった私は、先生に布団をかけ直して部屋を出て行ったの。


「おやすみなさい、先生」

小さくそうつぶやいて部屋を出た私はベットに戻り、すぅ〜〜っと眠りに引き込まれていった。



それから私は、夜中に先生のうなされる声が聞こえたら、先生の部屋に入っていきました。

毎回、腰に抱きつかれて先生の後頭部を撫でて、先生の寝息が聞こえたら部屋に戻る。


私も毎日、この下宿に泊まることもないですから、回数にすれば少ないです。


そのときも、ふわふわの髪を撫でていたら、不意にお腹の方からくぐもった声がしたのです。


「かぐや・・・・・もしやいつもこんな風に僕の部屋に来てたのか?」
「はい、夜中の侵入者は私です」

「このところ良く眠れていたのは、かぐやのおかげだったんだな」
「・・・・・・・お怒りにはなりませんの? 黙ってお部屋に入ってしまいましたのに」


「・・・・・・・・誰かに無断で部屋に侵入されるほど気色の悪いものはない、だが・・・・・それ以上に、有難かった」
「先生、このままもう1度お眠りになられたら?」

私の腰に回された腕、お腹に埋められた顔、全てそのまま動こうとしない先生は、コクリとうなづいて目を閉じられたの。

私はいつもの通り、ふわふわの髪の毛を撫でながら過ごしていると、くぅーくぅーと寝息が聞こえて・・・・・・・

そっと部屋を後にした私は、自分のベットで朝まで眠ったの。



「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、幸村」

翌朝、私の朝食を作りにきた幸村に挨拶をし、コーヒーを淹れに台所に立っていると、玄関の開く『ガララッ』という音が聞こえた。


「おはようさん!」

「まあ、有栖さん! おはようございます」
「有栖川様、おはようございます」

「姫と幸村さん、おはようございます! わぁ、それ姫の朝食ですか? うまそぉ〜〜」
「よろしければ有栖川様も如何ですか?」

「いいですかぁ〜〜! 遠慮なく いただきます」

私の朝食は甘くないパンケーキと、オムレツ、サラダにカフェオレなんです。

時絵さんはいつも一緒に食べていただいてて、今も幸村が運んだ朝食を「お先、いただいてますわぁ〜〜」と美味しそうに食べているの。

私はカフェオレを入れ、有栖さんにコーヒーを出したの。
飲み物の用意を私がしている間に、有栖さんの分の朝食が出されてて、珍しく有栖さんと朝食をいただいているの。

「火村先生はまだ寝てらっしゃいますけど、有栖さんは先生に御用なのですか?」
「ちゃいますよ〜〜! 幸村さんに聞いたら姫が昨日ここに泊まったって聞いて、朝から会いに来たんです」

