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①【第二章】☆月に照らされ、陽に焦がれ……

【闇色の月】と重なりながら、こちらはピダムをメインにスンマンとの絆とトンマンとの恋を書いていきたいです……
主役はピダムで考えております。

こちらを見る前に【月に照らされ、陽に焦がれ・・・】【闇色の月】を先に読んで下さると話が分かります。

※※※

「そこ! 列を乱すな、手綱をしっかりと持て!」

練習用の馬場で声を出すのはピダムだった。

蹄の音が近づいた。
「ふふ……厳しいな」
「スンマンか!見てないで手伝えよっ」
「そのつもりだ………はぁっ!」
スンマンが列についていけない隊員に馬を走らせ横に並んだ。


「よいか、手綱はきつく引っ張っていては馬が苦しいのだ」
「あ!スンマン様……すみません」

「こう……ゆとりをもって……鞍を挟む足の感覚と鐙の蹴り具合で馬に指示を出すのだ」
「はい」
「やってみなさい」
「はい!」

「できたではないか!…馬は恋人のように扱えよ……可愛い恋人を気遣うようにな」
「はい!スンマン様」

………不思議なやつだよな、スンマンて……

……生まれも分からない胡散臭い俺を《我が友》と呼び、自分の持てるものを全て学ばせようとする………

……この新羅の最高の身分、聖骨の公主が……王位継承権がトンマン公主の次のやつが……


戻ってくるスンマンを見ながらそんな事を考えていた俺は……変な顔でもしていたのかな……

「ふふ……どうした?」
スンマンが俺を覗き込む

「今夜、時間あるか?」
「お前のためならば空けよう……私の宮で夕食でも食べるか?」
「……ああ」


なんだろう……なんだか、もやもやする……

「じゃ、時刻になったら来い!…はぁっ!」

華麗に手綱をさばくスンマンを……俺は見送った。

※※

「さ、タンシムの鶏料理は旨いぞ」

「すっごく旨い!」

美味しいから次々骨にした料理に腹が膨れた俺は食後、スンマンの煎れた茶を飲みながら……もやもやを話すか迷っていた。

「ふふ……話は何だピダム」

はっ!と顔を上げればスンマンが俺を見つめていた。

深い眼に頭の中を見透かされそうで……
「どうして俺を助ける?」
「ん?」
「とぼけるなよ、聖骨の公主がどこの馬の骨か分からない俺に……どうしてここまで肩入れするんだ」

「聞いたぞ!騎馬部令に俺を任命するよう陛下に進言したと……何故だ!」

「気に入ったから」
お茶を一口含んだスンマンが、ゆっくりと話した


「は?」

「我が友と……言っただろう?」
「それもだ!」

「くっくっくっ……何もかも聞きたいのか?」


スンマンが侍女に酒の用意をさせて話しだした。

※※※

「私がお前を友と……友にしたいと思ったのはな……抱える闇が同じな気がしたのだ」

ぐびり、と酒を一口飲んだスンマンが……何でか寂しげで……

「私は聖骨の公主だが……八才の頃、侍女に毒を盛られ死にかけた……その侍女は父の崇拝者でな」

「崇拝者……」


言葉を切ったスンマンの顔が……少し青ざめていた。

「父がたった一言その侍女に聞かせた言葉で……私は死ぬ所だった」
「そんな事があるのか……」

「『スンマンは要らない』……そう父上が言った」
「な!」
「ふふ……要らないと言われ毒を盛られ……直ぐに吐き出した私が問い詰めれば侍女は平然と答えた」

「……なんて」
「父上を苦しめる化け物を退治しただけだと……」

「なっ、お前……それでどうした」


「ふふ……斬り捨てた」
「八才で……剣を使えたのか?」
「私用にあつらえた剣でな……一度肩から斬っても子供だから力が足りずに……直ぐに心臓を貫いた」

スンマンの血の気の引いた……表情のない白い顔で唇だけが動いていた。


「大丈夫か……」
さすがにピダムも顔色の無いスンマンを気遣って見ている


「その侍女はな……生まれた私を我が子のように育ててくれた……母のように思っていた侍女だった……産んだ母は私を嫌い抱きしめることも無かったからな……」

「!!……スンマン」

盃を握る手に力が入りぶるぶると震えている。

瞳には蒼い焔が立ち昇るスンマンが……ほぅ~~と詰めていた息を吐いた。


「気持ちの上での母を殺したようなもの……それから私は三日三晩高熱にうなされ、意識がなかった」
「お前……」


それ以上何も言えずにスンマンを見る俺に、あいつは真っ青な顔のまま微笑んだ

「三日三晩看病してくれたのがチョンミョン姉上だった……」
「それでお前はチョンミョン公主の為に色々と動いていたのか……」


ふっ……と吐息をはき微笑むアイツは、寂しそうで……

「なぁ……ピダム、捨てられた子と拒まれた子と……供に親には縁が無いと思わないか?」

「ああ……そうだな」
ピダムも一口酒を飲んだ。

「しかも私は……母とも思っていた人を自らの手で斬った……ふふ……化物じみた発作を…起こすようになったのも…それからだ」


「発作?」

「ああ……お前なら。  ピダムならば判るかな……」


「激しすぎる感情を常に抑えている私の箍が外れて………」

「周りに居る者達……全てを殺してしまう……私の意識の無いままに」

「意識の無いまま……」

「ああ……発作が起こり気がつけば、周りは血の海になっている………そのむせかえる匂いに、何度狂いそうになったか……」

「幾つからだ?」
「……十になるか、ならないかだったかな  初めての発作は」

「どうして起こった?」

「中源で盗賊に拐われてな……縛られていた筈だが発作が起こり………盗賊のねぐらにいるもの全てが皆、死んだ」


コイツの話は普通の人なら眉をひそめ、忌み嫌うだろう……師匠ならば怒号が飛んでくる

でも………俺は………

「俺は……俺は十のとき、師匠から『大事なものだ』と言われた物を盗賊に盗られた」

「それで粥に毒を入れ……盗賊達に食わせたんだ……」

俺も血の気が引きながら話していた

「今思えば食いつめて流民になった奴等だったんだろう」


「女や子供もいたか?」
「ああ……粥を食べて皆、死んだ」

「その時は分からなかった……師匠に大事な物を取り返して褒めてもらえると………思って……た」


「叱られたのか?」
「いや、叱られず……距離をおかれた。  並んで眠っても昨日とはまるで違う扱いで………その時、俺は父親のように思ってた師匠を……失ったんだ」


「私だとて……盗賊達の寝ぐらには………女も子供もいたが、皆血だらけで、死んでいた」

苦しそうに、呻くように言うスンマンが俺を見た


「過去に犯した罪は自分の未来で償おう………血の海の蒸せかえる匂いの中で私はそう誓った……お前は?」
「おれは・・・・・・」

じっと見つめるスンマンの目が俺の中まで見透かすように・・・・・・でも静かに見ている

コイツなら誰にも言えなかった  誰も分からない  俺の気持ちを分かる・・・のか?

※※※

「俺は罪を罪とも思わなかった………でもトンマンに出会い、お前に出会い、罪だと………分かった」

「正直、国の未来なんて知らねぇー そんな事、考えた事も無かった………ただ毎日、師匠に怒られないようにとか、強くなりたいから稽古したりとかばかりだった………」

「俺は、俺は・・・・・・人を殺す事が罪だとは今でもよく分からないんだ・・・・・・俺をバカにする奴、盗む奴、歯向かう奴・・・そんな奴を殺して何が悪いんだろう?  ぶちのめして言う事を聞かせる・・・それの何が悪いんだ? 師匠は俺がそんな事すると決まって怒鳴って打った・・・でも、何故かなんて聞けなかった・・・」

誰にも聞けなかった・・・・・・言えるわけも無い事を初めてコイツに話してしまった


笑うか? バカにされるか? 呆れて俺から離れるか? 嫌な奴だと眉を顰めて・・・嫌うだろうか?

俺は・・・スンマンを見つめた・・・・・・

***

ピダム・・・・・・おそらくお前の心の中をここまで話したのは私が初めてなのだろうな・・・

潤んだ瞳が私を見つめて揺れている・・・・・・幼い子供のように頼りなく・・・

「ピダム・・・お前は昔の私のようだ・・・」
「え?」

「私もそうだった。 人など殺して何が悪い? 私に歯向かい、剣を向け人質にして金を欲しがる・・・そんな盗賊共、斬って捨てて何が悪い!  と、斬り捨ててた私に・・・」

ピダムが息を呑むのが分かり、私の次の言葉を待っている

「だがな、中原を抜け出し新羅に向かう途中で私は虫に驚いた馬から落馬して、気が付いたら盗賊どもの寝ぐらにいた」

「剣も飛ばされた私は少し様子を見るために黙ってそこにいた。  そうして私は盗賊達が食い詰め奴婢になるのが嫌で逃げ出した農民のなれの果てだと・・・・・・知った」

「弱い者が集まり悪い事とは思っていても盗みを働き、それを皆で分けてやっと生活していたんだ。  だが、怪我をした私に出来る限りのことをしてくれる者達を見て私は自分の考えが・・・・・・いかに浅かったと思った」

ピダムの目が食い入るように見て、耳が、いや・・・全身で話を聞いている

「私が動けるようになり町に出かけた ある日。  討伐だといって遊び半分で貴族達が盗賊の寝ぐらを襲った・・・・・・兵を連れてな」

「町から戻った私の前には優しかった盗賊達や子供達が剣で刺され、斬られて死んでいた。  しかも女達は兵達に犯されて・・・・・・幾人もの男に嬲られてから殺された」

「なあ、ピダム・・・・・・その光景に、血の匂いに、女達の悔しい怨嗟の呻きに・・・私はどうしたと思う? お前ならどうした?」

「スンマン、お前なら剣を取り斬っただろう・・・  俺なら、いや俺も斬る! 皆殺しだ」
「ああ・・・その通りだ」

「私は斬った。 遊び半分でまだ年端もいかぬ娘を手篭めにした貴族も、一人の女を十人で犯して回った兵達も全てを斬り捨て・・・・・・火をかけた」

「なあ、ピダム。 何が正しくて何が悪いのか・・・これを自分の真ん中に据えている者が果たしてどれほどいるんだろうな・・・ 」

真っ直ぐにピダムの顔を見るスンマンの視線にさらされ、ピダムもまた考えていた

「生きるために盗賊という悪をなし、その盗賊を討伐するという大儀の上で非道を行う貴族・・・ 単純に盗賊が悪で、退治した貴族が善と思うものもいるだろう・・・  だが、果たしてそうなのだろうか? 」


「盗賊も生きるためにしてたこと・・・・・・」

呟くピダムの隣に座った私は静かにピダムの肩に頭をのせた・・・お前に人の温もりが救いになると気がついてほしくて・・・

*****
  
ここから、スンマンのピダム育てが始まります・・・
スンマンの過去の自分と、抱える闇が似ているピダムを成長させたいなぁ・・・

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②【第二章】☆月に照らされ、陽に焦がれ・・・・・・

ちょっと暗いシリアスですが、良かったら読んでください

*****

「なあ、ピダム  ユシンやアルチョンならば、どうすると思う?」
「あいつらか?」
「ああ・・・」

ふんっ! と馬鹿にしたように笑うピダム

「あいつらなら貴族の事を報告しに徐等伐にさっさか帰るだろうさ 」
「そうだな・・・」
「そうして貴族の間で《なぁなぁ》で話をつけて終わるんだ」
「ああ、その通りだろう・・・  だがな、それも一つの方法なんだ」

「なんだと!」
「いきり立つな、ピダム。  そこで終われば腐った貴族のよくあることだがな。  ずっと監視し、何事かあれば処罰する事ができれば・・・・・・どうだ?」

「処罰・・・できるのか?」

そこで、盃の中の酒を ごくごくと飲み干したスンマンの眼が、爛々と蒼く輝く

「その前に、お前はどうする?」
「俺は・・・・・・剣で斬り、殺してやる」
「私と同じだな  だがな、ピダム」
「ん?」

「その方法だと根本が腐ったままで解決にならない・・・」
「腐ったまま・・・  それは貴族か?」

答えずに盃に酒を入れ、ごくごくと飲み干すスンマン

「答えを見つけるのは己の中の信念だ  ピダム、学べ。 経験し吸収しろ・・・・・・何が必要で何が不必要か・・・  自分の生き様を思い描き、そこに向けて歩むのだ 」
「スンマン・・・ 」

「今まで、お前の世界はムンノ公だった。  ・・・だがムンノ公が亡き今、お前の世界は姉上になった・・・そうだろ?」

「 スンマン!!!  ・・・どうしてそれを・・・」
驚愕のピダムの顔・・・  血の気がなくなるその手を私は握り締める・・・ありったけの力を込めて・・・

しばらくして落ち着いたピダムが、瞬きながら涙が溢れそうな眼で私を見つめる


「・・・どうして師匠のことを? 」
「ヨムジョンを問い詰めた・・・  もし、また私の意思を無視すればヨムジョンは斬る」
「スンマン・・・」
「話してみたかった・・・ムンノ公と」

「なあ、スンマン」
「ん?」
「俺は何を学べばいい? 何を経験して吸収すれば・・・・・・男として、人として公主様に認められる?」

「王室、貴族の関係と昔からの出来事。 騎馬隊を統率し、隊員を惹きつける人心掌握の方法・・・特に今は、騎馬隊員を全員、お前に惹きつけろ」

「そんなこと・・・ 」
「無理ならば、姉上もミシルも新羅も諦めろ!!! 」

「 スン・・・マン・・・」

「人には心がある。 心には機微がある。 機微を知り誠を示せば味方にできる・・・・・・味方を増やせば力になる。  力をもって成さねばならぬ事が、ある」

ふぅ・・・と息を吐き、スンマンはピダムの肩を がしり!!! と音が聞こえるほどに抱きしめた

「私と同じ闇を抱くお前が、昔の私を見るように思えて・・・・・・放ってはおけないのだ  これは理由も何もない。 最初に言っただろ? 性に合うと・・・」

「信じるよ・・・ この世で信じられるものなど何も無いと思ってた。  でも、お前は・・・お前だけは信じる」
「ふふ・・・・・・私もだ。  おかしな話だが色恋抜きの、この感情が何なのか自分でも分からぬ」
「おかしな話だな・・・」

「そういえばさぁ~~ 初めて会ったときに感じたな、スンマン」
「ああ・・・  ソクプムと比才をしてる間中、ずっとお前がどう攻撃するか、どう避けるかわかったな・・・」
「俺もだ  そうして立ち位置を入れ替える瞬間も合図もなくうまくいった」
「ああ・・・  不思議な縁だな」

組んでいた肩を放したスンマンが、ピダムと自分の盃に酒を入れ持ち上げて意気揚々とした朗らかな顔をピダムに向ける

「我が友に!」

盃を受け取ったピダムも高揚した顔をスンマンに向け、盃を高々とあげてから・・・・・・二人は一気に飲み干した

「俺の友! スンマンに!」

その夜・・・二人は酔いつぶれるまで飲み明かし、肩を組んで眠ってしまった

***

「いててぇーーー 」
「騒ぐなピダム、頭に響く・・・  うっ!!!」
「そんな事いったってよぉーーー  うっ!!!」

仲良く青い顔をした二日酔いの二人は、騎馬隊の執務室に入ってきはしたものの・・・・・・どかっ! と椅子に座ったまま動けなくなっている

「スンマン様、いかがされました?」
ユシンが聞けども二人が顔を見合わせ、吹き出して笑っては、また頭痛に「いててっ」と呟いている

「スンマン様、これを・・・」
ポジョンが二日酔いに効くというお茶を煎れスンマンの前に置いて・・・・・・ピダムの前にも置いた

「お前も飲め・・・スンマン様はともかく、酒に弱いのだろう」
「へぇーーー 何か入ってないか?」
「失礼なことを言うな!!!  ならば飲まなくともよい!!!」
「ムキになるなよ、冗談だろ? 飲むよ、飲むから置いてくれ」
「・・・・・・まったく、素直に礼は言えないのか!」


「・・・・・・ありがとよ・・・ 」
照れくさそうに礼をポジョンに言うピダムの様子にスンマンは微笑んで、ポジョンは信じられないと驚愕の顔を向けていた

ピダムが礼を言うなど、公主様の前以外ではありえない・・・・・・ポジョンが固まり、黙ってみていたユシンでさえ、黙ったまま固まっている・・・

「そんな見るなよ、照れるじゃねぇーーか 」
「いや、照れる所ではないだろう」
「ほーか?」
二カッと笑うピダムの、やけに白い歯を見ながらポジョンは呆れ、一緒になって微笑んだ

***

「王宮の書庫には入った事あるんだろ?」
スンマンに連れられて書庫に入ったピダムは頷く

「えーーっと、コレとコレとこれ・・・・・・取りあえずはこれくらいか」
「おい! コレくらいっつっても・・・・・・山になってるぞ」
「ははは! 新羅七百年の歴史が山一つで終わるものか!」
「でもーーー 」

子供のように不満を言うピダムにスンマンが、じろり! と睨みつける

「大の男がこれ位でぶちぶち言うな! 分からなければ教えてやるから」
「・・・わあったよ!」
「今、選んだ物は真興大帝からの時代のものだ。  貴族の動き、ミシルの動き、王宮の弱体化、真興王の業績とそれに続く王の事柄・・・・・・よく読んで頭にいれろ」

「うえーーー 」
言葉とは裏腹に真剣な顔をして読み始めるピダムをしばらく眺めてからスンマンは書庫を出て行った

一心不乱に読むピダムは一冊、また一冊と読み終えていった

***

辺りが暗くなり、読み終えたピダムが伸びをして首をこきこきいわせてる頃、スンマンが書庫に戻ってきた

「ほぉ・・・  一日で全て読み終えたか・・・」
「ああ! 俺が本気になったら ちょろいものさ」
「頭には入ってるのか?」
「・・・はいってる。  王室がいかに弱くなったかも見た」
「貴族達の関係は?」

「入り組んでて分からない・・・・・・こいつらは何でこんな事を?」
本を開き疑問の場所を開けば、スンマンがニヤリと笑った

「結局このあと自作農をしていた農民が小作人に、小作人は奴婢に転落した。  自作農の土地を手に入れた貴族は自分の領土と年貢を増やせ・・・・・・王室は?」
「直接入る年貢を失う・・・・・・」
「そうだ、そして年貢が減れば金も減る、金が減れば? ピダム分かるか?」

「金が減れば・・・・・・力が減る。  貴族はぬくぬくと私服を肥やして王室は痩せ細る・・・」

「そうだ、そうして姉上がやりたい事も金が無いからすぐには出来なかった」
「土地の開墾と、武器用の良い鉄で作った農具・・・」


じっとピダムを見ていたスンマンだが、ふっ・・・と笑い問いかけた

「なあ、ピダム」
「なんだ? スンマン」

「この国を、どう思う?」
「この国・・・新羅か?」
「ああ・・・  どう思う?」

少し考えた俺は慎重に言葉を選びながら、でもスンマンの眼を見て言った

「俺の生まれた国。  色々地方を回ったけど、土地の人達は生きるのが精一杯で・・・でも楽しんで暮らしてる・・・良い時はそうだが・・・」
「・・・それで?」
「租税が増えて、借金して・・・娘を妓房に売る親もいる 」
「そうだな・・・  借金の代わりに妾に差し出す親もいるな 」
「戦になれば男手を戦争に取られて、死んだって幾ばくかの金が王室から出るだけだ」

「その金さえ役人がちょろまかして届かない者もいる」
「はあ??? 本当か?」

「ふふふ・・・ 役人と言う貴族が 目の届かぬ事を良いことに着服するんだ」
「・・・・・・腐ってる」

ピダムの目に、初めて民を思う気持ちが見えてきた・・・  変わり始めたか・・・スンマンの呟きにピダムがスンマンを見た

「あとは明日にしよう」
「あーー 疲れた」
「夕飯は私の宮で食べるか?  タンシムが腕を振るってくれるぞ」
「へへ! 鶏肉出るかな?」
「言ってある。  さあ、行こう」

二人が本を戻して書庫を出ようとしたとき、トンマンが入ってきた

「あ、公主様」
「姉上、夕飯は?」

「お! スンマンとピダムか・・・・・・夕飯はまだだな」
「ならば私の宮で一緒に食べませんか?」

「ん・・・調べ物がしたいのだ。  終わり次第行こう!」

中に入るトンマンにスンマンはピダムの背中を押して手伝うように言い出せと目で合図する

「こ・・・公主様。 お手伝い致します」
「いや、本には興味が無いだろう? ピダム、無理をするな」

「姉上、ピダムは今、本の虫ですよ・・・  ここら辺りは読んでます」
スンマンが指し示す場所を見て、トンマンがピダムを振り返った

「へぇー ピダムが本の虫! 想像しにくいが・・・そうだ!」
「公主様?」
「私が質問して本当に読んだか試してやろう 」

楽しそうに王室や新羅のことを質問するトンマンに、答えるピダムを残して書庫から出ると扉の前には護衛花朗のアルチョンが立っていた

「スンマン公主様はピダムが気に入ったのですか?」
「・・・・・・ふふ  何故そのような事を聞く? アルチョン朗」
「聖骨の公主として、一人に肩入れが過ぎるのではないでしょうか?」

「仕方あるまい、気が合うのだから」
「その様な軽い言葉を!!」

「なんだ? 友としては認められないか?  それでは、ピダムを抱けばよいのか? 色供として扱えば納得するのか?」
「そのような・・・ことは・・・ですが、ピダムは氏素性も分からず礼儀も知らない者です」

答えに詰まるアルチョンが兼ねてより思っていた本音をスンマンにぶつけた

そのときスンマンの瞳に蒼い焔が立ち昇り、アルチョンを鋭く射抜いた

 《  かっ!!!  》

その眼に刺し貫かれたアルチョンは、スンマンの聖骨としての・・・ まごうかたなき王族として威厳と光に押し黙った

「アルチョン、よく聞け。  私は私の意志をもってピダムを友とする」

「姉上が公主と認められたのはひとえに死をも構わずにミシルに対したピダムがあってこそ・・・・・・ではないのか!」

「氏素性・・・はっ! 血が何だ! 王の血でも狂人はいるし、農民でも識者はいる!  ミシルの血があるポジョンとて私の命を救ったのだ・・・ 血筋ではないのだアルチョン、私が認めるものは・・・・・・分かってくれ」

「申し訳ありません。  出過ぎた真似をいたしました」
深々と頭を下げるアルチョンの中で、スンマンの存在が主のトンマンと同じく我が身をとして仕える王族として位置づけられた夜だった。

***

それから十日あまり、時間があればスンマンとピダムは王室の書庫へと入り書物を読み漁り質疑していた

その、濃密な時間のなかでピダムの意識が変化していくことをスンマンは頼もしく思っていた

ただ師匠ムンノと周りの市井のことしか頭になかったかつての無法者のピダムが、政治の事、貴族の事、王室の事、そして民のこと・・・・・・


乾いた砂漠の砂が水を取り込むように吸収していく・・・・・・スンマンは必ず押し付けずにピダムがどう思うかを聞いていく

そうして夜には、トンマンも交じり政治談議に花が咲くほどになっていた

***

「ピダムが変わったな・・・」
スンマンと楼閣の星空を見ながら、トンマンが話していく

「ええ・・・ もともとピダムは飲み込みが早いのです。  ただ、誰にも教えられてなかっただけなのです」
「ムンノ公がいたのだろう?」
「ふふ・・・ 反発したピダムが手こずらせていたでしょうね」
「スンマンには素直なのか?」
驚いたようにトンマンは傍らの従姉妹を見やる

「私に素直・・・というより、学びたい気持に動かされているのです・・・・・・姉上のお役に立ちたくて」
「私のか?」

くすくすと笑いながら、スンマンは柱にもたれた

「ピダムに必要だったのは王室の事柄や貴族のこと、そしてこの二つの仕組み・・・  姉上も砂漠から来られて面食らったでしょう? 新羅という国の風習などに」
「ああ、公主となってからは特にだ!  チョンソには随分助けられた」
「誰にも教われなかった・・・ 興味もなかったピダムが学びたいと思い、必死に学んだのはひとえに姉上のためなのですよ。 ねぎらってやってください」

「そうか、ピダムが・・・」
「ええ・・・」

二人の公主が話し合ったあとトンマンは宮へと帰り、スンマンは・・・・・・ポジョンと待ち合わせている隠れ家へと向かった


そうして、嵐の前の突風がスンマンを襲い、翌朝傷だらけのスンマンが見つからないようポジョンと自分の宮へと帰ってきた

「スンマン!!!」
朝、スンマンを探しに宮に来ていたピダムが青痣や口の端が切れて腫れているスンマンを見て、一緒に来たポジョンに掴みかかった

「ピダム離せ ポジョンは私の男だ、苛めるなよ」
「はあ???」
「くっくっくっ・・・ そう面食らうな」

ピダムとタンシムだけがスンマンとポジョンの事を知り、認めてから幾日かたった ある日、突然にそれは起こった。。。


≪  スンマンに襲う嵐が・・・・・・  ≫


*****

さて、いよいよ【闇色の月】の嵐に入ります

そのあと、ピダムもトンマンもスンマンも・・・ミシルの乱の無かった未来へといきます

あと1回は復習のようになりますが、お付き合いくださいませ
     

③【第二章】☆月に照らされ、陽に焦がれ・・・・・・

嵐に襲われるスンマンとそれを一番近くで見るピダム・・・

さて、この二人の絆は友情なのでしょうか? それとも魂の同族なのか・・・

このお話は【人の心の闇】について管理人の稚拙な考えですが、表しています

受け付けられない方は、お気になさらずにスルーしてくださいね

***

「つっ・・・」
「あーあ、痣になってるぜ・・・ 綺麗な肌なのになぁ~~~」
ピダムが王宮の薬坊で打ち身に効く軟膏を作りスンマンの顔や肩、背中に貼っていく
スンマンの肌に触れて状態を見るピダムに、ポジョンははらはらと落ち着きなく側にいた

「ふふ・・・ ポジョン 落ち着け」
「ですが! ピダム!もっとそっとしろ! スンマン様が痛いだろう!!!」
「次はお前が替えろよ  ・・・この状態なら、次のはもっと冷やせるように作るわ」
「次は私がいたします、スンマン様」

「あらあら、スンマン様ってば両手に花ですね!」
「タンシム・・・ 腹が減った」
「はい、ご用意ができました」

肌蹴た服を元に戻したスンマンとピダム、ポジョンが朝食を食べてから今後のことを話し始めた

「騎馬隊のことは頼む。 私は訓練の内容を考えておく」
「まあ、この程度なら見えるところは四日ほどで治るぞ」

「ピダム、夜は私の宮に来てくれ」
「なんで?」
「まだまだお前をしごかないとな! ちゃんと読んだだろうな?」
ぎろり・・・と、睨むスンマンに首をすくめながらもピダムが頷いた

「ならば、夜は今までの復習とこれからの予習だな・・・  覚悟しろよ 」
「あ~~あ、おっかねーー!」
「スンマン様の貴重な時間をお前に割いてるんだぞ、ありがたく感謝するんだピダム」
「うわっ! こっちも おっかねーー! んじゃ、行ってくるわ!」

手を振りながら出て行くピダムを苦笑しながら見送り、ポジョンも出て行った

「さてと、私は夜に備えて用意しておくか」
中原から持ち帰った沢山の自分の書物を紐解きながら、スンマンは微笑んでいた

「スンマン様? 楽しそうですね」
「ああ、ピダムが学んでくれることが嬉しくてな」
「騎馬隊をお作りになられてからですから、もう大分になりますね」
「ああ、基礎はピダムの師匠が十二分に仕込んでいたからな。 こちらが一を言えば十を知るように受けていくから教える方も楽しみだ」

「では、今夜も私が腕をふるって夕食を作りますね」
「鶏料理は忘れるなよ、タンシム」
「もちろんです、スンマン様!  無かったらピダム様が悲しい顔されますものね・・・」
「ああ、一度聞いてみたいな・・・  鶏料理と姉上とどちらが好きなのか」

「まあ・・・・・・どっちでしょうか? 」
きょとんと考え込むタンシムに、自分で言っておきながらも「はて・・・どちらかな?」と本気で悩み始めるスンマン

見合わせた二人が吹きだして笑っていた

***

「スンマン!!!」
「スンマン様ーーー」

背中から肩に矢を受けたスンマンがゆっくりと地面に崩れ落ちていくのをピダムは信じられない思いで見ている

駆け寄れば違う方向からポジョンも、青い顔をしてやってくる

「ここから近いトンマンの宮に運ぼう」
「私が運ぶ、背中に」
「ああ! 俺は先に行って医官を呼んでおく」
「頼む!」

飛ぶように全力で駆ける俺は、トンマンの宮に飛び込んで医官を侍女に呼びに行かせた

「何の騒ぎなのだ!」

俺の大声に何事かとトンマンとアルチョンが執務室から出てきた
その二人にスンマンが矢で射られたことを話し、運び込む部屋の用意を指示する俺が昔のタメ口に戻っちまってるのにアルチョンが苦虫噛んだみたいな顔になる

何か文句言おうとしたアルチョンに、トンマンが鋭く制止する
「今は非常事態だ!」

「それでスンマンは?」
「いま、こっちに向かってる!  とん・・・・・・公主様、俺に薬房への出入りとスンマンの治療の許可をください」
「治療と薬房?」
「ええ、たぶん射られた矢には毒が・・・  何の毒が使われてるか分かり次第俺が薬房に行きます」
「そうか、ピダムは医術の心得があったな」
「はい! 」
「よし! 許可する!  スンマンを助けてくれ」
「言われなくとも俺の友を救ってみせる!!! 必ず・・・・・・」

《 師匠は間にあわなかったが、スンマンは何としても助ける!!! 》

「頼んだぞ! ピダム」

トンマンの声に力強く頷いた俺に、宮の入り口から侍女の悲鳴が聞こえてスンマンを背負ったポジョンが到着した

「奥に運べ!!! ぐずぐずすんな!」
宮の警護に突っ立ってる兵にも指示して寝台に運んでうつ伏せにする

医官も到着したが、手際の悪さに舌打ちした俺が止血の準備をして矢を抜いた・・・矢じりの匂いを嗅ぎ、ちろっと嘗めたら案の定、毒が縫ってある

「草烏(トリカブト)の毒・・・・・・だが、他にも? 」
止血をし、俺は薬房に飛び込んで医官や侍女達に薬を煎じるよう指示して、傷口に貼る薬草を持って戻る。

薬を揉んで傷口を押さえて巻きとめてスンマンの様子をみると、薬湯が出来てきた

「ちっ!!!  意識が無いから飲ませられねえ・・・」
スンマンを抱き起こし、薬湯を口に含んでスンマンの血の気の無い唇に重ねて飲ませる・・・だが、こぼしてしまう

二度、三度と試すもほんの僅かしか飲み込めず、仕舞いにはむせて苦しんでしまう

「くそ!  ・・・・・・あいつなら・・・」
知らせを受けて来ていたタンシムにあいつを呼ばせに行って、周りを取り囲む連中に邪魔だと他の部屋に行かせて待った

「絶対居る、スンマンの側を離れるものか」

ほどなくタンシムに連れられてポジョンがきた

「薬を飲ませてくれ、意識が無いから口移しでしろ」
「分かった」

鎧を脱ぎ捨て、スンマンを優しく抱き起こして話しかけたポジョンが唇を重ねれば、スンマンの喉が動いて薬を飲み込んだ

愛しそうに額にかかるスンマンの髪を梳くポジョンの手が震えているのに目を止めて、俺はスンマンが死んだらどうすると・・・・・・随分な事を聞いた

「決まっている、私も共に逝くまで・・・・・・」
清清しいポジョンの微笑みに俺は信じられないように見つめた

だが、きっ!と鋭く射るような眼差しをしたポジョンは「その前に、私の宝をこんな目にあわせた奴等を斬る」と言い切った

・・・本気だ、こいつ!  本気でスンマンが逝けば、傷を負わせた奴等を斬って・・・後を追うんだろう

どこかに出かけたポジョンにまたすぐに戻ってくるよう言い含めてから、俺はその場をタンシムに任せて薬湯の煎じ方を侍女達に指示しながら作り、また戻った

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
荒い息で呼吸するスンマンは紙よりも白い顔をしながら寝ている

「???」
なにか呼吸の間に呟いてる?  ・・・なんだ?・・・

耳を寄せれば・・・・・・その微かな声に、その言葉に、俺の目が見開かれる

「ぽ・・・じょ・・・そば・・・に・・・・いて・・・あいし・・・・て・・・・・る」
「スンマン・・・それほど好きなのかミシルの息子なのに」

「はぁ・・・ううっ・・・ ぽじょ・・・」
うなされるスンマンの額の汗をぬぐいながら濡らした手拭いで冷やし、俺は考える

だが正直、俺にはわからない・・・・・・スンマンとポジョンの愛・・・なんてな。。。

だが、スンマンに再び薬湯を飲ませたいのにトンマンやチュンチュやアルチョンなどがいてポジョンを呼べねぇ

仕方ない、時間がないんだ・・・早く飲ませないと・・・タンシムにポジョンを連れて来るよういえば宮の側に居て入れなかったポジョンがきた

***

「話せポジョン、お前が見たことを見たままに・・・・・・話すのだ」
青い顔でうなされるスンマンの様子に興奮したトンマンがポジョンの胸倉を掴んで問い詰める

静かに話すその内容にその場に居た俺も、皆も驚愕したが・・・トンマンの疑問はポジョンに向けられた

そりゃそうだろう・・・  聖骨の公主と敵の息子、ポジョン自身が答えられずに下を向いてる

まだ責め続けるトンマンに俺はスンマンの口元に耳をつけて聞いてもらう・・・と、みるみるトンマンの目が驚きで見開かれる

《・・・ぽじょん・・・・そばにいて・・・・ずっと・・・ずっと・・・ぽじょん・・・あいし・・・て・・・》

次はポジョンに聞かせれば瞠目し涙が溢れて声を殺してむせび泣く・・・
「スンマン様、戻ってまいりました。ずっとお側にいます・・・・・・もし、貴女が黄泉路を行かれるのならば私もついていきます・・・・・・」

震えるポジョンの手がスンマンの手を握り締め頬を擦り付ける
「貴女のいないこの世など私もおりたいとは思いません・・・・・・ずっとお側にいます」

***

トンマンを他の部屋に連れ出したピダムが二人のことを最近知ったと話し出す

「もし、スンマンが亡くなったら・・・」
「あいつも後を追うでしょう」
「そんなに愛せるものなのか?」
「わかりません・・・ですが、スンマンが言ってました。  ポジョンには自分だけだと・・・」
「わかった、ポジョンはこのままスンマンの側においておけ」
「はい、公主様」

公主様がチュンチュを連れて宮を出て行こうとして侍女の呼び声に部屋に戻ってきた

「ミシル璽主様がお目通りを願っておられます」
「では、別の部屋に通せ、すぐに行く」

トンマンを見送りスンマンの側に行った俺は、様子の変わらないスンマンに首を捻る

「おかしい・・・・・・薬湯の効きが弱い」
俺の言葉にポジョンが激しく反応して自分の家門の毒だと言い出した

「何だそれ?」
「何種類もの毒を配合したものだ・・・・・・普通の治療では助からん」
「どんな毒だ? 覚えてるだけ全部言え!!!」

ポジョンの言う毒の種類とスンマンの肌の色や、唇の色、呼吸の様子、脈のふれかたで俺も分かってきた

すぐに薬房で解毒薬を配合して煎じて持っていき、スンマンに飲ませるようにポジョンに渡せばポジョンもすぐに口移しで飲ませた

「これで快方に向かえばいいんだが・・・」

「取ってくる・・・・・・」
立ち上がったポジョンの服の裾をスンマンが掴んで止めた・・・・・・なんでだ? スンマン

その訳を、俺はこれから分かる事になる

スンマンの信じられない程の意思の強さと、俺と同じ闇を持つものとしての覚悟を・・・・・・知ることになった

*****

短いですがここで一旦、くぎります

何だか、バタバタしてて先週みたいにUPできないのが寂しいです

【闇色の月】を見直しながら、ピダム視点で補足してます

これを書いてるとスンマン&ポジョンのラブラブ書きたくって仕方ないっす!!!

     

④【第二章】☆月に照らされ、陽に焦がれ・・・・・・

さて、スンマンの決意にピダムはどう思うのか。。。
この物語はピダム視点で『スンマンという友』の行動にピダムが変化していく事を書いていきたいです

***

「 あ~~~・・・はっはっはっ・・・・・・ふふふ・・・ はぁ~~・・・ははははははは!!! 」

スンマンの低く地の底から響くような、禍々しい笑い声がこの場を支配した

見ればトンマンは驚き目を瞠り、自分の両手を握り締めスンマンを見ている

ミシルといえば、立ち上がり部屋を出て行きかけた姿のまま、顔だけをこっちに向けて眉を吊り上げてスンマンを凝視している

「ならば飲まぬ!・・・逆賊として・・・死になさい!・・・・・・私が道連れにして差し上げる・・・・・・」

その言葉に、その異様なまでの迫力に新羅の女傑は口を開くがしばらく何も言葉をつむげなかった

「なんという・・・貴女は・・・」

「くっくっくっ・・・・・・・・・ぐっ! ぶふっ・・・・・・はぁ・・・」
「スンマン!」
白い布団にスンマンの吐いた血が飛んで・・・・・・真っ赤な花びらが散ってるようだと、ふと思った

口の端から血を垂らしながらもミシルに向かって【 にたり 】と笑うスンマン・・・・・・こいつ自分の命を担保に博打しやがった!

聖骨の公主であるスンマンを毒矢で射ったのがソクプム、そのソクプムに射るよう頼んだのがミセン、ミセンはミシルの実の弟・・・・・・なら、背景にミシルがいると思われて罪を問う事ができる

しかも、ミシルの息子であるポジョンが目撃者なんだから言い逃れも出来やしねぇだろう

気絶したスンマンの容態を見て医官に指示をだした俺は傍らに跪ずいてるポジョンを見る

「お前はいいのか?」
話しかける俺を見上げるポジョンの目が、涙で濡れて真っ赤になってやがる

「・・・私はスンマン様の意に沿うだけだ 」
「だが、ミシルは!  ・・・お前の・・・母親なんだぞ? 」
「ピダム、私に聞いたな。 スンマン様が逝かれたらどうするか? ・・・と」
「ああ・・・」
何を言うのか俺はポジョンを・・・じっと見つめた

「矢を射ったソクプム、頼んだ叔父上はもちろん斬る。  そして母が黒幕ならば、私は母も斬る! 」
「なんだと? お前・・・・・・正気か?」
「狂ってるさ! 私の命より大事な方が生死を彷徨っておられる・・・・・・正気などでいられるか?」
「ポジョン・・・」

「スンマン様のお役に立てて死ねるなら本望だと・・・心から思っているのに、あの時、練武場で・・・・・・私は・・・矢を止められなかった・・・あの時、私が・・・代わりに射られていれば・・・・・・」

「そんな・・・お前は・・・ミシルに忠実でお高くとまってて・・・俺のことも馬鹿にしてて・・・そんなお前が・・・」

「ピダム・・・・・・私は父と共に母の命で血塗れた事をやってきた。 父の身分が低く同じ母から生まれた兄からは蔑まれ馬鹿にされ、花朗として真っ白にも生きられずに諦めていた。 その私にスンマン様が・・・聖骨という天上の方が、私如きに・・・身も心も与えて下さった・・・・・・」

スンマンの髪を愛しそうに梳くポジョンの手が、震えているのを俺はぼんやりと見ていた

「私の宝・・・・・・愛して慈しむ玉のように綺麗な・・・私の唯一の宝・・・ その方に仇名す者は許さない、 たとえ母でもな!!!」
血を吐くような声とはこんな声なんだろうな・・・と、俺は思う

ポジョン・・・・・・まるでスンマンの足元に身も心も平伏すように捧げてる

お前の愛し方はそうなのか。。。

俺はポジョンを、スンマンを見つめ続けた

***

気が付いたスンマンは、一切の薬を飲まなくなった・・・

まったく頑固にもほどがあるよ

トンマンに薬を飲まなくなったスンマンの事をいえば、綺麗な顔を顰めてた

「スンマン! 馬鹿なことを考えず薬を飲みなさい」
心配の余り、病人に怒鳴ってるよトンマン・・・でもその顔が青ざめていて今にも泣きそうなんだ

血の気の無い紙みたいに白いスンマンが優しく微笑んでトンマンを見ている

「これでいいのです」
「何が良いのだ!」
「姉上の道からミシルという岩をどかせれば・・・・・・それで・・・」
「ポジョン、お前も何とか言え!」

トンマンの怒号がポジョンにもいく・・・・・・まあ、トンマンも誰かに八つ当たりしたいよな・・・

「貴女は仰いました。 私は姉上と新羅を優先すると・・・・・・確かに貴女の命一つで母は終わります」

「私は貴女の意に従うだけ・・・・・・ですが、貴女が逝くときは私も御一緒致します。・・・・・・それだけは譲れません・・・・・・」
スンマンの指に口付けたまま穏やかに語りかけるポジョンに、俺もトンマンも黙って見ていた

「ポジョン・・・お前は、生きろ」
スンマンの言葉にそれまで静かだったポジョンに・・・・・・火がついた

「嫌だ! 私一人、貴女のいないこの世に残れと言うのならば、解毒薬を無理にでも貴女に飲ませる!!!」

「貴女と離れるなど嫌です! それだけは嫌だ・・・ 貴女は私の命だ!・・・たった一つの私の宝・・・・・・せめて一緒に逝こうと・・・言ってください」
血を吐くように叫んだあと、咽び泣くポジョンがスンマンに口付ける・・・・・・俺達が見えてないんだ

「・・・・・・わかった、ポジョン・・・・・・一緒に逝ってくれるか・・・」
「はい、スンマン様・・・・・・嬉しいです」

不思議なほど穏やかな、周りに透けていくようなポジョンの微笑みに俺は・・・・・・なんでスンマンがポジョンを愛したのか分かったような気がした

本気で自分の為に死ぬ覚悟をした男の、それを悔いてもいない・・・いや、誇りにさえ思うほどに愛される事が・・・・・・そんな与えられる愛され方・・・・・・俺もスンマンもされた事ないからな


そんな覚悟を決めた二人にまだ何か言いたそうなトンマンを隣の部屋まで俺は引っぱっていった

このままなら・・・残り少ないであろう時を二人っきりにさせてやりたくてさ・・・

「興奮させないで下さい公主様」
「だが、どうすればよいのだ! 死なせたくないのだ」
「無理だ! スンマンの意思が強すぎて」

「どうにも・・・ならぬのか・・・ スンマンが気を失ったら薬を飲ませればいいのでは!」
俺はトンマンを見て首を横にふった

「そういう時はポジョンしか薬を飲ませられないんです」
「何故だ?」
「タンシムも私も口移しで飲ませてみましたが・・・・・・むせてしまい飲まないのです」
「ポジョンだけ・・・・・・全く何て頑固なんだスンマンは!」
「あいつは俺と同じ・・・・・・心に闇を持っている・・・」

「ピダム・・・」
俺を見つめるトンマンの目が少し大きくなった・・・

その瞳を じっと見つめて俺は話し出した・・・・・・誰も周りにいないことを確かめてから・・・
「スンマンが俺を友と呼んだ日に話してくれたことがあります」

俺がかいつまんで話していけば、いくほどに・・・トンマンの瞳が潤み、顔が泣き顔になっていく

口を引き結んでるトンマンは、泣きたいのを我慢してる時の顔だ

「親に毒を・・・しかも幼い頃に・・・私は15まで母と助け合い、母から愛をもらって生きてこれた・・・・・・だが、スンマンは・・・・・スンマンは・・・・・・」

「親に捨てられた子と、親に拒まれた子と・・・・・・どちらが哀しいのか・・・」
「なに?」
「スンマンが言ってました」
「・・・・・・うぇ・・・・・」

トンマンが堪えきれずに泣き出した。

俺は肩を震わせ、嗚咽を我慢しようと口を手で覆うトンマンが・・・・・・愛しくて・・・・・・ぎゅっと抱きしめた

『人の温もりに救われることもあるんだ、ピダム』
スンマンの言葉を思い出し、そのスンマンを思って泣くトンマンを胸にしまい込むように抱きしめた

「うぇっ・・・・・・ぴ・・・だ・・・む・・・えっ・・・」
「泣いてもいいんです、俺の前なら・・・・・・ありのままの公主様でいいんです・・・・・・俺が受け止めるから・・・・・・」

俺の言葉にトンマンの体から力が抜けたのが分かった

「ええっ・・・・・・うううっ・・・・・」
俺は・・・・・・そんなトンマンを支えたいと、強く思い・・・腕に力を込めた

しばらく泣いたトンマンが落ち着いたあとに恥ずかしいのか、すっくと立ち上がった

「もう、大丈夫だ!」
仁王立ちしてるトンマンが元気に言うと、部屋を出て行こうとする

「公主様どちらへ?」
「ミシル璽主に会ってくる!」
「がんばって下さい」
「ああ・・・スンマンの為にな」

トンマンを見送って俺も薬湯を作りに行こうとして立ち上がれば、ふと胸からトンマンの香りがして・・・・・・俺は胸の奥が痺れるのを感じた

***

「ピダム」
「どうしたポジョン!」
「スンマン様が話があると言われてるのだ」
「はなし?」

俺がスンマンの寝てる部屋に入るとポジョンがタンシムに言って人払いし始める

「どうしたスンマン」
「・・・建福(コンボク)三年七月七日・・・」

「!!!!!!」
「ピダム、お前の誕生日だな? 」
「どう・・・して・・・それを・・・」
「風流黄巻(プンニュファングォン)・・・花朗の名簿に載っていた」
「スンマン・・・」
俺の頭から血の気が引いていくのが分かる・・・・・・知られてしまった

「すまない、このままなら時が無いのでな・・・ピダムが言うまで黙っていようと思って・・・ぐふっ・・・たんだが」
「何が言いたい? スンマン」
「はぁ・・・ ピダム・・・血を呪うな・・・血に縛られるな・・・お前の体にはミシルの血だけではない、真興大帝の血も・・・・・・私と同じ血が流れているのだ・・・」

「スンマン、お前・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・いいか、子を捨てる親より育ててくれたムンノ公の思いを・・・・・・感じろ  血に縛られては大事なものを見落として・・・しまう」

「もう黙ってろ 薬を飲んでくれ・・・  お前を失いたくないんだ・・・」
小康状態だったスンマンが苦しみ始めて、俺は思わず傍に置いておいた解毒薬を飲ませようと唇に近づけたが・・・・・・スンマンの頑固者!!!

「ふふ・・・ すまないピダム  なあ、ムンノ公はどんな方だった?」
「師匠か?  怒るとおっかなくて正座で説教されてぶたれたな・・・・・・だが、あの日々が今じゃ・・・たまらなく懐かしい」
「私は本人を知らないが・・・・・・ムンノ公はお前を大事に思っておられたのだろう」
「なぜだ? なぜ、そう思う スンマン」

「お前に学んで欲しいと書物を読ませたな・・・」
「ああ・・・」

「その後に問答しているときにお前は不意に読んだ書物以上の見識を言っていたのだ・・・」
「え?」
「私がこれからピダムに読ませようと思っていた書物の意味や核になる思想などが既にお前の中にあるときがあった・・・ ぐふっ はぁ・・・」
「スンマン、話すのは止めて寝てるんだ」
「今しかないのだ、聞けピダム・・・・・・」

はぁ・・・はぁ・・・とだんだん呼吸が荒くなるスンマンの横の床に座り込んで顔を寄せる・・・・少しでも話すのを楽にしたくて

「ムンノ公がお前に知識を授けようと努力されたたまものだろうな・・・・・・反抗するお前相手に苦労されただろう 」
「へへへ・・・そうだろうな」
「だがな、ムンノ公は・・・妻子を捨て赤子のお前を育ててくれた・・・・・・はぁ・・・その事を忘れるな」
「スンマン・・・」

「ああ・・・ もっと時間がほしい・・・・・・もっとお前と話したいの・・・に・・・」
「スンマン! 薬を飲め! 俺を・・・  俺を置いて逝かないでくれよ!!!」

お前を逝かせたくなくて・・・・・・俺はもう、夢中で・・・・・・薬を口に含んでスンマンに口付けてた

「ん・・・・・・」
こくり・・・と喉が動く音を聞き二度、三度と薬を飲ませるために俺は続けた
毒で弱ったスンマンに、本気で覆いかぶさった俺を避ける力など無い・・・・・・やがて碗に入ってた薬の最後の一口をスンマンに流し込んだ

「・・・ピダム・・・」
「謝らないぞ! 俺はお前を生かしたいんだ! だからお前の意思とは反していても止めないからな」
「力任せに・・・・・・痛くてかなわん・・・」
俺が掴んでいた肩を見て言うスンマンは怒らなかったが、そのかわり疲れたのか眠ってしまった

後ろで黙って見ていたポジョンが、黙って俺に頭を下げる

「私はスンマン様の意志には逆らえない・・・・・・できるのはピダム、お前だけだ」
「次は無理だろうがな・・・そうそう俺の好きにさせる奴じゃないからな」
「それまでに母が決断すればいいのが」
「ミシルを説得に公主様が行ってる。  何とかなればいいんだがな」

そんな事を話している間に宮の入り口からざわざわとしたざわめきを感じた俺とポジョンは、部屋の扉を開けて外を窺った

***

「スンマン様にお話が!!!」

ミシルの声が聞こえ寝台のスンマンを見れば目を開けている

「来たか・・・ 」

まだ血の気の無い顔に、額には汗が滲んでるスンマンの様子に熱が上がったとふんだ俺は素早く脈を取り薬房に指示を出しに行った

薬房に着いた俺はタンシムを探し、薬棚から熱と解毒の薬草を配分し渡して丁寧に煎じて少し煮詰めるよう言い置き宮に戻った

そこで見たものは・・・・・・狂ったように俺とスンマンの名を呼ぶポジョンだった

もしやスンマンが!!!  と、体中が冷えた感覚になりながら近づけばポジョンが俺を見上げ、腕の中のスンマンを見せる

「寝台に寝かせるんだ」
「あ・・・ああ・・・」

目をつぶったスンマンの下瞼を見たり脈をとったり額に手をやり唇の色や口の中を開かせて診てみた

「ふぅーー 寝てるだけだ びっくりさせるなよ! 」
本気でびっくりした俺はポジョンの頭の一つも小突いてやろうと見れば、コイツ・・・・・・腰が抜けたみたいに床に座り込みやがった

「ああ・・・  よかった」
自分の顔を両手で覆うポジョンだが、その手がまだ震えてる・・・・・・顔も青いままだし、生きた心地なんかしてねぇーーんだろうな・・・

「それでミシルはなんつってた?」
「スンマン様の勝ちだ・・・母はトンマン公主を王に育てることにした」
「え? へへーーー  あのミシルが!!! スンマンの条件を呑んだのか」

「母は呑むしかないだろう・・・ 乱を起こすには時間も大儀も花朗を纏める私もいないのだから」
「それを分かっててお前はスンマンの側を離れなかったのか?」

俺の問いにポジョンは にやり と、いつものようにお高く留まって笑ってやがる

「私はスンマン様の意志に沿うだけだ。 ましてやこの様な状態を起こした叔父や母など知りはしない」
「こえーー  そんなにも夢中になれるのか・・・人は」
「母が持ってきた解毒薬は与えたが、時間が過ぎているかもしれない」

その時タンシムが新しい薬湯をもってきて俺が受け取りポジョンに渡す

「これは新しい配合で俺が作った薬湯だ、こっちを飲ませてくれ」
「分かった」

だが、ポジョンのやつ・・・・・・ぐったりしてるスンマンに堪えきれなくなったのか抱きしめて泣いてやがる

「お前が諦めたら終わりだ! 飲ませるんだ」
「・・・ああ・・・」

スンマンが自らの命をはった賭けに勝ち、新羅の女傑ミシルがトンマン公主とスンマンのもとに降った・・・

薬湯を飲ませ続け、やっと助かったスンマンだが強い毒のせいでそれから一月の間寝込んでいた

無事に快復し騎馬隊にも復帰できたのは更に日数がいったが、俺も公主様も大事な仲間を失わずに済んだ事に胸をなでおろしたんだ

やっと穏やかな日がくると思っていた

***

さて、復習はここまで。。。

次回からはドラマに沿いながらも違う展開と、味方に(?)なったであろうミシルと公主達との日々を書きたいな

コメントが元気とやる気の素になるので、よかったら感想などもらえると嬉しいです
     

⑤【第二章】☆月に照らされ、陽に焦がれ・・・・・・・

私の好きなミシルなので、ドラマより潔く振り切りもいいです(笑)

もう、「王を作る」という新しい夢に向かったため、教師のように「ハイジ」の《ロッテンマイヤーさん》のように厳しいような・・・(知ってる人いますかぁーー! 居たら手を上げてね♪ 握手しましょう☆)

そんなミシルと真面目なトンマンに、自由人なスンマンにピダムの明るい話を書きたいです

***

「 そうではありません!!  よろしいですか? こうです!!! 」
ミシル宮に響く主の声は、今日から始まった公主への《 立ち居振る舞い講座 》の講師、ミシルの声だった

「 トンマン様、貴女は少々歩く時の歩幅が大きいのです。 侍女達が後ろで小走りしてるのをよく見かけます 」
「 そうか? 私は普通に歩いてるだけなのだが 」
「 トンマン様、お言葉を返すようですが・・・・・・普通がいけないのです! 公主たるもの静やかに尚且つ隠し切れない色香とたおやかさを出して貴族を魅了しなければいけません 」

「 うう~~~ 」
「 うなりません 」

「 がう~~~ 」
「 かじりません! 扇はかじる物ではありませんよ 」

ぱんぱん!と手を叩いたミシルがトンマンを優しく覗き込み・・・・・・ かっ! と目を見開いて見詰めるとトンマンの目が びくり!と瞬いた

「 トンマン様! さ、やってごらんなさいませ 貴女はやればデキル子です!  さあ、さあ、さあさあ、 さあ~~~!!! 」

***

「 疲れた・・・も、いや・・・歩けない・・・うがぁ~~~ 」
「 くすくす・・・ 姉上、お疲れ様です 」
「 もっと政治の事とか話したいのに璽主はしばらく《 立ち居振る舞い講座 》を続けるつもりだ・・・ 」

「 明日から私も参加するよう言われましたよ 」
「 もう、体はいいのか? 」
「 はい、大丈夫です。 ポジョンが心配して今日まで安静にしてましたが早く体を動かしたくてうずうずしてます 」

「 無理は禁物だぞ、スンマン! 」
俺が入ってきたら寝台に起き上がってるスンマンの足元につっぷしてるトンマンが見えた

「 公主様・・・ どうしたんです? 」
「 ああ、ピダムか・・・ 」
顔を上げたトンマンが、疲れた顔してるから俺は心配で横に座った

椅子に座りなおしたトンマンが首をコキコキと動かしてるのに、肩がこったようだと思って手を伸ばせば・・・・・・後ろからアルチョンの咳払いが聞こえる

「 ピダム、姉上の肩をほぐしてくれ・・・ アルチョン朗、医官としてならば良いであろう 」

スンマンの助け舟に俺はトンマンの後ろに椅子を置き、座って肩をもみ始めた

「 こら! スンマン! ピダムやめなさ・・・・・・  う~~~む ・・・もそっと右! ああ、そこだ!そこ! 」
「 ここがこってるなら・・・ あとで薬湯をお持ちします 」
「 ん? なぜだ?」
「 ここのツボは放っておくと胃に少し悪さをするんです。  早いうちにほぐしておかないと・・・・ 」

「 姉上、ここに寝てください。 ピダム、私にしてくれた背中のツボを揉んであげてほしい 」
「 肩甲骨の流れか? 」
「 ああ、姉上が先程から気になさっていたのだ 」

寝台から降りたスンマンが躊躇うトンマンを抱き上げて優しく寝台に寝かせると、トンマンも観念したようにうつ伏せになった

俺は丁寧に肩から背骨を揉んでいき、血の巡りをよくするように手の平で流れをたどる

「 聖骨の公主様に何をするのだ!!! 」
いきり立つアルチョンは、スンマンの『ピダムは医官としてこのほど登録させた、貴殿は公主の護衛花朗だろう? 体の不調を見過ごしにはできないはずだ』と言われて何も言えなくなってるよ

トンマンの予想以上に華奢な体に俺の心臓が早鐘を打つが、それよりも硬く・・・背中全てが岩のようにこっている体が気になった

「 公主様、頭痛や眩暈がしませんか? 」
「 わかるか? 頭が痛いのだ 」

「 それは血の巡りが滞っているためです・・・・・・ 揉んで血の固まりをほぐした後、薬湯をお持ちしますから飲んでくださいね 」

「 な、アルチョン朗。 ピダムの医術は国仙ムンノ公仕込みだから王宮の医官より実地に強いのだ 」
「 ふむ、血の巡りが悪いと体が固くなり具合も悪くなる・・・ 致し方ない、認めよう 」
「 私の快気祝いに・・・ なあ、アルチョン朗耳を・・・  ごにょごにょごにょ・・・・・・ 」
「 はあ・・・いいのですか? 」
「 いいさ、うるさいポジョンは屋敷に帰ってるし・・・ 鬼のいぬまの何とやらだ・・・ 中原から取り寄せた花の香りの酒と、上質な酒だ 一杯いこう 」

アルチョンの肩を組んでほがらかに笑うスンマンが、タンシムに酒席の用意をさせようと振り返ったら・・・・・・


「 誰が鬼なのですか?  スンマン様? 」
屋敷に帰ったはずのポジョンがそこに、苦虫を噛み潰したような顔をして立っている

「 ぐぅ・・・ ポ・・・ポジョン・・・ 今宵は帰ると言っていなかったか? 」
「 一旦帰りましたが父から『スンマン様をお守りするのがお前の使命だ! 』と、追い返されました 」

「 そうか・・・ ならば・・・  ならばポジョンも飲もう!  な? 」
「 ええ、御体も快復なされましたから今宵から酒の用意もするようタンシム殿に伝えてありました 」

「 御酒を召し上がるのは構いません 」
「 ・・・・・・ポジョン? 」

「 誰が、鬼なのですか? 」
「 うっ・・・・・・  そうだ! タンシム~~~ 」

スンマンが部屋からでてタンシムを探すふりをして出て行けば、ポジョンはさっさか追いかけて・・・・・・追いついた

「 鬼とは酷い・・・ 」
「 すまぬ! この頃はお前が口やかましくて・・・・ ははっ 」
「 ひどいです、スンマン様。 貴女の体を思えばこそなのに・・・ 」
「 くすっ・・・拗ねるなポジョン・・・ こっちへ 」

スンマンがポジョンの腕を掴んで使ってない部屋に入り・・・・・・しばらくして出てきたポジョンが上機嫌で酒の用意など指示をし卓に並べさせるのをトンマンやピダム、アルチョンが驚きながら見ていた

「 何したんだ? 急にご機嫌になったぞ 」
俺が聞くとスンマンが口に人差し指を立てて にやりと笑うが、その笑みの妖艶さに俺は目を奪われた

いつからだったか・・・・・・こいつの表情にこういう妖しい色香が含まれてきたのは・・・・・・いつだったかな? 

でも前はふとした時に見えたその顔が、この頃は頻繁だ・・・・・・本人は意識してないな、きっと

卓に並べられた酒と肴に、もちろん俺の好きな鶏料理もたくさんあって俺までご機嫌で食べ始めた

トンマンとスンマンが楽しそうに酒を酌み交わし、ポジョンとアルチョンがそれを見ながら互いの盃に酒を注いでいる

スンマンが微笑んで俺の盃に酒を入れるが、弱い俺を気遣ってか半分も入れないでタンシムに茶を持ってこさせる

「 すまないな、スンマン 」
「 必要な物があれば遠慮なくいえよ、ピダム 」
「 ああ・・・ 」
「 そうだ、前から聞きたかったんだが・・・ 」
「 ん? 」
「 鶏料理と姉上とどちらが好きだ? 」

≪≪  ぶぅぅぅぅぅーーー  ≫≫

俺は口に含んでた茶を思いっきり噴き出してた!!!

「 あはは! すまぬ! ピダム大丈夫か? 」
「 げほっ・・・ぐほっ・・・ 」

「 スンマン、悪い冗談は止さないか 」
トンマンが今までの笑顔はどこへいったのか、急に眉間に皺を寄せて俺とスンマンを睨んでる

「 公主様がいい・・・ 」
俺は何も考えずにトンマンを見て答えていた

「 え? 」
「 鶏肉は旨いけど、胸がときめくのは公主様だから・・・ 」

秘めてる思いだが、先程のトンマンの華奢な体の感触を掌に思い出してしまい・・・・・・じっと見詰めながら言ってしまった

ずっと見詰め続ける俺を真正面から見てるトンマンの眉間の皺がなくなり、心なしか頬が赤い?

何か言いかけるように開いた口・・・・・・ 俺は何を言われるか、でも何か言って欲しくて・・・待った

「 ピダム! 公主様に失礼であろう!!! 」

だが、降ってきたのはアルチョンの怒声・・・・・・  はぁーーー そうだよな

「 何が失礼なのだ? アルチョン朗 」
「 スンマン様、御冗談が過ぎます!!! 鶏肉と公主様を測りにかけるなど失礼極まりないことです 」

「 そこか? くすっ・・・悪かったなアルチョン朗 」
「 まぁまぁ、アルチョン・・・ この方は時々子供のような悪戯をされるのだ。 許してほしい・・・そうだ、これはお前の好物だろ? さ、食べてくれ 」

そういえば・・・・・・ポジョンは花朗としてアルチョンとも子供の頃から顔をあわせ親しく付き合っていたと聞いた・・・アルチョンがトンマンに、ポジョンが母ミシルに付いた時から別たれた道・・・・・・

それが今、再び道が寄り添ったから・・・・・・ ここで笑いあってる旧友達・・・

「 スンマン 」
「 はい、姉上 」
「 もう自分の命を賭けには使うなよ・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
「 いくら大義のためでも、この国のためでも、貴女は私の妹だ・・・・・・ 姉を失った悲しみを再び味わいたくない・・・ 」
「 姉上・・・ 」

トンマンは泣くでもない怒るでもない、その静かな泉のような瞳をスンマンに注いでから・・・・・・ゆっくりと俺達を見回した

「 よいか、この場の誰も自分の命を疎かにしないでくれ・・・・・・ 皆、私と共に生きてくれ 」

静かな、静かな、だけど凛とした声と・・・その表情に・・・・・・俺の胸はどきどきと鼓動を刻む

俺は・・・ 俺は・・・ トンマンが好きだ・・・ 誰より、何より、俺の唯一の思い。。。


「 失礼します。 遅くなりました 」
遅れてきたユシンがその場の空気も構わずに、いつものようにのっそりと部屋に入ってくる

スンマンが自分の隣の席を勧めるとユシンは素直にそこに座る

そうして騎馬隊のことや何やらを話しながら、酒宴は続いていった

***

「 公主様、続きからでよろしいですか? 」
「 ああ・・・ 頼む 」

酒宴を途中で抜け出たトンマンと俺はトンマンの宮に来ていた

俺はスンマンから借りた本を開いて昨日の続きから読み始める・・・  なるべく抑揚をつけて楽しく面白く、場面によっては悲しく・・・と、変化をつけながら読んでいく

騎馬隊を立ち上げてる頃からの習慣で、公主様が眠る間の少しの時間に読んでいるからあまり進まないが・・・それでも今読んでる本で三冊目だった

きっかけはスンマンが毎日のように徹夜で勉強してるトンマンを心配してのことだった

『 姉上は物語がお好きだそうだ、ピダム! 姉上を眠らせるように夜、読んでやってくれないか 』
二つ返事で引き受けた俺だが最初はトンマンが嫌がって読ませてもらえなかった

乳母のソファさんも俺には警戒してて、公主の寝室に入る事は許されないと大反対だった

そんな時、スンマンがトンマンの宮に来てソファさんと二人で話し合ったんだよなーーー

『 乳母殿、あなたも姉上の睡眠不足は心配でしょう? 私が信頼してる者は信じられませんか? 』
『 ですが・・・ ピダム様は男性です 年頃の公主様の寝室になど入れれません 』
『 貴女も一緒に居ればよい それに、このまま毎晩眠らないような生活を続ければやがて姉上の御体は病を得てしまうだろう・・・  それでも良いのか? 』

スンマンのこういう時って、迫力あってさ・・・・・・ 俺でも逆らえないんだよな

ソファさんもとうとう折れちまったし・・・・・・

で、最初は三日や四日に一度だったんだけどさ、トンマンの物語好きに火がついたのか続きが聞きたいって言われて今じゃ毎晩呼ばれてる

このひとときが俺には大事な時間になっていった


「 くぅ・・・  すぅーー・・・ 」
眠ったトンマンを残して部屋を出た俺は、そのまま宮をでていった

***

「 さあ、トンマン様は昨日の続きをいたしましょう 」
「 うっ・・・ 」

「 スンマン様は・・・ まずは公主服に御召し替えを!!! 」
スンマンがいつもの男装で来ているのを見たミシルが鋭く言い渡す

「 服は持ってきていないが・・・ 」
「 ミセン! 」

「 はい、姉上~~~♪ 」
「 スンマン様、ミセンに服を用意させました。 化粧の仕方も覚えてくださいませ!! 」
「 さあさ、こちらの部屋に行きましょうねぇ~~~ 」
「 おい、ちょっとまて!!!  いいじゃないかこの服で! 」
「 いけませんよ、女性は女性らしく・・・ 美しい公主様が化粧を施せばもっと美しくなります! このミセンにお任せを!!! 」

すっ・・・・・・とスンマンの肩に顔を寄せたミセンがこっそりと囁いた

「 ポジョンだとて貴女の公主姿を見たいに決まっております・・・  そろそろ女性として美しく装うてもよろしいのでは? 」
「 ポジョンも喜ぶか? 」
「 はぁ~~~い♪ それはもう・・・ ぐふふふっ 」
「 ならば、たまにも着てみるかな・・・ 」

ミセンに別の部屋に連れて行かれたスンマンが戻るまで、またみっちりと歩行訓練を受けているトンマン

「 おおーー! 昨日より大分よくなりましたよ トンマン様・・・ 」
「 そうか? 」
「 はい、さすがはトンマン様、何事も飲み込みが早ようございますな 」
「 璽主の教え方がよいのだろう 」
「 いえいえ、トンマン様が・・・ 」
「 いやいや、璽主が・・・ 」
 
二人が顔を見合わせ微笑んだ、そのとき部屋にミセンの力作が入ってきた

「「 スンマン!! 」 様 」

「 これは美しい・・・ ミセンでかした 」
「 スンマン、綺麗だぞ 」

「 そうですか? なんだか気恥ずかしくて ////// 」
照れるスンマンにトンマンとミシルは、二人揃って優しい目を向けている

「 では、スンマン様 歩いてください 」

すっ・・・すっ・・・と、流れるように歩くスンマンは公主服に身を包んでいても歩幅が大きく・・・ つまりトンマンと同じ特訓を受ける事が決まった

「 では、王宮を歩きましょうか?  公主様らしく、しとやかに静かに美しく・・・色香も匂わせるように・・・」
「 ええ? 王宮をか? 」
「 ふふっ 観念して行きますか、姉上 」
「 仕方ないか! では行こう 」

そうして、ミシルを挟んで歩く公主達は歩きながら楽しげに話をして王宮を一回りしていた

広い王宮なのだが、ミシルの話が面白くて・・・・・・ 政治談議や貴族の操縦法など色気はないが実りのある話にトンマンは楽しくて仕方なかった

3人が侍女や護衛兵を後ろに引き連れて練武場に来れば、ちょうどチュンチュがピダムに素振りをさせられていた

「 あ! チュンチュ! 」
トンマンが嬉しそうに駆け寄ってチュンチュと話をしていると、二人になったミシルとスンマン

スンマンがミシルの耳に口を寄せ囁けば、ミシルがそっと頷いているのをチュンチュは見逃さなかった

トンマンをその場に置いたチュンチュが、真っ直ぐにスンマンを見て歩み寄ってくる

「 今日は何の日ですか? 貴女が公主服を着てるなんて・・・ おまけに化粧まで・・・ 」
「 ははっ たまにもな・・・ 似合うかどうかは分からぬが 」 
「 美しいですよ、スンマン ・・・どこの誰よりも・・・ 」
「 ふふっ 世辞でも嬉しいな 」
「 世辞ではありません ・・・貴女を得るためなら命も惜しくないという男がたくさん現れるでしょう 」

「 そうだな・・・ もし必要ならば誰かに嫁がねばならないだろうな・・・ 敵国へも行かねばなるまい 」

「 誰の必要ですか? 」
そう聞いたチュンチュの瞳が揺れている

「 姉上の、民の、新羅のためにだ ・・・それが公主としての使い道だろう 」
「 何という潔い御心 そうならないようこのミシル、全力でトンマン様をお育ていたします 」

「 このような講義をする本意を姉上と私に教えてくれぬか? 」
「 はい、スンマン様・・・ では、わたくしの宮に帰りましょう 」

ピダムと話していたトンマンを連れ、チュンチュはピダムの側に置いて3人はミシルの宮へと帰ってきた

茶を煎れたスンマンが座ってからミシルが口を開いた言葉に、二人の美しい公主達は耳を傾け聞いている

「 新羅は、ご存知のように百済と高句麗に挟まれています。 真興大帝が伽耶を合併して三国に落ち着きましたが、百済は羅済同盟を破った新羅を常に狙っております」

「 なぜこのような立ち居振る舞いが必要なのかは・・・・・・わかりますか? 」

トンマンもスンマンも頭をふる・・・ 普通の女性として過ごす事がほとんどなかった二人には分からなかった

「 外国の使者として来る者はほぼ男です 使者とは・・・ある時には条件を出し、ある時にはこの新羅の情勢を探る、油断できない厄介なもの・・・しかし、もてなさなければならない者達です 」

「 その時に、公主として王族として貴族を惹きつけ忠誠を引き出して見せ付けておく必要があります・・・  この国は結束していると思わせられればしめたもの  ・・・そうして使者の者達をも魅了できれば上出来です 」

「 王族として気高く、美しく、たおやかで守りたくなるように・・・ 脅すのはそれからでよろしいですものね、ほっほっほっ・・・ 飴と鞭の使い方を覚えていただきます 」

「 その微笑一つで花朗を動かせるようになれば、私も安心です ・・・いずれトンマン様が女王になられた時にも役に立つ事でしょう 」

「 媚びる事はいりません! 男の保護欲と忠誠心を引き出せば事はたります 」

初めて聞く言葉の連続にトンマンとスンマンは顔を見合わせるが、道のりは遠くに思えた

「 お~~っほっほっほっ わたくしにお任せくださりませ・・・ お二人とも十分に美しいのですから、素直に私の講義を受けていただければ直ぐに会得できます 」

最後に、にやり と笑ったミシルが付け加えたのはこんな言葉だった

「 男はある程度は単純なのです、国を操るよりもコツさえ掴めば簡単です  好印象を残せればいいだけです 」

ミシルの宮をでた二人は、ぐったりと疲れていて・・・・・・しかしミシルが言う事も理解していたため、やる気は出てきていた

「 明日からも頑張ろう、スンマン 」
「 はい、姉上 」

二人の公主は手を取り合い励ましあっていた・・・

***

さて、ミシルが手を付けるとしたら何処からなのかと考えたとき、トンマンが侍女を走らせながら王宮を闊歩していた事を思い出しまして・・・こうなりました(笑)

えっと、スンマンの公主姿にポジョンが歓喜してどこかに連れて行こうとして、むにゃむにゃ(←オイ!!!)しそうなので敢て出しませんでした

書きたいからパス付けて別記事で・・・てへっ! 

では、感想お待ちしております(^o^)丿


プロフィール

すー※さん

Author:すー※さん
私的妄想世界が広がっております。
イチオシは窪田正孝さんの役柄いろいろ妄想話です♡(その他にも相棒の神戸さん、スネイプ先生や善徳女王など色々でございます)

最近は更新ができてませんが、発作的に投下してます。
8月、9月の試験に受かれば時間ができるので、それまでは見守っていて下さいませ。

合言葉は『シリアスからエロまで』・・・・・楽しんでいただければ幸いです。。。

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