「私に、何か御用でした?」

パチパチと長い睫毛で瞬きする姫が、キョトンと俺を見てる。

まあ、御用っていうか・・・・・・・幸村さんに大学の講義が無いって聞いて、デートに誘いに来たんやけど。

「姫さ、今日どっか行かへん? 京都の観光に行かへんかなぁ〜〜って!」
「行きたいです! 大学と屋敷とここの往復で私、せっかくの京都の観光をしていませんでした」

「せやろ! せっかく京都にいるのに観光してへんのは勿体無いで!」
「連れてってくれるんですか?」

「おう! 俺に任せとき!」
「お任せします♡ よろしくお願いします」

「ようございましたな、お嬢様。では私は一旦お屋敷に戻らせていただきます。 何か御用がおありでしたら連絡を」
「分かったわ」

それから幸村から、観光に真行寺家の車を出しましょうと提案があって、有栖さんが断るというやり取りがあったのですがね。

電車やバスで周ろうと有栖さんに言われて、気がついたんです。

「姫さ、電車もバスも乗ったことあらへんやろ? なら乗り物も楽しもうや」
「はい!」

では私、支度してきますね!
私は部屋に戻って出かける用意をして、その日は有栖さんと色々なところへと案内していただいたんです。


外の世界は、パソコンや図鑑とかで見た歴史的建造物が、目の前にあって・・・・・・平面で見ていたものが、目の前に広がる感動は、私の胸をいっぱいにさせるんです。



「姫・・・・・」

金閣寺の金ピカなんを見て、姫はどうしたかなって見たらさ、姫・・・・・・涙ぐんでるんだ。

「え? 金閣寺で泣く? なんで?」
「・・・・・・図鑑やネットでしか見てなかったものを、こうして自分の目で観れるのが、嬉しいんです」

その姫の言葉に俺は、胸がつまった。


修学旅行やら、何やらでダルそうに見ている学生達が横にいるのに、このお姫さんはキラキラとした瞳を涙で潤ませて感動してるんだ。

このピュアさが、俺はたまらんのよ。


近場のカフェで抹茶オレを頼んだり、スィーツを食べたりしながらゆっくりと周った京都は、俺のかけがえのない時間になったんや。


ああ、ほんま俺、姫に本気やわ・・・・・・・


そうして火村の下宿先に戻った俺らは、居間で時絵さんに土産を渡す姫を眺めてたんや。

「きれいなポストカードと、時絵さんに似合いそうだと思ってスカーフもあるんです。 よろしければ受けとって下さい」
「あらあら、センスのいいスカーフですなぁ〜〜・・・・もろても いいのん? ありがとう かぐやちゃん」

キャッキャと嬉しそうにはしゃぐ時絵さんが、少女に見えるわぁ〜〜・・・・・姫も喜んでもらえて嬉しそうやしな。

これがいいか、あれがいいかて、だいぶ悩んだもんな!


「これは火村先生に、友禅のブックカバーです。 先生に似合うかと思って」
「ありがとう、かぐや」

「良かった・・・ お土産を選ぶなんて初めてだから、緊張しましたけど・・・・・楽しかったです!」

ニコニコ、ほんま天使の笑顔やわぁぁ〜〜〜

火村と時絵さんへのお土産を選んで、自分のもの1個も買うてへんのやで、姫は!

「かぐや、幸村さんには買ったのか?」
「はい! 幸村には清水寺で買った御守りをあげようと思います」

「そうか、幸村さん泣きそうだな・・・・・」
「感激するでぇ〜〜・・・大事な大事なお姫さんからの、お土産やからな!」

火村との会話に入りながら、俺はカバンから土産物の袋を出したんや。

「これは俺から姫へのお土産や」
「私に!?」

パァァ〜〜〜っと明るくなった表情に満足した俺は、「開けてみ?」と言って姫に袋の中を見させたんや。

姫の手に出てきたのは、友禅の髪留めで赤と金糸銀糸が織り込んであって姫に似合うと思ったんや。

「ありがとうございます!」
「うんうん、良かった」

「つけてみていいですか?」
「いいよ」

長い姫の髪の毛をまとめるバレッタが、白い肌によう似合うてる・・・・・・・バッチシやん!

時絵さんが手鏡で姫に見せてくれて、姫も嬉しそうや。

うんうん、こうやって少しづつ姫との距離を縮めよう。


そしていつか、姫の心に俺がいっぱいになるように なればいいなぁ〜〜〜・・・・・・






姫と有栖さんと、火村先生の日常を絡めながらなお話です。

少しづつ距離が縮まればいいなぁーー。


ただなんかこの頃、精神的にキツくて・・・・・・何でしょうね(笑)

では皆さま、風邪など召さぬよう、お気をつけて下さいませ。。。

関連記事

コメント

Secret

プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

ブロとも一覧


Cat Home

暁の唄

ちび眼鏡日記

月が浮かぶ夜

まきまきまき

うみにふわりふわり

snowdrop

みやびのブログ

よみよみ

SweetBlackな世界

日々のこと

きみと手をつないで

shibushibuuu

ゆめの世界

井の中の蛙

月の舟 星の林

古いおもちゃ箱

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR